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    21/05/24(月)00:13:14 No.805896675

    東京都府中市、東京競バ場。 5月にも拘わらず、その場所は熱気に満ちていた。 今日は一年に一度、樫の女王を決めるレースの日。オークスの開催日なのだ。 現在の時間は9時30分。レースは15時45分から始まるにも拘わらず、現場はちょっとしたお祭りムードだった。 ウマ娘達やファン達が押し寄せ、賑わいを見せており、ただの未勝利戦でもいつも以上に人の入りが明らかに多い。 ウイニングチケットは、この日、オークスをトレーナーと観戦するはずだった。 しかし彼女は東京バ馬場にいなかった。 トレーナーに連れられて、東京競バ場から数キロ離れたサンリオピューロランドにいたのである。 手を握られてトレーナーに導かれるまま、歩みを進めるウイニングチケット。 入場に戸惑っていた彼女の手をトレーナーが握り、そのままずっとこの様子である。 チケゾーの顔は既に赤くなり、いつもと違って無言である。 しかしその顔が、汗が、その態度が全て、彼女が嫌がっている訳ではないことを示していた。

    1 21/05/24(月)00:13:33 No.805896773

    「なぁ、チケゾー」 「な、なにッ!?」 真っ赤な顔をして必死に答えるチケゾー。 「これ、乗ってみないか?」 そう指さしたのは「マイメロードドライブ」という乗り物だった。 「う、うん!!うん!!!!!」 真っ赤な顔をしながら笑顔を見せ、クビをブンブン振るチケゾー。 その姿を見て (そんなにこれに乗りたかったんだな・・・) と思うトレーナーだった。

    2 21/05/24(月)00:14:04 No.805896944

    マイメロードドライブの待機列に並ぶトレーナーとチケゾー。 チケゾーはあることが気になり、 「と、トレーナーさん・・・」 トレーナーに声を掛けた。 「なんだ?」 「そ、そろそろ手を離してくれないかなッ」 「あ、ごめん」 ようやくトレーナーから手を握られるのを解放されたチケゾーである。 (うわ・・・・・・手汗すごい・・・) じんわりぬれた自分の手に、妙な恥ずかしさを覚えてしまうチケゾー。 (どうして・・・どうしてこんなに緊張するんだろ・・・) その理由が分からぬまま、彼女は手を後ろに回す。

    3 21/05/24(月)00:16:50 No.805897919

    「そう言えば今日はマニキュア塗ってるんだな、お前」 「ふぇ!?」 素っ頓狂な顔をして、尻尾がピンと真っ直ぐになるチケゾーである。 「いや、珍しいなって」 トレーナーの言葉に、チケゾーは視線を泳がせて爪を隠すように胸の前で手を握る。 「や、やっぱり変だよね・・・」 というチケゾーだが 「いや、いいと思うけど」 と、何も考えてない調子でトレーナーは答えた。 (いいと思うけど・・・いいと思うけど・・・いいと思うけど・・・) と、彼の言葉を脳内で何度も反芻してしまうチケゾー。 (あぁあぁぁぁ!!!!はずかしぃぃぃよぉぉぉぉ!!!!) と脳内で彼女は叫んでいた。そして 「ぁ、ぁりがとうございます・・・」 と一言。いつもは大きな声を出す彼女が、消え入りそうな声で照れながら御礼を言うのを聞いて、トレーナーは首をかしげて不思議そうに彼女を見てい

    4 21/05/24(月)00:17:07 No.805898023

    待機列がだんだんと進み、係員に案内されて乗り物に乗せられる二人。 いってらっしゃーい!!!という係員の声が後ろからしたのもつかの間 『さぁ!写真を撮るよ!カメラを見てッ!!!』 というかわいいアナウンスの声がした。 「えっ!?」 「カ、カメラどこなのッ!?」 トレーナーとチケゾーが慌てふためいた瞬間、二人にフラッシュが浴びせられる。 「「あー」」 と気の抜けた声を出す二人。顔を見合わせてついつい笑ってしまう。 その後もゆったりとしたペースで乗り物は進み、その都度写真撮影が行われる。 5分も経たないうちに乗り物は1周し、取った写真を確認する二人。 「あはは!!!トレーナーさん、変な顔ッ!!!!」 「お前だって人の事言えないぞ」 そう言い合いながら、取られた写真を確認する二人だった。

    5 21/05/24(月)00:17:34 No.805898180

    二人が乗り物から離れ、歩いていると、ポムポムプリンの着ぐるみが近づいてきた。 どうやら写真撮影のコーナーらしい。 「一枚取ってくか」 「そうだねッ!!!」 さっきの緊張感はどこへやら。チケゾーもすっかり楽しんでいた。 着ぐるみに右にトレーナー。左にチケゾー。 二人でポーズを取ろうとすると 「えっ!?」 「お?」 ポムポムプリンの着ぐるみが二人をくっつけるように引き寄せた。

    6 21/05/24(月)00:17:54 No.805898295

    「ふぇぇえ・・・」 ついつい情けない声を出してしまうチケゾー。 「なんだよその声」 トレーナーがからかうような笑顔でチケゾーを見た。 「も、もうッ!!!写真撮影始まるよトレーナーさんッッ!!!!!」 そう言ってむくれたチケゾーは、やけくそのような歯を見えた笑顔で預けたスマホに向かってピースをするのだった。 写真撮影を終えたトレーナーが声を掛ける。 「次、どこ行こっか」 「え、えっと・・・あっちの方歩いてみようよッ!!!トレーナーさん!!!!!」 もうチケゾーもすっかり楽しんでるようである。 「おう」 その様子を見て、来て良かったな、と思うトレーナーだった。

    7 21/05/24(月)00:18:20 No.805898436

    アトラクションを物色しているうち、ふとトレーナーの脚が止まった。 「ちょっとここ寄ってみようか」 とチケゾーに声を掛け 「うんッ!!!」 と元気よく答えるチケゾー。 そこには『ハローキティの幸せの鐘』と書かれたアトラクションがあった。 「次の宝塚、うまくいくように二人で鐘ならしてみよう」 「うんっ!!!!!!」 そう言われるがままに、チケゾーも彼の後ろをついて行った。 鐘を二人で鳴らし、何故か神社のようなお参りをする二人。 (次の宝塚記念、ゼッタイ一位とれますようにッ!!!!!) 心の中でそう強く願うチケゾー。

    8 21/05/24(月)00:18:35 No.805898518

    ふと横を見ると、トレーナーも真剣な表情で鐘に祈りを捧げていた。 その姿を見て、チケゾーの目尻が緩む。 「・・・ん?」 じっとチケゾーに見られている事に気づいたトレーナーが、彼女を見下ろす。 「すまんな、何か長くなってしまった」 「全然ッ!!!」 苦笑するトレーナーに満面の笑みを見せるチケゾー。 自分以上に自分の事を考えてくれるトレーナー。いつも彼は、チケゾーに対して一生懸命だった。 だから一位を取りたい。一位を取ってトレーナーに笑ってもらいたい。そうチケゾーは事あるごとに思っている。 そうなのだ、それこそが彼女の原動力の一部となっているのだ。。 ただのダービーに憧れていたウマ娘の少女の姿はもうそこにはなかった。

    9 21/05/24(月)00:19:08 No.805898694

    昼食をテーマパーク内で済ませた二人は、東京競バ場に向かうことにした。 そこからオープン戦、そしてオークスを観戦する。 第4コーナーを抜け、最後の直線まで順位に大きな変動はなかった。 しかし最後の直線で先団勢が崩れ、末脚勝負となり、大混戦のままレースは終わりの局面を迎えた。 一番人気が馬群に沈み、伏兵が勝利する展開でレースを終えた。 「いいレースだったな」 とトレーナーが言い、チケゾーを見ると 「うおおおおおおおッ!!!!!!みんな頑張ってたよぉぉぉぉおおお!!!!!感動したぁああああああ!!!!!!」 といつものように大興奮したチケゾーが、涙を流して叫んでいた。 「そうだな」 とトレーナーが笑いかける。 「チケゾーの時のダービーもこんな感じだったな」 と、続いてでた言葉に 「ふぇえ?」 と、気の抜けた返事を返してしまうチケゾーである。

    10 21/05/24(月)00:19:58 No.805898978

    「ほら、クラシックで芝2400mを走るのって大体みんなダービーが初めてじゃん」 「うんっ」 「お前がダービー走ったとき、本当にうまく走れるのかなってすっごく心配だった」 「そうだったのッ!?」 初めて聞くトレーナーの本心。それにチケゾーは驚き、大きな眼をいつもよりもさらに大きく開く。 「そう」 笑顔を見せながらトレーナーはチケゾーに 「お前はトレセン入ったときからダービーダービーって言ってたからまだそれ向けの練習とかしてたしマシなんだけどな」 と言葉を続ける。 「ティアラ路線進む子達って、桜花賞から入ってくじゃん」 「うん」 「チューリップ・桜花賞ともに1600m。トライアルレースのフローラステークスも2000mだろ?」 遠い目をして、競バ場のターフに視線を向けるトレーナー。 夕日が彼の顔を黄色く染める。黄昏色の彼の顔を、チケゾーはただただ見ていた。

    11 21/05/24(月)00:21:23 No.805899473

    「桜花賞からだといきなり距離が800mも伸びるし、フローラステークスからの場合だと調整期間が十分にとれなくなるからさ、心配なんだよ、俺たちって」 「ちゃんと走れるのかな、怪我とかしないかなって」 その言葉をただ聞いているチケゾー。何も言えなかった。何も言わなくてもいい気がした。 (どうしてだろう、この人と一緒にいると、眼が熱くなる。心が温かくなる。なんでだろう・・・) そう思いながら、目尻に優しさの光を乗せて。溢れ出しそうな涙をためて。 彼女はトレーナーの言葉をかみしめるように聞いていた。 「あ・・・すまんな、なんか・・・こんなこと言って」 ちょっと照れたように、トレーナーは頬をかく。 「ううん・・・いいよ」 と返すチケゾー。 そして 「いいッ、すっごく!!!いいッ!!!」 と、いつもの調子で元気よく、満面の笑顔を見せるチケゾーだった。

    12 21/05/24(月)00:21:50 No.805899632

    こういう話を私は読みたい 距離適性があっていないのでこれにて失礼する

    13 21/05/24(月)00:22:30 No.805899821

    走り切ってんじゃねーか

    14 21/05/24(月)00:22:31 No.805899832

    おい待て 失礼すんじゃねェ

    15 21/05/24(月)00:23:02 No.805900010

    いったい誰に調教してもらったんだ言ってみろ!

    16 21/05/24(月)00:27:33 [s] No.805901533

    su4873879.txt 昨日の分

    17 21/05/24(月)00:29:38 No.805902290

    真面目にひしひしと成長を感じる

    18 21/05/24(月)00:41:04 No.805906068

    この長さ…適性を継承したか…

    19 21/05/24(月)00:47:53 No.805908242

    >ポムポムプリンの着ぐるみが二人をくっつけるように引き寄せた。 でかしたポムポムプリン!