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21/06/02(水)01:48:51 「よー... のスレッド詳細

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21/06/02(水)01:48:51 No.808920400

「よーし、マヤノ! 次はちょっと差しでもう一本行ってみよー!」 「えー、もうコースの交代の時間でしょー! この後のデートの約束はー!?」 「タイム縮めたら観覧車乗せてやる、さっさと行った!」 「ホント!? 約束だからね、テイクオーフ!」 中々予約を入れるのが難しい、レースに一番再現されているだろう芝の練習コースへと脚を運ぶと、丁度マヤノのトレーナーがため息をついてラチへと体を預けた。 マヤノトップガンの走り方は実に自由だ、自由かつ自在。空に舞う紙飛行機のように様々な風に適応しどこまで高く飛んでいく。これがまだ成長途中というのが恐ろしい。 「お疲れ様です。この後デートなんですか?」 「ことあるごとに強請られてな、本当はもっと乳も尻も背もデカい子と行きたいんだが。おっとすまん弟君、あと一周だけさせてくれ」

1 21/06/02(水)01:49:11 No.808920489

「構いませんよ、ネイチャも今着替えてきてるところですし。凄いですね彼女、噂に聞いていましたけどあそこまで変幻自在とは」 「まだだ、俺はマヤノを飛行機から戦闘機にする。じっくりエンジンを改造していって近づくやつみんな吹き飛ばしてやる、あぁ~マヤノがあと二年早く生まれて背と尻と胸がもっとデカけりゃなぁあーもう絶対ほっとかないのに」 残念そうにため息をついた後、帰ってくるマヤノを見ながら彼は口角を上げた。冬が運んでくる冷たい風が流れてきてエアフォース風のジャケットを揺らす、それでも彼はマヤノを一切瞳に一度も瞼を重ねなかった。 実習生時代からいろんなトレーナーを見てきたけど、こういうヒトは何人かいる、有名な所ではスーパークリーク、アグネスタキオン、サイレンススズカ、ライスシャワー、マチカネフクキタル、エアグルーヴのトレーナーなどなど。熱狂的というか狂気的というか、それが必ずしもトレーナーの能力に直結するわけではないけど、そんな人たちは必ずと言っていいほど自身の歯車に合致するウマ娘を見つけている。

2 21/06/02(水)01:49:39 No.808920587

兄さん、なぜアンタは俺にトレーナーになれと譲らなかったんだ、ネイチャの事はアンタが一番知っているくせに、走り方も何もかも。アンタもその一人だ、アンタの歯車はネイチャだ。だが、この心だけは譲りたくない、それは本当だ。だが……。 「あートレーナーさんや…?」 ふと後ろからネイチャの声が聞こえて振り返ると、彼女は気まずそうに立っていた。理由はすぐに分かった、その後ろに立っているトウカイテイオーとそのトレーナーのせいだ。 「テイオーも次使うって予約入れてたらしんだけど…」 「そーそー! 更衣室でばったり会ってビックリでさー! あ、マヤノが走ってる! おーいマヤノ―!」 「あっ、ホントだマヤノ走ってる。うわーはやー…若いっていいねぇ~…」

3 21/06/02(水)01:50:00 No.808920665

担当達がワイワイと話している間、お互い手帳や、学園にも確認してみるがやはりブッキングしてしまっていた。こういうのは事務のミスで時折起こるらしい。 「どうしますか? 何だったら」 「今日の予定はもう決めてしまっている、悪いが譲りたくはない」 「……悪いがこちらも譲りたくなくなりました」 人が言い終わる前に手帳を閉じて、当然だといわんばかりの口調で言ってくるテイオーのトレーナーに少し眉を顰める。毎度毎度会うたびに印象を悪くしてくることしかできないのか。 「アホらし、子供の遊び場の取り合いじゃあるまいし、みんなで使えばいいじゃねぇか。チーム練習じゃねぇんだ、十分使えるだろ」 腰にマヤノから抱き着かれて、それを引き離しながら彼女のトレーナーが呆れていった。お互いに目を合わせるがどちらとも拒否の色が浮かんでいた、こういう時だけ気が合うらしい。 またマヤノトレーナーがため息を吐いた。寒いからジャケット頂戴というマヤノに汗のにおいがつくからヤダと言ってポコポコ叩かれている。

4 21/06/02(水)01:50:25 No.808920742

「じゃあ併走で勝った方にしろ。お前らが走るわけでもあるまいし、よう担当を蚊帳の外にして喧嘩できるもんだ」 そういって結局ジャケットを羽織ったマヤノの横でトレーナーが提案した、また二人で目を合わせるそれならばいい。また気が合った。 それを隣で見ていたネイチャは理解したらしい、顔の前で手をブンブンと振った。 「いやいやいや! ちょちょ、トレーナーさん!?」 「おー! ボクとしては二人で練習してもいいけど、なんかそういう勝負って燃えるよね! よーし、やろーよネイチャ!」 「あーいいなー! マヤ、二人とも応援するね!」 「いやマジか…うわぁ、キラキラの視線が…その兄貴、本当にいいの? 多分アタシ…」 「ネイチャだってやれる、それにテイオーとの併走は学べることも多いはずだ。それはある意味コースでの練習より重要かもしれない」

5 21/06/02(水)01:50:40 No.808920796

「…オッケー、んじゃあちょっと盗む気で走ってきますか」 ネイチャが頬を一つ叩いて気合を入れてコースに入っていく。その後ろ姿は頼もしくて愛らしい、普段はキラキラなんてできないというが、一つ火がつけばとことんやるような熱い心を持っている。そんなところが好きだ。兄さんには譲りたくない。 「よーし、じゃあ行ってくるねトレーナー! よそ見しちゃダメだからね!」 「当然だ」 対するあちらは自信満々と言った様子だ、走る前の脚の動きからしてデビュー戦からさらに鍛え上げているようだ。どうやら生徒会長のトレーナーの兄弟だからテイオーが彼を選んだわけではないことが分かる。 マヤノのよーいドンの掛け声で並んだ二人が駆けだした。やはりテイオーは速い、あの体格であそこまでのストライド走法はまさに天から与えられた才能と言っていいだろう。だがネイチャも負けていないはずだ、後半戦からのネイチャが勝負になる、もしも…テイオーの背中が遠くに見えなかったらだが。 「大分鍛えているようだな」 ふと信じられないことにその様子を見て、テイオーのトレーナーから口を利いてきた。

6 21/06/02(水)01:51:01 No.808920877

「だが、勝つのはテイオーだ。それは決まっている、今までもこれからも、帝王の敗北は一つとして予定されない」 そう言ってこちらを見たトレーナーの目は何処までも冷たくて、そこには憎悪もあって、いろんな感情がごちゃ混ぜになっている。むしろこの男はウマ娘やレース自体を憎んでいるんではないかとまで思うほどだ。 「帝王は皇帝を超える」 コースでは中盤になってさらにテイオーは速度を上げてネイチャを引き離した。どんどん数バ身の差が開いて行く。高い、と思ってしまった、テイオーを超えようと言ったがその壁をありありと見せられる。実際に走っているネイチャはもっとそれを感じているだろう。高い、高すぎる。 「おーい、お前がビビってどうすんだ」 ふと後ろからマヤノのトレーナーから肩に手を置かれて我に返った。 「分かったぞ、お前の兄ちゃんが言ってたこと。もっと自信を持つべきだって、その通りだ」 「兄さんが?」

7 21/06/02(水)01:51:40 No.808920998

「しょっちゅう自慢してくるぞ、うるせぇぐらい。アイツは努力の天才で、人に努力をさせる天才だって、誰よりも尊敬してるって。確かにテイオーは凄いし、トレーナーも優秀らしい」 兄さんが俺を? そんなこと確かに優秀だって言ってくるけど、そんなの軽口の一つだと… 「でも成績だけでいってもアイツは次席でお前主席だったろ、そんなお前が必死になってネイチャ育ててんだ、自信を持てよ」 マヤノがわーっと声を上げた、コースではもう終盤となっていたがその様子は驚くべきものになっていた。迫る、ネイチャが迫っている。どんどんその差を詰めて、距離を縮めて言っている。脚がどんどんと出来上がっている。その顔は勝きで負けるとは微塵とも思っていない。 胸に熱いものが混みあがってくる、そうか、そうだよな。ネイチャに自分を信じろと言っていたくせに自分で自分を信じられていなかった。もっと信じなきゃな、俺はネイチャをもっと高みに連れていけると。 果たして勝負は、テイオーの勝ちだった。だが、その差は殆どない、ハナ差だ。 テイオーのトレーナーは表情もなくその様子をただじっと見ていた。

8 21/06/02(水)01:52:06 No.808921084

「び、びっくりした…ネイチャすっごい速くなってるじゃん! ボクも負けてられないなー、次からライバルだよー!」 「ら、ライバル…? アタシが…?」 ネイチャはテイオーの言葉に呆気にとられながら、ふらふらとこっちに来ると俺の手を取った。 「触れた…」ネイチャは言った「触れたよ…トレーナーさんのお陰で…並んだんだ…一瞬だけど…」 その目はとてもキラキラしていた。その目が言葉にできないほど美しくて、いつの間にかふわりとネイチャの頭を撫でてしまっていた。 「あぁ…次は追い越そう…」 「うん…」 「なぁ」

9 21/06/02(水)01:52:22 No.808921128

そうしているとテイオーのトレーナーの声がかかって、慌ててネイチャの頭から手を離してお互い距離をとる。 「あ、いや、その…えっと、約束通りどうぞ、コース!」 「いや、違う。頼みがある、もう一度テイオーと走ってくれ」 へ?と二人して声を出す。言った意味が分からなかったからだ、今何と? 「そちらの方が効率が良さそうだ」 「つまり、こう言いたいわけだ。非常にレベルの高い併走だったので、このまま一緒に練習してくれませんか」 「嫌ならいい」 マヤノトレーナーのにやにや顔に一つ嫌そうな顔をすると、テイオーのトレーナーは背を向けた。つまり、認められたのだライバルとして、どちらからも。それがなんだか嬉しくて、ネイチャと顔を見合わせると一緒にコースに入った。冬の風が冷たく感じないぐらいに、胸が熱かった。

10 21/06/02(水)01:52:57 No.808921253

〇 「それで、どんくらい?」 しんと静まった診察室の中で、医者に尋ねる。前々から世話になっている医者だ、こちらに来てからは特に。 「心臓の筋肉がやはり弱まってきています。今は薬などで誤魔化していますが…もって五年、それは貴方が安静にして日々をベッドで過ごせばという話で」 「いいんだよ、おっちゃん。そのままストレートに言ってくれれば、気にしないからさ俺」 そうすると、医者のおっちゃんは眼鏡をはずして深いため息をだした。ため息にはいろんな種類がある、甘美、恍惚、感動、だがそういったポジティブさとは無縁の絶望と諦めのため息だった。 「トレーナーを続けたいなら、二年、長くて二年だよ。薬の量はこれ以上増やせない…ドナーもまだ、見つかっていない、順番があるんだ」

11 21/06/02(水)01:53:40 No.808921404

「そっか。あんがとね。薬はいつもの?」 「あぁ、欠かさず飲んでくれよ…なぁ本当に入院しないのか、余命が伸びれば…ドナーだって来るかも」 「そりゃあちょっと無理かなぁ、ほら担当も出来ちゃったしさ。レースを近くで見たい子がいるし、ベットじゃあ退屈で…死んじまうよ」 そうして医者が何か言う前に笑顔で手を振ってドアを閉めた。少し歩くとすぐにぜぇぜぇと息を切らしてしまう、薬がなければこれだ。 せめてイクノとネイチャがG1行けるまでは持たせなくちゃなぁ。そう思うと、心臓を叩いてまた歩き出せた。 いやぁ、まだまだ兄ちゃんは元気ですよ。

12 <a href="mailto:s">21/06/02(水)01:54:43</a> [s] No.808921591

長くなったし個人的な締め切りに間に合わないわで本当に申し訳ありませんでも三女神がそうしろって言ったんです私は悪くありません

13 21/06/02(水)01:54:51 No.808921618

トレーナー連中もいいキャラしてるじゃないか……って思ったらおい兄貴!おい!

14 21/06/02(水)01:55:59 No.808921822

そっちかぁ…! 何となく思ってたけどそっちか…

15 21/06/02(水)01:56:24 No.808921901

ネイチャと下の兄貴がキラキラしてきたと思ったらこれだよ!

16 21/06/02(水)01:57:06 No.808922033

事故を回避すればなんとかなるんじゃなかったんですか!?

17 21/06/02(水)01:57:19 No.808922074

ぜひ…ぜひ…

18 21/06/02(水)01:58:32 No.808922292

タッチだから弟...と当初は思ってたけどなんかそんな気はしてたんだよなあ いやこの後やっぱり弟が死ぬかもわからんけど

19 21/06/02(水)01:59:42 No.808922494

マヤトレ空軍ジャケット着てるのか…マヤちゃんが勝負服きたらお揃いになるね…

20 21/06/02(水)01:59:45 No.808922502

あの…ドナーって誰か死ぬ前ぶりにしか聞こえないんですが……

21 21/06/02(水)02:00:03 No.808922550

事故じゃなくて心臓病か… 拡張型心筋症とかなんかな…

22 21/06/02(水)02:00:59 No.808922714

>あの…ドナーって誰か死ぬ前ぶりにしか聞こえないんですが…… 双子の場合全く拒否反応がないらしいですね!

23 21/06/02(水)02:01:22 No.808922790

あったよ代わりの心臓!

24 21/06/02(水)02:01:39 No.808922835

でかすな!

25 21/06/02(水)02:01:54 No.808922876

こういうへらへらした表情の裏側にデカい爆弾抱えた奴好き いや嘘嫌いだから治って

26 21/06/02(水)02:04:16 No.808923306

これは兄貴が病気で死んだ後弟が事故死するやつ

27 21/06/02(水)02:04:25 No.808923327

たった階段数段で息を切らしているのをイクノが見ちゃうんだ…

28 21/06/02(水)02:04:59 No.808923426

>これは兄貴が病気で死んだ後弟が事故死するやつ お前それでスレ「」がひらめいたらどうするんだ

29 21/06/02(水)02:06:41 No.808923677

ガキ扱いしてるけど心底惚れこんでるマヤトレ ツンデレになりそうなテイトレ 自信を取り戻した弟 三者三様の育成風景に急に投げ込まれる時限爆弾

30 21/06/02(水)02:09:41 No.808924150

2年て…トゥインクルシリーズやりきれねえ!

31 21/06/02(水)02:09:56 No.808924187

心臓が悪くて死にかけの兄 タッチだと事故で死ぬ弟 ニコイチ

32 21/06/02(水)02:11:54 No.808924520

いつも飄々としていた裏でぜひ…していたと考えると興奮しますね…

33 21/06/02(水)02:12:23 No.808924593

臓器移植したら元の持ち主の想いが引き継がれて双子が一つになるファンタジーな展開もいいと思いますよ私は

34 21/06/02(水)02:12:26 No.808924602

この上兄貴のことめちゃくちゃ好きだからへらっとした上兄貴とカッチリしたイクノでいいな…と思ってたのにどうして…

35 21/06/02(水)02:12:31 No.808924617

>>あの…ドナーって誰か死ぬ前ぶりにしか聞こえないんですが…… >双子の場合全く拒否反応がないらしいですね! やめやめろ!

36 21/06/02(水)02:14:14 No.808924909

弟が兄に臓器移植か事故った弟に兄が移植か 両方とも助かるルートはないんですか……

37 21/06/02(水)02:14:49 No.808925008

サブトレになったのもネイチャと離れることになるからか…

38 21/06/02(水)02:14:57 No.808925025

>兄さん、なぜアンタは俺にトレーナーになれと譲らなかったんだ 自分がなっても時間足りないの知ってたんだ……

39 21/06/02(水)02:16:36 No.808925289

タッチネイチャ

40 21/06/02(水)02:17:25 No.808925401

よく見てみろ長くて二年だから一年でいきなり心不全になる可能性もあるんだ

41 21/06/02(水)02:17:40 No.808925450

上兄貴はトゥインクルシリーズ完走出来ないからネイチャのトレーナー譲ったのかな? どちらにしてもイクノがどうなってしまうのか気になります

42 21/06/02(水)02:18:03 No.808925509

弟の事故でドナーが見つかっちゃうんだ… 移植された心臓がネイチャへの気持ちを沸き立たせてくれるんだ…

43 <a href="mailto:スリーゴッデス">21/06/02(水)02:18:26</a> [スリーゴッデス] No.808925562

そうそうこういうのでいいんですよこういうので

44 21/06/02(水)02:18:39 No.808925590

弟とネイチャは悲しくてもお互いを支え合えるけどイクノどうすんだおめー!

45 21/06/02(水)02:18:49 No.808925617

テイオーのトレーナーってもしかして車椅子?

46 21/06/02(水)02:19:04 No.808925665

>そうそうこういうのでいいんですよこういうので よくねーよ! おのれスリーゴッデス!

47 21/06/02(水)02:19:20 No.808925707

兄弟で心臓の移植してた漫画読んだことある気がする…エリアの騎士だっけ…

48 21/06/02(水)02:19:32 No.808925732

>テイオーのトレーナーってもしかして車椅子? それは余所のネタや

49 21/06/02(水)02:22:04 No.808926055

あの兄貴がトゥインクル全部持たないこと黙って担当になるとは思えないしまさかイクノ…

50 21/06/02(水)02:23:35 No.808926247

やはり双子ネタには片割れの喪失が似合う

51 21/06/02(水)02:24:29 No.808926356

あの目だ…するトレーナーにしれっと混じるフクトレ 個人的にタイシンのトレーナーも瞬きしなさそう

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