21/06/24(木)00:57:19 「悪ィ... のスレッド詳細
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21/06/24(木)00:57:19 No.816374037
「悪ィ、燃えなかった」 引退式を終えて控室へと戻ってきたゴールドシップは、開口一番そう言った。 まぁまぁだろ、でも。逆にスゲェってことで、でもなく。謝罪の言葉。 有馬記念、八着。不沈艦、抜錨せず。それがゴールドシップの最終レースの記録だ。 「なんつーかよ……フラストレーションが3丁目のトメさんに持ってかれちまった」 引退式では名前を呼ばれる度にブブゼラを吹いて返事をしていた彼女。 引退でも平常運転だとか言われていたけれど、わはり彼女なりに思う所はあったらしい。
1 21/06/24(木)00:57:48 No.816374181
「まーでも、全部やりきったろ。アタシら」 宝塚連覇にURA初代チャンピオン、そして未だに語り継がれる木魚ライブ。 彼女と一緒に駆け抜けた日々は、今でも昨日のように思い出せる。 「アタシと出会えて、アンタの人生面白くなったろ?」 そうだ。間違いない。 彼女がいたから、俺はここまで走り抜く事ができた。 「オイ、何かいえよ……お、おい!?」 だから今度は、俺の番だ。
2 21/06/24(木)00:58:50 No.816374502
「んぐぐ……っ!」 所謂お姫様抱っこの体制でゴールドシップを抱き上げる。 流石数々のレース場で嵐を巻き起こしたゴールドシップ。筋肉の密度が半端じゃなく、やはり見た目以上に重い──絶対に口には出さないが。 「……ん。どーすんだこっから」 珍しいことに。プルプルと震える俺の腕に抱えられながら、ゴールドシップは暴れることなく身を委ねてくれている。 「決まってるだろ! 俺達が行くべきところは……!」 そのまま彼女を抱き抱えて走り出す。 持ってくれよ、俺の身体──!
3 21/06/24(木)00:59:39 No.816374754
ここに来るのも何度目だろうか。 未だに名前も知らない島の海岸に辿り着き、ゴールドシップを砂浜に下す。 「ぜぇ……っ げほ……っ」 「おおトレーナーよ 力尽きるとは情け無い──いや、無理すんなよ。マジで」 「いや……まだまだ!」 全身から滝のように流れ出る汗。乱れる息を何とか整えて、海へと向かう。 この島に来る事が目的、ではない。 ここから先が、一番大事なのだ。 「よし!鯛を取ってくるから待ってろ!」 「……ふーん?」 彼女と共に駆け抜けて学んだ技術。それを活かせば、体力を大きく消耗した状態の自分でも魚の一匹や二匹を捕らえる事は容易い。 流木に腰掛けたゴールドシップを待たせないように手早く鯛を捕まえ、刺身やあら汁を用意する。
4 21/06/24(木)00:59:57 No.816374831
「ふー……食った、食った……で、いったい何なんだ?」 「ありが鯛!……つまり、ありがとうってこと」 「は?」 ゴールドシップに引き摺られて、最初の三年間を駆け抜けて。凱旋門に挑戦したり、宝塚三年目で思いっきりやらかしたりと色々あったけど。 彼女が楽しく走ってくれたから、俺も今までやって来れた。 そんな彼女に感謝の気持ちを伝えるには、引退式での言葉なんかじゃ到底足りなかった。 「ほーん……ま、ありがとな」 「これでもまだまだ足りないけどな」
5 21/06/24(木)01:02:19 No.816375450
「へぇ……んで、オマエこれからどーすんだ。新しい旅に出るんだろ? 16才の誕生日だもんな。おおトレーナーよ、目覚めるのです。私の声が聞こえますか。今あなたの耳に直接語り掛けています──」 「うーん。まだ決まってないんだよな」 理事長からは是非次の子も、と打診を受けているけど。果たしてゴールドシップと共に駆け抜けた日々は、他の子の育成に活かせるのだろうか。 というかゴールドシップの担当トレーナーと聞いて契約してくれるウマ娘はどれ程いるのだろうか。 「まぁ……でも、100年後の予定なら決まってる。いつか前に話だよな、ヒマなら一緒に宇宙に行こうって」 「ん? オイオイ、それってプロポーズか? 指輪はウルツァイトとレッドダイヤモンド製で頼むぜ」 「ああ」 「……あん?」 懐から小箱を取り出し、ゴールドシップの前で開く。彼女の言う通り、ウルツァイトの装飾が施されたレッドダイヤモンドの指輪。 「ゴールドシップ。100年後まで、いやその後もずっと、一緒にいてくれ。宇宙に行こう」
6 21/06/24(木)01:04:59 No.816376155
「オマエさ、自分の言ってる事わかってんの?」 「ああ」 「言っとくけど、アタシもう引退してんだぞ」 「知ってる」 「ああ、だよなぁ……」 「……」 「……クソ!火、着いちまったじゃねえか!レースはもう無ぇってのに!どうしてくれんだよトレーナー!」 「楽しいことをいっぱいしよう。これから、一緒に」 「は──言うじゃねえかよ!」 「ああ。お陰様で」 「あー!しゃーねーなー!ゴルシちゃんもここまでお膳立てされたらなー!……うん。なぁ、トレーナー」 「ん?」
7 21/06/24(木)01:05:10 No.816376204
「オマエと出会って、アタシの人生もっと面白くなっちまった。責任取らせるから、覚悟しろよ?」
8 21/06/24(木)01:06:03 No.816376402
みたいな感じで引退後に燃え尽きっぽくなったゴルシにプロポーズして燃え上がらせる幻覚が見えたんだ
9 21/06/24(木)01:06:05 No.816376412
よくウルツァイトなんて調達してきたな…
10 21/06/24(木)01:06:28 No.816376513
よい幻覚だ…
11 21/06/24(木)01:06:32 No.816376531
いい…
12 21/06/24(木)01:06:51 No.816376643
最高の幻覚だった... お姫様抱っこのまま式場までと一瞬思っちゃった