ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/18(金)19:44:19 No.814542320
タキオンとの合同トレーニングが始まった。といってもボクは休養中だから、時折タキオンと併走するだけ。 その時も振りちぎるつもりで走れって言われて、当然タキオンは追いつけないから、逃げをやってる気分だ。 そして距離やコースを変えて何走かしたあとはボクは休憩、タキオンは地獄を見始める。 うわぁ、体験した身からしても、確かにトレーニングというよりは虐めに見える。 休憩はほとんどなし、走り終わるたびに遠慮なくトモやらふくらはぎやら揉まれて、次の指示が下る。 タキオンのトレーナーは握った拳をぶるぶると震わせていて、今にもトレーナーに殴り掛かりそうだ。
1 21/06/18(金)19:44:47 No.814542452
そんな相手に背中を向けて、倒れ込むようにゴールしたタキオンに水を浴びせているんだから、見ているこっちが心配になる。 「ここまで脚を酷使したことはないだろうな、ウマ娘はレース後のライブのためにスタミナを残す用にトレーニングする。 だが、私に言わせればそんなものは下らん。アスリートなら走ることだけを考えろ、次の瞬間死んでも今走っていればいい、そう考えて限界まで全力を絞りきれ。」 「かはっ……かはっ……ぜぇ…はぁ………ひ、論理的……だね……。」 「そうだな、考え方の話だ、本当に死なれたら困る。死にそうになったらコースから出ろ、コースを汚されたくない。もう一周。」 「はぁっ…！！はぁっ…ふっ…！！」
2 21/06/18(金)19:45:02 No.814542538
タキオンは荒い息を吐きながらまた走り出した。それを観察するトレーナーは手元のバインダーに何かずっと書き続けている。 こっそり後ろから覗くと、何度も何度も訂正線を引かれ元がどうなっていたかわからないほどに調整された今日のトレーニング予定だらしい密集した文字と数字が沢山書き付けてある。 そこに加えて今走った1800m、1ハロン毎のタイム、呼吸回数、足運び、などなど、トレーナーが見たあらゆるデータが書き加えられている。 時折ストップウォッチを一瞬だけ見て、そうしていない間はタキオンの走りを食い入るように見つめているトレーナーは、とても近寄り難い。 息をするのも怖いぐらいだ、それぐらいタキオンのトレーニングに集中している。
3 21/06/18(金)19:45:31 No.814542676
後はダートコースに場所を移して、何度かボクと併走したり坂路ダッシュを繰り返してその日は終わった。 タキオンの体操着はビショビショで、汗なのかかけられた水なのかわからないぐらいだ。 「は…っ……げほっ……ぜぇ……はぁ…………。これ、を………一月、やったのかい、テイオー、君は……。」 タキオンが息も絶え絶えに、自分のトレーナーに支えられながら声をかけてくる。 「うん、でもあんまり詳しいことは覚えてないんだ。今のタキオンみたいに毎回言われたことを必死でこなしてるだけだったからさ。」 ボクとしてもこんなことをずっと繰り返していたなんてよく出来たな、とどこか他人事のように思った。 トレーナーを信じてた、毎日10回に3回の確率で故障すると言われた、でもボクは三冠バになりたかったから、どんなに辛くても頑張った。だから出来たんだと思う。
4 21/06/18(金)19:46:17 No.814542940
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5 21/06/18(金)19:47:03 No.814543198
「今日は終わりだ、さっさと帰ってマッサージでも受けておけ。それと、わかってると思うが妙な薬は使うなよ。私が見立てを誤ったら損するのはお前だ。」 「ふぅ……はぁ………はぁ………これが、一月、続くんだね……はは、自分で、頼んだとは……いえ、酷い、体験だ……。 明日も、よろしく……ははは、ああ…アドレナリンが、止まらない、ランナーズ・ハイ、に近い……ふふ、昂揚しているのが、わかるよ……ははは……。」 ふらつきよろめき、それでも少し不気味に笑いながら、タキオンは寮に戻っていった。 多分自分の体が自分が考えてたより動けるのが嬉しいんだと思う。ボクも、トレーナーに限界を試される度に縮むタイムや伸びていく距離に興奮した覚えがある。 それを一気に縮めて固めたのが今やっている地獄だから、効果はてきめんなんだろう。
6 21/06/18(金)19:47:34 No.814543353
その代わり 「………はぁ………。」 背もたれに崩れ落ちるようにもたれかかるトレーナー。この人の心にも体にもすごい負荷がかかる。 タキオンを恨むわけにはいかない、その事を知ってるのは多分ボクぐらい。 トレーナーは故障のことも何でもないことのように言うからみんな勘違いする。 もうトレーナーは故障を怖がってないって。
7 21/06/18(金)19:47:47 No.814543426
でも違う、怖がらないのと承知で挑むのは違うんだ。 「ねぇ、寮まで押していこうか？」 「いや、いい。自分で行ける。」 「その手で？震えてるよ。」 「………。」 「ボクを信頼してくれるんじゃなかったの？送り迎えぐらい、やらせてよ。」 「………………。」 沈黙、震えを押さえるように手を組んで、白くなるまで力を込めるトレーナー。 それでも震え続ける手に、諦めたように息を吐く。 「…わかった。だが、ゆっくりだぞ。ウマ娘の力で押されたらいくらブレーキをかけても止められないからな。」 「任せてよ、テイオー様の特別便は安心安全がモットーなんだから。」 だから、これぐらいやらせてよ、トレーナー。
8 21/06/18(金)19:48:24 [sage] No.814543623
前回までのログです fu92391.txt
9 21/06/18(金)19:59:42 No.814547418
毎夜待ってた 他所のウマのトレーニングは大変だしこわいなぁ
10 21/06/18(金)20:01:55 No.814548190
テイトレ心をすり減らしながらやってるだろうからなあ...
11 21/06/18(金)20:03:03 No.814548628
前回前々回と見逃してたからログ助かる
12 21/06/18(金)20:04:00 No.814549007
やる側も冷酷にならないとやってられんような事してんだもんな そりゃつれぇでしょ…
13 21/06/18(金)20:05:22 No.814549516
壊れた経験もあるし歩けなくなった経験もあるし人一倍怖かろうに…
14 21/06/18(金)20:12:54 No.814552225
テイトレも監督している間に幻痛を感じたり 相手の未来を折る恐怖心と対峙しなくちゃいけない 壮絶だよぉぅ テイオーと互いに信頼してるのが安らぎ
15 21/06/18(金)20:14:39 No.814552864
テイオーにこれやってるときは遺書を用意するレベルだったわけだしな…
16 21/06/18(金)20:18:39 No.814554397
この状況を会長はどう見てるんだろ
17 21/06/18(金)20:27:35 No.814557716
ｶｲﾁｮｰは憧れの親戚のお姉さんが半分自分のせいで脚失って遺書渡されて脳破壊されてたのがつらすぎる
18 21/06/18(金)20:28:52 No.814558186
会長はいつか報われる話が来るでしょたぶんきっと…
19 21/06/18(金)20:33:08 No.814559844
震えが止まらなくなるくらい怖いのを必死に抑えてタキオンを指導するってマジでつらかろうなあ… トレーナーには幸せになってほしいしテイオーもずっとそばにいてあげてほしいと思う