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ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

「あー... のスレッド詳細

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21/06/12(土)19:42:51 No.812473580

「あー、本日はお日柄もよく……。」 「雨だな。」「雨ですね。」「雨だね。」 仕方ねえだろ他にどんな切り出し方しろってんだ、そもそも何で俺がここに居るのかすらわからねぇ。 いつもどおりの仏頂面のテイオーのトレーナーと、微笑みながら青筋立てる器用な顔したタキオンのトレーナーと、薄ら笑いを浮かべたタキオンの三者面談になんで俺が立ち会う必要があるんだよ。 悪かったよ神様、菊花賞のあと教会通いサボって、でもマヤノが毎週のようにデートに誘うんだから仕方ないだろ。 テイオーのトレーナーの奴が『今日の午後、空いてるか?』なんて言うから軽い気持ちで請け負って、午後になって着いてきてくれって連れて来られたのがタキオンのラボ。 俺、警告したよな?気を付けろって、なんでわざわざ会いに来てる上に俺も道連れなんだよ。 Another One Bites the Dustってことか?一人で塵食っててくれよ、俺を巻き込むなよ。

1 21/06/12(土)19:43:11 No.812473700

「では皆さん、まずは紅茶をどうぞ。お好みは?」 「今日はキーマンで。」「かしこまりました。」「この間のと同じのを。」「…まぁいいでしょう。」 「コーヒーねぇのか。」「泥水が飲みたいのでしたらダートコースへどうぞ。」「じゃあ適当にストレートでくれ…。」「かしこまりました。」 面談は和やかな雰囲気で進んでおります、哨戒中に所属不明機を発見した時ぐらい穏やかな気分だ。 沸騰した湯や、茶器の立てる小さな音が雨音に飲まれていく。その間俺たちは何も喋らず、紅茶を待っていた。

2 21/06/12(土)19:43:49 No.812473942

全員分の紅茶が揃うと、タキオンのトレーナーも席に付き、それが始まりの合図かのように全員が互いの顔を見合う。 配置は俺の隣にテイオーのトレーナー、対面にタキオンのトレーナー、その隣にタキオンだ。 まず主導権を握る必要がある、俺一人だけこれが何の集まりなのかすら知らされてない、このまま他の連中が訳知り顔で話し合うのを指くわえてみてるだけってのは屈辱だ。 「まず聞きたいんだが、何の話し合いなんだ?」 タキオントレーナーの視線が突き刺さる、なら何で居るんだ?って視線だ、それは俺も聞きたい。 「アグネスタキオンに私がトレーニングを付ける件についてだ。私は準備出来ていて、タキオンからも頼まれている、だが…。」 「わたくしは反対しています、反対する理由は明確ですね?」 こっち側二人を睥睨する水色髪、なんで俺も睨まれてんの?この話自体初耳だし俺全く関係ないんだけど?

3 21/06/12(土)19:44:33 No.812474218

「いや、聞きたいな。何故反対する。」 「危険があるからです、多少の怪我ならまだしも、故障など、それを一ヶ月間?冗談ではない。」 「だがそれを乗り越えれば私のプランAは実現に大きく近づく。」 話は平行線、危険を犯してでも実力をつけたいタキオンと、そもそも危険を犯させたくないそのトレーナー。 大体は飲み込めた。なんで俺が呼ばれたのかはわからねぇが。 「なぁ、トレーナーってのは何のためにいる?」 このまま紅茶飲み装置になってもいいんだが、自分でも損な性分だ、つい口を挟んじまう。 「担当を気遣うためか?それもある。効率よくトレーニングさせるためか?当然だ。だがよ、アグネスセレーネー。」 カップを置いて、ずいと顔を覗き込む。

4 21/06/12(土)19:45:23 No.812474531

「一番は夢を叶えてやるためじゃねぇのか?もっと早く走りたい、可能性を見たい、そうタキオンが言ってるのに、なんで専属トレーナーのお前さんが邪魔してるんだ?」 「それは、タキオン様のお体を第一に…「いいや違うな、お前さんは怖いんだ。レースやりゃ最高時速は70キロ超える、そこでガンガン他の連中とやり合って、もし転べばキャロットペーストの出来上がりだ、先頭突っ走った勢いで足首を折る奴も出る。」

5 21/06/12(土)19:45:38 No.812474616

「わかるかオイ、俺たちの稼業は怪我や故障がつきものなんだよ、それも俺たち自身じゃねぇ、年端も行かねぇガキにそれを背負わせてんだ。  俺たちゃまとめて地獄行き間違いなしのクソったれだ、その上で何が出来るかったら不要なリスクを削って、必要なリスク飲み込んで、担当のケツ持ってお前なら出来るお前なら勝てると背中押してやる事だろうがよ。  断言するぞ。お前が納得行かないリスクとやら、選抜に出られなかった連中なら即座に飲む。紅茶の淹れ方詰め込みすぎてスっぽ抜けてるようだがな、トゥインクルシリーズに出てる時点で数え切れないぐらい他の連中蹴落としてんだよ。  そこでお体を第一に安全なトレーニングだ?腑抜けた事抜かすなよ、ジジイのファックの方が気合入ってんぞ。  健康運動やらせたいなら場所を間違えてんだよ。腹決めろ、アグネスセレーネー、お前のご主人様はとっくにこの仏頂面の悪魔の手ぇ取ってんだよ。」

6 21/06/12(土)19:46:18 No.812474851

あー言ってやった言ってやった。やっこさんいつもの仮面じみた微笑みを投げ捨てて殺気の篭ったツラで睨んでくるが、民間人のそれなんてそよ風みたいなもんだ。 「く、くっくっく………モルモット君もそんな顔をするんだねぇ。面白いデータが取れた、後で解析に回しておこう。  さて、少々過激な表現があったが、概ねマヤノトップガンのトレーナーの言う通りさ。  モルモット君、君には感謝している。常に私を第一に考え、研究に助力も惜しまず、家からの叱責を私に届かないようにしてくれている。  私のわがままや気まぐれに文句一つ言わず付き合ってくれている。だから、お願いだ、またもう一回、私のわがままを聞いてくれないか。  確かにプランBがある、けれど、出来るなら自分の脚で可能性を見たいんだ。そのためには、悪魔と契りを交わしたっていい。  私にしては非科学的な言い方だな、それにミルクティーが好きな甘党の悪魔なんて聞いたこともない。」

7 21/06/12(土)19:46:28 No.812474902

タキオンが笑いながら"悪魔"を見る。そいつは変わらない仏頂面で黙々と甘ったるい匂いの紅茶を飲んでいる。 こいつ、このために俺を連れてきたのか?俺に代弁させるために?考えすぎかもしれねぇが、そうじゃなきゃなんで俺が居るのかわからねぇ。 まだ冷めやらない思考を落ち着けるために、俺も紅茶を口に含む。

8 21/06/12(土)19:46:50 No.812475022

「わかり、ました……。タキオン様を頼みます。しかし、トレーニングの際はわたくしも必ず同席させていただきます。」 苦虫を噛み潰したような顔で、タキオンのトレーナーが屈するように組んだ手の中に顔を埋める。 胸がすくような思いだぜ。紅茶野郎、ついに屈しやがった。後でカフェを誘って勝利のコーヒーで口直しをするかな。 「それは願ってもないことだ、専属トレーナーなら細かい変化に気付けるし、知らない所で担当が走っているのは心中穏やかで居られないだろうからな。  だが、私の出すメニューに文句は付けさせんぞ、それは契約だ。」 「いいでしょう、しかし結果が出なかった時は覚悟してください。わたくしの使える限りの力であなたを潰します。」 「要らん心配だ。そんなことよりタキオンへの褒め言葉を用意しておけ、必要な時に意外と出てこないものだ。」 わけのわからないアドバイスと共に、剣呑な空気が収まっていく。攻撃指令は下りず、互いにトリガーに指をかけたまますれ違ったってとこか。

9 21/06/12(土)19:47:09 No.812475143

そうなれば山場は過ぎた、俺は紅茶飲み装置になって、残りの3人はこれからの計画についてまとめる。 「手書き?物理紙に?本当に君現代人かい?データ化は?」「これが全部だ。」「EMP対策でもしていらっしゃる?」 テイオーのトレーナーはどこまでもアナログらしい、付けている腕時計も、俺の耳が確かなら機械式だ。マジでEMP兵器が使われてもアイツ一人だけは平気で過ごせるだろう。 そうこうしているうちに話はまとまり、細々とした決め事に移る、トレーニング予定をデータで欲しいタキオン派閥と、頑として手書きにこだわるテイオートレーナーは、手書きのページをスキャンするというタキオン側がかなり譲歩した折衷案でまとまった。 茶飲み話、という概念はこいつには無いらしい、さっさと車椅子の車輪に手をかけて出ていこうとする。 「なぁ。」 反転する直前、声をかける。

10 21/06/12(土)19:47:20 No.812475204

「今年の有マ、出るか?」 「テイオーの回復具合による、それに出場出来るかはファン投票で決まるものだ。」 「出る予定で組んでるんだろ?それに野暮は無しだぜ、無敗の三冠バに票が集まらねぇわけがねぇ。待ってろ、マヤノを連れて行く。今度は抜かせねぇぜ。」 「面白い、期待している。」 こういう時はちょいとでも笑うもんだってのに、そのまんま出て行きやがった。話をすりゃあそれなりに面白えのに、損してるよな。

11 21/06/12(土)19:47:34 No.812475281

……⏰…… 2杯目の紅茶を飲み干して席を立とうとして、なんとなく聞いてみる。 「なぁ、あいつ、どれだと思う?」 すると二人揃って眉をひそめて、呆れた顔になる。何だってんだ。 「そういうことを聞くのってデリカシーがないんですよ、これだから軍で代用コーヒー啜ってたような旧世代人は困りますね。」 「同意するよ、そんなデリケートな話題を突然振られても困る。」 俺も顔をしかめる、世代差って奴か。はっきりさせとく方がやりやすいと思うんだが。 「めんどくせぇなぁ、軍じゃそういうもんだったんだよ。」 やれやれと言わんばかりにそろってため息をつく同じ顔2つ。 そこまでのことかよ、俺は肩をすくめて返して、今度こそラボを後にした。

12 21/06/12(土)19:50:24 [sage] No.812476254

前回までのログです fu77867.txt 相変わらず主役が出ません、ちゃんとメインストーリーは考えてあるんですが寄り道したくなってしまうんですよね それと頻度も落ちてしまっているのでまた上げられるように努力します いつもコメントやそうだね励みになってます

13 21/06/12(土)19:59:21 No.812479564

頻度はそちらのペースでいいのよ もちろんたくさん読めた方が嬉しいけど無理をしてほしくはないのよ しかしマヤトレはいい仕事するなあ 連れ出したテイトレの慧眼が光る

14 21/06/12(土)20:01:03 No.812480202

何が悪いってまあマヤとデートしてたのが悪いと思う

15 21/06/12(土)20:15:31 No.812486208

全員から悪魔扱いされてるのにこのトレーナーは…

16 21/06/12(土)20:19:03 No.812487774

>全員から悪魔扱いされてるのにこのトレーナーは… 意にも介してないね...

17 21/06/12(土)20:21:48 No.812489030

>>全員から悪魔扱いされてるのにこのトレーナーは… >意にも介してないね... 悪魔扱いのがまだマシって過去がありそうだよね…