ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/13(日)23:08:36 No.812988119
最初は頼りない男だと思っていた。 だけど何度か行動を共にして。 彼の強さと優しさを知って、頼り甲斐のある男だと。 彼の弱さと繊細さを知って、優しくしてあげたくなった。 気がつけば、彼に好意を抱いていた。 彼を想い、恋心が芽生えてしまった。 だけど、それを表に出してはいけない。 自分の胸の中にしまっておこう。 彼女はそう思っていた。
1 21/06/13(日)23:09:00 No.812988253
「どうしたのレッド?急に呼び出して」 「…ごめん。迷惑だったか?」 「ううん。気にしないで大丈夫よ。 アタシも暇だったから」 早朝のマサラタウンの一角。 ブルーはレッドに呼び出されてそこを訪れていた。 軽口を交えつつ、レッドの顔を見る。 真剣な顔。 大事な話をしようと考えるような顔をしていた。 「どうしたの?硬い顔して」 「え?そんな顔してたか?」 「ええ。告白でもするんじゃないかってくらい」
2 21/06/13(日)23:09:27 No.812988404
軽口のつもりだった。 だが、レッドは少し考えた後、 「…そうだな。その通りだ」 「え?」 レッドは改めて表情を引き締めて言った。 「オレ、ブルーが好きだ。 オレと、付き合ってください」 ブルーは驚きで硬直した。 彼からそう言われるなんて思いもしなかった。 冗談か何かかと聞こうと考えた。 だが、やめた。 レッドの顔が真剣で、とても冗談を言ったとは思えなかったからだ。 彼が自分に想いを伝えてくれた。 それはとても嬉しいことだ。
3 21/06/13(日)23:09:54 No.812988567
だが、ブルーは、 「…ごめんなさい」 断りの返事をした。 「レッドのことは、いいと思うことはいっぱいあるけど。 でも、そういうのじゃなくて仲間でいたいって思うの。 だから、ごめん」 そう言って頭を下げる。 彼の告白を断るのは申し訳ないとは思う。 でも、ブルーには彼の想いを受け入れられなかった。 「…そっか」 顔を上げると、レッドは苦笑していた。 「あんまり、驚いてないのね…」 「結構ダメで元々で言ったからな。 こうなることも覚悟してた」
4 21/06/13(日)23:10:09 No.812988666
「…ごめん」 「いいって。オレこそ変なこと言ってごめんな」 「ううん。明日からはまた仲間に戻りましょう」 「…ああ。そうだな」 そうして、その場は解散となった。
5 21/06/13(日)23:10:29 No.812988797
「…別に振りたくて振ったわけじゃないわよ」 その夜、ブルーはシルバーと酒を飲んでいた。 ジョウトの居酒屋に足を運んで、呼び出しちシルバーに一部始終を話した。 今日はカントーにはいたくなかった。 レッドにまた会うのが怖い。 顔を見るのが怖くて、つい別の地方に逃げてしまった。 「そりゃ、レッドのことはカッコいいなって思ったこともあったし、 助けてあげたいなって思ったこともあったのよ。 正直、告白されて結構嬉しかったわ」 「…ならどうして、レッド先輩を振ったんだ?」 シルバーの疑問に、ブルーは肩をすくめて言う。
6 21/06/13(日)23:10:48 No.812988905
「アタシじゃ、レッドにはもったいないわよ。 もっといい子だっていっぱいいるし。 そういう子の方が、レッドを幸せにできるわ」 幼い頃を思い出す。 幼児が生きるためとはいえ悪事に手を染めたこと。 その犠牲者にはレッドもいた。 こんな自分よりは他の女性の方がレッドにふさわしい。 ブルーはそう思っていた。 「…オレは、姉さんが他の女性より劣っているとは思えないんだが」 「それはシルバーが身内のアタシを贔屓しちゃってるからよ。 アタシよりいい女は結構いるわよ」 「…そうかな」 シルバーは納得いかないようだった。 そこには深く追求せずに、ブルーは再び酒を喉に流し込んだ。
7 21/06/13(日)23:11:04 No.812989003
それからしばらくして、 「ほんとはねー、あの時OKしたかったわよー」 ブルーは本音を吐き出していた。 自分の手で恋を終わらせてしまった後悔か。 いつもより多く酒を飲んだせいか。 酔ってふらついている自分では判断がつかない。 確実に言えるのは、今の自分はものすごく口が軽くなってることだ。 「アタシだって好きな男の子と恋人になったりイチャイチャしたいって願望くらいあるわよー。 もう色々投げ出してレッドの胸に飛び込みたいくらいは思ってんのよー」 「…やっぱり姉さんは、レッド先輩のことが」 「そうよ?好き。大好き」
8 21/06/13(日)23:11:23 No.812989089
んふふと普段ではしないようなだらしない笑い声が口から出る。 照れ隠しにまた酒を飲む。 今日のビールはいつもより苦い気がする。 「だったら尚更受け入れたらよかったんじゃ…」 困惑するシルバーに、また酒を飲みながら答える。 「ダメよー。アタシみたいな面倒な女じゃレッドに負担かけちゃうしもっといい子にしないとー」 「レッドさんなら大丈夫だとは思うが…」 「それでも、アタシはねー…」 言ってる途中で、ブルーは机に突っ伏した。 「姉さん!?」 「ごめんシルバー…。あとはお願い…」 意識が薄れゆく中で、ブルーはそれだけ言い残した。 あとは、睡魔に身を委ねた。
9 21/06/13(日)23:11:51 No.812989262
揺れる感覚がする。 誰かに運ばれて、揺れ動く感覚。 最初に思い出したのは幼少期の誘拐された件。 だけど、今はあの時のような悪寒も恐怖もない。 むしろ暖かく、安心感すら覚える。 固いものに身を寄せていると気付いて、つい抱きつく。 と、それが僅かに動いた気がした。 気になって重い瞼を開く。 と、見慣れた横顔が見えた。 「…レッド?」 「おう。起きたか」 振り向きながら軽く笑ってレッドが答える。
10 21/06/13(日)23:12:43 No.812989604
視界に流れる人のいない街道。 先程までいたはずの居酒屋ではない。 眠りにつくまでの記憶と現在の状況。 それらを組み合わせて考える。 「アタシ、レッドに背負われて運んでもらってるのね…」 「ああ。シルバーに呼ばれてな」 「あの子は余計なことを…」 そうは言いつつも、ついレッドの背に身を寄せてしまう。 まだアルコールが残っているのか、彼に甘えたくなってしまう。 が、レッドが頬を赤くして目を背けてきた。 「アタシと密着して照れちゃった?」 オホホと笑ってからかうと、レッドが頷く。
11 21/06/13(日)23:13:11 No.812989765
以前のような軽口。 これでいい。 アタシとレッドはこういう関係で踏みとどまればいい。 ブルーはそう自分に言い聞かせた。 「…照れてるのは、それだけじゃなくてさ」 「ん?」 レッドは言いにくそうに口籠もっていたが、意を決したのか言葉を紡ぐ。 「…その、シルバーから聞いてさ。 居酒屋でブルーが何言ってたか」 「……え?」
12 21/06/13(日)23:14:24 No.812990212
言われて、思い出した。 自分が何を言ったか。 それを誰に知られたか。 それに気づいて、今度はブルーが赤面して顔を背けた。 酔いも覚めてしまった。 なんということだ。 口を滑らせすぎた。 後悔してももう遅い。 「その…、オレ、正直嬉しい。 ブルーと、両思いで」 照れながらもレッドは話してくる。
13 21/06/13(日)23:14:42 No.812990345
「今朝振られたけど。まだ、ブルーに未練があってさ。 本音を言うとシルバーに呼ばれてお前を迎えに行く時、会いにくいって気持ちとまた会える口実が出来たって気持ちがごちゃごちゃに混ざってて」 たははと苦笑して彼は続ける。 「ブルーの断った理由もわかったけど。 オレ、やっぱり諦められない。 ブルーが好きだ」 キッパリと言い切られた。 迷いのない発言。 朝、聞いた時よりもその意思は固くなっているようだった。 「ブルーは過去のことを後悔してるけど、それも含めて好きになってるんだし。 オレ、ブルーじゃないとダメなんだ」
14 21/06/13(日)23:15:00 No.812990469
レッドに知られたら、こうなるとは思っていた。 だから、胸の奥に仕舞っておこうと思っていたのに。 でも、知られてしまった。 こうなったらもう、自分にはレッドを止められない。 自分自身のレッドと一緒になりたいという想いも止められない。 「…どうして、アタシなの?」 せめてもの抵抗に、ブルーは問いかけた。
15 21/06/13(日)23:15:20 No.812990598
「アタシよりかわいい子って、いっぱいいるわよ?」 「ああ」 「アタシみたいに重い過去背負ってない女の子も、いっぱいいるわよ?」 「ああ」 「アタシよりめんどくさくない女の子も、いっぱいいるわよ?」 「ああ」 「…それなのに、アタシなの?」 「ああ」 迷いなく、レッドは応えた。
16 21/06/13(日)23:15:52 No.812990782
「ブルーじゃなきゃ、ダメなんだ。 他の女の子と比べてとかじゃなくて、 オレが好きなのはブルーただ1人だよ」 言われてしまった。 彼に言ってほしくなかったと理性が叫ぶ。 彼に、重荷を背負わせてしまうのだから。 だが、彼に言ってほしかったと本能が叫ぶ。 自分がレッドとそれでも一緒にいたいというのも本音だから。 その心を自覚していまったら、戻れない。 でも、もうそうするしかない。 また、レッドを振りたくない。
17 21/06/13(日)23:16:18 No.812990917
レッドの目元に涙の跡があることに気づく。 こうしてまた会うまで、彼がどれだけ泣いたか。 彼を悲しませてしまったか。 もう、そんな気持ちにさせたくない。 「レッドが覚悟を決めたのなら、 アタシも覚悟を決めなきゃいけないのかもね」 「え?」 戸惑うレッドの耳元に唇を寄せて、 「いいよ。付き合っちゃおう」 「…いいのか?」 「レッドが言い出したんでしょ? レッドとなら大丈夫って信じるわ」 そう言うと、レッドの顔が笑みの形になっていき、 「はは、はははははははは!!」
18 21/06/13(日)23:16:33 No.812991001
「ちょ、ちょっとレッド!今夜中よ! 近所迷惑だから!」 「ご、ごめん」 彼の目元から涙が溢れる。 自分を抱えて手が塞がってるため、 代わりに自分が涙を拭う。 「世話が焼けるわね…」 「まあな。でもこれで負担はお互い様だろ?」 「…そうかもね」
19 21/06/13(日)23:16:54 No.812991111
自分が彼の負担になるのなら。 逆に彼からの負担も受け入れよう。 そうして助け合う。 そうすれば相殺しあえるはずだ。 「レッド」 「ん?」 「好きよ。あなたのこと」 改めて言うと、またレッドが赤面して顔を背けた。 「いきなり言うなよ…」 「今朝突然呼び出したレッドが言う? それにアタシの口からは直接レッドに言ってなかったしね」
20 21/06/13(日)23:17:09 No.812991193
オホホと笑うと、レッドは苦笑した。 「いいよ…。ブルーのそういうところも好きなんだし」 「アタシも、そういうレッドの懐の大きなところ好きよ」 2人は笑い合い、帰路に着く。 明日からは、いつもと違う関係。 不安もあるけど、期待も膨らむ。 レッドと一緒なら、きっと何があっても乗り越えられる。 そう思ってブルーはまた睡魔に身を任せた。
21 21/06/13(日)23:17:24 No.812991266
以上です 閲覧ありがとうございました
22 21/06/13(日)23:18:01 No.812991515
不器用な思いやりと真っ直ぐな行為の交錯良い…
23 21/06/13(日)23:18:21 No.812991660
行為×好意〇
24 21/06/13(日)23:18:26 No.812991694
お疲れ様です 考えてみればブルーってかつての自分にコンプレックスかそれに近い物を抱いているのは当然なんだよな…
25 21/06/13(日)23:21:25 No.812992735
今回でレブル怪文書60作です つい先月に50作いったばかりなのに自分でも驚きました
26 21/06/13(日)23:22:55 No.812993280
とうとう60行ったか…
27 21/06/13(日)23:25:12 No.812994070
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
28 21/06/13(日)23:25:50 No.812994269
>1623594312762.png ありがとうございます! 酔いどれブルーかわいい!
29 21/06/13(日)23:29:16 No.812995483
まとめて読みたいな
30 21/06/13(日)23:29:39 No.812995628
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
31 21/06/13(日)23:31:01 No.812996049
>1623594579946.png 完全に酔っぱらった故の本心からの笑顔何なんだろうな…
32 21/06/13(日)23:34:59 No.812997323
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
33 21/06/13(日)23:36:18 No.812997735
>1623594899255.png シルバーの背中がイカスな…
34 21/06/13(日)23:39:34 No.812998707
>No.812995628 ありがとうございます! こんな顔してレッド大好きとか言っちゃったんでしょうね!
35 21/06/13(日)23:40:45 No.812999078
>1623594899255.png こっちもありがとうございます! 気を利かせるシルバーとブルーの脇がいい!
36 21/06/13(日)23:42:20 No.812999584
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
37 21/06/13(日)23:42:20 No.812999586
>1623594899255.png よく見るとおっぱいがテーブルで潰れてるんだね エロい…
38 21/06/13(日)23:43:17 No.812999882
>考えてみればブルーってかつての自分にコンプレックスかそれに近い物を抱いているのは当然なんだよな… シルバーから服贈られた時に笑顔だけど「アタシに似合うかな…。こんなお上品なの…。」って言ってるのわりと重いよね
39 21/06/13(日)23:46:28 No.813000982
>1623595340055.png ありがとうございます! 戸惑うブルーと笑いかけるレッドの表情の差!
40 21/06/13(日)23:49:49 No.813002062
>>考えてみればブルーってかつての自分にコンプレックスかそれに近い物を抱いているのは当然なんだよな… >シルバーから服贈られた時に笑顔だけど「アタシに似合うかな…。こんなお上品なの…。」って言ってるのわりと重いよね オーキド博士に似合ってる言われてすごい嬉しそうだったもんな… レッドたちと再会した時は感想聞くどころじゃなかったけど
41 21/06/13(日)23:51:31 No.813002592
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
42 21/06/13(日)23:52:43 No.813002970
>1623595891794.png ありがとうございます! 2人の照れた顔いい!!
43 21/06/13(日)23:59:02 No.813004800
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
44 21/06/14(月)00:01:28 No.813005511
>1623596342565.png こっちもありがとうございます! 涙を拭うブルーの優しい笑顔いい!
45 21/06/14(月)00:04:39 No.813006468
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
46 21/06/14(月)00:05:53 No.813006819
>1623596679076.png シルバー補完ありがとうございます!
47 21/06/14(月)00:05:56 No.813006844
>1623596679076.png カッコいいねシル公
48 21/06/14(月)00:07:02 No.813007178
手書き「」復活してくれてよかった…