ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/13(日)19:31:16 No.812885103
「どの面下げてここに来た。」 訪問して第一声がそれか、いや、全面的に私が悪いんだけれども。 「その様子だと通知は受け取ったみたいだね。君には悪いけど、他に頼れる相手が居ないんだよ。私もモルモット君もウマ娘だからお互いで済ますというのが出来ないし、消去法で最も信頼に値するヒトというのが君というわけさ。」 「知らん、妙な薬ばかり作って、何が特殊な不眠症だ。バイオテロだぞこれは。ただでさえ…「トレーナー？誰か来たのー？」 パタパタと部屋の奥から走ってくるのはトウカイテイオー、学生服の上からエプロンを付けている。 「げっ、タキオン！」 ああ、どうやらおじゃま虫らしい。しかし長期間不眠で過ごしたらろくに研究も出来ないだろう、健康状態の劇的な悪化も免れない。記録では4日間の覚醒状態で幻覚や妄想、一週間以上ともなると記憶障害が起きたという記録がある。
1 21/06/13(日)19:32:11 No.812885498
「ただでさえ一人来ているんだ、その上お前達まで受け入れろというのか？」 「いえ、わたくしは他に宛てがありますので、非常に、ええ、ひっじょ～～～うに！不本意ながら！タキオン様だけをあなたにお預けすることになりました。」 モルモット君としても屈辱だろう、どういうわけだか知らないがトウカイテイオーのトレーナーとは折り合いが悪く、普段は湖面のように静かな微笑みを湛えているモルモット君が簡単に崩れる。そんな相手と私を添い寝させるしかないというのだから。
2 21/06/13(日)19:32:32 No.812885673
「………誤って拡散する前から作用を受けてるな、何日寝てない。」 「ラボに篭って解毒薬を作れないか調べていたから曖昧だけど、多分3日ほど。」 化粧で誤魔化したつもりだけど、見抜かれてしまった。隠し立てする必要もないと判断して、素直に離すことにする。 色々と試したけど、偶発的に出来た薬品のレシピは私の頭からすっぽ抜けていた、当然治療薬が作れるはずもない。 そして対処法としてモルモット君と添い寝をしたみたが、安らぎは覚えても睡眠に入ることはなかった。 「………ふん、寝付くまで隣に居てやる。」 「ええ、お夕飯は？！」 「タキオンが寝てからだな、若い娘にさせていい顔じゃないのは見れば分かるだろう。」 「むぅぅ～～～～！」 「すまないね、テイオー……いや、まさか、こんなことになるとは、思って、なくてさ……。」
3 21/06/13(日)19:33:44 No.812886218
眠れる、やっと眠れる可能性が出てきた、そう考えるだけで虚勢が崩れ落ち、生物としての欲求が表に出てくる、睡眠への渇望。 モルモット君に支えられながらベッドに横たわる、普段なら目を瞑るだけで時間が吹き飛びそうなほど眠いのに、眠りにつくことはない。 頭上の果実へ手を伸ばせば枝は伸び上がり、首元までの水を飲もうとすれば水が引く、地獄にてすぐそばに実りがありながら永遠にありつくことが出来ないタンタロスの罰、極限の眠気に浸かりながら眠れない責めを受けてその境遇に同情し、共感できる。 「お前はさっさと帰れ。」 「いえ、タキオン様が眠りにつくのを見届けるまではわたくしもここに居ます。」 「死にそうな顔しておいて気を回す暇があったらさっさと宛てとやらに行って寝ろ。」 「いいあってないではやくぅ～～…。」 こういう時ばかりはモルモット君の忠義心が煩わしい。 「どこに行くか知らんが途中で倒れてもこっちは関知せんからな。」 まぶたが落ちていく。ドアが閉じる音、モルモット君が帰ったのだろう、もう目を開けている力すらない。 車輪が回る音がすぐそばにやってくる。
4 21/06/13(日)19:34:07 No.812886426
「うぅぅぅ～～～！」 テイオーの唸り声、すまない、本当にすまない。でも……私も、限界なんだ……。 一人用ベッドに二人、くっついて横になれば、微かにスプリングがきしむ。 すぐそばに感じるぬくもりと、何も飾らないそのままの体臭、何度もマメを潰して出来上がった、硬く分厚い皮膚の手が頭を撫でる。 小さく鼻歌が聞こえる、なんの、きょくだろう……わからない、けど…ここちいいな……。 ああ………小さな頃……姉さんに、こんな……ふうに………。 ……⏰……
5 21/06/13(日)19:34:39 No.812886730
「タキオン、寝た？」 「ああ、ぐっすりだ。相当疲れていたと見える、不眠不休で解毒薬を作れないか実験していたんだろうな。」 「でもご飯、どうするの？タキオン、腕に絡みついてるけど…。」 「まぁ、一食ぐらい抜いても問題は「駄目、イショクドーゲン、ってカイチョーも言ってたんだから、ちゃんと食べないと体壊しちゃうよ。 そもそもあんな栄養ゼリーとグミはご飯じゃないよ。」 「あれで一日分の必須栄養素は全て取れるんだぞ。あとは必要に応じてタンパク質と牛乳だけ摂っていればいい。」 「そーゆーとこだよ、ほら、あーんして。腕が使えないならボクが代わりに食べさせたげる。」 「………………あー……。」 「美味しい？寝る時はもうちょっと詰めてね、三人で寝るのはかなりギリギリだもんねこのベッド。」 「美味いが、はぁ……トレーナーの仕事じゃないだろ、これは……。」 「ニシシ、担当の健康管理もお仕事ですよーだ。それとさっきのボクにもやってよね、タキオンばっかりずるい！」 「わかったわかった、とにかく早く飯を食わせてくれ。」
6 21/06/13(日)19:36:56 [sage] No.812887810
前回までのログです fu80557.txt 少し遅れてしまいましたが、不眠症になる薬の件、うちのタキオンだとどうなるかなと思考してみた結果こうなりました ちょっとした番外編なので展開と矛盾があってもご容赦ください