虹裏img歴史資料館

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21/05/28(金)21:09:27 前回ま... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1622203767325.png 21/05/28(金)21:09:27 No.807402511

前回までです su4884761.txt

1 21/05/28(金)21:09:42 No.807402648

『明日の午後5時に、この教室に2人で来たまえ。そこで初めて100%信用しようじゃないか。』 アグネスタキオンの声が脳内に反響する。その声で目を覚ましたハルウララ─シンボリルドルフは、ベッドから起き上がる。 タキオンと約束をした後、寮へ戻るとどっと疲れが噴き出た。よく考えれば、昨日から奔走し今日まで気が張り続けていた。 気付くとベッドの上でシャワーも浴びずに寝落ちてしまっていた。 「ふぁ…。そう朝に強い方ではないが、流石にここまでしっかり寝ると目覚めもよいな。」 シャワーを浴び、ベッドを整える。隣のベッドはもう空いていた。キングヘイローは相変わらず自主練習をしているみたいだった。 「さて…とりあえず生徒会室に行って残っている仕事を片付けなければ…。」 そこまで考えてふと気付く。今の私はハルウララだ。そして今日は月曜日、平日。 「…もしかして私は、中等部に行かないといけないのか…?」 ハルウララの名誉の為に、選択の余地はなかった。

2 21/05/28(金)21:09:59 No.807402800

「あ、ウララちゃんおっはよ~!今日はすっごい早起きだね!」 「ウララちゃんおはよ!今日もキングに起こしてもらったの?にしては早いねぇ~」 「うえっ、ウララちゃん!?どうしたのこんな時間に…?」 いつもの時刻に登校してくるだけで、こんな挨拶が山ほど返ってきた。どうやらハルウララも少し…いや、相当朝に弱いみたいだ。 「今日は少し早く起きてしまってね。早起きは三文の徳、というだろう?」 そういうと自分の席に着く。鞄から教科書を取り出し、机に仕舞う。一時限目の授業に備えて軽く復習でもした方がよいか。 「う、ウララちゃんの鞄から教科書が出てきてる!?どうしたのウララちゃん、今日はすっごく…すっごいね!」 言葉を選びすぎだろう、スペシャルウィーク。しかしいつもは鞄に何を入れているんだ?

3 21/05/28(金)21:10:17 No.807402963

「はい、それではクラシック三冠と呼ばれる3つのレースは何でしょうか?誰かわかる人はいるかしら?」 先生が教室に問いかける。当然すでに習っている単元である。ここは身体を借りている手前、多少なりともハルウララの株を上げておくべきか。 すっと手を伸ばし、声を出す。 「はい、先生。」 「はい、ハルウララさん、ハルウララさん!?ほんとに!?あなた本当にわかるの!?」 あまりにも猛烈な食いつきに面喰いつつ、問いに答える。

4 21/05/28(金)21:10:30 No.807403081

「え、えぇ…皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つをまとめて通称"クラシック三冠"と呼びます。 このレースに出場し勝利することが、クラシックでの最大目標といっても過言ではありません。 また、それとは別に桜花賞、オークス、秋華賞の3つはまとめて通称"トリプルティアラ"と呼ばれており…」 先生が腕をがっしと掴む。身体を震わせながらこちらを待望の表情で見た。 「すっばらしい…ハルウララさん、百点満点ですよ!!ずっとあなたもやればできるって思ってたの…!!」 よく見ると、先生の足元に水滴が落ちている。その源流は先生の瞳からだった。 「先生!?な、なにも泣くことは…」 「いいえ!今日は私にとっての記念日ですっ!ハルウララさんが…ちゃんと起きてて質問に答えれた記念…!」 (えぇ…?)

5 21/05/28(金)21:10:40 No.807403166

そんな調子が昼休みまで続いた。どの先生も驚きなり感動なりしてたあたり、普段から先生方の期待をたくさん背負っているようだ。期待通りかはさておき。 昼休み、昼食の為に食堂へ向かう。この時にも、いろんな人から声をかけられた。 「やぁウララちゃん、新しいにんじんクッキーが入荷したから食べてってよ!」と購買のおばさん。 「ウララちゃん!今日も食堂?一緒にご飯たべよーよ!」と他のクラスのウマ娘。 「ウララさん?この前の怪我は大丈夫?何かあったらすぐ保健室に来るのよ」と保健室の先生。 そして食堂では、いろんなウマ娘に囲まれながらの昼食になった。 「私ね、今度模擬レースに出るんだー!ぜったい1着とるもんね!」 「今日のご飯はにんじんハンバーグにしたの!あとはにんじんプリンもつけちゃった!」 「ねぇ~ウララちゃん、今日の実技で一緒に並走しよ!ウララちゃんと走るとすっごく楽しいの!」 ハルウララは喧騒に包まれながら、にんじんチャーハンを口に運ぶ。こんなにぎやかな食事はいつぶりだろう。

6 21/05/28(金)21:11:03 No.807403354

そういえば私がシンボリルドルフだった時には、普段誰と話していただろう? 「会長、こちらが次の会議に必要な資料です。ご確認お願いします。」 エアグルーヴと─ 「会長、あんまり私に面倒なことをさせるなよ…やれと言うならやるがな。」 ナリタブライアンと─ 「ねぇ~カイチョー!今日一緒にカラオケ行こうよ~!…生徒会の仕事がある?え~いいじゃん!!」 トウカイテイオーと─ …あぁ、それくらいしか思いつかない。しかもテイオー以外は生徒会としての業務的な会話ばかりだ。 それが、ハルウララとして過ごしたこの半日だけでたくさんの人に話しかけられた。それも、皆ハルウララという一ウマ娘に対して大きな親しみを持って、だ。

7 21/05/28(金)21:11:21 No.807403527

私の目指す本当の"皇帝"─誰からも親しまれる、皆を導く存在としての姿が、ここには自然とそこにあった。 「…羨ましいな。」 気付くと、そう口にしていた。実際、ハルウララは私に持っていないものを持っている。それも、どれだけ望んでも私だけの力では決して手に入らない尊いものだ。 「ね~ぇ、ウララちゃん!聞いてるの~!?」 「…ああ、聞いてるとも。午後から並走だな。ともに走ろうじゃないか。」 「なんか今日のウララちゃんちょっとかっこいーかも!うふふ!」

8 21/05/28(金)21:11:32 No.807403612

午後、実技の授業でグラウンドに生徒たちが集まる。 「それでは今回は、砂の1600mを走りましょう。タイムを測定し、結果を私まで報告してください。」 各自でストップウォッチと記録を書き込む用紙を挟んだバインダーを教員トレーナーから受け取ると、散り散りトラックへ向かっていった 「ね、ハルウララちゃん!私たちも早くはしろーよ!」 昼休みに並走を申し込まれたウマ娘に引っ張られ、ゲートまでやってくる。 (ダート1600mか…距離もバ場も慣れてないが、走るしかないな。) ゲートに入り、開扉のスイッチを押す。ガションと音が鳴り、同時に2人が飛び出した。 「やああぁぁーーーーっ!!!」 相手のウマ娘がぐんと突き放す。一方ハルウララはスローペースで走り始めた。 (想像以上に足が砂に取られる…!うまく地面を蹴りだせないからパワーが分散してしまっている…!!) 砂に足がとられる感覚に苦戦する。すでに5,6バ身の差が付いている。 (素直に走ると足が表面を滑ってしまう。それなら…!)

9 21/05/28(金)21:11:48 No.807403733

教員トレーナーが、遠巻きに2人の並走を見る。 「うん、あの子はしっかり走れているな。しかし…やはりハルウララはかなり離されてしまっているな。」 このまま順位は変わらずゴール、2着ハルウララ。よく見た光景のはずだった。 「…ん?ハルウララの走り方が…変わった?」 (まず滑らないように、足全体で砂を掴むイメージで!) ズンと踏み込みを深くし、足の平全体を地面に食い込ませる。 (掴んだ砂は─そのまま後ろに蹴り上げる!!) 瞬間、ハルウララの足元から砂が宙に舞いあがった。ズバァンと地面が抉れる音が、後からやってきた。 「…えっ?」 聞き覚えのない音、先頭を行くウマ娘が、つい後ろを振り返ってしまった。 そこには、砂の海を征く皇帝がいた。

10 21/05/28(金)21:12:59 No.807404404

次回に続きます。 会長もダートの適正さえあれば賢いのですぐ走法を最適化できるような気がします・

11 21/05/28(金)21:15:03 No.807405417

このままではウララが砂のシンボリルドルフと呼ばれてしまう…

12 21/05/28(金)21:17:12 No.807406615

次回は会長パートかな?

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