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21/06/04(金)21:34:24 前回ま... のスレッド詳細

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21/06/04(金)21:34:24 No.809787270

前回までです sp91617.txt

1 21/06/04(金)21:35:06 No.809787628

それからは、理事長─秋川やよいの行動は早かった。 集まってくれた商店街の人々から署名を書いてもらい、委員会に直訴しに行ったのだ。 【中央諮問委員会 委員長室】 「わざわざ理事長自らいらっしゃられるとは。それで、お返事を聞かせていただけるので?」 委員長室に座る妙齢の美女─委員長が、秋川やよいに視線を移す。 「私たちの答えはこれですッ!」 そう言うと、委員長の机に紙束をばさりと置いた。 「ハルウララの退学処分の免除を求める署名、172人分!」 「署名にしては、いささか少なすぎるのでは?」 「昨晩の事件発生から半日で、しかもデビュー前のウマ娘がこれだけの人数を動かした事を評価していただきたい!」 「人気さえあれば暴動を起こしたことに目をつぶると?」 「否ッ!彼女には然るべき処分を与える予定です!そして今回の事件、彼女の平静を欠いた精神が原因であることは把握済み!なればこそ、彼女に必要なものは退学処分ではなくメンタルケアだと考えていますッ!」

2 21/06/04(金)21:35:41 No.809787904

それを聞くと、委員長は椅子にもたれかかり、目をつぶる。 「…貴方が、彼女を高く評価していることは分かりました。それに加え、退学に代わる処分も。」 そのまま委員長はこう続けた。 「私たちには、原則トレセン学園への介入の権利は有していません。その上で、我々の結論を示させてください。」

3 21/06/04(金)21:36:07 No.809788074

~~~ 朝日が差し込む生徒会室。しかし、そこに漂う空気は異質なほど重いものだった。 「それでは、これから貴様に尋問を行う。欺くこと無きよう、正直に答えることだ。」 生徒会副会長─エアグルーヴが、ホワイドボード用の指し棒を握り、もう片方の空いた手のひらにぺし、ぺしと数回バウンドさせた。 そして、そこには指錠と足枷で椅子に固定されたハルウララ─シンボリルドルフがいた。 (さて…どうやってエアグルーヴ達に私の正体を気付かせる…!?)

4 21/06/04(金)21:36:55 No.809788487

【10分前】 「では、私はこれから中央諮問委員会へこの署名とともに説明をしてくる!君たちはそれぞれやるべき事をやるようにッ!」 それだけ言うと、秋川やよいは会議室を後にした。 「それにしても…あそこまで人が集まるとはな。」 「まったくだ。」 もう1人の生徒会副会長─ナリタブライアンと、エアグルーヴは素直に感心していた。 まさかハルウララに、早朝に100人以上は優に超える人数を動かすほどの信頼と人気があったとは。 「…しかしながら、会長。」 エアグルーヴが振り返りながら、シンボリルドルフ─ハルウララを睨む。 「ハルウララの処分に関しては機密事項です!それをあろうことか商店街で叫びまわるとは…!」 「だって、ぜったいたいがくなんていやだったんだもん…。」 シンボリルドルフが下唇を突き出し、両手の人差し指をぐるぐると回す。

5 21/06/04(金)21:37:21 No.809788676

「一歩間違えば間違った情報を流布させるところだったのですよ!?」 「やめろ。今の会長にそんなことが分かる訳ないだろ。」 ナリタブライアンが左手でエアグルーヴを制止する。 「それより、とっととこいつから話を聞き出そうとしよう。」 余った右手で、会議室の余った椅子に座っているハルウララを指さした。 「…それもそうだな。ハルウララ、10分後に生徒会室に来い。そこで今回の件について聞くことにする。」 それだけ言うと、エアグルーヴとナリタブライアンは会議室から出て行った。 「はぁ…なんか、大変なことになったわね。ウララさん…?」 「いや、ここまでは想定済みだ。それよりも取り急ぎやらなければならない事がある。」 「やらなければならない事…?」 「ああ…エアグルーヴとナリタブライアンには、私の正体を明かそう思う。」 「えっ…!?」 キングヘイローがまさかの返答にぎょっとする。

6 21/06/04(金)21:37:46 No.809788888

「この3日間で身に染みたことだが、この身体ではあらゆる行動に制限がかかる。であれば、協力者を増やしておくに越したことはない。あの2人ならうってつけだ。」 「…でも、あの2人が信じるかしら…?」 「まさに問題はそこだ。私の口から言っても絶対に信じる事はないだろうな。だから、あちらから気付くように仕向けなければならない。」 「そ、そんなことできるの…!?」 「一応策はある。だが、果たして2人が気付いてくれるかどうか…。」 そう言うと、ハルウララが席を立つ。先程エアグルーヴが指定した時刻まで、あと僅かだった。 「とにかく、行ってくる。心配するな、どうにかするさ。」

7 21/06/04(金)21:38:04 No.809789037

【現在】 「悪く思うなよ。昨日の今日だ、指錠と足枷をつけさせてもらう。」 「…問題ない。」 「ならば始めよう。まず、今回の暴動を起こした原因についてだが─」 そこから淡々とエアグルーヴによる事情聴取が始まった。 エアグルーヴが問いかけ、ハルウララが答え、ナリタブライアンが紙に書きまとめる。そうして数十分ほど時間が過ぎた。 「…つまり、暴動の原因は授業に対する不満と、それに起因する自分のアスリートとしての将来と言ったところか?」 「…それで相違ない。」 ハルウララが話した”理由”は全てでっち上げだった。ただ、直前に起こした教員トレーナーを突き飛ばしたエピソードを組み込み、リアリティを底上げしていた。 これらは全て”策”を実行するための時間稼ぎに過ぎなかった。しかしながら、その” 策”を実行するためのきっかけが掴めないままだった。

8 21/06/04(金)21:38:41 No.809789327

(くそっ…このままでは私だと気付かせることができない…!!) ハルウララが逡巡していると、エアグルーヴがハルウララの異変に気付いた。 「どうした。何か言いたいことでもあるのか?」 (…! ここだ!) ハルウララがぐっと頭をあげ、エアグルーヴの瞳を見る。そのまま話始めた。 「…エアグルーヴ、先輩は、私の話を聞いて『愚かだ』とは思わなかったのですか?」 「無論、貴様が今回しでかした行動は非難されて然るべきだ。だが、貴様が抱える不安そのものが理解できんということはない。理事長の温情をありがたく思え。」 「…なるほど。」 ハルウララがより身体を前に出す。そしてより一層エアグルーヴに目を合わせた。

9 21/06/04(金)21:39:06 No.809789546

「…?おい、なにジロジロと見ている。」 「お忙しい中私の話を聞いてくださり、ありがとうございます。私の共”感者”になっていただいたことに、”今日、感謝”します。」 「はぁ?なにを言っ…て…。」 そこまで言うと、エアグルーヴの動きが止まる。 「…待て、今貴様なんと…。」 「私の共”感者”になっていただき、”今日、感謝”!」 先程よりより一層に語気を強め、真意が伝わるようにはっきりと言う。 「…おい、何しているんだ。もう質問がないならさっさと終わらせるぞ。」 「まて、ブライアン。…いや、しかし…どうして。」 ぶつぶつと独り言を呟くエアグルーヴに、ナリタブライアンがしびれを切らした。 「なにを言っている?なにが引っかかるんだ?」

10 21/06/04(金)21:39:28 No.809789776

「…分からないか、ブライアン。さっきハルウララの言葉を。」 「は?…一体何のことだ。」 「共感者”に、”今日、感謝”。…これは、去年会長が感謝祭でアドリブで言われたダジャレだ。」 『…それでは、最後にひとつ洒落を披露しまして、締めくくりとさせていただきます。』 『─我々の歩む道への共“感者”に、” 今日、感謝”! 「…はぁ?よくまぁそんなくだらん事を覚えているな…。で、だからどうしたっていうんだ。」 「なぜ、ハルウララがまだ入学していない頃に言った会長のダジャレを知っている?しかも、あれは完全なアドリブで過去の台本にも残ってないものだ。」 「アホらしい。誰かから聞いただけなんじゃないのか。」 「いや、しかし…」

11 21/06/04(金)21:39:44 No.809789944

そこへハルウララがダメ押しと更に畳みかける。 「私を” 大地”を例えるならば…まさしくエアグルーヴ先輩の優しさ、その情熱は”太陽”のようです!」 「…!?!?」 エアグルーヴが咄嗟に椅子から飛び上がった。しかしその目線はハルウララから離れることはなかった。 「…な…なぜ、それを…。」 瞬間、エアグルーヴの脳裏にとある記憶が呼び起こされる。それは、以前にシンボリルドルフと共に公園を散歩した時、自身の理想にやや振り回されていた自分を気遣っての会話だった。 『─君はウマ娘らにとって、謂わば頭上にて凛然と輝く太陽だ。』 『同じく例えるならば、私は大地でありたい。幸福という土壌で、夢が芽吹くための大地だ。』 『君は太陽、私は大地。互いに志を果たし、ウマ娘達の理想郷を創る──』 『君は君、私は私だ。私の持つものを自身に欠けているものと捉えすぎないでくれ。』

12 21/06/04(金)21:40:08 No.809790177

「…なぜ…その、言葉を…」 ふらふらとハルウララの元へ近づく。椅子のひじ掛けに手をかけると、そのまま地面にへたり込んだ。 「どこで…それを知った。その言葉は…会長から、私に下さった言葉で…。」 そのエアグルーヴの耳元に顔を近づけ、囁くようにハルウララは呟いた。 「私だよ。エアグルーヴ。分からないか?」 「…!? え…あ…か、会長…?」

13 21/06/04(金)21:43:14 No.809792291

次回に続きます。 前回のスレで間違えて投稿し損ねた箇所があったので、txtファイルをご参照ください。 (具体的には、昨日のレス番5の直前が抜け落ちてた)

14 21/06/04(金)21:43:52 No.809792747

いよいよ盛り上がってきて次回が楽しみだ

15 21/06/04(金)22:08:49 No.809806922

最初に予想した以上の長編になってて驚く 続きが楽しみだ

16 21/06/04(金)22:09:20 No.809807250

前回でこの怪文書はじめからおってしまったよ

17 21/06/04(金)22:21:03 No.809814254

>最初に予想した以上の長編になってて驚く >続きが楽しみだ 実は今回でやっと全体の2割分位が終わったかなという感じなので、次回からなるべく駆け足でやっていくつもりです。 気長にお付き合いいただければと思います。

18 21/06/04(金)22:22:24 No.809814842

2割……2割!?

19 21/06/04(金)22:23:29 No.809815537

終わったら支部かどこかでまとめて欲しいな…

20 21/06/04(金)22:23:58 No.809815791

すごい面白いしそろそろ佳境かな?と思ったらこれで2割…2割!?嘘でしょ…

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