虹裏img歴史資料館

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21/05/24(月)01:19:03 「へへ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1621786743357.png 21/05/24(月)01:19:03 No.805916897

「へへへ」 「いやはやいい天気だなあ」 「へへへへへ……」 「どうしたスカイ」 「ん~? な~んでもないよ?」  多分今、私はとっても機嫌がいい。澄み切った青い空、寄せては返すエメラルドの波、ぎらぎら照り付ける白い太陽、耳心地の良い透明な潮騒。暑くて汗が出て仕方ないのに、驚くほど爽やかで涼やかで。多分きっと、私は自然が好きなんだろうと思わせてくれるくらいに、夏の海を構成するすべてが、私の気分を上向きにさせていた。  ここは七月、真夏の真っ盛り。場所は砂浜と海がきらきら光る、合宿でのトレーニング中。でもってただいま小休憩中。私はトレーナーが持ってきたレジャーシートに座って、鼻歌混じりにはるか先の水平線を眺めていた。しかも私の隣にはトレーナーが寄り添うように座っていて。まあつまり、私の気持ちを良くするための材料になっている。  それにしても。休憩し始めてからずっと、トレーナーがどことなくそわそわしているというかなんというか。まさか、私と一緒に座って緊張してるなんて訳でもあるまいし。どうせ座って休憩するだけだし、少し鎌をかけてみるとしよう。

1 21/05/24(月)01:19:34 No.805917022

「どうしたの、妙にそわそわしちゃってさ」 「いや、別に……」 「ええ~? だって明らかになんか……」 「なんでもないったら、なんでもないんだよ。ほら、俺のことはいいからちゃんと休憩しな」  これまでの経験的に、トレーナーが言いにくそうにすることは大体しょうもないことだ。肩にゴミが付いてるのをどう取ってあげたらいいのとかに始まって、近頃は私の距離が近いのをどうしたらいいのかとかをもの凄い悩んでいる。トレーニングのこととなると遠慮がないのに、こういうところはひどく奥手で、まあ正直好ましい。だから、今回もそんな感じのことだろうし、あんまり突っ込んであげるのも可哀そうかも知れない。固執しても仕方ない、話を変えてあげた方がいいか。これ見よがしに、ぽんと手を叩いて彼に言った。 「ああ、そうだ。ねえねえおにいさん、パラソルとかもってきてないの?」 「お兄さんて。持ってきてるけど、トレーニング中だし今は立てないよ」 「え~、たててよぉ~」 「立てたら立てたで昼寝に持ってこいとか言ってサボるでしょ、君は」

2 21/05/24(月)01:20:17 No.805917175

 いやまあ実際暑かったし、日陰を得られる良い口実になると思っていたのに。先の先を読まれてしまってはどうしようもない。 「あの、もしかして、アイスも無い?」 「ご褒美はトレーニングのあとです」 「……わー、けちだ」 「いやいや、スカイ。ぶーたれないでくれよ。一応、遊びで来てるわけじゃ無いんだからさ。ほら、喉乾いたろ?」 「ん~、ありがと」  差し出されたミネラルウォーターを生返事ひとつ溢してから受け取る。 「んで、これ」  ぱふ、私の耳を覆うような形で、何かが被さった。 「ん? なあにこれ」 「俺お手製の麦わら帽子。まあ既製品に手を加えただけだけど。パラソル程じゃないけど、無いよりましかなってさ」  僅かに陰った視界と、上の方に覗く帽子のつばに、ああ確かに麦わら帽子を被っているんだなと分かる。それにしても、トレーナーお手製かあ。そう自覚すると夏の熱さとは別の熱さが頬っぺたの方に向かって集中していく。うわ、やだな。照れてるところ、見られたくない。 「なあに、もしかしてずっと被せたかったの?」 「ん。まあね。ほんの少し、涼しいだろ?」

3 21/05/24(月)01:20:39 No.805917261

 くそう、なんか駆け引きに負けたみたいで悔しい。少しだけやり返したい。かさかさ鳴るつばを触りながら、こっち向いてと囁きかけて。きょとんとした彼の顔がこちらに向いたのを確認して、私は少しだけ意地の悪い声色で、にっこり笑って問いかけた。 「こーいうのが、すきなんだあ」  ぼっ、火でも付けたかのようにトレーナーの顔が真っ赤になる。 「うっ……ちょっ、そういう訳じゃないって!」 「にゃはは、そういうことにしといてあげるよ」  笑いながらペペットボトルの口をきゅっと捻る。すると蓋が小気味良い音をたてて外れた。ぐっと水を飲み干しつつ、私はトレーナーの横顔をちらりと見た。整えられた眉毛、すっとした鼻の筋、柔らかいのにかっこいい彼のまなざし。ぼうっと眺めているだけなのに、不思議と楽しいというか、飽きが全然来ない。トレーナーはまだ恥ずかしがっているのか、手をうちわにして扇ぎ始めていた。 「……んと、暑いなぁ……」

4 21/05/24(月)01:21:06 No.805917344

 ボタンが留まっていない襟元を掴んでぱたぱたさせて、新鮮な空気を胸元に送る。そのたびに彼の肌がちらちら見えて、時折つうっと透明な汗が首筋を伝う。なんだろう、いけないものを見ているような気がする。彼の格好は白いポロシャツにハーフパンツ。いかにも夏の男って感じなのに、肌だけは妙に生白い。こういうのは褐色の肌って相場が決まってるもんだけど、釣り合ってないのが一周回って面白くもあった。どれ、やられっぱなしなのも私らしくないし、ひとつからかってやるとしよう。宙ぶらりんなトレーナーの腕に、自分の腕を絡ませて上目遣いでもって囁いた。 「ね。スカイさんの水着を見れて……良かったねえ」 「……ん~、別にプールでのトレーニングで見てるし。そんな、今更ねぇ」  むか。素知らぬ態度を取る彼にかなりむっとした。さっきはあんなにどぎまぎしていたくせに、こういう直球には性悪な態度をとるんだ。 「そりゃまた随分な反応じゃない? せっかくさぁ、か、かわ……可愛い女の子が魅力を伝えてあげてるってのに」

5 21/05/24(月)01:21:30 No.805917436

「いや、それも全部知ってるし。誰よりも早くて、誰よりも賢くて、誰よりも可愛い……それぐらい、知ってるんだよ。とっくの間にさ」 「んっ?! はぁ~……」  なんてキザな男なんだろう。ああ、駄目だ。緩む頬を見せたくない。見られたら絶対に弄られるし、それは絶対嫌だから。ぷい、と誰もいないだろう明後日の空に顔を向ける。 「うん。やっぱりスカイはかわいいよ」 「あーもう、うるさいなぁ~……」  彼の方は一切見ず、その辺にあるだろう彼の右肩を叩く。若干湿ったポロシャツの感触のあと、柔らかいような筋肉質なような肌の温みが私の左手に伝わってくる。 「いてっ、やったなこの!」 「スカイさんをからかう方が悪いんです~!」  仕返ししようと迫ってくるトレーナーから逃げるため、さっきまで重たかった腰を上げて、海に向かって走り出す。 「待てーっ!」 「ほらほら、頑張って捕まえてみてよ~?」 「すぐに掴まえてやる!」

6 21/05/24(月)01:21:48 No.805917503

 ほんの少しだけ嬉しそうなトレーナーの声が、私の背中越しに聞こえてくる。テンション上がるとすぐ子供っぽくなるんだから困ったもんだ。でも、私も人のこと言えないか。こんなちっちゃな子みたいな追いかけっこに、これ以上ないくらいの幸福感を覚えているんだから。 「おーい、はやくおいでよ~!」 「言われなくても、今行くよ!」  熱かった素足が涼やかな海に浸かる。海の砂を足先で確かめながら振り向けばすぐそこに、楽しそうに笑うトレーナーの姿があって。本当にたったそれだけで、私はとっても幸せだ。  ああ、なんて楽しい夏なんだろう。  来年もまた、海が好きになるんだろうな。 「よっしゃ、掴まえ……わぷっ!」 「んふ、いらっしゃい、トレーナーっ!」  まっすぐ追いかけてきたトレーナーにぱしゃり、浅瀬の水を飛ばしながら私は笑った。

7 <a href="mailto:s">21/05/24(月)01:23:09</a> [s] No.805917789

タイミング的に被せる感じになっちゃって申し訳ない 最近の有難い幻覚の返礼品ですお納め下さい

8 21/05/24(月)01:23:31 No.805917868

良いねぇ…

9 21/05/24(月)01:23:36 No.805917889

なんだこのデレデレスカイは いいぞ

10 21/05/24(月)01:23:40 No.805917904

ありがたい…

11 21/05/24(月)01:24:02 No.805917982

セイテンスカイ…

12 21/05/24(月)01:24:35 No.805918113

>タイミング的に被せる感じになっちゃって申し訳ない 友情トレーニング!

13 21/05/24(月)01:25:33 No.805918300

ありがたい…

14 21/05/24(月)01:25:42 No.805918331

聖ウンス会の活動は順調なようだな

15 21/05/24(月)01:29:42 No.805919224

イチャイチャ助かる

16 21/05/24(月)01:35:24 No.805920500

もっと幻覚見ろ

17 21/05/24(月)01:35:50 No.805920588

夢から醒めるな

18 21/05/24(月)01:43:45 No.805922319

夏の日の幻覚助かる

19 21/05/24(月)01:43:47 No.805922331

>くそう、なんか駆け引きに負けたみたいで悔しい。 可愛すぎて頭おかしくなるかと思った どんな幻覚よりも最高にキまるぜこれは

20 21/05/24(月)01:57:08 No.805924970

策士タイプは用意した迷路を無視して突っ切るタイプに弱いのが良い…

21 21/05/24(月)02:06:23 No.805926533

脳が回復する

22 画像ファイル名:1621789792070.png 21/05/24(月)02:09:52 No.805927027

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

23 21/05/24(月)02:10:35 No.805927128

むっ!

24 21/05/24(月)02:11:11 No.805927206

むっ!!!!

25 21/05/24(月)02:11:37 No.805927274

むっ!!!

26 <a href="mailto:s">21/05/24(月)02:12:17</a> [s] No.805927382

んっ?!! だああああああああ!!!??!!?? ありがてえ…ありがてえ…俺の幻覚が…絵に…

27 21/05/24(月)02:12:32 No.805927426

ウンスには麦わら帽子と白いワンピースが似合う

28 21/05/24(月)02:13:38 No.805927590

これは夢か幻か現実か

29 21/05/24(月)02:24:21 No.805929046

夢現で良かった…

30 21/05/24(月)02:26:09 No.805929273

良い幻覚だけど幻覚強める聖ウンス会の活動って危なくない?

31 21/05/24(月)02:34:18 No.805930299

>良い幻覚だけど幻覚強める聖ウンス会の活動って危なくない? 実装されるまで強まっていきます

32 21/05/24(月)02:34:23 No.805930311

>良い幻覚だけど幻覚強める聖ウンス会の活動って危なくない? いい物を見ることに何か問題でも?

33 21/05/24(月)02:36:45 No.805930648

幻覚すらも現実のものにするのかよ!

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