21/05/26(水)20:49:51 前回ま... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1622029791946.png 21/05/26(水)20:49:51 No.806737150
前回までです su4880046.txt
1 21/05/26(水)20:50:07 No.806737238
「シンボリルドルフさんの脳には特に異常は見当たりませんでした。まぁ数日間よく養生なさってください。」それが主治医から言い渡された"診断結果"だった。 東京大学医学部付属ウマ娘病院─日本最大級のウマ娘医療機関である病院の中庭で、診断結果がお気に召さなかったナリタブライアンが腕を組んでいた。 「つまり、会長の脳味噌には一切問題なくあの性格になってるってことか…」 病院内の購買で買ってもらったバナナ味のシリアルバーを齧りながら、イライラを隠そうともせず激しく尻尾を揺らしていた。 「まぁ、日本で最もウマ娘の医療研究の最先端であるここでそう診断されたなら、そういうことなんだろう。」 付き添いでやってきたビワハヤヒデが、ブライアンをなだめる様にそう言った。 「納得できるわけないだろ…!姉貴は本気で、会長が素でああなっているっていうのか?」 指さした先で、この話の張本人であるシンボリルドルフが蝶を追い掛け回し、飛び出た石に躓き盛大に転倒していた。
2 21/05/26(水)20:50:28 No.806737366
「えへへ…ちょうちょつかまえよーっておもってたらころんじゃった…」 「チッ…ガキかアンタは…」 足を擦りむいたルドルフに、予備の絆創膏を渡す。「ぶらいあんちゃんとおそろいだ!」と喜んだルドルフを見て、ブライアンは頭を振った。 「脳味噌が無事ってことは、前の話通りならストレスが原因…ってことか?」 「うむ…そうなるといよいよ治療は困難になるな。基本的には周囲の理解と協力が必要になる。根気よく付き合っていくしかないな。」 「おいおい、勘弁してくれ。そうなったら入院させた方がいいに決まっている…」 「ブライアン、少なくとも会長は"身体的には"問題ないんだ。とにかくここは一度出直すしかないだろう。」 「…クソッ…!」 ぶらいあんちゃん、どうしたの?と聞いてくるルドルフを無視しながら、ブライアンは学園へ戻るほかなかった。
3 21/05/26(水)20:50:45 No.806737491
~~~ トレセン学園のスクール・モットーである"Eclipse first,the rest nowhere."─「唯一抜きん出て、並ぶ者なし」の元、 文武両道のウマ娘を目指すべく、学園にはあらゆる施設が充実されている。 とりわけ、図書館には古今東西の名書が取り揃えられており、智を求める読書家たち垂涎の空間となっていた。 そしてそこに大量の書籍に囲まれたウマ娘が一人、難しそうな顔でページとにらめっこしていた。 「ふーむ…これにも書いてない、ときたか…まぁ予想通りではあるのだが…」 どさり、と重い本を机に置き、腕を組んでいるハルウララ─シンボリルドルフは、朝早くから図書館で本を読み込んでいた。 『精神の有り方とその調和』『心と身体─ウマ娘の心理学』『事故名鑑 ウマ娘の接触事故編』『ウマ娘とヒト 文明の歴史を紐解く』などの 分厚い本が机に積まれているものの、どれもハルウララの望む情報は載っていなかった。
4 21/05/26(水)20:50:59 No.806737583
「やはりどの本にも、ウマ娘同士の精神が入れ替わる現象についての情報は一切無かった。こうなると最早打つ手なし…なのか?」 ハルウララがかぶりを振る。それではだめなのだ。自分にはあらゆるウマ娘達が幸福になれる世界を創る使命がある。ここで立ち止まるわけにはいかなかった。 答えのない自問自答を繰り返しうんうんと唸っていると、後ろから声が聞こえた。 「もしかして…ウララちゃん!?どうしたの…その本?」 振り返ると、そこには大きなツインテールとティアラが象徴的なウマ娘─ダイワスカーレットがいた。
5 21/05/26(水)20:51:12 No.806737666
「へ、へぇ~、ウマ娘同士の心が入れ替わることがあるのかを調べてた…ね…。」明らかに呆れたような、あるいは同情するような顔でこちらをスカーレットが見る。 当然だ。私だとして平時なら、まずどのようにこの安易なSFで染まりきった子を傷つけることなく諭すかを考えるところだろう。 しかしながら、今の私はなりふり構っていられなかった。なんでもいい、ヒントが見つかるならなんだってしてやる。本気でそう思った。 「珍しく読書してると思ったら…まぁ、読んでる本的には結構本気で調べてるっぽいけど…」 「しかし、どの本にもそのようなことは書いていなかった。」 「でしょうね…」 うーんと考えるスカーレット。やはり駄目か…。 「あっ、でももしかしたら…」その言葉を心底望んでいたのだろう。気付けば食いつくかのように身を乗り出していた。
6 21/05/26(水)20:51:36 No.806737830
「な、なんでもいい!どんな情報でも教えてくれないか!」 「わ、わかったから!静かに!ここ図書館だからっ!」 ハッとする。休日とはいえ、ここを訪れる生徒の数は少なくない。そっと周りを見渡すと、皆こちらを見ている。 「す、すまない。それで、何か知っていることが?」小さな声で、スカーレットに聞き返す。 「知っている、っていうか…私じゃないけど、そういうのに詳しそうな人ならいるわよ。」 「何っ!?それは誰なんだ?」 「ふふん、高等部のアグネスタキオン先輩よ!タキオン先輩ってすっごく頭がいいし、こういう話にもきっと詳しいと思うわ! 今日みたいな休日なら、誰も使ってない第四教室によくいるけど…」
7 21/05/26(水)20:51:46 No.806737897
アグネスタキオン!生徒会では主にトラブルメーカーとしてその名を聞くばかりだったが、なるほど彼女なら私たちの知らない知の領域へ歩を進めているかもしれない。 「…なるほど、確かにその視点は抜け落ちていた。うん!ありがとう!助かったよ!そうと決まればこうしてはいられないな…!」 そういうとハルウララは図書館を飛び出し、どこかへ駆け出してしまった。 「…って、この本たち片付けてから行きなさいよー!!」 「す、スカーレットさん…図書館ではお静かに…」 その後、ゼンノロブロイとスカーレットが本の片付けに奔走したのは言うまでもない。
8 21/05/26(水)20:52:07 No.806738043
アグネスタキオン。生徒会でも明確に要注意人物としてマークされているウマ娘だ。 本人曰く、「崇高な目的のための実験」と称し、自他構わず怪しげな薬や実験に付き合わせトラブルを起こす問題人物だった。 そんなマッドサイエンティストが根城にする人気のない教室の前に、ハルウララは立っていた。 息を整え、扉をノックする。 声は帰ってこないが、足音が近づいてくるのははっきりと分かった。がらり、と引き戸が開かれる。 「…君は?」 ぎょろり、と濁った瞳でこちらを見下ろす。小柄なハルウララから見える世界では、彼女は大きな怪物のようにも見えた。 「…中等部のハルウララです。タキオン先輩にお話が…」 「そうかい。あいにく私からは無いよ。」そう言って閉めようとする戸の間に片足を突っ込み、話を続ける。 「あなたにお尋ねしたいことがあるのです!どうしてもお時間をいただけませんか!」 「しつこいねぇ。それに、その話とやらには私にメリットはあるのかい?」 そんなものは、当然無い。だからと言って引き下がるわけにはいかなかった。 「お願いします…この話を聞いていただけたら、あなたの言うことをなんでも聞いてあげます!」
9 21/05/26(水)20:52:40 No.806738268
「あいにくその役目はモルモット君で十分なんだ。私も生徒会から目をつけられているんでねぇ、最近は派手な動きもできないんだ。」 戸を閉める力が強くなる。足に伝わる痛みがじわじわと増してくる。 「おい、いい加減にしてくれたまえ。君も自分の足は大事だろうに…」 「話を…どうか…一度だけでも…!」 ふーっ、とタキオンがため息をつく。 「そもそもここは私のとっておきの隠れ家なんだ。こんな目立つことはやりたくない。誰からこの場所を聞いたんだい?」 「…同じ中等部の…ダイワスカーレットから…」 「スカーレット…あの子が…ふむ。まったく、あの子もなかなか厄介だねぇ…」 そういうと、力が弱くなった。がらり、と戸が開く音がする。 「あの子が教えるってことは、君も中々信用されてるみたいだ。ま、彼女に免じて一度だけ話を聞いてあげよう。」
10 21/05/26(水)20:53:50 No.806738702
次回に続きます。 中等部から見たらタキオンって結構怖い人物に見えるのではと思いました。
11 21/05/26(水)20:58:28 No.806740426
タキオンは確かに外から見たらこんな感じだな 実験の邪魔されたら怒りそう
12 21/05/26(水)21:21:37 No.806750022
待ってた
13 21/05/26(水)21:22:55 No.806750592
前回だったか前々回だったか ウララボディの会長が走り出したとこでまた別のウマ娘とぶつかって さらに入れ替わりが起きるかと思った
14 21/05/26(水)21:25:39 No.806751786
まあ会長が「うっらら~」とか言いだしたらまあ病院だよな
15 21/05/26(水)21:26:27 No.806752151
大丈夫? これちゃんと収拾つく?