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21/06/20(日)23:22:28 今日は... のスレッド詳細

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21/06/20(日)23:22:28 No.815399869

今日は楽しみにしていたオフの日です。お出かけの予定があります。 部屋に居てもどうにもそわそわと気持ちが落ち着かなくて、同室のタイシンちゃんに変な目で見られちゃいました。 待ち合わせの時間にはまだ30分以上ありますけど、早めに向かっちゃうことにします。 空気は澄んでいて、天気は快晴。雲ひとつない青空。遠くの方は少し白んでいて、空色とのグラデーションがきれいです。日差しが少し眩しいけど、帽子をかぶるよりもぽかぽかの陽気と風を髪の毛で浴びるほうが気持ちいい、絶好のお出かけ日和です。 何度も通り慣れたいつもの道のはずなのに、今日はなんだか彩り鮮やかに見えるような、そんな気持ちです。 でも少しだけ、呼吸が浅くなってます。胸がドキドキして、緊張のような、ワクワクのような、不安なような、楽しみなような。 足取りは軽く、軽すぎて、少し浮いてるような。ちゃんと意識して落ち着かないとうっかり走り出しそう。ウマ娘ですからね。 駅前の集合場所に、見慣れた横顔を見つけ、ドキンと胸が高鳴りました。 ──もしかして遅刻しちゃいました!?

1 21/06/20(日)23:23:17 No.815400229

「トレーナーさ~ん」 慌てて駆け寄る。残り5メートルほどでこちらに気づいてもらえました。 「おはようございます。ごめんなさい、おまたせしました」 「おはようクリーク。約束の時間より早いから大丈夫だよ。勝手に早く来ただけ」 少し目を細めて、 「家にいても楽しみでそわそわしてたから」 恥ずかしそうに笑う顔を見て、同じ気持ちだったことが嬉しくて胸がいっぱいになります。 ──きっと、今の言葉はリップサービス。もともとトレーナーさんは、待ち合わせの相手を待たせたりしない人ってことは知ってます。 でも、いいんです。喜んで騙されちゃいます。 だって私、いま、恋をしているんです。

2 21/06/20(日)23:24:12 No.815400632

「行こうか」 「はいっ」 隣あって歩きだします。歩調はゆっくりと。こちらのペースに合わせてくれているのを感じて、嬉しい。 他愛もない雑談。友人との間でした面白い会話の話。最近読んだ雑誌の面白かった記事の話。これから行くランチのお店の話。 話の内容よりも、こうして言葉をやり取りして一緒に笑ってくれるのが、とても幸せ。 本当に些細なことで胸が高鳴って、内心ドキドキしているのを隠すのが大変です。でも、それも楽しく思えちゃいます。 ふとすれ違ったカップルが指を絡めて繋いでいるのを見て、すごく羨ましくなっちゃいました。 ──私も、手を繋いで一緒に歩きたい。 トレーナーさんと手を繋いだことなんてこれまで何度もあります。でも、今は前より気軽にできなくなっちゃいました。ここ最近は自重してます。手を繋ぐどころか、前は当たり前のように触れ合ったり、すぐそばに居ることがいつでもできたのに、最近は近すぎたり触れてしまったりすると、胸が痛いくらいにドキドキしておかしくなっちゃいそうになるんです。

3 21/06/20(日)23:25:01 No.815400965

でも、どうしたらいいでしょう。手を繋ぎませんか、なんて言えません。以前はどうやっていたんでしたっけ? もう思い出せません。 「クリーク、手を」 「えっ!?」 トレーナーさんがいきなり手を差し伸べてきたから、びっくりしました。心を読まれたんでしょうか? 「このあたりから段差あるから。ヒール、危ないよ」 「あ……はい」 この区画から、西洋風の古い街並みのように不揃いの石畳が地面に敷き詰められており、見た目はオシャレな代わりに少し歩きにくくなっています。私が今日は細いヒールのついたパンプスを履いていたから、気を遣ってくれたんですね。 「ありがとうございます。いい子いい子~」 あっ。

4 21/06/20(日)23:26:17 No.815401503

長年の習慣は恐ろしく、頭で考えるより先に、手が勝手にトレーナーさんの頭を撫でていました。ついさっき自重してますなんて言ったのは嘘になりました。直後に我に返り、自分のしたことにカーッと顔が紅潮してしまいます。 スミマセン……と小さく申し訳程度に呟いて、半歩離れ、差し伸べられた手を握ります。トレーナーさんは気にした風もなくニコリと微笑んで、 「足元気をつけような。ゆっくり歩こう」 ──わかっています。トレーナーさんは、担当ウマ娘とお出かけして怪我をさせるなんてことは絶対にできない立場にあるんです。私がヒールを履いてきたのを見て、転ぶリスクがあることを把握したんでしょう。 それでも、そんなことは頭ではわかっていても、手を繋いで歩く、それが叶ってしまったことが嬉しくて嬉しくて、もう気持ちが舞い上がっちゃいます。 手のひらからトレーナーさんの体温が伝わってきます。ということは、私の手のひらの熱とか僅かな震えとかがきっとトレーナーさんにも伝わっていると思うと、恥ずかしくなってきます。手汗をかかないことを祈るしかありません。

5 21/06/20(日)23:26:44 No.815401684

それもつかの間、石畳の区画が終わり普通の舗装された道に戻りました。手を繋ぐ名目がなくなり、離されてしまうんじゃないか? そんな考えが頭をよぎり、思わずぎゅっと手を握る力を少し強めてしまいます。 トレーナーさんはそんな私の不安を振り払うかのように、軽く握り返してくれて、ランチのお店に着くまでずっと握ったままでいてくれました。 ──私、幸せすぎて、死んじゃいそうです。

6 21/06/20(日)23:27:12 No.815401899

「──なんや、結局ノロケ話やんけ」 後日、タマちゃんとオグリちゃんに悩み相談をしていて、最近のデート時のやり取りを説明したら、そんな反応をされてしまいました。 「前からバカップルやとは思っとったし周りもみんなそう言ってたけど、単にその認識が補強されただけやわ」 「……本当に悩んでるんです~」 「クリーク、今の話に何か悩むところあったか? 仲が良くて微笑ましいとしか思わなかったが」 オグリちゃんの言うとおり、とっても仲が良いと自信を持って言えます。言えますけど…… 「いや、茶化したけどウチはなんとなく言わんとすることがわかったで。要はクリークは本気でトレーナーと次の段階に進みたい、平たく言うと恋人同士になりたいんやろ」 「……はい。そういうことです。でも……」 「でも、もしかするとトレーナーはクリークのことを恋愛の対象としては見ていないかもしれない、なんてことを考えてるんやな」 「…………」

7 21/06/20(日)23:27:50 No.815402165

そう。以前のように甘やかし、甘やかされ、守り、守られ、そんな関係でいた頃はあまりに無邪気過ぎたと最近は思うようになりました。 「……今までのやりとりは、私の趣味に付き合ってくれてただけなんじゃないかって、そう思えちゃって……」 「アホ。考えすぎやわ」 「…………」 「あんたらのやり取り、見せられてる範囲だけでも、あれらが本気でなくて演技としたら、トレーナーがいくらなんでも名優過ぎるで。しかもプライベートではもっと過激なことしてたんちゃうんか」 過去の蛮行を思い出す。もし、あれもこれも、本当はやりたくないのに付き合ってくれていたのだとしたら……。 「……もしかすると、トレーナーさんの自尊心を傷つけてしまったかもしれません」 「……ホンマに何やっとるんやアンタら……」 タマちゃんの呆れたような視線がとても痛い。 「ふむ。よくわからないが、終わったことをくよくよしても仕方ないんじゃないか。今考えなきゃいけないのは、これからどうするかだろう」

8 21/06/20(日)23:28:25 No.815402402

「せや。オグリの言うとおりやわ。ウチとしてはシンプルに告ってまうんがええと思うで」 告白する。好きです、お付き合いしてください、と伝えたとする。するとどうなる? 「トレーナーもちゃんとした大人や。悪いようにはせえへんやろ。そこまでよくは知らんけど誠実な人柄っぽいし」 「……そう、そこなんですよ~」 「なんや」 付き合いが長いだけに、言葉にせずとも、わかってしまっていることがある。 「トレーナーさんはちゃんとしてて、真面目で、私より大人なんです」 「そうなんやろうな」 「トレーナーとしてもすごく優秀ですし、担当になってもらってから私すごく脚が早くなったし、体力もつきましたし、最近はずっと調子いいんです」 「知ってる」 「ホンマ勘弁してほしいくらいにな」

9 21/06/20(日)23:29:09 No.815402675

「色々ありましたけど、辛いときも一緒に乗り越えてくれましたし、いつも私の気持ちもわかってくれますし、嫌なこととか絶対にしないんです」 「またノロケが始まるんか」 そうじゃないんです。 「……ですから、きっと」 「……うーん、そういうことか」 「全然わからなかった。タマ、どういうことだ」 「つまり告白したとしても、実質フラれたんと同じ状態になるんやないかと。レースへの影響とかクリークの将来のこととか色々考えて。曖昧に誤魔化されるとか保留にされるとか、『誠実な』対応されかねないと。そんなところか」 「…………はい……」 それか、最悪きっぱり断られる可能性もある、とも思っています。 「あぁ、わかった。クリークはトレーナーに好きって言われたいんだな」

10 21/06/20(日)23:29:46 No.815402928

ドキンと心臓が高鳴る。 「お、アンタにしちゃ鋭いやないか、オグリ」「そう言われると照れる」 「照れんなや。別に褒めとらん」 「そうなのか」 ドキン、ドキン、自分でもあまり意識していなかった心の声を他人に指摘されて、急激に自覚が芽生える。段々とそれが恥ずかしくなってきて、顔に血が集まる感じがします。 「……茹でダコみたいになっとるで」 「恥ずかしがることないぞ、クリーク。誰でも当たり前のことだ。私もそういう気持ちによくなるから、わかるよ」 「お、なんやオグリも恋バナあるんか!? 聞かせてや」 「タマと話しているとよく罵られるから、嫌われてるんじゃないかと」 「ウチの話かい! 罵ってるんやなくてこれはツッコミやツッコミ」 微笑ましいやり取りに頬が緩んじゃいます。

11 21/06/20(日)23:30:19 No.815403121

「さっきも言うたけど、クリークは考えすぎやと思うで。案外あっさりOKもらえるかも知れんで」 「……でも、もし断られたらと思うと~~」 「なんでさっきからそんなに弱気なんや! ちょっと前まで世界にノロケを配信してた恥知らずのクリークはどこ行ったんや」 「恥じゃないです……」 「もし、断られたとしても」 オグリちゃんが静かに言いました。 「諦めなきゃいいんじゃないか?」 「お、良いこと言うな! せや、断られたらそこで終わりってこともない。何回でも振り向くまでアピールしようや」 目からウロコが落ちた思いです。 「……あ、それ有りなんですね」 「有りや」

12 21/06/20(日)23:30:49 No.815403300

「断られたらそこで終わりなのかと思ってました」 すっかり視野が狭くなっていたみたいです。 「もし駄目でも、諦めない限りは、逆転のチャンスがあるで。なんだかんだ言ってるけど、少なくとも憎からず想われてるんやろ?」 「それは勿論、はい」 「今は子ども扱いされてるとか担当としか思われてなくても、これからオンナとして意識させたればええねん」 オンナ!? 「な、なんかちょっといやらしい言い回しじゃないですか……?」 「そりゃもちろん、いやらしい意味も含めて言うたつもりや」 「そんな……トレーナーさんはそんな人じゃ……」 「いーやわからんで。誠実な朴念仁に見えても男は羊の皮被った狼なんや。知らんけど」 「……あんまりトレーナーさんのこと悪く言うと怒りますよ……?」

13 21/06/20(日)23:31:33 No.815403541

「おぉ怖」 「とりあえず次のデートで今の気持ちを伝えてみたらどうだ」 オグリちゃんの突然の言葉に、思わずビクリと身体が緊張しちゃいました。 「なんか今日アンタ冴えてるな! そうしよそうしよ」 「結果出たら教えてくれ」 「え………う……」 告白する。 以前から好意の気持ちは伝えてきていますし、単なる『好き』ではもう説明不足です。 なんて伝えようか──考えれば考えるほど、言葉がたくさん浮かんできて、まとまりません。そんな感じでずっと悶々として、少し寝不足になっちゃいました。

14 21/06/20(日)23:31:47 No.815403617

でも、もし断られても諦めなければいい、というのはとても良い気づきを得ました。 長距離戦は得意ですから。絶対絶対、勝つまで諦めません。 そう思うと、胸のドキドキとは別に闘志のようなものが湧いてきて、やっぱり寝れない日が続いてしまいました。

15 21/06/20(日)23:32:14 No.815403802

あまーい!

16 21/06/20(日)23:32:47 No.815404017

続きかこれ

17 21/06/20(日)23:33:39 No.815404367

今日はここまで 前回 fu99162.txt

18 21/06/20(日)23:33:48 No.815404437

クリークの年相応なところはもっと掘り下げられていい

19 21/06/20(日)23:33:56 No.815404499

クリークの純愛怪文書でしか救えない命がある

20 21/06/20(日)23:34:13 No.815404599

良い…

21 21/06/20(日)23:34:30 No.815404713

ママも恋する乙女もお嫁さんもやれる...こいつ無敵か?

22 21/06/20(日)23:36:05 No.815405349

ママじゃない乙女クリークからしか摂取できない栄養が枯渇しかけてたから助かる

23 21/06/20(日)23:36:13 No.815405410

クリークの真っ当なラブラブもの本当にありがたい…

24 21/06/20(日)23:38:16 No.815406258

純愛クリークからしか摂取できない栄養がある ありがたい…

25 21/06/20(日)23:39:03 No.815406590

ママが恋に恋する女の子してるいいね! 普段は甘えさせてくる人が甘えてくると破壊力やばいね

26 21/06/20(日)23:40:03 No.815406957

真っ当なクリークは本当に貴重だからありがたい…

27 21/06/20(日)23:43:11 No.815408196

うわー甘い!他でもなかなか見ない密度いいね

28 21/06/20(日)23:43:12 No.815408198

でちゅね遊びもいいけど真っ当にイチャイチャするクリークもっと見たい

29 21/06/20(日)23:44:54 No.815408838

ほーいいじゃないか

30 21/06/20(日)23:49:48 No.815410645

いいぞお...甘々は活力を与えてくれる

31 21/06/20(日)23:50:40 No.815410986

クリークのマトモな話珍しく見て感動した

32 21/06/20(日)23:51:12 No.815411185

そもそもクリークに限らず普通の純愛してる怪文書少なくてな

33 21/06/20(日)23:51:45 No.815411384

「」が普通の純愛をすることが無いから仕方ない…のか?

34 21/06/20(日)23:53:00 No.815411795

まず文も書けないぞ俺

35 21/06/20(日)23:53:10 No.815411843

サムネみたいにきれいなスーパークリーク

36 21/06/20(日)23:53:11 No.815411847

>そもそもクリークに限らず普通の純愛してる怪文書少なくてな まぁくっつく直前までは育成シナリオで描いちゃってる所あるからその先に行きがちなのは仕方ない気もする

37 21/06/20(日)23:54:25 No.815412318

もっと書いて もう一個言うともうちょっと短くして頻繁にあげてもらっても良い

38 21/06/20(日)23:55:38 No.815412746

年下の女の子らしくていいと思いますよ

39 21/06/20(日)23:55:43 No.815412797

俺は凄く好きだなこの文章 力作をありがとう

40 21/06/20(日)23:55:56 No.815412866

>もう一個言うともうちょっと短くして頻繁にあげてもらっても良い すまんな書いてると冗長になりがちな癖あってな 次はもう少し短くまとめてみる

41 21/06/20(日)23:56:40 No.815413119

そんなまるできたないスーパークリークが存在するみたいな

42 21/06/20(日)23:57:06 No.815413299

クリークが自分の女の部分自覚して武器にし始めたら誰も勝てないと思う

43 21/06/20(日)23:57:12 No.815413334

高等部ならシニア級終わったらもう結婚してもいい頃なのでは?

44 21/06/20(日)23:57:22 No.815413416

いい話すぎて浄化されそう

45 21/06/20(日)23:57:48 No.815413561

呪いにかかってる「」の多さよ

46 21/06/20(日)23:59:10 No.815414082

砂糖吐きそう

47 21/06/20(日)23:59:38 No.815414253

まあ分かりやすい属性があるとそれに飛びついて消費しちゃうのはよくあるから分かるよ… それに追随しないのは珍しいしありがたい

48 21/06/20(日)23:59:46 No.815414299

乙女なクリークもキャッチーなオグリとタマの掛け合いも全部含めて好き 続きが楽しみ

49 21/06/20(日)23:59:57 No.815414363

長くてもいいから毎日出力して下さい

50 21/06/21(月)00:00:35 No.815414629

この三人の会話は落ち着くな…

51 21/06/21(月)00:03:00 No.815415452

恥知らずのスーパークリーク

52 21/06/21(月)00:03:33 No.815415631

こうしてみると割と文章って個性出るもんだな

53 21/06/21(月)00:03:34 No.815415640

地味にオグタマの会話のキレと解像度が高くていいと思います

54 21/06/21(月)00:03:42 No.815415690

テンポいい会話書けるのアコガレル......... お砂糖増し増しクリーム多めでお腹いっぱいにさせてもらいましたありがとう

55 21/06/21(月)00:05:18 No.815416204

ヒールで走るウマっていた気がするけどやっぱりコケるのかな、と思ってしまいました

56 21/06/21(月)00:08:50 No.815417421

そうそうこういうのだよこういうの

57 21/06/21(月)00:10:37 No.815418033

ママを 娘に!

58 21/06/21(月)00:19:26 No.815420794

>ヒールで走るウマっていた気がするけどやっぱりコケるのかな、と思ってしまいました まぁそこはレースモードのときと普段の生活のときの違いってことで 油断してるときのほうが怪我するし

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