虹裏img歴史資料館

1 21/06/07(月)02:45:11 No.810649906

今日はお花見だった。といっても商店街の通りにある桜の木の下で有名な場所ってわけじゃないけど、アタシとトレーナーさんには此処が一番落ち着く場所だった。 「よーネイちゃん！ お弁当持ってお花見デートかい！？」 「ばっ！ 違うって―の、さっさとお店戻らないと奥さん怒っちゃうよー」 ただし問題があるとしたら、道行く人がみんな知り合いだから口をそろえてデートか？ デートだろ？ と聞いてくるところだ。そのたびにしっしと追い払うが、まぁぶっちゃげ男と女がペアでお弁当広げてイチャイチャと会話していたらそりゃまぁうん、デートだ。 「でもネイチャ、これ美味いよ！ 準備に結構時間かかったんじゃないか？」 「どーもどーも、おふくろから習ったおふくろの味ですけど。お口にあったようで」 「小さいころから手伝いしてたもんなぁー卵焼きなんか完璧じゃないかコレ！」 「喜びすぎだって、もう」

2 21/06/07(月)02:45:54 No.810649991

呆れたように口にするけど、どっかで頬が緩むのを感じてしまう。自分が作ってくれたものを人から美味しいって言ってもらえるのはなかなかいい気分だ。それにトレーナーさんの笑顔も。 「それよりも、もうそろそろ時間じゃないんですかい？」 「あぁ、そうだった」 トレーナーさんがスマホを弄ると、そこに中山レース場が映る。そしてそのゲート前で並ぶウマ娘たちも。その中でやはり最も目立つのはトウカイテイオーだろう、カメラに、スタンドに、笑顔を見せてやはり自信満々にゲートへと入っていく。彼女の視線の先にトレーナーはいるのだろうか、それともまた予定には入っていないのだろうか。 ふと、アタシの方のトレーナーさんがその会場を見て目を細めた、その目にはきっと此処にいて同じように手を振っているアタシが映っているのだろう。 「あぁ、やっぱり悔しいなぁ…」爪を噛みながらトレーナーさんが呟いた。「ごめんな、ネイチャ。君を立たせられなかった」 「もう、この話は無しっていったじゃん。それにこの脚じゃあ結局出場も無理だったし」 「…ごめん」

3 21/06/07(月)02:46:15 No.810650028

彼の目がアタシの足を見る。今のアタシの右脚は包帯がグルグルに巻かれていて、とても走れる状態じゃないと誰もが一目でわかる。結局上の兄貴の言うままに相談して病院に行ったらこのザマだった、お医者さんから一瞬でストップ。それでもまだ軽い方の症状だったらしくて、もしこのまま隠していたら三か月どころか夏まで走れなかっただろうと言われた。まったくどーやって兄貴は見抜いたんだか。 「上の兄貴も見てるかな、これ」 「まぁトレーナーとしては誰もが注目するだろうからなぁ。まったく、春眠暁を覚えずだから寝ますとだけメール送ってきやがって、折角のネイチャとの花見を！」 「まーまー、あっちにはイクノさんがついてるだろうし？ 邪魔するのは野暮ってもんですよ」

4 21/06/07(月)02:46:27 No.810650055

そう、どこかでイクノとまた一緒なんだろう。この頃の上兄貴ときたら何するにもイクノ、どうするにもイクノで前にもましてしょっちゅう一緒だ。前には書類だってイクノが運んでた、今では周りのウマ娘からもそういう二人だって確信されている。 いやはやまったく、いやはやイクノさんがあんなに献身的な子とは思いませんでしたよ。泣かせたりしたら蹴って川に突き飛ばしてやらにゃ。 「やっぱ担当を優先しなきゃですから。アタシなんかはもう、どっかに…」 「それはない」アタシの言葉を遮るようにトレーナーさんが言った。「それは絶対ない。兄さんがネイチャを蔑ろにするなんてあり得ない。怪我だって気づいたろ？」 だったら何で…。トレーナーさんの言葉に、アタシはその言葉飲み込んでスタートしたレースをただ眺めた。実況だけの声と風に揺れる木の枝の音だけが暫くアタシたちを包んでいた。 皐月賞は当たり前のように、予定調和のようにテイオーがやはり一番をとった。画面越しでも眩しいぐらいキラキラして、これが一つ目だというように指を天に向けている。

5 21/06/07(月)02:46:50 No.810650105

「俺が一番悔しかったのはさ」 「え？」 「ネイチャのこと、兄さんが気づいたことなんだ。俺が担当なんだからケガなんて一番に見抜かなきゃいけないのに…」 「や、それはアタシが隠してたからで…」 「でも、兄さんは気づいた。あっちはイクノを見ながらなのに、そう思うとなんだかネイチャの事なーんにも見えてなかった気がしてさ。確かに自分達の夢だけを見てただけかもって、それ認めるのも悔しくてさ…」 画面を見ながらトレーナーさんは片一方の目から一滴だけ涙をこぼした。あぁ、この人はアタシの代わりに泣いているんだ、ひねくれてるアタシの代わりに。 そう思うと、なんだかじっとできなくてその体をそっと後ろから抱きしめてしまう。 「大丈夫、トレーナーさんだってしっかり見てくれてる。こんなアタシを見捨てずにいてくれてるじゃん、きっと誰よりもアタシの事分かってくれてる、でしょ？」

6 21/06/07(月)02:47:44 No.810650217

「…俺きっと、ネイチャの一番になるからさ。兄さんも越えるから…」 「うん…」 そっとその背中に体を預けると、また桜の花びらが舞った。春が終わればすぐに夏が来る、そうすればアタシはもっともっと勝って。 そしてこの人の一番になろうって、そう決めた。

7 <a href="mailto:s">21/06/07(月)02:49:00</a> [s] No.810650368

もう長いし遅くなりすぎたしでどうしようもありませんスリーゴッデスがそうやれって言ったんです許してくださいフォーギブミー

8 21/06/07(月)02:51:35 No.810650674

今日はもう無いかと思ってたよ

9 21/06/07(月)02:54:08 No.810650930

ネイチャがついに弟の恋心を受け入れた…？

10 21/06/07(月)02:59:09 No.810651482

弟が兄ちゃん超えられないまま兄ちゃん消えそうで怖いよ…

11 21/06/07(月)03:06:49 No.810652293

なんだかんだでこの二人はなんとかなりそうか…

12 21/06/07(月)04:06:26 No.810656980

弟の身になにも起きなければ二人でゴールインできそうだね できるといいな......

13 21/06/07(月)04:59:07 No.810659137

イクノ…もう気づいて…

14 21/06/07(月)06:20:01 No.810662300

悔しい事実を正面から受け止めて素直にネイチャに心情を話せているのは強い人だ きっと弟兄貴は強くなる それから >「…俺きっと、ネイチャの一番になるからさ。兄さんも越えるから…」 >そしてこの人の一番になろうって、そう決めた。 シラオキ様これ両想いですね

15 21/06/07(月)06:46:08 No.810663598

ここで弟に矢印向けるのはそりゃ兄の望むところでもあるしいいことかもしれないがそうじゃないだろネイチャ…

16 21/06/07(月)06:46:46 No.810663631

イクノはこれ上兄貴の残り時間気付いてるのかな……

17 21/06/07(月)06:59:05 No.810664402

削除依頼によって隔離されました タッチスレ嫌いだからスレ画でわかるようにしてくれない？ 開いて読むのが辛い

18 21/06/07(月)07:23:47 No.810666055

2時半まで粘って今日は見れないかと思ったけど朝まで残ってて良かった

19 21/06/07(月)07:24:35 No.810666110

深夜から朝にかけては割と寿命長いから助かる

20 21/06/07(月)07:31:30 No.810666655

>もう長いし遅くなりすぎたしでどうしようもありませんスリーゴッデスがそうやれって言ったんです許してくださいフォーギブミー 遅くなるの気になるなら一回分書き貯めてその日書いたのを次の日投稿するとかの形式にしたほうがリアルタイムで見れるし助かる 貴重な日刊でいい文章書いてくれる人なんで応援してる

21 21/06/07(月)07:32:15 No.810666725

担当になる話では描写されなかったけど上兄貴がイクノの担当を断ろうとして事情話してそれでもイクノは担当をお願いしたとかあるかも？ あるいは長くて2年しか担当できないみたいなざっくり伝えてて察しているとか？

22 21/06/07(月)07:38:50 No.810667306

弟とネイチャもいい感じになってきたな なおタッチの弟