虹裏img歴史資料館

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21/06/18(金)22:15:21 日は沈... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1624022121147.jpg 21/06/18(金)22:15:21 No.814605908

日は沈み欠けで薄暗く、空の色はオレンジと濃紺に染まる。 静まりかえった学園内の廊下を進み、ナリタブライアンとナリタタイシンは明かりの灯った生徒会室へ赴く。 生徒会はトレセン学園内外への業務があり、夜も生徒会の役員が執務を行っている事は珍しくはない。 ナリタブライアンが扉を四度ノックをすると、どうぞと声が返る。 室内に入ると重厚な机では無く、応接のソファーに座っている生徒会長のシンボリルドルフが居た。 厳格な雰囲気と書類など香りの中に焼いた肉とソースの匂いが漂っている。テーブルの上にはタッパと既に空になった大振な弁当箱があった。 「食堂に行く時間も無さそうだったので、ハンバーグサンドにして貰った」 「相変わらず人目が無いと行儀が悪い。大忙しの時でも無いのにココで食うとまたエアグルーヴがキレるぞ」

1 21/06/18(金)22:16:55 No.814606641

そう硬い事を言うなと聞き流しながら、タッパからウサギの飾り切りが施されたリンゴを摘んで口にする。 以外にも健啖家で、生徒会役員らが同席して知る限り、ウマ娘基準の大盛りくらいは平然と食べる。アスリートは食が太いのも才能と能力の一つだ。 「まぁこっちに座りたまえ、茶を出そう。あっ、この林檎は私の物だから食べてはダメだぞ?」 威風堂々の皇帝、エリート揃いのトレセン中央学園ニ千人の頂点とも言えるシンボリルドルフだが、案外くだけた人柄かもしれない。 昼に練習コースの端で栄養バーを齧り、パック飲料で流し込んでいたら、突然声を掛けられた。 「校舎裏の花壇についてだが。話して貰えるだろうか?」 有無を言わさぬ威圧感を滲まていたが、自分をコケにした連中への反発心でトレセン学園に乗り込んだようなものだ。屈するか、と。

2 21/06/18(金)22:17:43 No.814607004

自分が勝手に草花を抜いたのは事実だ。だが、その理由は決して誰にも知られてはいけない。 それを聞いた生徒会長は威厳の圧力をあっさりと収めて胸の下で腕を組みをし溜息を一つ付いた。 「君が意固地になるには、それなりの理由があるのだろうな。明日以降に生徒会から呼び出される覚悟だけはしてくれ」 そう言って立ち去ってしまった。それから約半日が過ぎて――― ティーセットで出された紅茶は香り高く、ペットボトルや紙パックの飲料とは格が違い、皿と紙ナプキンに乗ったクッキーも上品な物だ。 「寛いでいて構わない、私達が君を処罰するかどうかで呼んだワケでは無いし」

3 21/06/18(金)22:19:14 No.814607787

空になった容器二つをランチクロスで包んで片付けると、シンボリルドルフも紅茶に口を付けた。 「気振ってるのはエアグルーヴだけだ。あいつ一人、トレーナーも一緒だろうけど単独でこっちに向かってるみたいだ」 「しかもウイニングライブを終えて中山から一時間で。余程ご立腹らしいぞ、我らの女帝は」 「スマホ弄ってていいかな。ここで待つしかないんだったら」 開き直ったのか、ナリタタイシンはいつもと変わらぬ不遜な態度のままだった。 「コンセントは自由に使うといい。君は確か栗東寮だったな。一応フジキセキにも連絡を入れておこうか」 この手持ち無沙汰な時間のあとで女帝が無茶苦茶飛び込んで来たのだった。

4 21/06/18(金)22:20:33 No.814608463

「ナリタタイシン!! 貴様ァ、なぜ私の大切な花壇を荒らした?! 私にしか教えられんというから大急ぎで来てやったぞ?!」 エアグルーブの凄まじい剣幕は三冠バのナリタブライアンですら一瞬気負される程だった。 学年も、レース成績も関係無い、走り競う瞬間と同じ激情が女帝を突き動かし、小柄なジャージ姿の襟首に掴み掛かった。 「さぁ言え!! 恨みか、妬みか、憎しみか?! ……そうか、そうやって黙るのなら口を割ってでも聞かせて貰うぞ!!」 打擲しようと平手を振り上げた瞬間もナリタタイシンは怒れるエアグルーヴから目を逸らさない。それが余計に気に食わない。 「待て」 激昂した女帝を諌める静かな一言は途方も無い重圧を含んでいた。それは抗いも追従も許さぬ皇帝の権威。

5 21/06/18(金)22:21:11 No.814608775

「エアグルーヴ。幾ら君だとしても、目の前で振るわれる暴力を私は見過ごす訳にはいかない――」 執務机に着いて手を組み、前髪の間から見据える眼光が彼女を突き刺した。 頬を張ろうとしたエアグルーヴは平手とジャージを掴む手も共に力を抜き、ナリタタイシンを生徒会長の前へ連れ出す。 「では、もう一度聞こう。深夜から早朝にかけて校舎裏の花壇で植物を引き抜いたのは君で間違い無いか、ナリタタイシン」 幾分か圧力は弱めたものの、厳しい口調でシンボリルドルフは問いかけて机上に証拠を載せた。 園芸用のバケツ。その内には既に萎れた草花があった。 「黙って勝手にやったのは悪かったと思ってる。それは謝る」 ナリタタイシンはエアグルーブに向き直って頭を下げた。

6 21/06/18(金)22:22:47 No.814609626

「もういい、今さら謝罪したところで枯れた花を植え直しても元には戻らん。こんな事を何故やった」 怒りは静まったものの、憮然と苛立ちはまだ燻っている。 ナリタタイシンは物証となった園芸用バケツを持ち、片手でエアグルーヴの手を引いて室内の隅へと移動。 そして執務机のシンボリルドルフとその隣に控えたナリタブライアンに視線を送って威圧する。 聞き耳を立てるな、マジで―― 生徒会のトップ二人を視線で刺そうというのだから度胸がある。 ウマ娘の聴覚は鋭敏だ。この距離でなら耳打ちの話なら聞こえなくもない。 シンボリルドルフは両手で頭頂部の耳元を押さえて聞かないと意思表示をし、横へ顔を向けた。

7 21/06/18(金)22:23:26 No.814609893

――君もだぞ? 疲れた表情でナリタブライアンも耳元を手の平で覆った。 「悪いけどちょっと屈んで貰える?」 何かにつけて低身長が恨めしい。この部屋で自分以外はモデル体型ばかりで余計にムカつく。 エアグルーヴとは頭一つ分程度の身長差がある、秘密の話をするのが面倒だが、聞かれる訳にはいかなかった。 自分の口元とエアグルーヴの左耳を手で包み、行いの理由を告げる。 女帝の全身に震撼が走った。

8 21/06/18(金)22:24:57 No.814610583

7~8/10くらいです

9 21/06/18(金)22:31:16 No.814613365

はやく

10 21/06/18(金)23:01:47 No.814626603

スレ画との温度差すげえ

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