21/06/18(金)00:40:15 夢を見... のスレッド詳細
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21/06/18(金)00:40:15 No.814341911
夢を見ていた。幸せな夢だった。隣にはトレーナーさんがいて私を見守ってくれている。私が1着を取ると、自分の事のように喜んでくれる。 それがたまらなく嬉しくて、私は彼の首に抱き着いた。彼は少し困ったような、驚いたような顔をしながらも、頭をポンポンと撫でてくれて、多幸感が私を包む。あぁ、ずっとずっと覚めなければいいのに。 「セイっ……セイ!起きろ、起きてくれっ!」 ヒシアマ姐さんとの通話後──町がダメだった俺はスマホアプリの懐中電灯を頼りにトレセン学園でもトレーニングに使われることのある山にまで来ていた。 セイの昼寝スポット兼釣り場はこの山にもいくつかあり、縋るような気持ちだった。 そしてスマホの充電が危険域に達した頃ようやくセイを見つけることが出来たのだが──起こそうと肩に手を置いた途端抱きしめられてしまった。実は起きていたのかとも思ったが一向に解放されることはなく、それどころか拘束は強くなるばかりだ。 セイの抱き枕になれるなら本望と言いたい所だが力がどんどん強くなっていっているのがまずい。セイの胸と腕に挟まれた俺の頭はギシギシと悲鳴を上げている。死んじゃう。
1 21/06/18(金)00:40:39 No.814342036
誰かに呼ばれている気がした。 うるさいなあ。セイちゃんは今トレーナーさんを堪能しているって言うのにさ。 無視している間にも私を呼ぶ声は大きくなっていく。うるさいうるさい!どうせ目を開けたってどうにもならない恐ろしい現実が襲ってくるだけなんだ。だったらこの幸福な夢を少しでも長く味合わせて欲しい。 でも、何故だろう。この声を聞いていると胸の奥からじんわりと、何か温かいものが湧き出るような、そんな気がした。 はいはい、分かりましたセイちゃんの負けです。起きてあげますよー。これで何もなかったらどうしてくれよう、本当。 しぶしぶながら目を開く。すっかり真っ暗になった周囲の情報はすぐには私には入って来なくて。でも私の鼻と耳は目敏く見つけてしまった。 私の、胸の中にいるのは。私が、抱いているのは。 「トレーナー、さん?」 世界で一番傍に居たくて、世界で一番会いたくない人だった。
2 21/06/18(金)00:41:16 No.814342212
「おはよう、セイ」 目が覚めたセイからは先ほどの力強さは掻き消えてしまって、力無く拘束は解かれた。まだ痛む頭を起こしながら、声を掛ける。 「セイ」 少し青ざめた顔のセイは、音は出さずに口をパクパクとさせた。どうしてここに、だろうか。 「探してたんだよ、今日の昼から。今までセイと行ったことのある所や、サボりに使ってた場所を虱潰しに」 言うと、セイは一瞬嬉しそうな顔をして、すぐに俺を責めるような表情に変わった。 「なん、で。今更……!私が何回待ったか……」 「そうだよな、ごめん。セイに甘えてた。もっと早くに来るべきだった」 多忙だったとか、そんなことは言い訳にもならないだろう。新人二人を見てやってくれ、と一人でトレーニングをするセイの言葉に甘えていたなど、なおさら。 セイも、多分分かってくれている。セイの顔は怒りや後悔、嘆き悲しみ。そう言った感情をころころと表しては消えていく。 「すまなかった。この通りだ。許して欲しい」 地に頭を擦りつけて、乞う。こんなことしかできない自分が、情けなかった。
3 21/06/18(金)00:41:32 No.814342282
「……ごめんね、トレーナーさん」 頭上から届くのは、乾いた笑い。自嘲するような、そんな。 「私、もうどうやって走ったらいいか分かんないよ……今までどうやって走ってたのか、分からない」 雲間から覗いた月明かりに照らされたセイの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて。 「トレーナーさん」 ああ、俺は本当になんて救われないんだろうか。セイの優しさにかまけて、一番大事だった彼女を疎かにして。 「助けて……」 こんな顔には、絶対にさせたくなかったのに。
4 21/06/18(金)00:41:45 No.814342346
私の言葉にトレーナーさんは酷く顔を歪ませて、自分に対する怒りでいっぱいになってしまったようだった。 ああ、そんな顔をさせたい訳じゃなかったのに。 「トレーナーさん」 「……っ、ああ、すまないセイ。なんだ?」 「帰ろ?」 そう言って彼の胸の中に飛び込むと、優しく受け止めてくれた。嬉しい。やっぱり好き。そして、立ち上がろうとする彼の手を引いて地面に座らせる。 「セイ?」 きっと彼は罰を欲しいんだと思う。今まで私を放っておいた罰を。……確かにそれに怒ってないなんて言ったら大嘘になってしまうけれど。でもそれより何より私はトレーナーさんには笑っていて欲しいから。 「セイちゃんはずっとずっと走り続けてとーっても疲れてしまいました。……おんぶして?それで許してあげます」 「分かった。……ありがとう、セイ」
5 21/06/18(金)00:41:56 No.814342416
山を下りると既に空は既に白んでいた。 「ねーねートレーナーさん」 下り始めてからのセイは随分と落ち着いたようだった。少し、安心する。 「どうした?」 「もしかしなくても寝てないよね?」 「あー……」 「無理させたくないから私のこと見なくていいって言ったのにさー……。でも、嬉しい」 「すまん……なあ、セイ」 「なんですかー?」 「やっぱり三人を見るのは俺には無理だ。でももうセイのことを疎かにしたくなんてない」 「……じゃーあの二人を追い出すんですか?」 セイは背中に居るのに何故だか表情も見えているようで、そんなことしませんよね、とそう聞こえた。 「ああ、責任を途中で放棄なんて無責任なことはしたくない」 「じゃあ……どうするの?あと私の苦悩のこともまさか忘れてないですよねー?」 もちろんだ、と返して続いてセイに説明していく。これも一種の責任の放棄な気はするな、と思いながら。
6 21/06/18(金)00:42:15 No.814342508
「トレーナーさんとスカイ先輩仲直り出来たんですね!」 「ウチら気が気じゃなかったんスよ!」 良かったーとトレセン学園のコースで私とトレーナーさんを前にして安堵しているのは例の二人だ。彼女らにも私達は負担を掛けていたらしい。 トレーナーさんの用意した策。それは── 「今日からセイには選手兼サブトレーナーとして動いて貰うことにしたから。サボり以外ならどんどんセイから聞いて吸収していってくれ」 要するにトレーナーさんと私の負担を分け合おうということだった。 「スカイ先輩眼鏡も似合ってて素敵です!」 「でしょー?やっぱりトレーナーさんの右腕になるわけだからねー、知的さもセイちゃんの魅力☆」 「ああ、それでトレーナーさんの右手をさっきから占有してるわけッスね」 「「え?」」 トレーナーさんと一緒に見やるといつの間にか手を繋いでいた。トレーナーさんと顔を見合わせる。……頬が熱い。トレーナーさんのも。手は……離されてないし、離さなくてもいいよね?
7 21/06/18(金)00:42:46 No.814342686
何故だか離す気になれないセイの手を握りながらお互い動けずにいると視界の端にいる二人がお互いを扇いだりしながら「あっつ!ここ熱くない!?真夏だっけ?」「3月なんだけどめちゃくちゃ熱いね!あっつー!」などとやり始めた。 「はい!トレーニングの開始時間すぎてるぞ!さっさと行く!」 声を張るとすぐ小芝居をやめて駆けて行くから素直な子らではあるんだが。 「セイはしばらく俺の仕事を見ててくれ。急なことだからトレーナーが具体的にどんなことするかよく分かってないだろうし……」 「大丈夫」 「そうか?でも……」 「トレーナーさんのこと、ずっと見てたから。私に何をしてくれるのか、何を考えていてくれたのか……知ってるから」 ね?と微笑むセイを見ていると何故だか涙が出て来てしまう。 「ええっ。ちょ、ちょっとトレーナーさんなんで泣くのさ」 「いやその、すまん。目にゴミ「抱けー!」「キスだ!そこでキスを一発!」」 「「……………」」
8 21/06/18(金)00:43:23 No.814342877
「セイ、セイの悩みは走り方……というより勝ち方が分からない。だよな」 「え、今その話に戻すの?」 「というわけで……荒療治だが、実践形式で行こう。さっきから過激な冗句を放つ二人のバ鹿がいるからエース様の走りを見せ付けてやれ」 「……私追う側は、」 「分かってる。これはハンデだ。如何にセイがスランプと言えどもセイはクラシック三冠でURA初代覇者で、あいつらの主戦場はG3だ。格が違う。だが──」 にやりと笑って 「アイツらには俺が作戦を与えてある。セイから逃げ切るためのな。だから」 「なるほど?トレーナーさんの言いたいことがセイちゃんにも分かって来ましたよ。足と頭のリハビリ。そういうことですねー?」 「ああ」 頷くと、隣を風が走って行く。
9 21/06/18(金)00:43:41 No.814342977
多分、俺達はお互いを信用しすぎていたのだと思う。セイなら大丈夫。俺なら大丈夫を互いに課して。 でもそんなことはなかった。セイには俺がいないとダメだったし、俺にはセイがいないとダメだった。 だから俺達すれ違った。 だから今後は共に寄りかかって歩んで行こう。それが誰かから見ればあやまちであるのだとしても、それが俺達の最強の形だから。 一年後、セイは二年ぶりのセンターを飾った。
10 <a href="mailto:s">21/06/18(金)00:45:02</a> [s] No.814343433
前回fu91118.txt 良バ!良バ場です!
11 21/06/18(金)00:46:08 No.814343772
抱けー!チュウしろー!
12 21/06/18(金)00:46:24 No.814343868
新しい子達も不幸にならずにすんで良かった
13 21/06/18(金)00:47:08 No.814344084
ハッピーに落ち着いたか…昨日の状態から選択肢をミスると心中とかしかねなかったからな…
14 21/06/18(金)01:01:00 No.814348241
気ぶり新人バ…
15 21/06/18(金)01:01:35 No.814348396
抱けーっ抱けーっ
16 21/06/18(金)01:03:00 No.814348724
最近聖ウンス会の活動規模がえらいことになってない?
17 21/06/18(金)01:06:56 No.814349692
原作のウンスはビターエンドと聞いた
18 21/06/18(金)01:19:53 No.814352655
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
19 21/06/18(金)01:21:30 No.814353019
こいつらうまぴょいしてほしいんだ!
20 <a href="mailto:s">21/06/18(金)01:22:23</a> [s] No.814353229
>No.814352655 幻覚絵毎度ありがとうございます…感想も絵も貰えるのほんと贅沢すぎる…
21 21/06/18(金)01:24:21 No.814353645
ぼちぼち走る程度のウマ娘になってスカイ先輩の事気ぶりてえ~!
22 21/06/18(金)01:30:05 No.814354865
ウンス引きたくなってきた
23 21/06/18(金)01:31:16 No.814355081
引けばいいじゃない 思った以上に寄りかかってきてかわいいぞ
24 21/06/18(金)01:57:53 No.814360108
眼鏡ウンスは私の性癖には合っていますね!!