21/05/26(水)00:57:13 「えー... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1621958233169.png 21/05/26(水)00:57:13 No.806522096
「えー、まだあの合宿所で合宿やってるのー」 「えーって何ですか」 「いやさ、あの合宿所って昔からエアコンも無いし、もうかなり古くなってるでしょ」 「まあ、多少古くなってるというのは否定しませんけど」 合宿所へ向かうバスの中で彼女はそう愚痴を零す。 「……グラスワンダーさんの様子はどうですか?」 「あー、練習には参加できそう。だけど何かなあ……」
1 21/05/26(水)00:57:33 No.806522179
「何か気になることでも?」 「すごい曖昧な言い方になっちゃうけど、感情が動いてないっていうのかな」 「もう少し分かりやすくお願いします」 「怪我をしたという自覚はあるんだけど、まだふわふわしてる感じ。この前出るはずだったダービーも見に行ったんだけど、ただ淡々と眺めてるって感じだったんだよね」 「現実を受け入れて前に進もとしてるんじゃないですか?」 「それならいいんだけどさあ……ただ、弱音の一つくらい言ってくれてもいいんじゃないかなって思っちゃうんだよね私は」 バスの窓に映る彼女はほんの少しだけ寂しそうに話す。
2 21/05/26(水)00:57:53 No.806522251
「……あ、海だ」 「もう、ここまで来てたんですね」 昔と変わらない目で海を見る彼女を見ると、何度も見たはずの海も少しだけ懐かしく思えてしまうのは何故でしょう。 ────────────────────────── 砂の上のトレーニングも何度かこなすうちに多少は慣れてきた。 「……よし、これで一旦休憩ねー。足の様子はどんな感じ?」 「そうですね、特に違和感もなく動けはするんですけど、やはり長い間動けなかったので筋肉量などが落ちているなとは感じますね」
3 21/05/26(水)00:58:08 No.806522306
「まあそれはしょうがないよ。ゆっくり元に戻していこう」 「はい……トレーナーさんって明日の夜の予定空いてます?」 「空いてるけど、何かあるの?」 「一緒に夏祭りに行けたらと思いまして」 「いいよ。ただ、夏祭りは今日からだけど今日じゃなくていいの?」 「今日はスペちゃん達と一緒に回る予定なんですよ」 「お、青春だねえ。羽目を外しすぎて怒られないように気をつけなよー」 「はい……そろそろ休憩も終わりじゃ無いですか?」
4 21/05/26(水)00:58:18 No.806522345
「よっし、じゃあそろそろ再開するかー」 そう言ったトレーナーさんに飲み物を返してトレーニングへと戻った。 ────────────────────────── 生徒さんがはしゃぎ過ぎないように一緒に見回ろうと彼女を誘ったが。 「何ですかその格好」 「え?浴衣だけど」 「はしゃいでる生徒さんを注意するための見回りなのに、何で貴方が一番はしゃいでる格好をしてるんですか」
5 21/05/26(水)00:58:37 No.806522416
「夏祭りなんだから浴衣ぐらい着るでしょ。ト……たづなさんこそ夏祭りなのに仕事着とかどうなのさ」 「見回るためなので、この格好でいいんですよ」 しょうがないので、しっかりと草履まで揃えて来た彼女と一緒に夏祭りを回る事にした。 そうして、彼女と一緒に羽目を外し過ぎている生徒さんを注意して回ったのだけれど。 「いやあ、美味しいねえりんご飴」 「……貴方が一番はしゃいでるじゃないですか」 りんご飴を持ちながらにこにことしている彼女の尻尾は揺れている。
6 21/05/26(水)00:58:54 No.806522478
「そろそろ花火の時間だしあそこ行こ」 「あそこって何処ですか……というより生徒さんの見回りはどうするんですか」 「昔みんなで一緒に花火を見た神社のこと。そこにも生徒がいるかもしれないし、ね?」 「ね、じゃないですよ」 「いいから」 そのまま手を引かれて結局ついて行く事になってしまった。 「……やっぱり誰もいないじゃないですか」 「いないねー」
7 21/05/26(水)00:59:07 No.806522515
昔と変わっていない神社に少し懐かしくなるが、結局生徒さんはいなかったので戻ろうとすると彼女に止められる。 「見てこ、花火」 「……はあ、少しだけですよ」 ここは祭りの喧騒からも離れているので虫の鳴き声と彼女の息遣いぐらいしか聞こえない。 そうしてこの静かな場所で二人、花火が打ち上がるのを待つ。 「懐かしいなあ、昔は三人で見てたりしてたな」 「……またいつか集まれたらいいですね」 「そうだねえ、ただミッちゃんが引退した後地方のトレセンに就職しちゃったから集まるの大変なんだよねえ」
8 21/05/26(水)00:59:38 No.806522632
そんな他愛もない話をしていると花火が打ち上がり始める。 「……こうやって一緒に花火を眺めてると、少しだけ昔に戻ったような気がしません?」 「んー、特にしないなあ」 「少しは共感してくれても良くないですか?」 「懐かしむことはするけど、昔に戻るとかは私にはよく分からないなあ。特別昔に戻りたいとかでもないし」 「私も少しおかしな言い回しをしたかもしれませんけど、貴方も割とおかしな考え方をしてますよね」
9 21/05/26(水)00:59:52 No.806522684
「私は、一生とか何でもとかそういう言葉を安易に使わないからね」 「一生のお願いは昔かなり聞いた気がしますけどね」 「記憶にないなあ」 そんなくだらない事を話してる間にも花火はどんどんと打ち上がっていく。 「来年もまた一緒に見よ」 「来年はきちんと見回りをしたいんですけど」 「えー今年もちゃんとやってたじゃん」 「何処がですか」
10 21/05/26(水)01:00:17 No.806522766
そうして最後の大きな花火が打ち上がり、辺りも静かになったので合宿所に戻ろうとしたら彼女が急に困ったような声を出した。 「どうしたんですか?」 「鼻緒が切れてた」 彼女の足元を見てみると、草履の鼻緒が切れていて見るからに歩きづらそうだった。 「縁起悪いなあ。ていうかどうしよ」 「……はあ、背負って行くので乗って下さい」 「え?いいの?」
11 21/05/26(水)01:00:35 No.806522826
「それでは歩いて帰るのも大変でしょう」 「ん、ありがと」 屈んで彼女を背負い、合宿所への道を歩いて行く。 「帽子が落ちないように見てて下さいね」 「んー」 道中生徒さんに見られたりもしたが、無事彼女を背負って合宿所に戻ることができた。
12 21/05/26(水)01:02:53 No.806523361
一旦おしまい 大人になっても花火を一緒に見れるような関係が私は好きです
13 21/05/26(水)01:10:07 No.806524942
グラスの精神状態とか鼻緒が切れたりとか今後が不穏だ…
14 21/05/26(水)01:18:38 No.806526706
文書多すぎて追い付けん 過去の探そ