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21/05/24(月)19:59:24 No.806111950
前回までです su4875305.txt
1 21/05/24(月)19:59:57 No.806112162
「それでは今日という良い日に祝福を!ブーエノー!!」 パンっと小気味よい音を立て、エルコンドルパサーは炭酸リンゴジュース─いわゆる、子供ビールを開けていた。 テーブルの上にはピザ、から揚げ、ポテトチップス、にんじんハンバーグなどなどご馳走が所狭しと並ぶ。 「わぁ~!よりどりみどりです~!どれもこれもおいしそう~!!」目を輝かせながら、スペシャルウィークはとりわけ用のトングをカチカチと鳴らす。 「こら、スぺちゃん。行儀が悪いですよ?」そう言いつつも笑みを絶やさないグラスワンダー。 「当然よ!このキングが取り寄せた一流のピザよ?スペシャルウィークさんには美味しく食べる権利をあげるわ!」おーっほっほっほ、と高笑いするキングヘイロー。 「とか言っちゃって、キングが食べたかっただけじゃないの~?」からかいながらピザを頬張るセイウンスカイ。
2 21/05/24(月)20:00:07 No.806112249
「なっ、そ、そんなことないわよ!…ほら、あなたも食べなさいな!」 そして─キングヘイローからピザを取り分けられたハルウララ。 「す、すまない…。」 「ケ!?ウララ、いつもとちょっと違いマース!今度は何のアニメに影響を受けたデース!?」 「エル。」 「痛っ!グラス痛いデス!ゴメンナサーイ!許してくだサーイ!!」 グラスワンダーとエルコンドルパサーのやり取りに他の皆が笑う中、ハルウララは思考していた。 (どうにかこの場を切り抜ける方法を考えなければ…!)
3 21/05/24(月)20:00:19 No.806112339
【数分前】 生徒会長席の鍵を取りにきたハルウララ─シンボリルドルフは、間もなく美浦寮へ辿り着いていた。 シンボリルドルフ─ハルウララがそのまま外へ出かけたところから察するに、恐らく自室の鍵は掛けられていないはず。そのまま部屋まで行くことができれば鞄を回収できる公算大だった。 「となれば問題はあと一つだけ…」 それは寮長のヒシアマゾンだった。寮に入るためには彼女の検問をかい潜らなければならなかった。 寮はウマ娘達のプライベートな空間だ。となれば出入りの管理も厳しくなる。トレーナーでさえ入場は原則禁止されている。 当然別寮のウマ娘も同様であり、妥当な用件さえあれば入ることはできるものの今の自分ではそれも難しかろうという話だった。 しかしそこについて、ハルウララは一つ策を考えていた。
4 21/05/24(月)20:00:32 No.806112430
寮の玄関前に近づき、中をうかがう。 そこにはヒシアマゾンが退屈そうに雑誌を読んでいるのが見えた。すかさずヒシアマゾンに聞こえるように呼びかける。 「ヒシアマゾンさん、ナリタブライアンから『トレセン学園で待つ』と果たし状です!」 「なにっ!?」ヒシアマゾンが飛び上がる。 「誰だいそこにいるのは!いやそれよりブライアンがアタシとタイマン…いいねぇやっとその気になったかい!」 「ふふふ…タイマンタイマン!あれ、今日ブライアンは生徒会で忙しいはずじゃ…いや、つまり仕事終わりのタイマンってことだね!」 着替えもそこそこ、ヒシアマゾンはトレセン学園に駆け出して行った。 「よし…これで中に入れる。それにうまく行けばブライアンを足止めできるかもしれない。」 ハルウララは足音を立てないよう、気を付けながら自身の部屋に向かっていった。
5 21/05/24(月)20:00:46 No.806112500
自身の考え通り、部屋に鍵は掛けられていなかった。ハルウララはシンボリルドルフの鞄を無事回収した。 「やれやれ。盗難にあっていないか不安だったが杞憂だったみたいだ。」鞄から自分の部屋の鍵を取り出し、今度はしっかりと施錠する。 「よし、これで生徒会室に戻れば書類も片付く、万事解決だ!」 その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。 「あら、ウララさん?そこで何をしているの?」
6 21/05/24(月)20:01:02 No.806112613
ビクゥッと身体が跳ねる。誰だ?まずい、見られたか!?恐る恐る後ろを振り向くと、今朝並走したウマ娘─キングヘイローがそこにいた。 「あっ、いや、その…」 まずい、咄嗟の事でうまい言い訳が全く見つからない。キングヘイローは怪訝な顔でこちらを見る。 「ウララさん、どうして制服を着てるの?今日は学校は休みよ?」 「あっ、その~、ま、間違えてしまった!うん、うっかりだな~ハハハ!」 なんとか取り繕ってみるが、あまりにもわざとらしすぎる。最悪だった。 「そ、それより!キングは何をしにここへ!?」 とにかくこれ以上追撃をされると本当にまずい。話の矛先を自分からキングヘイローへ変える。
7 21/05/24(月)20:01:19 No.806112714
「私?私はエルコンドルパサーさんに誘われてホームパーティに来たの。一流のパーティには一流のキングが欠かせないでしょう?」 おーっほっほっほ、といつもの高笑いをするキング。 「そ、そうか。それじゃあ私はこれで…」 「あ、ちょっとまってウララさん。せっかくだからあなたもパーティに参加しない?」 「えぇっ!?いや、しかし突然人が増えるのもエルコンドルパサーに迷惑だろう?」 「そんなことないわよ。むしろ人が増えるほどテンションが上がるタイプだもの、彼女は。それとも、何かいけない用事でも?」 まずい。言葉はパーティへのお誘いだが、その眼は明らかに何かを探ろうとしている目だ。 これ以上ここで目立ちたくなかったし、参加してどうにかさっさと抜け出したほうがよさそうだった。 「…分かった。しかし、用件もあるから少しだけしか居られないが…。」 「構わないわ、こっちよ。」 そうしてキングに連れられ、エルコンドルパサーの部屋にやってきてしまった。
8 21/05/24(月)20:01:44 No.806112912
「それにしても、ウララはどうして制服着てるデース?今日は折角のお休みなのに?」 「平日と間違えちゃってたらしいわよ。ほら、鞄も持ってる。」 「なるほどねぇ~」セイウンスカイが三枚目のピザに手を伸ばす。 「そりぇにしてふぉ、ウララちゃんもうだいじょうぶなんりぇすふぁ?」猛烈な勢いで卓上の料理を吸い込んでいくスペシャルウィーク。 「昨日、他のウマ娘と廊下でぶつかったと噂ですよ~。」グラスワンダーがスペシャルウィークの口を拭きながら言う。 「しかもその相手はなななんと!生徒会長のシンボリルドルフさんというじゃないデースか!」 「まぁ色々仕事も立て込んでたらしいけど、流石に交差点を全力疾走で突っ切るのはね~」 後輩達に目の前で自分の行為を批判されるのは中々新鮮な体験だ。はは…とハルウララは苦笑いするしかなかった。
9 21/05/24(月)20:02:06 No.806113058
「いや、確かに面目ない。急いでいたとしても一呼吸考えるべきだった。さしずめ今回のことは天罰覿面といったところ…」 そこまで言って気付いた。皆が怪訝そうな顔でこちらを見ている。 「…って生徒会長なら言うと思うなー!うん!まったくダメで融通の利かない会長だなー!ハハハ!」 「いや、そこまでは言ってないデース…。」 「今日のウララちゃんは辛口ですな~。」 「ウララちゃん、ちょっと今日は様子が変だよ?やっぱり昨日の怪我が響いて…。」 「あっ!今日は用事があるんだった!もう行かないと!」 立ち上がろうとするハルウララの腕を、すかさずエルコンドルパサーがガシっと掴んだ。
10 21/05/24(月)20:02:22 No.806113176
「まだパーティは始まったばかりデース!どこに行こうというのですカ!?」 「いや…ちょっとそれは…。」まさか生徒会室へ、とは言うわけにもいかない。 「エル、もうその辺で…。ウララちゃんは用事があると最初から言ってましたから…。」 「いやいや、でもエルちゃんの言う通りだと私は思うな~」セイウンスカイが最後のピザを口に放り込んで言う。 「開始早々にメンバーが抜けるってのは場が冷えるんだよね~。どーしてもってんなら、そうだな~…"一発芸"でもやって欲しいかな?」 「オー!イッパツ芸!ブエノですねー!」エルコンドルパサーが両手でサムズアップした。 (一発芸だと…!ふふふ…まさかここで日々の鍛錬が生かされる瞬間がやってくるとは…!) 「あの、ウララちゃん?あまり無理せずともよいのですよ?エルが言ってるだけですから…。」 「いや、確かに早々の退出では場を盛り下げてしまう。代わりにと言っては何だが、ここは一つとっておきの抱腹絶倒のダジャレを披露しようじゃないか…!」ハルウララが身体の前で腕を払う。
11 21/05/24(月)20:02:37 No.806113286
「ホーフクゼットー!?絶対に聞き逃せまセーン!!」 「お~マジか~、こりゃ期待も爆上がりですな~。」 「ウララさん…ハードルが上がりすぎじゃない?ほんとにそんなの出来るの?」不安そうな顔でキングヘイローがこちらに耳打ちする。 「ああ、任せてくれ…このダジャレ帳に書かれた1000個の珠玉の作品、その中でも至高のものをお披露目しよう!」 「嘘でしょ!?いつのまにそんなに…!」 「ではいくぞ!心して聞くといい…!!」ハルウララがおもむろにページを捲る。部屋の空気に得も言われぬ緊張感が走る。 「"パーティ"で飲んだすごくおいしいお茶、さしずめスー"パーティー"!」
12 21/05/24(月)20:02:53 No.806113401
秒針の進む音が部屋に反響するのは、尋常ではない静けさを意味していた。 ぽかんとした顔をするエルコンドルパサーとグラスワンダー。料理を食べる手が止まったスペシャルウィーク。 笑いとも困惑とも取れない表情のセイウンスカイ。衝動的に首を下げてしまったキングヘイロー。 そして─自信にあふれ、歓喜の第一声を待ち望むハルウララ。 最初に沈黙を破ったのは、スペシャルウィークだった。 「あー、えっと…お、おもしろい!と思います!私は…。」うっかり落とさぬように、そうっと紙皿を机に着地させる。 「…!そうか…!!」うんうん、と満足げにハルウララは頷いた。 「ではこれで失礼するよ。皆、大いに楽しんでくれ。」そういうと部屋から出て行ってしまった。
13 21/05/24(月)20:03:10 No.806113510
「…なんなんデスか?今のは…。めちゃくちゃ『やりきった感』出してましたケド…。あれじゃ"セップクゼットー"デース…。」 「エルが無理やり言わせたからですよ…。」 「いや~…まさかハードルの下を穴掘っていくとはね~…。」 ようやく動き始めた時とともに、ぽつぽつと感想とも愚痴ともとれるような声が出てき始めた。 「まぁこの冷え切った空気はキングの一流一発芸で温めてもらいますか~。」「なんでよ!!」 セイウンスカイの残酷な提案を一瞬で跳ねのけると、キングヘイローは先程のハルウララにあるウマ娘の姿を重ねていた。 「…まさか……いいえ、気のせいだわ。ウララさんが…よりによって生徒会長と被るなんて…。」
14 21/05/24(月)20:03:39 No.806113695
次回に続きます。 ダジャレを考えるのが一番しんどかったです。
15 21/05/24(月)20:06:48 No.806115027
知らないうちにヒシアマと勝負することになってたブライアンかわうそ…
16 21/05/24(月)20:16:55 No.806119213
クッソつまんねえギャグ考えるのってそれはそれでキツい…
17 21/05/24(月)20:23:51 No.806122009
ダジャレのしょうもなさが絶妙だったのでしんどい思いしたかいはあると思いますよ私は
18 21/05/24(月)20:30:52 No.806124992
理解に10秒くらいかかりましたよ私は