虹裏img歴史資料館

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21/05/25(火)20:56:11 前回ま... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1621943771774.png 21/05/25(火)20:56:11 No.806431036

前回までです su4877808.txt

1 21/05/25(火)20:56:32 No.806431155

「トレーナーってばさぁ~こーんな顔してボクに言うの!『あなたはまだまだアスリートとして未完成です、トレーニングも足りません』って! せっかく無敗の三冠を取ったんだからさぁ~もっと褒めてくれてもいいと思わない!?」 トウカイテイオーがこちらを振り向きながら、両手に人差し指で眉毛を吊り上げてしかめっ面を作った。恨み半分冗談半分の表情で、むにぃ~っと表情筋を動かす。 シンボリルドルフ─ハルウララの膝上で、トウカイテイオーはトレーナーの愚痴をこぼしているのであった。 「あっ、でもトレーナーの事は信頼してるんだよ?なんてったってボクを三冠にしてくれたすっごいトレーナーだもん! でも、いっつもお子様扱いでさ~!今日なんか、走りこんだあとちょっとだけ足が痛いって言ったら、おんぶして保健室まで連れてったんだよ!」 表情をせわしなく変えながら話すテイオーを、シンボリルドルフはニコニコと見つめていた。

2 21/05/25(火)20:56:57 No.806431340

「えーっ?でもそれはていおーちゃんのことをすっごくだいじにおもってるからだとおもうよ!」 「まぁ確かに菊花賞は出れるかどうかの瀬戸際で、トレーナーが毎日マッサージしてくれたから 出れたようなもんだけどさ…」 「それにていおーちゃん、とれーさーさんのことはなしてるときすっごくめがきらきらしてるよ!」 「ピェ!?ままままさか…カイチョーったらからかわないでよー!!」 ポカポカと自分の腹を叩くテイオーの頭を、微笑みながらルドルフが撫でた。 「それにしてもていおーちゃんってすごいんだね~!ウララ、じーわん?ってでたこともかったこともないし…」 「へへーんすごいでしょー!なんてったって最強無敵の…って、え?GI出たことないって…。」 「あ、えっと!じゃなくて!うそ!たっくさんでたことあるよ!もーいっぱい!」 「…なんかカイチョー、ちょっと変じゃない?」 「へ、へんじゃないもん!いつもどおりだもん!!ちょっときょうはひとあじちがうだけだよ!」

3 21/05/25(火)20:58:18 No.806431892

「ふーん…ま、いいや!それよりコレ、見て見て!」 テイオーがポケットから折りたたんだ紙片を取り出す。広げてみると、それは次に開催されるGIレースの大阪杯についての記事だった。 「ボク、この大阪杯に出るんだけどさ~ほらココ!出走者で一番人気なんだよ!すごいでしょ!!」 「わぁ~!すごいすごいすご~い!」 「へへーん、でしょ~!?ま、ボクなら当たり前なんだけどね!とりあえずは大阪杯、天皇賞・春… そこまで勝てれば宝塚記念を目指すつもりなんだ!」 「てんのーしょー…たからづか…?」 「そ!僕のこの春の目標は春シニア三冠なんだ!カイチョーも取れてないこの三冠、絶対ボクが取ってみせるよ!」 「ウララよくわかんないけど、ていおーちゃんならぜったいできるとおもうよ! いちばんにんきなんてとったことないけど、ていおーちゃんはいちばんにんきだもん!」

4 21/05/25(火)20:58:33 No.806431995

「…カイチョーは一番人気じゃなかった時の方が少なくない?」 「え?あっ、えっと、ウララがいちばんにんきとったことはないけど、るどるふちゃんはたくさんとってるもん!」 「…??やっぱり今日のカイチョーおかしいよ?カイチョーなにか隠してない!?」 「えっ!?な、なにもかくしてないもん!うららじゃないもん!わたしがるどるふちゃんだもん!!」 「そのウララってなにさ!?教えてくんないと~…こうだぁ~っ!!」 テイオーの腕がルドルフの腕の下にさっと入り込み、脇下で猛烈に指を動かし始めた。 「あっ、あははははは!!!ぐふっ、くすぐった、や、やめて、あはははははは!!ひひひっ、て、ていおーちゃん!!」 「やめないもんね~!カイチョーがほんとの事話してくれるまで~~!!こちょこちょこちょ~~~!!!」 「ふっ、あははひひひ!!!ふへへははははは!!あはっ、やめ、ひひっひ!!!あひひひ!!!!」

5 21/05/25(火)20:58:59 No.806432183

その時、生徒会の扉が開く音が聞こえた。それと同時に、怒号が飛んできた。 「テイオー、どこに行っていたのですか!保健室からいなくなって学校中探し回ったんですよ!?」 長身痩躯、眼鏡にスーツ姿の成人男性─トウカイテイオーのトレーナーが、つかつかとテイオーに迫ってきた。 「まったく、あなたが『ちょっと足の痛みが引くまで休みたい』と言ったから休ませていたのに…ここまで元気そうならすぐトレーニングに移れそうですね?」 「うわぁっ!ま、まってトレーナー…」 「待ちません。大阪杯まであと僅かしかありませんし、一番人気のウマ娘が負けることなど幾らでもあるのです…今日は最後の総仕上げのトレーニングです!」 「いっ、やだやだやだ~~!!まだここでカイチョーと遊んでいたい~!!」 テイオーの抵抗虚しく、ルドルフから小さな身体が引き剥がされてしまった。 「今日はエアグルーヴが居るからノーマークでしたが、まさか過労で倒れているとは…そしてそこにつけ込んで生徒会室で遊ぶなど!お仕置きから始めますからね!」 「ぴえぇ~~~…」

6 21/05/25(火)20:59:11 No.806432266

トレーナーがテイオーを肩に担ぐと、くるりとこちらに身を回し礼をする。 「シンボリルドルフ、失礼いたしました。お忙しい中、邪魔だったでしょう?」 「はぁ…はぁ…ううん?そんなこと…ないよ?」ルドルフがまだ整ってない息もそこそこに答える。 「…お気遣いありがとうございます。これには私からよく言って聞かせておくので。では。」 そういうと肩の上で「ヘンタイー!」「セクハラー!」と暴れるテイオーを完全にロックしたまま、生徒会室を出て行ってしまった。 「…ていおーちゃんも、ていおーちゃんのとれーなーもすごいなぁ…」

7 21/05/25(火)20:59:24 No.806432352

それと入れ替わるように、鞄を持ったハルウララ─シンボリルドルフが生徒会室に入ってきた。 「すまない、遅くなった。…だが何とか間に合ったようだな。」 「あっ!るどるふちゃんおかえり~!!うららね、ちゃんとおるすばんできたよ!ほめてほめてほめて~!」 「…あぁ、ありがとう。助かったよ。」 そう言うと、ハルウララは屈んだルドルフの頭をよしよしと撫でた。ルドルフの耳がわずかにぴこぴこと動き、にっこりと笑顔になった。 「そういえば先程誰かが生徒会室から出てきたな。何か用件だったのか?」 「え?ううん、さっきのはねーていおーちゃんとそのとれーなーだよ!すっごくなかがよかったの!」 「…テイオーのトレーナー…そうか。」ハルウララの表情がわずかに曇った。

8 21/05/25(火)20:59:37 No.806432436

「どうしたのるどるふちゃん?」 「いや、なんでもない…。それより、さっさと書類を片付けてしまおうじゃないか。」 そういうと、鞄から取り出した鍵とエアグルーヴが持ってきていた生徒会室用のキーチェーンに繋がれた鍵で会長机の引き出しを開けた。 中には金色に鈍く光る印鑑─生徒会長の承認印があった。取り出すと、ハルウララがニッと笑いルドルフを見る。 「ハルウララ、一緒に協力してくれないだろうか?」

9 21/05/25(火)20:59:47 No.806432507

やはり皇帝の名は伊達ではなく、ハルウララものの数分で今日が締め切りの書類をすべて完成させてしまった。 そしてシンボリルドルフは、承認印を押すだけの書類に承認印を押しまくっていた。 「本来は生徒会長の承認印は生徒会長のみが押すことを許されるが…まぁ今の"生徒会長"はウララだ。これもセーフだろう。」 そうして目の前には片のついた書類の山が出来上がっていた。 「…なんとかブライアンが戻ってくる前に完成出来たな。」 「すごいすごい!やっぱりるどるふちゃんっててんさいなんだね!」 「いや、ウララも手伝ってくれたからさ。それに、私が少し目を通せば万事万端理解できるように資料を作成してくれたのは他ならないエアグルーヴだ。」 「うん!えあぐるーぶちゃんもすごいね!」 「…あぁ…本当に、私なんかにはもったいない友だ…。」 また今度、慰労も兼ねて何かエアグルーヴにしてあげなければならないな。私の珠玉のダジャレショーなどどうだろう。そう思ってた矢先、聞き慣れた足音がこちらに向かってきていた。

10 21/05/25(火)21:00:15 No.806432733

「…なにもするな、と言っていたはずだが?」 生徒会室へ入ったナリタブライアンの第一声。 (…しまった、完全に油断していた…!!) なんとかハルウララは会長机に潜り、隠れることには成功したが、見つかるわけにはいかなかった。 「え、えっとね、ぶらいあんちゃん…」 「そんな馴れ馴れしい呼び方を許した記憶はないな。私にはまだ仕事が─」 「これっ!もうぜんぶすませたから!」そういいながら、ルドルフは両手いっぱいの書類をブライアンに突き出した。 「は?この短時間に全部できる訳……!?」ブライアンがパラパラと書類を捲り、すべてに承認印と必要な項目が記入されているのを確認した。 「まさか…どうして、こんなことが。」 「あのっ、ぶらいあんちゃん…ごめんなさい!」 「なっ…!?」 「わたし、なにもわかんないままらくがきしちゃってごめんなさい!ぶらいあんちゃん、おこってるよね?」 「いや、それは…」 「ほんとうにごめんなさい!!」

11 21/05/25(火)21:00:25 No.806432799

頭を下げたルドルフに対して、ブライアンはバツが悪そうに首を振った。 「チッ…別に、やるべきことが出来てるなら問題ない。それに、その言葉は…エアグルーヴに言ってやるべきだ。」 「…それじゃ、ゆるしてくれるってこと…?」 「許すも何も、私は別に最初からアンタに対して怒れる立場じゃないからな。」 「…わぁ!ありがとーっ!!!」ルドルフが思いっきりブライアンに抱き着き、泣き顔を胸に擦り付ける。 「わだじっ、ぶらいあんぢゃんにゆるじでもらえながったらっで…えぇ~ん!!」 「おいっ!汚い、寄り付くな!くそっ!!制服が汚れるだろ…!!」 二人のやり取りを机の下で聞いていたハルウララは、ほっと胸をなでおろした。 (とりあえずは一件落着、といったとこだろうか…。)

12 21/05/25(火)21:00:50 No.806432975

「全く、今日は厄日ってやつか…?アマさんに身に覚えのない決闘を申し込まれるわ、エアグルーヴが倒れるわ…っと。そうだ。」 ブライアンがポケットから紙切れを出し、それをルドルフに渡した。 「ぐずっ…あぇ?ぶらいあんぢゃん…なにごれ…?」 「とりあえず涙と鼻水をどうにかしろ…明日、そこに行くぞ。」 広げると、紙にはどこかの住所らしき文字列が書かれてあった。 「…どこ?ここぉ…」 「東京大学医学部付属ウマ娘病院…日本最大級の病院だ。そこでアンタの脳味噌が正常か精密検査を受けるぞ。」 「………」 「えぇ~~~~~~!?」 (なっ、なんだと…!?) かくして、シンボリルドルフ─ハルウララの、明日の休日の予定も埋まってしまうこととなった。

13 21/05/25(火)21:01:24 No.806433180

次回に続きます。 テイオーは今後も結構絡んでくる予定です。

14 21/05/25(火)21:09:59 No.806436615

生徒会長ハルウララのトレセン学園は何というか…優しさに溢れた学園になりそうだな

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