虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    21/05/29(土)15:03:48 No.807645985

    少し長いよ 何時からだったでしょう。 世界に彩りが消えたのは。 何時からだったでしょう。 喜びが消えてしまったのは。 何時からだったでしょう。 この胸がチクチクと痛み出したのは。

    1 21/05/29(土)15:04:52 No.807646253

    ある日、今日も日課のトレーニング(8x8のルービックキューブをやりながら将棋とチェスをやる)をやり遂げてアタシはジャスタの奴に声を掛けた。 「ようジャスタ。飯食いに行こうぜ、飯」 アタシが気軽に声を掛けるとジャスタの奴はお新香でも食ったみたいな少ししょっぱい顔をした。 「ごめんなさい、我が友。私は用事がありますから」 このゴルシちゃんはハハーンと察した。疲れた体を芦毛のウマ娘を見て癒されたいのだと。 そう問い掛ければジャスタの奴は一言「違います」と呟いて去って行った。 …なんだってんだ? 状況証拠が少なすぎて流石のゴルシちゃんの灰色の脳細胞でも推理しかねるぜ。

    2 21/05/29(土)15:05:27 No.807646408

    そんなもんだからよー、彼奴の事を暫く観察してたんだよ。トレーニングは見た感じ真面目にやってんだよ。飯も普通に食う。口数が少なくて、良く言えばミステリアス。悪く言えば何考えてんのか分かんねえ。何時も通りの彼奴だったさ。 ただ一つを除いて、な。 そう、それは彼奴のライフワークの芦毛観察さ。何時もなら「お前芦毛なら誰でも良いのかよ」って言って彼奴の敏感な耳を噛みに行く所なんだが、目の前に綺麗な芦毛が居るってーのに、心此処に在らずって状態。 こりゃ流石におかしいぞ、と思って彼奴と一緒に何かとウマ娘に情熱を献げるデジタルの奴に声を掛けたが 「あ°っっっ」 とか妙な奇声を上げて死んじまった。放っといたら勝手に蘇生したので此奴の事は無視する事にした。

    3 21/05/29(土)15:05:55 No.807646512

    どうした物かと手をこまねいて居て思う様に埒が開かねえ。 そんなある日、フラッと彼奴はトレーニングをほっぽり出して何処かに行っちまった。 しょうがねえなぁ。可愛い親友の首根っこでも捕まえて来るか。序でに何でボンヤリしてるのかも聞いてやろうかな、と思った所だ。 アタシの背後からザクザクザクザクと凄い勢いで駆けてくる足音が響いた。次の瞬間。 「ちぃえすとおおおおッ!!!!」 背中にドデカいフライング・クロスチョップが飛んで来やがった。 「ぐへえっ!?」 アタシは突っ込まれた勢いのままターフの上を転がる羽目になった。背中の痛みに耐えながら、頭にドンドンと血が上る。 「何しやがんだ、この筋肉バ鹿の脳みそスカスカなゴリラマッチョお嬢!」 「誰が空っぽ頭ですか! 頭足りてないのは貴女の方でしょうに!」 頭髪に一房の白髪に、欧州ハーフ特有の黄色味の強い鹿毛のウマ娘は服に付いた芝の葉をパタパタと払い落としながら言い返す。ゴリラマッチョお嬢こと、ジェンティルドンナだった。

    4 21/05/29(土)15:06:26 No.807646629

    「んだこらぁ? この天才才女のゴルシちゃんに向かって脳足りんだあ? 黄金のドロップキックでテメェの腹の中ハンバーグにしてやろうか?」 アタシがガチめの威嚇をするとお嬢はやれやれとばかりに手を頭に添えて首を振った。無駄に様になるのがまたムカつくんだよ此奴。ゴリウーの癖に。 「貴女、ジャスタウェイさんの事を調べる前に自分の身の振りを思い返した事はありませんの?」 「んだよ。ゴルシちゃんは毎日がゴルシデイズだぜ」 「それですわよ!」 お嬢はビシッとアタシの事を指さした。ヒトに向かって指さすのはお行儀が悪いんだぞ、っと。 「貴女の何気ない振る舞いが貴女とジャスタウェイさんとの仲に綻びを産んでるんですわ!」 「んな事ねえだろ。アタシとジャスタの仲だぜ? 黄金の竹バの友と言っても…」

    5 21/05/29(土)15:06:54 No.807646746

    そう言おうとした瞬間、お嬢はアタシの胸倉を掴んできた。鋭い目付きで目尻に僅かに涙を浮かべて。何だってんだ? 「その傲慢さが! 今にも貴女達の友情を引き裂こうとしているんですの! バ鹿じゃありません事!? 思いや気持ちは伝えなければ何も意味はないんですのよ!? 先日、貴女が『そうされた』様に!」 …話を聞いてアタシは事の次第を把握した。胸倉を掴むお嬢の手に優しく触れて、手を下ろさせる。 「…悪ぃ。後は任せる」 「さっさと抜錨なさいまし! この鈍間! ボヤボヤしているとあの子はJust Away(貴女の手から逃げ出して)してしまいますわよ!」 応援とも取れるお嬢の罵声を受けて、アタシは力強く踏み込んで走り出した。

    6 21/05/29(土)15:07:17 No.807646882

    …ゴールドシップさんが走り出した背中を見つめて、わたくしはフゥ…と溜め息を吐きましたわ。 「…貧乏くじですわ、こんな事」 そう呟くと不意に背中を優しく撫でられましたわ。 「お疲れ様、ドンナちゃん」 「シオン先輩…!」 其処には穏やかな表情を浮かべているバリアシオン先輩が立っていましたわ。 「ドンナちゃんは本当に優しいね。ゴールドシップちゃんとジャスタウェイちゃんの事を気に掛けてあげるなんて」 「そんな事ありませんわ、そんな事…私はただ、ライバルを失いたく無かっただけで…」 じわりじわりとわたくしの目尻に涙が浮かぶびますわ…。 「…羨ましくだなんて…あの方達が羨ましくだなんて…微塵も…!」 …嗚咽を漏らすわたくしをバリアシオン先輩は優しく抱き締めて下さいました。

    7 21/05/29(土)15:07:46 No.807647004

    アタシは最寄りの川辺に来た。昔小さなチビだった頃、彼奴が言った事を覚えている。 「キラキラ光る水面はね。芦毛の女の子の髪が輝いてるのに似てるんだよ」 本当にあの頃から芦毛バ鹿だなぁ、なんて思うが今と成っちゃ、マックイーン達の髪が光で輝くのを見た事があるから彼奴の気持ちが少しは分かる。 何処だ、何処だと走り回って暫し。ゴルシちゃんアイが彼奴の姿を遠くに見付けた。アタシはゆっくりとペースを落として、ジャスタの奴に近付いた。 「…隣、良いか?」 アタシは少し、ぶっきら棒に聞いた。 川の水面をボンヤリと眺めてたジャスタの奴がアタシを見つめる。 「…嫌って言ったら?」 「ジャスタの手ぇ握って座る。逃がさない」 そう言うとジャスタの奴は寂しそうな苦笑を浮かべて「良いよ…座って」って言った。

    8 21/05/29(土)15:08:11 No.807647109

    アタシはドサッと原っぱに腰掛けた。手入れのされてるターフと違ってチクチクする。 少しの間、どう話を切り込んだら良いか分からないから、アタシは真っ直ぐスパートを駆けた。 「アタシに何か不満とかあるか?」 「…無いですよ、我が友」 「じゃあさ、アタシが何かお前に嫌な事しちまったか?」 「…それも、無いですね…」 「……もしかして、さ。アタシが後輩に告白されたの、何処かで知ったか……?」 「…!」 アタシの言葉でジャスタは明らかに身動いだ。 「逃げるなよ。話すから」 先手を打って、アタシはジャスタの手を握る。 「好き者ってのは居るもんだな。アタシに恋しちゃったんだとよ。だけど、丁重に断った。アタシには唯一無二の大切な奴が居るからな」

    9 21/05/29(土)15:08:42 No.807647256

    言葉を連ねていく毎に、彼奴の脈拍が増えていくのが分かった。 「…見ちまったんじゃねえか? 偶然。放課後の空っぽの教室で、アタシが誰かにラブレターを差し出されたの」 アタシは逃げ出そうとするジャスタの手を引いて、原っぱに押し倒す。 「アタシは断った。此れでも不安か?」 アタシの問い掛けにジャスタの奴は唇を震わせた。 「そうですよ! 不安でしたよ! 貴女が誰かに取られてしまうんじゃないかって! 私達の関係が壊れてしまうんじゃないかって! 碌に眠る事も出来なくて! 不安で不安で、悲しい気持ちがいっぱいになって…!! 頭の中ずーっとボーッとしちゃって…!」 言葉の最後には、涙目で涙声のぐじゅぐじゅになった親友がアタシの目の前に居た。

    10 21/05/29(土)15:09:15 No.807647403

    「ゴメンな。ゴルシちゃん、ちょっと周りが見えてなかったわ」 「ばか…! ばか…! わがとものばか…!」 めそめそと泣くジャスタの頬を優しく撫でて、アタシは片手で耳に付けてたリボンを解いた。 「ちょっと気が早いかもしんねーけど…アタシ達はウマ娘なんだ。スタートが早くても悪くねえだろ。改めてまた今度買いに行こうな」 そう言うとアタシはジャスタの左手の薬指に優しくリボンを巻いた。 「ジャスタ、愛してるゼ…絶対放さないかんな。お前は未来永劫ゴルシちゃんの物だからな。黄金の舟のたった一人だけのお客様だかんな」 「わがとも…わがとも…」 原っぱに寝転がるジャスタに顔を近付ける。 アタシの芦毛がカーテンになって、恋人のキスが交わされた。

    11 21/05/29(土)15:10:07 No.807647628

    尾終い 甘ったるい話を書きたかっただけです。 お嬢とバリちゃん先輩のウマソウルを仮実装しました。 お嬢の髪が黄色なのはハーフらしいのと個人的な趣味です。 バリちゃん先輩のバレエの話を先に書かれてちょっと悔しかったです。 反省も後悔もしてません。

    12 21/05/29(土)15:12:41 No.807648314

    ア゜

    13 21/05/29(土)15:15:20 No.807648949

    とか妙な奇声を上げて死んじまった。

    14 21/05/29(土)15:34:01 No.807653795

    すれ違う恋心いいよね

    15 21/05/29(土)15:35:13 No.807654085

    バリちゃん先輩は無限に優しいな…