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21/06/16(水)00:25:29 No.813668252
夏の色が濃く残るある日、学校が休日のため朝からあるはずのトレーニングをサボり、とある沢で釣りをしながらセイちゃんことセイウンスカイは思考に耽っていた。 「最近トレーナーさんに照れさせられてばっかりなんだよね~」 彼はそれはもうずるい人で、お道化る私に対して真っすぐに信頼や好意をぶつけてくるのだ。可愛いでしょ?と上目遣いで攻めれば可愛い!と返し才能がない嘯けばセイなら勝てる!と自信満々に言い放つ。 初めて会った時にはそんな風には全く見えなかったのに私のペースに乗せるつもりが私の心は彼に踊らされっぱなしだ。彼にはそんなつもりはないのが猶更腹立たしい。同じレースに出る最大17人のウマ娘を謀ろうというこのセイちゃんがたった一人に敗北し続けているなんて。 だから今日は何とか彼を嵌める策を練るためにこうやって一人静かに糸を垂らしているというわけだ。このスポットはまだ彼には教えていないから今日は丸一日思考に当てられるだろう。 「……何しても何を言ってもカウンターされる気がするなあ」
1 21/06/16(水)00:26:03 No.813668400
既に日は頭上を通り過ぎて少しずつ西へと向かっているというのに、一つも作戦を考えられずにいる。それもこれも彼がズルいのがやはり悪い。あの目で真っすぐに見つめられるだけで私は何も言えなくなってしまうというのにそれを行使することに迷いがないのがズルい。 「トレーナーさんはズルいんだよねーホント……」 「俺の何がズルいんだ」 「うにゃああああ!ト、トレーナーさん!?」 いつの間に真後ろに。驚きとともに耳と尻尾がピーンと立ってしまう。ああもう恥ずかしい!いやそれより。 「あのー……トレーナーさん?どうしてここが?」 教えてないのに。 「セイの行くような所は大体分かる……っていうのは冗談だけどな。いつものサボりスポットが全部不発だったから地道に聞き込みだよ」 ほら、と頭にぽふりと乗せられたのは麦わら帽子。 「まだまだ暑いんだから熱中症には気を付けてくれよ。サボりは結構だがそれで体調崩されたらたまらん」 被りながら私を探してくれていたのだろうか。麦わら帽子からは彼の匂いが強くして、私は少しクラクラしてしまう。熱中症かも。
2 21/06/16(水)00:26:34 No.813668540
「……それで、何かあったのか?」 貴方をどうしても照れさせたいからですよ。言わないけど。 黙りこくる私に対して彼は私の隣に腰掛けながら、口の端を僅かに歪ませて笑う。言う気になるまで待つよという合図だと気付いたのはつい最近のことだ。 さて、どうしよう。ここまで来たからには彼は私をトレーニングに連れ戻しに来たんだろうけど。でも彼は待つよモードに入ってしまっている。それに私も今日の目的をまだ達していないからまだトレーニングは戻りたくない。 ──と。目の前に広がる光景が沢だということを思い出した。セイちゃん天才!これは行ける── 「ねえトレーナーさん!」 「ん?どうした?」 ガバッと立ち上がり竿をそこらへんに放り投げて沢へと飛び込む。
3 21/06/16(水)00:27:21 No.813668764
「こんなに暑いんだし一緒に水浴びでもしましょーよ!」 言いながらくるりと振り返ろうとして、あっ 「セイ!」 バシャーンと大きな質量を叩きつけられた水が大きな音を立てる。来たる衝撃に備えて思わず目を瞑った私に襲い来る次の感覚は、痛みではなく少し硬い肉の感触。 「だから気を付けろって……」 「あ……」 ぬめった石に足を取られた私の身体を、トレーナーさんは飛び込んで抱きとめてくれた。落ち着いて、彼の腕の中にいるという事実に気が付くと心臓がけたたましく鳴り出すのを感じる。 ああもう、また私照れさせられて。これは私の不注意だから私が悪いとしか言いようがないけど。 「……っ」 不意に私の耳が捉えたのは息を呑むような、生唾を飲み込むような、そんな音。私でない以上、音の主は目の前の人しかいないわけで。 「およ?」 見れば彼の顔は熟れたトマトのように真っ赤になっていた。意識を身体に巡らせれば水でぐっしょりと濡れた感覚。
4 21/06/16(水)00:27:44 No.813668869
「おやおや~?トレーナーさんもしかしてセイちゃんの身体で興奮しちゃいましたか~?」 少し予定とは違う形になったけれどスケスケになった身体を見せ付ければいくらいつも私を上回る彼と言えど照れるはず!私もかなり恥ずかしいけど! 「ばっ……なんでつけてないんだ!」 はて。つけてない。何をだろう。頭に疑問符を浮かべているとトレーナーさんが私に被せていた麦わら帽子を取って私の胸に被せた。 あれ。 つけて、ない。 「~~~~~~~~ッ!!!!」 ああ、そうだ、やってしまった。今日は誰とも会うつもりがなかったから。面倒くさいし。いいじゃんと思って。 「あ、う、これは、その」 俎上の魚みたく口をパクパクさせる私はなんて滑稽なんだろう。恥ずかしくて情けなくて、涙が出て来そうになる。
5 21/06/16(水)00:28:02 No.813668961
「セイ」 「……うん」 「帰ろうか」 「うん」 そう言うとトレーナーさんは私をおんぶしてくれた。……あの、これ、トレーナーさんの背中と私のその、当たって。 「羽織る物持ってたらそれで隠せばいい話なんだけど。俺もセイも持ってないだろ。すれ違った人に見せるのもダメだし。我慢してくれ」 言いながら歩き始めたトレーナーさんの顔色は私からは見えなかったけれど、だけど耳は朱に染まったままで。それが少し、嬉しかった。
6 21/06/16(水)00:29:06 No.813669235
濡れ透けいい…
7 21/06/16(水)00:29:45 [s] No.813669425
セイちゃんはどうしてトレーナーさんに勝てないんですか?
8 21/06/16(水)00:30:31 No.813669651
この時間は聖ウンス会の活動が盛んすぎる…
9 21/06/16(水)00:31:19 No.813669844
この短時間でウンス三連敗してる…
10 21/06/16(水)00:32:08 No.813670076
本当に勝つ気あります?
11 21/06/16(水)00:34:22 No.813670649
自分をからかい上手だと思いこんでいる最高に可愛い幻覚の元
12 21/06/16(水)00:34:34 No.813670701
セイちゃんの平たさが産んだ悲劇
13 21/06/16(水)00:37:46 No.813671601
これは…うーん…引き分けですね!
14 21/06/16(水)00:40:08 No.813672221
>これは…うーん…引き分けですね! 引き分けかな…引き分けかも…
15 21/06/16(水)00:40:36 No.813672334
面倒がって着けなかったことが勝因であり敗因
16 21/06/16(水)00:43:13 No.813672973
肉を切らせて骨を断てたと言えなくもない
17 21/06/16(水)00:43:56 No.813673161
セイちゃんかわいい!
18 21/06/16(水)00:44:55 No.813673403
>肉を切らせて骨を断てたと言えなくもない たててるのは海綿体だけどってね
19 21/06/16(水)00:48:27 No.813674341
頑張って探しにきてくれて身体を張って助けてくれて濡れ透けとおんぶで照れっぱなしだったわけだから 実質セイちゃんの勝利といっても過言ではないかもしれない
20 21/06/16(水)00:49:27 No.813674628
セイちゃんは恋愛ザコな所がいいよね…
21 21/06/16(水)00:57:11 No.813676778
シナリオのトレーナーさんが稀代のクソボケなのが悪いよー
22 21/06/16(水)01:00:45 No.813678032
ウンストレーナーに関してはクソボケというか半ば一目惚れみたいな状況じゃないかな… 出会いから担当契約の流れとか考えると…
23 21/06/16(水)01:01:15 [s トレーナー視点] No.813678222
>「おやおや~?トレーナーさんもしかしてセイちゃんの身体で興奮しちゃいましたか~?」 興奮しないわけは、ない。 踏み込みすぎだと、気付いた時には既に遅かった。この、自分から踏み込んでくるわりには踏み込まれると簡単に瓦解する少女に、首ったけになってしまっていた。 トレーナーになる以前、学生の時分に一度、元トレーナーの方が先生として見えたことがあった。彼が言うにはトレーナーに必要なのは一に鋼の意志二に鋼の意志三四がなくて五に鋼の意志だというほど鋼の意志の重要性を説いていて、当時の俺はああウマ娘って美人美少女ばかりだもんな、と。そんな風に気楽に構えていた。 甘かった。自身の想定の浅さを呪った時には俺の頭の中は既にセイによって独占されていた。普段の言動に隠れている、セイのレースへの熱き闘志、義理堅さ、距離の近さ。信頼が好意へ、好意が愛情へと変わるのに、そう時間は必要なかった。 だから──興奮しないなんてわけは、ない。
24 21/06/16(水)01:01:40 [s] No.813678363
しかし現実として俺はトレーナーという身分で大人であってセイは競争バで子どもだ。セイの日々のアプローチをセイはいなされていると勘違いしているが──違う。近づくセイの歩みを効率よく挫くための手段として、カウンターを選んでいるだけだ。 セイは好意や期待、信頼をぶつけられるのに弱い。普段から才能がないと吹聴して回っている弊害だろう。アレはセイにとってはレースを有利に進めるための仕掛けであり、そして自らを抑圧する鎖でもある。 だから、ぶつける。恐らくはセイのお爺さん以外にぶつけられることがなかったであろうそれは、他人の俺だからこそなおよく響くのだろう。 だがそれが偽りのものであるならセイは気付くはずだ。だから俺がぶつけるそれもやはり、本物だ。 だから俺の心にも響く。
25 21/06/16(水)01:01:53 [s] No.813678469
好きな物を好き、と口に出す行為には心で思う以上に効力がある。毎日毎日、セイを可愛がり、褒め、励ます。そうやっていると俺の心の中でセイへの感情が積りに積もって行く。 セイのことが好きだ 寮にたどり着くまでの間背中に当たり続けた感触は、いまだに俺の中に残っている。消そうとしても、消えてくれない。忘れようとするそのたびにあの感触が想起される。 俺は、いつまで。彼女にこの獣欲を隠しきれるだろうか。 あの時の先生が卒業したウマ娘とすぐ籍を入れていたらしいと知ったのは──いつのことだったか。 多分、それが俺のタイムリミット。
26 21/06/16(水)01:02:07 No.813678616
クソボケというより分かっててカウンター返してると思う セイちゃんはへにゃへにゃになる
27 21/06/16(水)01:02:12 [s] No.813678678
トレーナーも自爆してる幻覚が見えたので
28 21/06/16(水)01:03:22 No.813679250
ウワーッ!諸刃の剣アタック!
29 21/06/16(水)01:03:23 No.813679261
私はいいと思う
30 21/06/16(水)01:05:05 No.813679942
これ本人は知らないけどセイちゃんすでに大勝利じゃないですか…
31 21/06/16(水)01:06:06 No.813680360
>これ本人は知らないけどセイちゃんすでに大勝利じゃないですか… 関係ねぇ闘いてぇ 闘って勝ちてぇ
32 21/06/16(水)01:06:12 No.813680402
いい…
33 21/06/16(水)01:11:00 No.813682432
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
34 21/06/16(水)01:11:27 No.813682648
あーダメダメエッチすぎます
35 21/06/16(水)01:11:29 No.813682664
びっくりしっぽいい…
36 21/06/16(水)01:12:07 No.813682920
むっ!
37 21/06/16(水)01:12:31 No.813683140
ちょっとちょっとちょっと~!
38 21/06/16(水)01:12:52 No.813683323
鋼の意思!鋼の意思!
39 21/06/16(水)01:13:01 [s] No.813683382
>1623773460855.png むっ! エッチなセイちゃん絵ありがたい…
40 21/06/16(水)01:14:26 No.813683973
>鋼の意思!鋼の意思! >寮にたどり着くまでの間背中に当たり続けた感触は、いまだに俺の中に残っている。消そうとしても、消えてくれない。忘れようとするそのたびにあの感触が想起される。 >俺は、いつまで。彼女にこの獣欲を隠しきれるだろうか。
41 21/06/16(水)01:16:36 No.813684947
聖ウンス会の鋼の意思が試される…
42 21/06/16(水)01:21:07 No.813687079
硬い鋼も熱い愛で溶かされそうだ