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21/06/09(水)22:34:50 雨の日... のスレッド詳細

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21/06/09(水)22:34:50 No.811547056

雨の日。地面や傘を打つ雨粒の音が消してくれるのをいい事に鼻歌を唄いながら彼の元へと歩いてく。 トレーナー寮の管理人さんに慣れた挨拶をしながら傘をたたみ水を払い、非常ベルの赤いランプが目立つ日の当たらない廊下を通って彼の部屋へ。鞄の定位置から合鍵を取り出し「お邪魔しまーす」と小声で囁きながらそっと扉を開けて身を潜らせる。 中へ進むと案の定部屋の主はソファで寝ていた。平日はサボる私を口うるさく追い掛けて、トレーニングも熱心に指導している彼からは想像もつかない程休日はよく眠る。特に日曜日の昼過ぎはほぼ間違いなくこうしてタブレットや本を持ったまま眠りに落ちている。 周りの娘からはセイウンスカイのトレーナーいっつも騒いでるよねーとか怖そうとかよく言われる。目の隈は濃いし目付きは確かに悪いし細身で背が高くちょっとガサツなところはあるけれど、こうして眉間の皺が何処かに出かけて穏やかに寝ている姿はどこか幼い感じがして私の心をくすぐる。 「ふふん」 思わず笑いが口からこぼれ落ちる。丁度よく空いている彼の腕に滑り込むように座りそのまま彼に寄りかかる。 目をつぶる。窓の向こう、遠い雨の音。すぐ近くの彼の寝息。

1 21/06/09(水)22:35:14 No.811547248

いつからだっけ?これが当たり前になったのは。休日の午後にふらふらと彼の部屋を尋ねたら、何やってんだ?って言いながらも招き入れてくれて、そのままダラダラと2人で過ごし夕飯を一緒に食べて門限が近くなったらじゃあまた明日と別れてってのを繰り返して。何度か彼が昼寝をしていて私が来たことに気付かなかったのを理不尽に攻めたらじゃあ合鍵やるよと呆気なく私にくれて…。 「トレーニングもこんぐらい自分から来てくれると嬉しいんだがな」 と隣に座って寛いでいる私を見ながら彼が笑ったのを思い出す。 「お前って猫っぽいよな。実家の猫も甘えたがりなのに時々わざと逃げる。そっぽ向いているけど背中で構えとアピールしてんだよ。で、追っかけると逃げてく癖にこちらが追うのをやめると後ろからついてきて、遂には俺の膝に座るんだ」 「俺が犬派じゃなくて猫派で良かったな」 そのまま私の頭を優しく撫でたのだ。嬉しかったけどなんか癪に障ったので口を尖らせ抗議した事を振り返っていると彼が身じろぎをした。一瞬起きたのかと思い瞼を開けて彼を見る。

2 21/06/09(水)22:35:35 No.811547396

だらしなく口を開けて寝たままだった。 「レースの結果、努力が報われない事が怖いなら俺のせいにすればいい」 「そもそもお前程のウマ娘が結果が出せないならソイツはトレーナーのせいなんだよ。今だってトレーナーついてなくてそれだけやれてるんだ」 「本気を出して報われなくても、どんな結果が待ってようとも、俺が傍にいる」 「お前を追っかける事はあっても俺から離れる事はない」 初めて話しかけられた時、その口から放たれた言葉。 別にそんなもんじゃない。ただサボりたいからサボってるだけで、ただ走りたいから走ってるだけで…それで…勝ちたくて…。 色々言葉は頭の中を雲のようにもやもやとしたまま浮いては消えていき、もし担当になってくれるならと日時と場所を指定する彼からの呼びかけを背中に受けて逃げるようにその場を後にした。 約束の日。朝から放課後までずっと普段の自分らしさなど欠片もなく、ひたすら悩んでいた。堂々と行ってみる勇気もなく、かといって何処か遠くへ行って忘れてしまおうともいかず、思考を堂々巡りさせながら決心もつかないまま太陽が地平線へと近付いていく。言われた時刻は既に遠ざかっていた。

3 21/06/09(水)22:36:12 No.811547702

(もし、今でも約束の場所に彼がいたら、その時は担当になってもらおう) そう決めたものの期待はせず、やっぱし居ないよねーなどと1人で軽口飛ばして帰ろうと思っていたのに赤い夕陽と影のコントラストが深まる中、彼はそこにいた。 タブレットとにらめっこしながら何か考え事をしている彼に呆気にとられながらも近付いていくとこちらに気付く。 「なんだよ、遅かったじゃねぇか」 二カッと歯をむき出して笑ったその笑顔が真っ直ぐにこちらに向けられて、なんだか気恥しくなったものだ。想いを馳せた過去から戻り今の貴方を見つめる。 ねぇ、自分の努力がレースの結果に結びつくことは怖くなくなったよ。 けどさ、今はこの関係をハッキリさせるのが怖くなった。窘めながらもどうしてこの距離感を貴方は許してくれるの? トレーナーとして?実家の猫っぽいから?女の子として意識してない?それとも?。

4 21/06/09(水)22:36:27 No.811547833

私はね…トレーナーの事が……。思いの雫が間隔をどんどん狭めながらポタポタと落ちていく。 一瞬最後まで言葉にしようと思ったけどすぐに思考の滴を振り払う。梅雨の霧の中で景色の色が薄れるように、自分自身をけむにまく。 休日の雨の昼下がり。長袖だと暑いのに半袖だとどこか肌寒い、湿った中途半端な季節。そんな時間と空気の中でもう少しこの優しい曖昧に浸らせてほしい。 いずれ夏が来て冬が来て、私たちにも終わりがくるのだ。 だから今はまだこれで。 私の葛藤なんて知ることもなく未だ眠り続ける彼にぴたりとくっつくように身体を曲げて寄り添い眠る。

5 21/06/09(水)22:37:03 No.811548120

聖ウンス会の布教に感銘を受けたので書いてみました。 uns meine fleude イア!イア!ウンス! 実装おめでとう!

6 21/06/09(水)22:38:32 No.811548783

聖ウンス会のミサはここで合ってるのかい いい文書だった…

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