21/06/24(木)22:49:28 桜が散... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1624542568526.png 21/06/24(木)22:49:28 No.816649659
桜が散る季節の夜はまだ少し、肌寒い。そんな事を考えていると隣で歩くトレーナーさんも同じ思いだった様で 「……夜は冷えるな」 「だね〜。寮で生活してた時はこの時間出歩かなかったのもあるだろうけど」 なんてことない会話。でも距離感を測りかねている。多分、二人ともが。 トゥインクルシリーズを走り抜けた私はトレーナーさんの下で補佐──所謂サブトレーナーとして働き始めた。トレーナーとサブトレーナー、トレーナーとウマ娘とはまた違った新しい関係性。それは少し私達の間柄をギクシャクさせていてるのだった。 頭ではわかっている。トレーナーとサブトレーナーがベタベタしているのは指導する側として相応しくない、という事は。これまでの様に専属トレーナー契約したウマ娘としてではなく、チームトレーナーと補佐のサブトレーナーとしての接し方に変えなければならない、という事も。でも、どことなく寂しく感じてしまっている。この河川敷に散っていく桜みたいに抱いている想いも散ってしまいそうで。 「そういえば……。聞きました?トレーナーさん」 二人の間に出来ている少しの隙間を埋めたくて、それだけの理由で言葉を紡ぐ。
1 21/06/24(木)22:49:52 No.816649855
「スペちゃん、結婚するみたいですよ?おめでたいですよね~」 「へぇ……。相手は……あいつか?」 「……。はい、トレーナーさんの想像してる相手ですな」 「まあ……北海道に引っ越すって聞いたときは察した部分……あるな」 式の案内もそのうち来るだろうし……なんて二人で笑い合う。その時だけはなんだか以前に戻れた様な気持ちになれた。 『私もそんな相手を待ってます』 なんて柄にもない事を思ってしまう。そんな相手は隣に歩いてる人なのに。 でも言いたい想いは降ってきた花びらみたいに風に流されて川の上へ運ばれる。冷たい風が吹く川の上に。 「じゃ、お疲れ様。また明日よろしくな」 「……。はいは~い、明日もよろしくお願いしま~す」 そうして歩いて着いた河川敷沿いのアパートで日々の別れを口にする。明日の事を約束して。 先程よりもなんだか重くなった足で二階の部屋へ、私の城へ。
2 21/06/24(木)22:50:15 No.816650012
「ただい……あー……」 返ってくることのない「ただいま」は途中を途中で切って天井を仰ぐ。窓、開けっ放しだったか、なんて今朝の私のミスを確認しながら。 「まあ、いっか。……これはこれで」 そう呟く一人きりの私。何故なら窓からは── 「桜、綺麗だし」 河川敷の桜がきれいに見えていたから。 二人で見れたらもっと良かったのにな、なんて想う私は多分恋をしているから。なんでかは分からないけど、全身で恋をしている、その事だけは分かるのです。
3 21/06/24(木)22:50:45 No.816650233
───────── 桜の散る季節も終わりを告げようとしていた。もう少しすれば青い葉に染まって木々の印象も変わっていくのだな、そう思う。 隣を歩く元担当ウマ娘、現サブチームトレーナーとの距離もあの時とは若干変わっていて少し寂しくなる。チームを指導するに当たってはこの距離感がいいんだ、とはわかっていても、だ。 「大分暖かくなってきましたな~」 「……だな。でもこの時期が風邪ひきやすいしな、気をつけろよ?」 「それはセイちゃ──私じゃなくてチームの娘に行ってあげてくださいな?」 とりとめのない会話。でもポツリと漏らしてしまう自分に辟易とする。 「セイちゃん、でいいんだけどな……。俺しか聞いてないし……」 こんな事を、言ってしまう弱さに。 「……。いやいやいや~、一応、上司なんですよ?トレーナーさんは」
4 21/06/24(木)22:51:06 No.816650387
だから部下の私にビシッとしてくださいよ☆そんな軽口にふと過る思考。あまり考えたくは無い内容。 『前みたいな関係性には戻れないんだな』 なんて女々しい言葉。緑の多くなってきた桜みたいに関係性は変わっていくのに。縋り付いてしまうのだ、かつての居心地のいい距離感に。 そうして無言でセイのアパートへと向かう。初めははアパート前の道路で別れていたがそのうち駐車場になって、階段前になって、今はこうして部屋の前になっている。 「じゃ、また明日。風邪気をつけてな」 「うん。トレーナーさんも気をつけて」 いつものように別れの挨拶をして背を向ける。振り向く直前のセイの顔はいつも真面目な表情で、 『指導してるときのそれは好きだけど、今は笑っていてほしい』 なんて勝手に思ってしまうのだ。
5 21/06/24(木)22:51:20 No.816650490
自宅へ戻る一人の道で月を見ながら更に浮かぶ。 『無理に新しい色に染まってほしくは、無いんだけどな』 そう独り善がりな考えを。 誰しも昔のままでは居られない事はいい加減気づいているはずなのに、心は正直になれなくて。ただの一言、言ってしまえばそれで済む事。 『頼むから心の裡で泣かないで。一人の夜に泣くのなら、俺はずっと側に居るから』 その想いを伝える頃には多分きっと、春は終わっていることだろう。 会いたい、そう思う。問われても答えられない。言葉にできないから。でも狂おしい程に恋をしている。この心、この身体、全身全霊で恋をしているのだけは分かっているから。それだけの事。
6 <a href="mailto:s">21/06/24(木)22:52:08</a> [s] No.816650832
あいみょんの桜が降る夜は聞いてたら浮かびました 両片想いセイトレ概念好きです
7 21/06/24(木)22:52:39 No.816651059
いい…
8 21/06/24(木)22:59:24 No.816654072
あいみょんシリーズ好きだからもっとはやれ
9 21/06/24(木)23:02:09 No.816655193
聖ウンス会は相変わらず丁寧な仕事ぶりだ…
10 21/06/24(木)23:09:12 No.816658083
しれっとスペトレが北海道で婿入りしてて駄目だった