虹裏img歴史資料館

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21/06/01(火)22:50:32 アジト... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1622555432769.jpg 21/06/01(火)22:50:32 No.808866959

アジトの一室。 この日、15歳になったブルーは暗い気持ちになっていた。 6月1日。 ブルーはこの日が嫌いだ。 自分の誕生日という、本来なら喜ぶべき日。 おぼろげにだが、両親が誕生日を祝ってくれた記憶もある。 だが、今は誰もいない。 祝ってくれる人がいない。 両親に会えずにまた一年が過ぎた。 自分の望みを果たせないまま時間だけが過ぎていく。 仮面の男との因縁に決着はついたのに。 未だに両親の行方はわからない。

1 21/06/01(火)22:50:50 No.808867073

このまま両親と会えないのだろうか。 無駄に時間を費やすだけなのでは。 自分は無力なのではないか。 誕生日を迎えるたびにそう思ってしまう。 弟分のシルバーには自分の誕生日は明かしてはいる。 けど、自分がこの日を好きじゃないことを察しているのか、 当日にはプレゼントが送られてくるだけで、 他に何かしてくることはなかった。 「…気を遣われてるのかしらね」 自分の方が年長なのに、とため息が漏れた。 考えだすと陰鬱な気分が余計に増してしまう。 どこかで甘いものでも食べて気晴らしでもしよう、とブルーはアジトを出た。

2 21/06/01(火)22:51:17 No.808867241

「あ、レッド」 「よう、ブルー」 街の中を歩いていると、偶然レッドと会った。 仮面の男との決着をつけて以降、顔を合わせたのはこれが初めてだ。 「久しぶり。こんなところで奇遇ね」 「おう!」 明るく笑うレッド。 自分のような、影の世界に生きる人間には眩し過ぎる笑顔だ。 「ちょっと背、伸びた?」 「ん、ああ。言われてみたらそんな気もする」 レッドが手を自分の額に当て、スライドするとブルーと頭の上を通過した。 かすかに頭を撫でられた感触に、少しどきりとする。

3 21/06/01(火)22:51:40 No.808867401

「背追い抜かされちゃったね」 「だな。ようやくブルーを抜かせたよ」 「案外気にしてたのね…」 「まあな」 たははと、レッドが苦笑する。 釣られてブルーも少し笑った。 彼と話していると、陰鬱な気分が少し晴れたような気がする。 だから、もう少し話していたいと思った。 「レッドはこれから時間ある?」 「ああ。特に予定はないけど」 「だったら、そこの喫茶店でお茶していかない?」 「え?まあいいけど…」 そう言われるとは思っていなかったようで、レッドは戸惑ってはいたが頷く。

4 21/06/01(火)22:51:55 No.808867494

「ありがと!じゃ、レッドの奢りね♡」 「え!?」 「冗談よ」 からかわれつつもしょうがないなと苦笑するレッドの手を引き、ブルーは店へと歩を進めた。

5 21/06/01(火)22:52:18 No.808867644

「レッドは相変わらず修行とバトル三昧か…」 「他にすることもないしな。 カントーもジョウトも平和だし」 喫茶店内。 ケーキや紅茶を口にしつつブルーとレッドはお互いの近況を語り合っていた。 「ブルーの方は、何かオレに手伝えることはあるか?」 「ないわ。今のところだけど」 言った後、レッドが少し落ち込んだ顔をしてしまった。 突き放すような言い方になってしまった、と反省しつつ笑いかける。 「さすがにいつ見つかるかもわからない人探しにレッドを付き合わせるのは悪いわ。 それに、レッドにはこういうのよりバトルの方が向いてるもの」

6 21/06/01(火)22:52:35 No.808867757

「…ごめん。役に立てなくて」 「そんなことないわ。 仮面の男との決着の時にはレッドたちにはだいぶ助けられたし。適材適所よ」 そう言いながら微笑みかけると、少しレッドの表情が柔らいだ。 「…ありがとう。ブルー」 「じゃ、ここはレッドの奢りね♡」 「またそれかよ!」 冗談を言うと、レッドがいつもの調子に戻った。 それに安心したと同時に、おかしさを覚えてしまう。 だからつい冗談を続けてしまう。 「いいじゃない。今日アタシの誕生日なんだしそれくらいしてくれても」 「え…」

7 21/06/01(火)22:53:01 No.808867915

レッドが驚いた表情をする。 それを見て、ブルーは口を滑らせたことにようやく気づいた。 「今日、お前の誕生日だったのか…。 知らなかった…」 「…言ってなかったからね」 ため息をつくと、レッドがまた暗い顔になってしまった。 「言ってくれればよかったのに…」 「ごめん。ちょっと言いにくくてね」 彼に嫌な思いをさせた罪悪感がブルーの心にのしかかる。 だから、やむを得ずレッドに正直に事情を話した。

8 21/06/01(火)22:53:18 No.808868008

話を終えると、レッドは何か考えごとをするかのように俯いた。 「…レッド?」 「ブルー、この後時間空いてるか?」 「え?まあ…」 どうせ今日は何もする気がない。 レッドといる方が気が紛れる。 そう思うと断る理由はなかった。

9 21/06/01(火)22:53:38 No.808868124

「ほんとに奢ってくれなくても…。 冗談のつもりだったのに」 「いいって。オレがやりたくなったんだから」 明るく笑いつつ、レッドはこちらの手を引いて歩く。 変なところに連れて行かれるのでは、と少しは思った。 だが、レッドの笑顔に何のやましさも感じられず杞憂だと判断した。

10 21/06/01(火)22:54:03 No.808868287

連れてこられたのはアクセサリー店だった。 店先で少し待たされ、戻って来たレッドは小包を持っていた。 「これ。誕生日プレゼント」 「え…?」 封を開けて見る。 中には、ピアスが入っていた。 ブルーの名に合わせてか、宝石のように青く輝くピアス。 「綺麗…」 思わず、ブルーはつぶやいた。 「ブルー、ピアスつけてるみたいだから。 たまたま店でこれ見かけた時に、ブルーに似合うかもって思ってたんだ。 今日売り切れてなくてよかったよ」 「いいの?こんなの…」 「いいって。誕生日プレゼントなんだし」

11 21/06/01(火)22:54:39 No.808868513

そう言って笑うレッドに戸惑ってしまう。 今日レッドからプレゼントを貰うのも。 彼からこんな素敵なものを贈られるのも。 ブルーにとって、予想だにしないことだった。 「誕生日のお祝いと、感謝の気持ちってことで」 「…アタシ、レッドに感謝されるような人間じゃないのに」 今までの罪悪感から、つい言ってしまう。 「むしろ初めて会った頃から迷惑かけたりいいように利用したりしたのに…。 あなたに怒られても仕方ないのに…」 「まあ前は確かにそうだったけどさ」 言いつつ、レッドは微笑みかけてきた。

12 21/06/01(火)22:54:55 No.808868608

「オレがピンチの時には助けに来てくれたり、仲間のポケモンだって貸したりしてくれたじゃないか。 今だともうオレの大事な仲間だよ」 ブルーの中の心の闇を晴らすような、暖かくも眩しい笑顔。 その笑顔に癒される。 「ありがとうな。ブルー」 彼の言葉が、ブルーの記憶の底にある両親の記憶とだぶる。 生まれてきてくれてありがとう、ブルー。 昔、確かに両親にそう言われた。 数少ない、両親の記憶。 過去の両親の言葉と、現在のレッドの言葉。 自分が生まれたことへの感謝の言葉。 それがブルーの心に染み渡った。

13 21/06/01(火)22:55:16 No.808868746

手元に、水滴が落ちる感触がした。 その後、自分の目元や頬が濡れていることにも気づく。 涙。 自分は今、泣いているのだ。 そう気づいても、涙は止まらない。 次から次へと、目から涙が溢れてくる。 「ブルー…?」 こちらを心配するレッドの声が聞こえる。 自分の存在を肯定してくれる人が。 ブルーは、衝動に駆られて彼に抱きついた。 「えぇっ!?」 驚くレッドの声を聞き流し、彼の肩に顔を埋める。 思ってたよりも大きな肩。 自分を支えてくれそうな固くて大きな肩。 そこに頭を預けると、自分の気持ちを受け止めてもらえる気がした。

14 21/06/01(火)22:55:35 No.808868861

「ブルー、周りが見てきてる…」 そうレッドに言われる。 だけど彼には申し訳ないが、その場から動く気になれなかった。 「ありがとう…。レッド…」 彼への感謝の言葉を紡ぐ。 と、レッドに頭を撫でられた。 優しく、大きな手。 その手で撫でられると、安心する。 心が癒される。 ブルーの気の済むまで、彼はそうしてくれた。

15 21/06/01(火)22:55:56 No.808868961

その後、帰り道。 もう涙は止まり、ブルーの顔は晴れやかな笑みになっていた。 「今日はありがとう。レッド」 「ブルーが喜んでくれたなら、よかったよ」 レッドも、安心したように笑った。 「来年も、アタシの誕生日祝ってくれる?」 「もちろん!」 「ありがと。じゃ、次はアタシがレッドの誕生日祝ってあげるね」 それじゃ、とレッドと別れて帰途に着く。 「…♪」 足取りが軽い。 鼻歌まで歌いたくなるほど気分がいい。

16 21/06/01(火)22:56:31 No.808869155

「来年の誕生日には、レッドなにくれるかな?」 自然と口から言葉が出て、驚く。 誕生日が、楽しみになっている。 レッドに、祝ってもらいたいと思っている。 彼に、また会いたいと思っている。 もっと一緒にいたいと思っている。 そのことを自覚して驚いた。 が、悪くは思わない。 楽しみだという気持ちは揺るがない。 今朝感じていた誕生日への忌避感が、 今はすっかり消えていた。 ならば、とシルバーに電話をかける。 「もしもし?」 「あ、姉さん。どうかしたのか?」 こちらを気遣うようなシルバーの声色。

17 21/06/01(火)22:57:07 No.808869388

それもそうだ。 この日に電話をしたのは初めてなのだから。 「もう、大丈夫よ。誕生日のこと。 今から来年の誕生日が楽しみ」 「…何があったかわからないけど、それはよかった」 安心したシルバーに、もう一つ報告をする。 「ねえシルバー」 「なんだ?」 頭に、先程優しくしてくれた帽子の男を浮かべて、 「アタシ、好きな人できちゃったみたい」 「なんだって!?」 予想通り、シルバーが驚愕した。

18 21/06/01(火)22:57:32 No.808869557

「そいつはどんな奴だ!?変な男じゃないだろうな!?」 「大丈夫。とっても優しくて、強い男よ。それじゃね」 「ちょっと姉さん…!」 長くなりそうなシルバーの追求を遮り、 ブルーは通話を切った。 ポケギアを懐にしまうと、思考に耽る。 あと2か月もしたらレッドの誕生日だ。 何をプレゼントしようか。 いつ告白しようか。 そう思いながらブルーは歩みを早めた。

19 21/06/01(火)22:58:05 No.808869742

それから時は経って。 ブルーの自宅の自室。 この日、20歳になったブルーは晴れやかな気持ちになっていた。 6月1日。 ブルーはこの日が好きだ。 自分の誕生日という、喜ぶべき日。 再会した両親が、毎年祝ってくれる日。 仲間も祝ってくれる。 たくさんの人たちが祝ってくれる。 大好きな人が祝ってくれる。 生まれてくれてありがとうと。 この日が来ないかと待ちに待ってまた一年が過ぎた。 そしてついに今年のこの日が来た。

20 21/06/01(火)22:58:28 No.808869892

高揚する気持ちを抑えきれず、外出する。 しばらく歩くと、レッドに会った。 駆け寄ると、彼から小包を差し出された。 「おはようブルー。誕生日おめでとう!」 「ありがとうレッド!」 抱きつきながら、ブルーは叫んだ。 レッドは戸惑いながらも抱き止めてくれた。 その優しさが、愛おしくなる。 「大好きよ、レッド」 つい、口をすべらせて告白してしまった。 そう気づいて羞恥でブルーの顔が赤くなる。 それを隠したくてレッドの肩に顔を埋める。 と、レッドが耳元でオレも、と囁いてくれた。 顔を見ると、頬を赤くしつつも優しく微笑みを向けてくれた。

21 21/06/01(火)22:58:45 No.808869985

よかった、とブルーは思った。 言ってから、もし失恋したらどうしようかと思ってしまった。 それが杞憂に終わってよかった。 安堵と嬉しさで、ブルーの心が満たされていく。 「レッドのハートも、貰っちゃった…」 そう言うと、レッドが面白いくらいに赤面した。 通行人からの視線を感じるが、構わない。 大好きな人がしょうがないなと苦笑して頭を撫でてくれる。 その安心感の方が、羞恥心を上回っているから。 そう思うと、また目から喜びの涙が溢れた。

22 21/06/01(火)22:59:03 No.808870088

以上です 閲覧ありがとうございました

23 21/06/01(火)23:00:09 No.808870492

あとブルー誕生日おめでとう! スレ画誕生日仕様用意するの忘れててすみませんでした!

24 21/06/01(火)23:00:25 No.808870582

お疲れ様です レブルの「よく見るとレッドがいつも主導権を握っている」とも言うべき関係がしっかりと主軸になっていて二人がこれまでに経験してきた出来事が昨日のように思い返せるようでした つまりレブル最高

25 21/06/01(火)23:01:55 No.808871108

今日はレブル三昧だな…良いことだ

26 21/06/01(火)23:06:54 No.808873067

レッドってこういうところしっかりしてるイメージある というか昨日言われてたけどだいたいの図鑑所有者は肝心な時にしか役に立っていないと思う

27 21/06/01(火)23:08:42 No.808873732

>レッドってこういうところしっかりしてるイメージある >というか昨日言われてたけどだいたいの図鑑所有者は肝心な時にしか役に立っていないと思う 最初から最後まで頼りになると早々に話終わっちゃうからな…

28 21/06/01(火)23:10:33 No.808874480

今回のは前の年末年始くらいに思いついて 半年くらい寝かせてたのとこのために年休取ったので すごいスムーズに書けました いつもこれくらいのペースで書きたい…

29 21/06/01(火)23:11:53 No.808874970

有休使うとか怪文書作者の鏡じゃん

30 画像ファイル名:1622556737201.png 21/06/01(火)23:12:17 No.808875124

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

31 21/06/01(火)23:13:43 No.808875649

>1622556737201.png ありがとうございます! ブルー美人! それのレッドの手が固そうでいい!

32 21/06/01(火)23:15:32 No.808876326

去年の今頃はimgがここまでレブルに溢れるなんて思いもしなかったな…

33 21/06/01(火)23:17:07 No.808876886

>去年の今頃はimgがここまでレブルに溢れるなんて思いもしなかったな… 去年の6月というとセ部屋ブームになる直前くらいか…かなり長続きしてるな

34 画像ファイル名:1622557146638.png 21/06/01(火)23:19:06 No.808877682

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

35 21/06/01(火)23:20:07 No.808878066

>No.808877682 ありがとうございます! 初めて描いてもらった気がするブルー両親!

36 21/06/01(火)23:22:33 No.808878964

というかimg全体見てもブルーの両親にスポット当たったのさっきのお乗の怪文書が初な気がする…

37 21/06/01(火)23:25:19 No.808879995

>というかimg全体見てもブルーの両親にスポット当たったのさっきのお乗の怪文書が初な気がする… 母の日とか花火大会とかのレブル怪文書で名前自体は出てはいるんだけどね ちゃんと出て喋ったのは多分お乗のが初

38 画像ファイル名:1622557622264.png 21/06/01(火)23:27:02 No.808880652

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

39 21/06/01(火)23:29:29 No.808881575

>1622557622264.png ありがとうございます! ブルーを受け入れつつ照れ顔のレッドいい!

40 21/06/01(火)23:32:29 No.808882679

通行人に見られてるの気ぶられてると思うとニヤニヤする

41 21/06/01(火)23:34:50 No.808883572

>通行人に見られてるの気ぶられてると思うとニヤニヤする 2人とも住んでるマサラタウンの住人だし 噂で交際話広まりそう

42 画像ファイル名:1622558269170.png 21/06/01(火)23:37:49 No.808884705

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

43 21/06/01(火)23:39:37 No.808885356

>1622558269170.png ありがとうございます! 嬉しそうなブルーいい! ブルーには幸せになってほしい…

44 21/06/01(火)23:44:08 No.808886934

レブルいいよね…

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