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少し雲... のスレッド詳細

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21/06/14(月)22:15:04 No.813294271

少し雲のある晴れた空と緑萌える地面の芝。時期外れの暑さ。少しずつ大きくなるファンらの声援、内隣のダートコースの色。 そして肌から染み出る汗を撫でる風。蹄鉄で蹴り上げられた芝と土の匂い。タイミングを見計らうウマ娘達の熱気とプレッシャー。 〔先頭を行く8番、続いて離れて3番〕 体力と知略と技術で誰よりも先にゴール板の前を通過する事を目指す。幾度と無く走ってきたシンプルで苛烈なレース。 この数分間の為に日々の厳しいトレーニングをひたすらに積み重ねている。 後半にスパートを掛けて集団から向け出すのに適した好位置をキープ。 応援するファンの為、自分の為、そして最大の理解者であるトレーナーの為。

1 21/06/14(月)22:15:37 No.813294540

自分が校舎裏の花壇で園芸をしていると知ってから彼のトレーナー部屋に植物に関する本が増えた。 初めての園芸基礎や花言葉辞典。請われれば理解しやすい書籍を薦めたというのに。 〔その後ろ内から10番、一バ身離れて6番〕 レースのスケジュールやトレーニングメニューだけでなく、個人的な趣味にまで手を貸してくれる。 秘密の花園に悪害を成したナリタタイシンは詰問の上、叱責せねばならない。 コーナー内側のラチ沿いに8の数字が付けられた紅白のポールが見えて近づいてくる。 普段ならば、ペースを上げるにはまだ早い距離。 だが、今日に限っては行けると判断したら一気に攻めても良いという作戦だ。

2 21/06/14(月)22:16:23 No.813294917

先頭二人は逃げの作戦だが、ペースは乱れてスピードは落ちて垂れてきている。 ――今が仕掛け時だ。 〔凄い足でエアグルーヴ上がってきた!! 少し掛かり気味ではないでしょうか。一息つけると良いのですが〕 他よりも芝が削られ荒れた部分を避けるコース取りは集団から抜け出せなければ不可能だ。 第四コーナーで二番手を抜き去る。先頭を追うのに必死だったらしく末足が残っていない。 甘いな!! 貯めていた足を注ぎ込んで全速力へ。逃げ切れなかった8番の背中を一気に追い越した。

3 21/06/14(月)22:17:39 No.813295472

ゴールは坂の上でまだ見えないが、この勢いのまま一気に行ってしまえば良い。 〔先頭に踊り出たのはエアグルーヴ!! 中山の直線は短いぞ、後ろの娘達は間に合うか?!〕 観客席からの様々な声援が音の波となって響き、耳や尻尾の毛を震わせた。 後ろからの疾走音は聞こえない。プレッシャーを掛けておいたが油断は禁物だ、最後の最後で大外からの追込みが来る可能性がある。 勾配を駆け上がると残りは100メートルを切る。目指すのは見えたゴール板より更に50メートル先までの全力だ。 〔一着はエアグルーヴ!! 圧巻の走りです!! 二着は――〕

4 21/06/14(月)22:18:44 No.813295935

日が西へと傾き始め、午後の日差しが夕へと近づく。 全レースが終了した中山競バ場のコースでは移動式のステージセットが組まれていた。 夕方から夜にかけて行われるファンからの応援に感謝し、勝利を分かち合うウマ娘達のウイニングライブ。 照明の点灯テスト、音響機材を通した音声のマイクチェック、ポジション位置を示すテープのバミを床に貼り付ける作業。 観客席近辺の大通路では人気投票券の枚数集計結果が表示され、デビュー間もない選手との握手会などが行われていた。

5 21/06/14(月)22:20:11 No.813296546

着々と準備が進む中、半地下の待機場ではライブ衣装を身に纏い、ステージに立つ事を考慮したメイクを施したウマ娘達が 打ち合わせとリハーサルの為に集う。 演目順に確認と説明が進む中でエアグルーヴはベンチに腰掛けて携帯電話の画面を見つめていた。 出走中にナリタブライアンから送られたメッセージの内容。 [ナリタタイシンが自分がやったと自供。但し、「エアグルーヴ以外には言えない」として理由を述べないでいる] 謝罪も無く、理由を語らないのでは釈然としない。読み返す度に苛立ちと不快が募り続ける。 何度目かの苦い嘆息を零すと、こちらを見ながら前を通ったウマ娘らが目礼して足早に立ち去っていった。

6 21/06/14(月)22:21:24 No.813297057

席を外していたトレーナーが灰茶色のソフトクリームを持って戻ってきた。 「ふん、ふらりと居なくなりおって」 「少し冷静になって耳を冷やしたらどうかなって」 ウマ娘の耳と尻尾は感情を動きとしてダイレクトに表現してしまう。 女帝と称される自分が苛立っていれば親しい者や同格以下は恐れを為すばかりだ。 差し出された耕一路のモカソフトを受け取って口をつける。滑らかなミルクのコクと珈琲の風味が広がり、身体の内から激情の熱を冷ます。 柔らかく甘い一息を付くのを見てからトレーナーは隣へ静かに腰掛ける。

7 21/06/14(月)22:22:53 No.813297697

「予約とか色々と手配は済ませておいた。凛々しくクールな女帝としてステージに立てるかな?」 「当然だ、痴れ者め。まったくこんな甘味で機嫌を取ろうなど」 視線を隣から逆方向へ背けると、先ほど目礼して通過していった者らが小声で 「予約ってナニなに?!」「副会長がモカソフトを食べてらっしゃる」「もしもしデジたん殿? 女帝サマがめっちゃ尊いなう。我瀕死也」 妙な黄色い声を上げながら戻って行ったのが見えて聞こえた。 女帝は慌てふためいてソフトクリームを落としたり、コーンを握り潰したりなんかしない。ギリギリ堪えた。

8 21/06/14(月)22:24:50 [s] No.813298499

3/10くらいです 競馬場行ってみたいですね

9 21/06/14(月)22:31:17 No.813301172

検索したらでけぇ!

10 21/06/14(月)22:31:26 No.813301242

安楽椅子探偵みたいなトレーナーだ