21/06/05(土)22:31:38 前回ま... のスレッド詳細
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21/06/05(土)22:31:38 No.810172219
前回までです sp91650.txt
1 21/06/05(土)22:31:58 No.810172354
なんだ。なぜこうなっている。 確かに先程まで、エアグルーヴはハルウララに尋問をしていたはずだった。 それが今、エアグルーヴがハルウララの前に跪いて声を震わせている。 「まさか…会長…なのですか。」 「…エアグルーヴ、私が居ない間…苦労をかけたな。」 「しかし…どうして、なぜ。その姿は…。」 「それは、まぁ、色々だな。…ところで、この錠を解いてくれるか。」 「…!」
2 21/06/05(土)22:32:17 No.810172500
すぐさまエアグルーヴがポケットから鍵を取り出し、指錠と足枷を外す。自由になったハルウララが、椅子から立ち上がった。 「…おい!何している!」 呆気に取られていたが、すぐさまナリタブライアンが声をあげた。 「エアグルーヴ!勝手に錠を解いてどういうつもりだ!」 「…ブライアン、彼女は…ハルウララじゃない。会長だ。」 「はぁ?お前、本気で言っているのか!?」 「本気だッ!!!」 エアグルーヴがキッとナリタブライアンを睨みつける。一瞬、ナリタブライアンがたじろいだ。 「ブライアン、去年は庶務の子の事で手を煩わせたな。…そして、今回も。」 「…なんで、そのこと。」 去年のちょうど今頃、生徒会に入った庶務のウマ娘が生徒会を辞めそうになったことがあった。無論、こんな内輪の話をハルウララが知っている訳などなかった。 気付けば、ナリタブライアンはハルウララの肩を抱いていた。 「…本当に会長なのか。」 「…ああ。ブライアン。君にも苦労をかけたが、それでも私が居ない間もずっと頑張っていてくれたこと、心から感謝する。」 僅かに震えるナリタブライアンの手に、ハルウララはそっと自分の手を重ねた。
3 21/06/05(土)22:32:48 No.810172721
~~~ 「あぁもう…全然話し声が聞こえないじゃない…!」 キングヘイローが生徒会室の扉に耳をぴたりとつけながら、もどかしそうに言った。 どうにかする、とはハルウララ─シンボリルドルフの言葉だが、そうはいっても不安がなくなった訳ではなかった。 「なんか…エアグルーヴ先輩の声は聞こえるけど、何を言っているのか分かんないわ…。んもう!」 「あっ!きんぐちゃんだぁー!」 いきなり呼ばれ、ぎょっとして振り返る。そこには会議室に放置されていたシンボリルドルフ─ハルウララが立っていた。 「ねぇねぇねぇ!なにしてるの!?」 「わっ!え、あ、会長…じゃなくて、ウララさん…」(でいいのよね!?) 「うえっ!?ち、ちがうもん!わたし、るどるふちゃんだもん!」 「いいのよウララさん!私は2人が入れ替わっていること、知っているから!」 「えーっ!?な、なんでしってるの!?」 「いやまぁそれはちょっと色々事情があって…。」
4 21/06/05(土)22:33:01 No.810172830
キングヘイローが言葉を濁していると、シンボリルドルフの耳先がぴょこ、と動く。 「あれ?このへやから、るどるふちゃんとえあぐるーぶちゃんのこえがするよ?ウララもおはなしするー!」 シンボリルドルフが扉を開ける手をすんでのところで掴み止める。 「おばか!今中に入っちゃだめよ!」 「えー!?なんでなんで!いーいーじゃーん!!きんぐちゃんもるどるふちゃんも、えあぐるーぶちゃんもみんなウララをおいていってずるいー!!」 そう言うと、シンボリルドルフが無理やり扉を開けようとする。 「や…やめなさい!今はだめなのよ!」 キングヘイローの制止も虚しく、シンボリルドルフのパワーによって無理やり扉が開かれた。それと同時に、シンボリルドルフと、その腕を掴むキングヘイローの姿勢が崩れる。 「うわあっ!!」 ─その結果、2人がもつれるように生徒会室になだれ込んでしまった。
5 21/06/05(土)22:33:12 No.810172900
「貴様ら…。なにをやっている。」 エアグルーヴが呆れたように言った。えへへ、と誤魔化すようにシンボリルドルフが笑う。 「…会長。アンタが会長ってんなら、今入ってきたアイツはなんなんだ?」 ナリタブライアンがもみくちゃの2人を一瞥し、ハルウララに問いかける。 「彼女こそ、今の私の身体の持ち主だった子─すなわち、ハルウララだ。」 それから、これまで自分たちが入れ替わったことの経緯と、その間に調べた入れ替わりの原因であろうウマレー彗星の事を話した。…その彗星が、今後75年は地球にはやってない事を含めて。 「ま…マジかよ。」 ナリタブライアンは目の前の現実をうまく飲み込むことができないようだった。 「じゃあこいつは、生徒会長でもなんでもないってことか。そりゃ仕事も満足に出来ないはずだ…。」 「でもぶらいあんちゃんってすっごいよね!ぱぱぱーってたくさんおしごとしてるもん!」 「…おい、その馴れ馴れしい呼び方はやめろ。」 中身が違うと分かったからだろうか、ナリタブライアンの容赦のない手刀がシンボリルドルフの頭をはたいた。 「いたっ!ふにゅ…。」
6 21/06/05(土)22:33:29 No.810173038
シンボリルドルフとナリタブライアンのやり取りの最中、エアグルーヴが震える声で話す。 「つまり…その、会長は…元に戻ることが…。」 「いや、まだそうとは限らない。私は諦めるつもりはない。元に戻る方法を探し続ける。…だから、エアグルーヴも、ブライアンにも、協力してほしい。」 ハルウララが2人に頭を下げる。 「やっ、やめてください!会長、頭を上げてください!…もちろん、会長が元に戻るために私たちも全力で協力します。ですからどうか…。」 「…アンタが会長席に居ないと、エアグルーヴがずっと苛ついて困る。さっさと元に戻ってもらうぞ。」 「ブライアン、いらん事を言うな…!」 そんな2人のやり取りを見て、ハルウララが苦笑する。 「ハハハ…どうやらさっさと戻らねば、2人にもっと苦労をかけてしまうようだ。」 ハルウララを見たエアグルーヴとナリタブライアンは、バツが悪そうにそっぽを向いた。
7 21/06/05(土)22:33:47 No.810173161
「…しかし、であれば、会長とハルウララが入れ替わったことは我々だけのこととしなければ…。」 「ああ、もし私が私ではない、と学園に知られれば、たちまち生徒たち…いや、先生方まで混乱を招いてしまう。このことは既に入れ替わっていることを知っている者だけに留め、我々で解決方法を探すべきだ。エアグルーヴの深謀遠慮、感謝する。」 「いえ、そんな…。」 「それと、当面はウララを生徒会室に通わせるようにしよう。そこで私宛の書類を受け取り、学園内の何処かで受け取る。こうすれば生徒会の仕事については問題ない。承認印の場所はウララに教えてあるから問題ない。ウララ、頼めるだろうか?」 「うん!ウララもがんばる!」 手際よく今後の事について詰めていくハルウララを見て、キングヘイローは感心していた。 (へぇ…疑っていたわけではないけど、やっぱり中身は生徒会長なのね。見た目がウララさんのままだったからつい敬語もなしで話していたけど…。)
8 21/06/05(土)22:34:00 No.810173265
当面の動きについての話し合いが終わると、ハルウララがエアグルーヴに指示を出す。 「エアグルーヴ、取り急ぎ先程の私の暴動を起こしたレポートを提出しておいてくれ。私はこれからフジキセキの方へ謝罪に行ってくる。」 「分かりました。…どうか、ご無理なさらぬように。それと…」 「…?どうした?」 「…今朝は、申し訳ありませんでした。会長とは知らず、説教などを…。」 「構わないさ。あの暴動は私自身の至らぬ所が原因、自業自得という奴だ。それに、君の言葉は生徒の未来を思っての事だろう。その心遣いが、私は嬉しかった。」 「…会長…。」 「さぁ、これからは忙しくなる。エアグルーヴ、頼んだよ。」 ハルウララは生徒会室を後にした。 「ところで、今日はこの会長サマはどうする?」 「…ブライアン、校内パトロールを一緒にしてこい。その間、会長に振り分ける仕事を私がまとめておく。」 「は…?」 「わぁ!ぶらいあんちゃんとさんぽだーっ!」
9 21/06/05(土)22:34:19 No.810173400
それから、ハルウララはフジキセキの入院する病院まで行き、謝罪をした。 フジキセキは謝罪を受け入れ、「君が昨日よりちゃんと晴れ晴れした顔に戻ってよかった」とだけ言った。 それから、ハルウララはようやく学園に戻ってきた。恐らく今日は欠席の扱いだろうが、理事長から今後の自分の身の振り方を聞いてからでなければ寮に戻れなかった。 「恐らく良くて謹慎、悪ければ…停学かもしれない。そうなれば…どうするかな。」 流石に停学を取り消すほどの権限は生徒会にない。ぶつぶつと考えながら歩いていると、誰かから声をかけられた。 「あ、あのっ…ウララちゃん、だよね?」 「…君、は。」
10 21/06/05(土)22:34:41 No.810173536
それは、昨日の実習で並走したウマ娘だった。手を跳ねのけられた記憶が脳裏に浮かぶ。 「…昨日は、すまなかった。どうか、気を悪く─」 そこまで言うと、ウマ娘が声を被せる様に喋った。 「ウララちゃんっ、昨日はごめんねっ!」 「…え?」 「実はね、今までウララちゃんと一緒に走ってたのは…いっつも自分が1着になれたからなの。ウララちゃんはどれだけ遅くっても、笑顔で『楽しかったね!』って言うだけで、それで…。」 「…そう、だったのか。」 実習のレース結果は、定期的に開催される模擬レースにも関わってくる。限られた出走枠には、必然的に授業成績の良い子たちから優先的に声をかけられるのだ。 この子は、ウララの純粋な心を利用して自分の成績をよく見せようとしていた。それだけ彼女も必死だったのだ。
11 21/06/05(土)22:34:54 No.810173640
「でも、昨日ウララちゃんと走った時に、私すごく怖くなったの。今まで負けたことなかったから、それも、ウララちゃんに負けるなんて思ってなかったから。でも…それって間違ってるよね。私が…ただ、ズルしてただけなんだもん。」 気付けば、彼女は涙を流していた。ぽつ、ぽつと床に小さな水たまりが出来る。 「なのに、私、ウララちゃんの手を…。こ、こんなの、今更謝ったってしょうがないかも、なんだけど…謝らないと、自分が許せなくって、だから…ウララちゃん、本当に、ごめんなさい!」 頭を下げるウマ娘を、ハルウララはそっと抱きしめた。 「そうか…正直に言ってくれて、私は嬉しかった。」 「え…。」 「誰だって、間違いは起こす。自分の心をコントロールできない事なんて、幾らでもある。大切なのは、自分の過ちを認め、前に進むことだ。」 自分にも言い聞かせるように、ハルウララは抱きしめながら語った。 「…また、今度。一緒に走ってくれないか?」 「…!うん!今度は…負けないから!」 ウマ娘の涙がハルウララの服に伝う。ハルウララも無意識のうちに涙を流していた。 暖かい涙は、いつまでもいつまでも2人を包み込んでいた。
12 21/06/05(土)22:36:53 No.810174490
次回に続きます。 次から新しい章に行く感じです。でも特に何も変わりません。 それと、前回まででとんでもない誤字してるの見つけました…。 ハルウララが暴動を起こしたのは栗東寮ですが間違って美浦と書いてしまってました。 txtは修正済みです。すみませんでした。
13 21/06/05(土)22:47:29 No.810179030
希望見えてきたなやったぜ
14 21/06/05(土)22:48:22 No.810179394
いや、ようやくスタートラインか
15 21/06/05(土)22:54:09 No.810181804
入れ替わり物の定番の真相打ち明けて秘密を共有する仲間を増やすパートいいよな…
16 21/06/05(土)22:56:51 No.810182844
いい…
17 21/06/05(土)23:25:51 No.810194173
ハルウララの立場で見るトレセンは普段見れないものばかりだろうし会長自身の知見にも大きく役立つだろうな…