虹裏img歴史資料館

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21/05/29(土)23:12:58 舞々は... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1622297578167.jpg 21/05/29(土)23:12:58 No.807835933

舞々はフランシュシュをやめた。 引退すると聞かされた時は幸太郎含めてみんなが耳を疑ったが、そもそも幸太郎が風呂場で気絶させた挙句に全裸のままで連れ込んだのをメンバーにしてやったことでチャラにしたようなもんなので、本人が抜けたいと言ったら強く止められる立場でもない。 デスクに向かった幸太郎は日記を開いて、まずは一文をしたためた。 『飛んだアクシデントから始まったことではあったが、舞々を入れたことはゾンビィどものみならず、自分にもいい刺激になった』

1 21/05/29(土)23:14:12 No.807836620

「あの子、スタイル良かったしね」 愛がそう言うと万年筆が日記を突き破ってデスクに埋まった。椅子ごとのけぞってぶっ倒れた幸太郎は血相を変えて起き上がって、デスクの隣に立ってた愛を怒鳴りつけた。 「スタイルとか関係ないわーい!」 「それ以外に誘拐してきた理由ある?」 「だから散々事故だっつっとるじゃろがい!向こうが勝手に入ってきて石鹸がツルッでドシンで床にゴーンで気絶したんだから俺はじぇんじぇん悪くありませーんー!だいたいこれから浴槽に入るってのにあんなでっかいバスタオル巻いたままで入ってくるなんてマナー違反だし人の石鹸は踏んで潰すし、いくらなんでもうっかりさんにも程があるんじゃーい……」 とまで捲し立ててから、ようやく愛の存在のおかしさに気がついた。 「なんでいるのお前」 思わず素に戻って聞いた。愛の答えを待たずに鍵がかかっていたはずの扉を見ると、鍵のすぐ横に手が通りそうなぐらいの小窓がしつらえてあった。 「アンタがいない間に、純子に仕込んどいてもらったんだけど」 「ワーオ!ゾンビィはびこる洋館らしく仕掛け盛り沢山のリフォームしてもらっちゃって幸太郎さん大カンゲキー!」

2 21/05/29(土)23:15:09 No.807837252

幸太郎はまた大きくのけぞってから、舌が絡み合いそうなぐらいに愛に顔を近づけてメンチを切った。 「ってなるわけあるかーい。扉を破るなら破るで、ゾンビィらしく体当たりで入ってこんか!」 「絶対イヤ。壊したら壊したで、私に直させるんでしょ」 「分かっとんなら穴を開けんな、ボケ!」 愛は耳のないふりをして答えない。ともかく穴開き日記を救出すべく、机面に突き立った万年筆を引っこ抜く作業に取り掛かった幸太郎に、愛が語りかけた。 「ちょっと、考えたのよ。さくらも、アイドルに憧れた普通の高校生だったわけでしょ」 「そのようだな」 万年筆が抜けた。余計なことまで口走りそうで、その通りだ、とはうかつに言えなかった。 「だとしたら、もし、さくらが生きていたなら、舞々みたいに、違う道を選ぶことに決めたかもしれないわけよね。さくらの熱意を疑ってるわけじゃないけど、可能性の話として」 「……もし生きてたらの仮定は、するだけ無駄だろう。第一、俺には、さくらの過去に何があったかなんて、知ったことじゃない」 「そうかもね」 愛の首肯の真意は知れない。

3 21/05/29(土)23:16:26 No.807837865

「よく分かってんじゃない。もう全部終わった話なのよ。だって死んだんだから。私にとっても、今のアイアンフリルは立派なライバルよ。例え生きていても、きっと戻らない。……けどね」 日記をしまって立った幸太郎の顔を、愛は真っ直ぐに見た。 「舞々と違って、私たちは死んでる。さくらも、それは分かってる。他に選べないの。だから、アイドルに打ち込んでる。今の私たちは打ち込むしかない。そのことを忘れないで」 「忘れたことはない」 幸太郎にとって、それは嘘偽りのない答えだった。舞々を見るまでは、それがどんな意味を持つのか、忘れかけていただけだった。目を逸らしていたのかもしれない、と、ふと付け加える。 愛は続けた。 「私は、後悔も挫折も、全て乗り越えると決めてる。死ぬ前からずっと。そして、さくらも、乗り越えてきてくれた。他のみんなもそう。だからアンタも、もう二度と折れないで。アンタについてきてやった私たちに、後悔をさせないで。生き返って、ここまで来たことを後悔させないで。もうあんな目に遭うのは二度とゴメンだからね」

4 21/05/29(土)23:16:50 No.807838060

しばしの沈黙が部屋を包んだ。そして幸太郎は小指で耳をほじって、口を開いた。 「……え?愛ちゃん、何て?」 「は?」 声のトーンが明らかにふざけている。不審げに目を細めた愛が見つめる幸太郎の口元が、嘲りの形にニイと歪んだ。そして懐からICレコーダーを取り出して、さっきの言葉を再生した。 『生き返って、ここまで来たことを後悔させないで』 「はーいカッコええ愛ちゃんのおことばいただきまーしたー!」 「はあー!?人がマジメに相談しにきたらお返しがそれ!?なんなのアンタ!?」 幸太郎はまたもやふんぞり返って、鼻からボーボー蒸気を吹いて威張っている。 「お前みたいな腐れゾンビィに心配されるほどヤワな巽幸太郎さまじゃないんじゃい!」 「ついこないだまでぽっきり折れて落ち込んで一ヶ月も飲んだくれてたのはどこのどいつよ!」 「はい、マジメな愛ちゃんやーらしか!やーらしか!」

5 <a href="mailto:おわり">21/05/29(土)23:17:34</a> [おわり] No.807838474

「うっさーい!」 愛の怒りが爆発した。こんなこともあろうかとスイッチにしておいた本棚の背表紙を力一杯押し込むと、天井に吊ってあった大ダライが幸太郎の頭めがけて落下した。 「うわ超いったーい!」 タライの中には大量のウナギが飼われていた。ヌメヌメのウナギに埋まって頭を抱える幸太郎を残して、憤然と愛は部屋を出た。  「ゲシャシャー!」 「わほー!」 残された肉食の佐賀産ウナギの群れが、幸太郎に牙を剥いた!一人の人間と無数のウナギの、生存を賭けた新たな戦いが今、始まる!

6 21/05/29(土)23:27:40 No.807843780

真面目な幸愛からの >残された肉食の佐賀産ウナギの群れが、幸太郎に牙を剥いた!一人の人間と無数のウナギの、生存を賭けた新たな戦いが今、始まる!

7 21/05/29(土)23:58:08 No.807859366

よか…

8 21/05/29(土)23:58:31 No.807859545

おかしいじゃろがい!

9 21/05/29(土)23:59:01 No.807859770

よかよか!

10 21/05/29(土)23:59:43 No.807860073

信頼感のある幸愛は健康に良い

11 21/05/30(日)00:08:55 No.807864246

よか…

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