虹裏img歴史資料館

1 21/06/05(土)20:21:04 No.810120457

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2 21/06/05(土)20:21:39 No.810120664

73年にハイセイコーが注目を浴びたのは単純に強かったからでした 当時スポーツ紙は野球やプロレスに代わる目玉を探しておりずっと右肩上がりの成長を続ける競馬に目を付けたものの73年年初めにはまだクラシックの本命といえる馬がおらず、スポーツ紙は南関で無敗のハイセイコーが中央競馬に移籍してきたことに目を付け、「無敗」ということを前面に出した宣伝で注目を浴びたハイセイコーは周りの熱狂に応え快進撃を続けました ここまではまだ地方からの成り上がりという語は雑誌・新聞にも見られないことから、人々は「無敗」に注目していたようで、まだブームというよりディープインパクトや藤井聡太、大谷翔平のように圧倒的なパフォーマンスを見たいという関心が強かったようです

3 21/06/05(土)20:22:44 No.810121011

しかしダービーの敗北で大衆の反応は変わり、ハイセイコーは虚しい経済成長とインフレ物価高の生活苦にあえぐ大衆に向けて、勝利に向かったひたむきに努力する姿を見せ夢を見せた後、敗北によって現実を教える馬となりました。ハイセイコーが2冠を目指す菊花賞直前にオイルショックによって高度経済成長は終わったわけですが、すでに世相には停滞感が漂っており、宝塚記念で大勝したものの勝ちきれなくなったハイセイコーがそうした世相と絡めた記事が多く書かれます ハイセイコーは敗北を運命づけられている哀愁の漂う馬として語られていました 当時と今でイメージが異なるのはオグリキャップも同じです。オグリキャップは地方から移籍してきて快進撃を続けた88年時には世間にあまり注目されおらず、89年の3か月で連戦を含む6戦をこなしたオグリローテに対する批判が注目されて人気が爆発します 当時日本はバブルの真っ最中、日本は経済的な豊かさの代わりに大切なものを失ってしまったのではないか? オグリローテはそういった当時の言説と絡めて紹介され同情を買いましたし、馬主の脱税、金銭問題も報じられました

4 21/06/05(土)20:23:12 No.810121159

現役当時のオグリキャップのイメージは地方の怪物や雑草ではなく企業戦士です 華やかなイメージがあるバブルですが、一方では24時間戦えますか♪で有名なリゲインが88年に販売され過労死が流行語になる時代であり、オグリが過酷なローテに好走で応え結果を出し続ける姿が人気を呼びます そんな中イメージが変わったのがハイセイコーです。引退後競馬に興味のない人々には半ば忘れられていたハイセイコーですが、金と欲にまみれた冷たい平成バブルとその象徴であるオグリキャップ。皆が夢を追いかけていた昭和高度経済成長期のハイセイコーという対比のもとで再び話題に上がります リアルタイムでは暗い時代と思われていた高度経済成長期が時間を経てプラスイメージで語られてることが多くなったのを反映しているのでしょう 同時についに地方出身者の夢を背負うハイセイコーというイメージが現れます 高度経済成長期だけでなく地方=田舎にもプラスのイメージを持つ人が増えたわけですが、地方競馬の地方は地方出身という意味はなく施行する地方自治体を指すだけなので地方という言葉の意味に引っ張られていきます

5 21/06/05(土)20:23:27 No.810121235

そしてオグリキャップが見事な勝利を挙げ引退しバブルが崩壊した後もハイセイコーと比較され続けるうちに両馬の人気の理由は混同されるようになります。皆が夢を見ていた時代に雑草がエリート相手に快進撃を続けた……バブルも高度経済成長同様に過去となったわけです さて両馬のブームにおいて中心的な役割を果たしたのにも関わらず雑草伝説では目立たないファン層があります。女性です ハイセイコーもオグリキャップも女性に大人気でしたがその応援される理由がバラバラで曖昧、夢見る大衆で括るには難しい存在です 特にオグリギャルはかわいい、カッコいい、そしてある程度からは流行ってるから何となくという理由で応援する人も多かったのですから納得のいく理由を見つけることは不可能でしょう こうした女性ファンは一部競馬ファンからも説明しがたい存在と思う人が多かったようで、ハイセイコーの時代にもオグリキャップの時代にも雑誌には競馬をする女性に苦言を呈する記事があります。明るい競馬場何かがおかしい。女子供が鉄火場に来るのはいかがなものかといった記事が目立ちます 他の流行コンテンツと同様で競馬にも新規層と古参の軋轢があったんですね

6 21/06/05(土)20:24:19 No.810121527

ブームは全く価値観の異なる人が流入してくるからこそブームなんでしょうね そして最後にハルウララが取り上げられます ハルウララブームでもハイセイコー、オグリキャップの人気の理由とされた要素が盛りだくさんでした SMAPの世界に一つだけの花のメガヒット、長引く平成不況で生まれた負け組の星と表現されたように時代と接点が持ち、先人と違い中央での華やかな活躍はなかったものの90年代の不況で寂れてしまった「古き良き」昭和レトロな「地方」競馬場で「ひたむきに頑張る姿」も女性人気の高さも共通しています 最後にこの本は次のアイドルホースは「古き良き平成」と「殺伐とした令和」といったワードが伴うだろうし、ブームがこないとしたら日本がアイドルを求めないほど現状に満足しているか夢を持つ気力もなくなったかのどちらかだという予言で終わります

7 21/06/05(土)20:24:39 No.810121642

この本は歴史の人物や事件の事実関係ではなくある時代の価値観について扱った本ですが、ある時代の特定の文書や事件の流れに時代の価値観を代表させるわけで、結構難しいことにチャレンジしています これからはもっと難しくなります。この本では新聞・雑誌が使われていますがおそらく令和のアイドルホースを振り返るにはネットという取り扱いの難しい文書を史料として使わなければならないと思います ネットの発言並べたところでその時代の価値観なんてわからないでしょ…と抵抗がありますが、競馬においては最近は昔からのメディア、特に雑誌は元気がないですから相対的にネットの価値は上がっているはずで、それこそ50年後にはnetkeibaや壺も立派な史料となりここは失われた古文書となってるかもしれませんね 古代史と中世史は史料がないから大変、近代史は史料が多すぎて大変といったことが岩波新書のロングセラー「歴史とは何か」で出てきましたが近代史以上の困難が待ち受けてます 今日からからそんな雑多な時代の新馬戦が始まりましたがどんな世代か楽しみです よし、紹介終わり 寝ていいですよ

8 21/06/05(土)20:25:42 No.810122009

すげえな文字数いくつぐらいだろ

9 21/06/05(土)20:26:27 No.810122270

ところで夕飯はまだだろうかタマ

10 21/06/05(土)20:27:37 No.810122720

新馬戦が始まりましたまで読んだ

11 21/06/05(土)20:28:21 No.810123023

>新馬戦が始まりましたまで読んだ そこまで行ったら最後まで読んでやれよ！

12 21/06/05(土)20:30:24 No.810123753

人気も時代によって意味が変遷したのね……勉強になったわb

13 21/06/05(土)20:33:11 No.810124717

こういう認識の変化を纏めて出展が明確な資料にしてくれる人はすごいな…

14 21/06/05(土)20:35:31 No.810125591

読んでて面白い

15 21/06/05(土)20:36:06 No.810125820

ロブロイさんきっかけでハーモニー買ったよ

16 21/06/05(土)20:37:09 No.810126215

日本現代史を扱ってるのは京大の学者って感じだな…

17 21/06/05(土)20:37:15 No.810126253

ロブロイはかしこいなぁ

18 21/06/05(土)20:38:41 No.810126753

外的批判をおこなうこと自体が難しいネットの記事の史料批判は扱うのが大変だろうな…

19 21/06/05(土)20:46:03 No.810129541

読んでみようかな…ロブロイさんありがとう

20 21/06/05(土)21:03:25 No.810136127

ロブロイさんに勧められて遺伝子と神について買ったよ あなたの知らない脳も読む予定

21 21/06/05(土)21:18:43 No.810142510

世間の出来事に対する人の反応がネットがメインって後世からしたら厄介なんだろうな…