虹裏img歴史資料館

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21/05/31(月)21:23:59 前回ま... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1622463839867.png 21/05/31(月)21:23:59 No.808528218

前回までです sp91502.txt

1 21/05/31(月)21:24:17 No.808528341

「会長…いや、今はハルウララ君、だったかな。紅茶はいかがかな?」 「わあ~!のみたいのみたい!ウララにもこうちゃちょーだい!!」 「ふふふ…私特製の即効型栄養吸収式紅茶だ。たんと味わいたまえ。」 「そっこー…えいよー?」 「分かりやすく言えば砂糖を溶け切らなくなるまで入れた紅茶さ。これがなかなか美味いのだよ。」 アグネスタキオンがティーカップの中に角砂糖をひょい、ひょいと入れていく。湯気の立っていた紅茶は見る見るうちに砂糖に熱気を吸われ、わずかに熱を発するだけになった。 底に溶けきっていない砂糖が見えるようになると、ティーカップをシンボリルドルフ─ハルウララに差し出した。

2 21/05/31(月)21:24:29 No.808528419

「会長もいるかね?私特製の紅茶は。」 「…いや、遠慮しておこう。」 まともに飲めば頭の髄まで砂糖漬けになりそうなそれをやんわりと断りながら、ハルウララ─シンボリルドルフは消臭スプレーを体中に吹き付けまくっていた。 吐瀉物の臭いは全く取れず。それどころか消臭スプレーの臭いと混ざりより一層酷いものになっていた。 「これは…だめだな。くそっ…。」 結局、ハルウララはジャージの上着を脱いで鞄に仕舞うことしかできなかった。シャツまでには臭いが届いて無かったのは不幸中の幸いだった。 ハルウララは適当な席に座ると、アグネスタキオンの方に体を向けた。 「それで、信じてもらえただろうか?私と、この子─ハルウララの、精神が入れ替わっていると。」 アグネスタキオンがにやり、と不敵な笑みを見せた。 「ああ…流石にここまで見せられると信じぜざるを得ないというものだよ。正直この目で見るまでは疑っていたがね…。」 シンボリルドルフが紅茶を啜ると、眉に皺を寄せて「うぇ~」と舌を出していた。どうやら彼女の口にも合わなかったようだ。

3 21/05/31(月)21:24:41 No.808528503

「さて、実は昨日のあの後、ウマ娘の入れ替わりについて私独自で調べてみたんだ。同じような現象が世界中で起こっていないか、とはね。」 「それは私も調べたさ。だが、図書館のどの書籍にもそんな情報は載っていなかった。」 「ふふん、ところがどっこい。昨日だけで同じような現象についての情報を3件見つけたよ。」 「なっ…なんだって!?」 ハルウララが跳ね上がり、思わず叫ぶ。それもそうだ、どれだけ探しても全く同じような話についての情報が得られなかったというのに、 目の前の不遜なウマ娘はわずかな時間で3つも情報を得ているのだ。 「おい…大声を出さないでくれ。頭に響く…。なによりここがバレるのはお互いにまずいだろ?」 アグネスタキオンが両こめかみを人差し指でぐりぐりとこね回す。ハルウララは軽く咳払いし、着席する。

4 21/05/31(月)21:24:56 No.808528617

「まぁ見つからないとしても仕方ないさ。この手の話というのは表沙汰にはならないものなのだよ。こんな事を本気で話してれば 良くて妄想と一蹴、悪ければ病院送りだよ。頭のね。そしてたまに抑えきれなかったものが所謂"都市伝説"として世に蔓延るわけだ。」 そういうと、紅茶を一啜りする。口の周りには溶けきらなかった砂糖の残滓でまみれていた。それを研究着の眺めの袖で荒く拭うと、話を続けた。 「こういうのはね、その道の研究者に聞くのが手っ取り早いのさ。運よく私にはそんな研究者とコネクションがあっただけでね。」 ハルウララは目を丸くした。目の前のウマ娘はただのマッドサイエンティストかぶれとばかり思っていたが、まさかここまでの人脈を持つとは。 素直に感心し、同時に彼女に事の次第を信じて貰えたのは幸運だったと思った。 一方シンボリルドルフは早々に話に飽きたのか、紅茶の底に残った砂糖を溶かそうと近くにあった用途不明のガラス棒でティーカップの中身を混ぜていた。 もうその紅茶は飲まない方がいいぞ、と口には出さずともハルウララは目線で忠告する。…だめだ、聞いてない。

5 21/05/31(月)21:25:12 No.808528749

「それで、その3件の情報とやらについて聞きたい。」 仕方なく、ハルウララは目線を前に直す。 「あぁ。と言っても内2件はもう百数年も前の話でね。1つ目はイギリスで起こったことで、12歳と23歳のウマ娘で起こった現象だ。 12歳の方は交通事故で意識不明、23歳の方は脳卒中。2人は隣同士の手術室で手を施され、そして目が覚めると入れ替わっていたらしい。」 「手術中…?ちょっと待ってくれ、私とウララはどちらも病院なんて行っていないし、手術なんて受けていない。」 「だろうね。2つ目はアメリカで起こったらしく、18歳、良家のお嬢様同士での入れ替わりだ。この子たちはどちらも怪しい舞踏会…恐らくは、唾棄すべきドラッグパーティだろうね。 そこでしこたま薬を摂取し意識が飛んでいたところで入れ替わった、とのことさ。」 「薬、か…。当然私もウララも薬物は使用していない。それに、年齢はどうにも関係ないみたいだな。」 「あぁ。もっとも、古い話であまりこれといった情報は残っていないが。」

6 21/05/31(月)21:25:32 No.808528860

「…それで、3件目は?」 「そう、これが最も新しいケースだ。と言っても70数年前にもなるが。これはフランスで5歳と7歳の子供たちが入れ替わったケースだ。 この2人は海水浴をしていたらしいが、波にさらわれ溺れていたそうだ。引き上げられるも意識なし。すぐに救急搬送され、命に別条はなかったが精神は入れ替わっていたそうだ。」 「…この3件、すべてに共通していることがあるな。」 「あぁ。皆"近くにいる意識を失ったウマ娘同士"がいるときに起こっている。君たちもそうだったろう?」 交差点でぶつかって気を失ったことを思い出す。きっとハルウララもあの時意識を失っていたはずだ。 「そうだ、確かにその通りだ…。しかし…。」

7 21/05/31(月)21:26:00 No.808529028

「そう、この条件だとあまりにも報告件数が少なすぎるんだよ。"近くにいる意識を失ったウマ娘同士"で精神が入れ替わるなら、 毎日のように誰かと誰かが入れ替わっていなければおかしい。ならば、この3件に共通する隠された条件がまだ何かあるはずだ。だろう?」 ハルウララが頷く。やはり、論理的思考に関してはこのウマ娘は頭一つ抜けている。 「その点については抜かりはないよ。私も何か隠れた条件が無いか調べたさ。…すると、この3件には非常に興味深い"ある共通点"があったんだ。」 「共通点…?」 「そう。君たちは天文学に興味はあるかな?」 そういうと、アグネスタキオンはおもむろに立ち上がり、自分の鞄に近寄る。その鞄から、小さなファイルを取り出した。 そのファイルの1ページを、ハルウララに見せつけた。そこには、新聞紙の一片がファイリングされていた。

8 21/05/31(月)21:26:11 No.808529103

「"ウマレー彗星"…とは、聞いたことがあるかな?」 紅茶をかき混ぜることに熱心だったシンボリルドルフの耳が、跳ねるようにピクンと反応した。 「ウララしってるよっ!なんかすっごいすいせいなんだよね!このまえテレビでやってたよ!」 「そう、その通り。この彗星はある一定周期で地球に接近するんだ。そして…さっきの3件が発生した日時、そして君たちが入れ替わった日時、 そのどれもがこのウマレー彗星が地球に最接近した日なのだよ。」 「ウマレー…彗星…!」 俄かには信じがたかった。まさか彗星が私たちの精神を入れ替えた?なぜ?

9 21/05/31(月)21:26:23 No.808529189

「実はウマレー彗星は、ウマ娘の精神を離れやすくする効果があると言われていてね。お香の材料として使っている宗教もあるほどさ。」 「精神を…離れやすくする、とは?」 「ヒトとウマ娘の境界線は何か?─これはいまだに研究者の中でも論争が終わらぬ論題でね。 その中で、"ウマソウル"と呼ばれるウマ娘だけが持つ特異的精神構造がその境界線たるものだという説がある。 その"ウマソウル"が身体から離れるやすくなる…端的に言えば、幽体離脱に近い現象だと思えばそう間違ってはないさ。」 「そんな…じゃあ、幽体離脱した"ウマソウル"とやらが帰る身体を間違えたとでも?…あまりにもオカルトだ。」 「私も、いや私だけじゃない。多くの研究者が同じ意見だよ。もっとも、私に関しては君達を見ていると考えを翻しそうになっているがね。」 そう言うと、アグネスタキオンはファイルを閉じ机の上に置いた。そうして座りなおす。

10 21/05/31(月)21:27:01 No.808529420

「話をまとめよう。恐らくだが、以下の3つの条件を満たしているウマ娘同士は極めて高確率で精神が入れ替わるということだ。 1つ、近くにそのウマ娘同士がいること。2つ、両方のウマ娘が意識を失っていること。3つ、ウマレー彗星が地球に接近していること。」 目の前に出された結論は、あまりにも信じがたいものだった。しかしながら、ハルウララの表情は明るかった。 「つまり、同じ条件をもう一度満たせば、私たちは…元に戻れるということか!?」 やった、ついに見つけた。仮説とはいえ、ついに元に戻る方法を知り得たのだ!ハルウララは歓喜した。 「あー…うん。恐らくは…だが…。」 対して、アグネスタキオンは何かすっきりしない表情だった。ぽりぽり、と自分の頬を指で掻いている。 「どうした?なぜそんなに浮かない顔なんだ。…そうだ、ここまで調べてくれたんだ、礼をしなければな。何がいい?」 「いや、会長。どうか落ち着いて聞いてほしいんだが…。」 そういうと、アグネスタキオンは一呼吸おいて、話を続けた。

11 21/05/31(月)21:27:19 No.808529550

「先程、ウマレー彗星は一定周期で地球に接近すると言ったね?」 「? ああ…まぁすぐに戻れるとはいかないが、戻れる日が来ると分かればこちらのものだ。」 「そう。で…だ。次にウマレー彗星が最接近するのは… 75年後なんだ。」

12 21/05/31(月)21:28:24 No.808530027

次回に続きます。 劇場版あたしンちとほぼ同じ流れだと今日気付いてびっくりしました。

13 21/05/31(月)21:31:29 No.808531205

75年…

14 21/05/31(月)22:00:26 No.808542105

遠いなぁ…

15 21/05/31(月)22:13:45 No.808547253

75年は流石にキツいな… まぁ確かに現実でもそれくらいの周期の彗星ザラにあるが

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