虹裏img歴史資料館

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

21/06/08(火)23:36:27 晴れた... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

画像ファイル名:1623162987606.jpg 21/06/08(火)23:36:27 No.811246808

晴れた空と吹き抜ける涼し気な風に、私とセイウンスカイは目を細め、それとなく薄い笑いを浮かべた。眼下に広がる緑はなんとも言えない美しさで、まるでこの高原の名をそのまま映したかのようであった。 「やっぱり気持ちがいいねぇ、トレーナー。空気がおいしい。」 「そうだな。やはり来てよかった。」 私達は今、長野は松本、美ヶ原高原へと赴いている。日差しは眩しいながらも、2000mの高原はひんやりとしており、夏を前にして早めの避暑となった。長野で避暑といえば軽井沢が思い浮かぶだろう。しかしながら町中の喧騒から離れたこの高原は、また違った趣がある。 「本当に綺麗な景色。のんびりできそうだねぇ。」 「もちろん。そのために来たんだ。」 週末、府中からリフレッシュのためわざわざ長野まで来たのには、普段なかなかレース以外では遠出ができない彼女への労いを込めたつもりであった。 「うーん。まずはのんびり散策でもしよっか。まずは山頂…王ヶ頭かな?」 「ああ。まずはそうだな。」 可憐な花を思わせる笑みを浮かべた彼女の言葉にうなずき、まずは山頂である王ヶ頭へ向かうことにした。

1 21/06/08(火)23:37:42 No.811247263

美ヶ原高原の山頂にはホテルがあり、そこから程なくして山頂がある。周辺には電波塔がいくつか建っており、来る途中まるで魔王城だと彼女は冗談を言っていた。 「いえーい。写真撮ってよ。ほらここに看板あるし。」 「わかった。3、2、1はい。」 肩にかけてきた一眼のファインダー越しに、にこやかにピースサインを両手で作る彼女を捉えてシャッターを切る。南向きのためやや逆光気味の画の中に映る彼女は輝いて見えた。 「ここから少し行った先に王ヶ鼻がある。足場は悪いが絶景らしい。言ってみるか?」 「うーん。ちょっと疲れそうだけど、せっかくだし行こうかー。」 本当に疲れたらおぶってもらうからね、と笑みを浮かべて言う彼女に私も苦笑を返しながら、王ヶ鼻へ向かうことにした。 道中何度か休憩を挟むかと思ったが、流石はアスリート、危なげなく王ヶ鼻へたどり着いた。小山のような岩場を登る。

2 21/06/08(火)23:38:16 No.811247480

「うおっと」 ふと彼女が軽くバランスを崩したため腰を支えてやる。 「大丈夫か?」 「うん、大丈夫。ありがとね。」 にゃははと独特の笑い声を上げながら、こちらに礼を言う姿に安心する。せっかくのリフレッシュで怪我をしては元も子もない。再び、足元に気をつけながら進む。そして、登りきった。 「おお!これはすごいねぇ!」 「ああ、これは、綺麗だ。」 下には広がる松本の町並みが、そこから目線を上に上げると北アルプスの山々がそびえ立つ様が映る。目の前の光景に、ふたりとも感動のあまり言葉を失ってしまった。 「ね、ね、また写真撮ってよ。」 感動から我に返って彼女は急かしてくる。私はその言葉でぎこちなくカメラを構えた。彼女は先程バランスを崩した姿はどこへやら、ひょいひょいと岩場を歩いて写りが良いであろう場所へと移動した。 再びピースサインを作りこちらに笑いかける彼女は、ファインダー越しに見ても美しかった。

3 21/06/08(火)23:39:25 No.811247911

「うーん、ここから見る景色も良いなぁ。トレーナーもこっちにおいでよ。あ、足元気をつけてね。」 「わかった。」 おいでおいでとジェスチャーをする彼女につられて、そちらへ足を向けた。一歩、二歩。彼女が不意に微笑む。三歩、四歩。私へ手を伸ばしてくる。五歩目で私も手を伸ばし、六歩目で手をつなぐ。そのまま彼女が手を引き、そのまま私を抱き寄せた。 吹きすさぶ風とは対照的に、確かな熱を持つ彼女に思わずドキリとしてしまう。 「えへへ。この場所で、こんな風にしてみるとなんだかドラマみたいだね。」 そういってなおも私に体を擦り寄せてくる彼女に、私は無意識に腰へ手を回し、そしてこちらから強く、強く抱きしめた。

4 21/06/08(火)23:39:56 No.811248113

先程から心音がうるさい。周りに人がいないのは幸運というべきか、私達は互いの熱と心音をしばらく交換し合っていた。 「セイは案外ロマンチストだな。」 「むっ、何その言い草。私だって女の子なんだよ。」 「すまない、悪気はなかった。」 「わかってる。でも、もう少しこのままで。」  そう言って彼女は、柔らかな双腕でゆるゆると私をまた抱きしめる。 美しい景色と美しい彼女、二つに包まれた私は脳幹に熱を感じながらされるがままとなった。 「あっつくなってきた。」 しばらくの後彼女はそう言って、どこか名残惜しそうに離れていく。指先が離れる瞬間は、私も一抹の寂しさを覚えた。 「ホテルの売店でソフトクリーム売ってたよね。奢ってよトレーナー。」 にゃははと笑い、チロリと下を出してこちらを見てくる彼女は、とても敵うものではないと感じさせる雰囲気をまとっていた。 王ヶ頭まで戻り、ソフトクリームを買った。広がる草原を眺めながら、それぞれ溶けていくソフトクリームと格闘する無言の時間を過ごす。

5 21/06/08(火)23:40:16 No.811248226

アイスの部分を食べ終え、コーンをかじりながらぽつぽつと話し始める。 「今日は楽しかったか?」 「うん。景色も良かったし、美味しい思いもできたし、言うことなし。」 「そうか。」 リフレッシュしてもらうと言う目的を果たせたことを確認し、安堵する。しかし、それとは別の思いが湧き上がってくる。 「セイ。」 「何?」 「ここは冬になると星がキレイなんだ。」 「そっか。じゃあまた来なきゃね。…言うつもりだった?」 「…図星だ。」 「ふふ、お見通しだよ。」 願わくば、次に来たときには星雲の広がる空が見れますように。そう内心で思いながら、彼女の手を取った。

6 <a href="mailto:s">21/06/08(火)23:41:04</a> [s] No.811248497

私は闇のトレーナー。最近自分が行った場所にセイウンスカイと一緒に行く幻覚を抑えられません。青森の御方の文に触発されて突発的に書きました。 あんまり知名度高くない気がするけど、真面目に良いところなのでぜひ一度訪れてみては如何でしょうか。 なお山頂のホテルは一泊結構なお値段します。いつかは泊まってみたいものです。

7 21/06/08(火)23:44:19 No.811249660

怪文書のネタに旅行したくなって困る

8 21/06/08(火)23:49:10 No.811251418

>私は闇のトレーナー。最近自分が行った場所にセイウンスカイと一緒に行く幻覚を抑えられません。 あなたはそれを抑える必要がありません

9 <a href="mailto:s">21/06/08(火)23:49:36</a> [s] No.811251570

ちなみにですが私は自転車で美鈴湖の方から登りました そこそこ大変ですが峠越えたあとの景色の開け具合が感動モノなのでおすすめです

↑Top