虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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  • ちいさ... のスレッド詳細

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    21/05/23(日)21:39:17 No.805834285

    ちいさなころ、ひどくねつをだした。 おとうさんと、おかあさんは、ほとけさまにおいのりするばかりで、なにもしてくれなかった。 そんなとき、しらないひとがはいってきて、おくすりをのませてくれた。 おくすりをのみこんでしばらくすると、ぐあいがだんだんらくになった・ あのしらないひとの、やさしいめを、いまもときどき、おもいだす。

    1 21/05/23(日)21:39:33 No.805834419

    私の実家は、山奥の村に境内を構える古い寺だ。創建七百年を誇るなんて母は誇るように語っていたが、どこまで信じたものかは分からない。だが、本尊として本堂内陣に設えられた荼枳尼天像の白狐に跨がった厳しい表情の美貌は、その伝統を暗に肯定しているかのようだった。だが観光客からの拝観を頑なに拒み、村人と特別に許された一部の外部の人間にのみ参拝を許す閉鎖性に、子供の頃の私は気付く事もなく、「お寺とはこういうものなのだ」と漠然と考えていた。なにしろ村には寺といえば私の家だけで、中学を卒業するまで私は村を出た事もなかったのだから。

    2 21/05/23(日)21:39:45 No.805834511

    小学校に入ると、「お寺様の娘様」として学校の子供たちからは腫れ物に触るように扱われた。遊びに誘っても謝られるばかりで輪の中には入れてくれず、一人で絵本を読むばかり。そして家に帰ると、何やら難しい呪文を覚えさせられる。そんな日々を過ごした。呪文を間違えると、母に酷く叱られ、物差しで腕をぶたれる事もしばしばだった。そうしてぶつたびに、母は私の耳元でこう囁くのだった。 「ぶってごめんね。でも、真言を間違えたあなたをぶつとあなたもわたしの手も痛いでしょう?それが嫌だと思うなら、真言を早く憶えるのよ」

    3 21/05/23(日)21:39:55 No.805834600

    ……母も、私が生まれる前に亡くなった祖母から、そう躾けられたのだろうか。授業参観で見かけた友達の母親よりも母は若々しく、いつも法衣を着ていた。そんな母に父は少なくとも教育に関する限り母の言いなりで、顔を背けるばかりで何の助け舟も出してはくれなかった。今にして思えば無関心というより、母に教育の主導権を完全に握られていたのだと思う。なにしろ学校の宿題を解いていると「余計な知恵をつけさせるんじゃない!」と怒り出してプリントをビリビリに破くほどの癇癪を起こすのだ。それを正直に学校に告げても、先生方は済まなそうに「君は悪くないよ」と返すばかりだった。 そうして呪文は経典へ、経典は法要へと少しずつエスカレートしていく。後で聞いた話では、中学三年の頃には普通の尼寺なら住職が務まる程の知識を叩き込まれていた事になるらしい。

    4 21/05/23(日)21:40:10 No.805834723

    ただ、そんな私に、代々の先生は目を描けてくれていた。私の好奇心を満たすように、図書室を自由に使わせてくれ、書物を通じて世界はどんどん広がっていった。たとえば百科事典を読み込む事で、少しずつ自分の住む世界がほんの小さなコミュニティに過ぎない事を知るように。 そこで私は、ウマ娘という人達がこの世に存在する事を知る。とても美しく、とても力持ちで、とても足が早い。先生が陰に日向に支えてくれたおかげで勉強は抜群に出来ても、逆上がりに苦労する私にとって、彼女たちの存在は憧れとなった。家にはテレビもラジオもないからウマ娘たちのレースを知る由はないが、中学校に上がれば、母も少しは外界を知る自由を認めてくれるのではないか、と。自分の体が性徴期をを迎え、丸みを帯びてくるのに違和感を覚えながらもそんな甘い期待を抱いていた。

    5 21/05/23(日)21:40:23 No.805834836

    中学校に上がった頃、学校で男女に分かれて性教育の時間が開かれた。その夜、まるで申し合わせたかのように母が私を本堂に呼び出した。本尊の前で座る母は、まるで荼枳尼天の化身のように美しく━━夜叉のように恐ろしい言葉を口に上せたことを、未だに夢に見る。 「子は孕めるようになった?中学を出たら、お前は婿を取って若和尚の寺庭(じてい)として寺を継ぐのよ。そして子を産み、荼枳尼天様の血脈(けちみゃく)を伝えるのよ」 ━━おかあさんは、わたしを、どうぐとしか、みていない。

    6 21/05/23(日)21:40:41 No.805834975

    『血脈』の実態が、宗派の法灯なのか秘儀なのか文字通りの血統なのか、そんな問いに意味はない。確かなのは、私が人間らしく生きられる残り時間は中学校が終わるまで、と定められたという事実だ。 時間という檻はゆっくりと私の上から降りてくる。周囲の同級生は腫れ物に触るように私を扱い、一方でますます育っていく私の体の一部に密かに不躾な視線をぶつけていく。それが全身に蟲が這い回るようにひどく不快だった。それと、「お寺様の娘様は大人びているなあ」という同級生の言葉にはうんざりさせられた。……母の目論見通り、子を産む為のカラダに近付いているという事なのだから。

    7 21/05/23(日)21:40:59 No.805835123

    けれど私に荒れたり逃げ出したり…死ぬ自由さえない事も分かっていた。周囲の大人たちは常に私の一挙一動を監視している事が視線から見て取れたし、一度私が勉強部屋として充てがわれていた寺房の一角でカッターナイフの刃を見つめていると、 「何を考えているのかしら?」 いつのまにか、母がカッターナイフを持つ手にその手を添え、するりとカッターナイフを取り上げてしまった。以後、私が刃物を使う事は家でも学校でも禁止となった。「お寺様の娘様に万一があったらいけない」というのが教頭先生からの訓示だった。その他にも不穏な思いを抱いていると、母がするりと後ろに立っている事が何度も続き、もう私は、自分の命さえも、母の手に握られている事を突き付けられた。

    8 21/05/23(日)21:41:13 No.805835230

    それでも。村の外から来た先生たちは、残り少ない自由時間を与う限り有意義なものにしてくれた。高校免許も持っていた先生たちは、中学二年を中学範囲を済ませて学校生活を持て余し気味の私に、密かに高校の教科書を貸してくれた。「お寺様の娘様」として畏怖の対象であった私が授業中に何をしようと同級生は気にしない。私は最後の自由を味わう事のできる中学生活を、学問を先へ先へと進める事で、母の手の中に閉じ込められる前に、せめてもの慰めとしていた。けれど中学生活の終わりは、母に絡め取られる刻限は、刻々と迫っていた。

    9 21/05/23(日)21:41:25 No.805835323

    中学三年の二月、都会から医師が検診の為に訪れた。中学の先生の話では、密かに高校課程を終えた私に都会の機関が知能検査と健康診断の為に訪れたのだという。検診車に乗せられて問診票に書き込みを入れていると、突然検診車のエンジンが掛かり、車体が動き出した。 「おい、お寺様の娘様が乗ったままだぞ!」 「止まれ!止まれ!止まらねえと撃つぞ!」 外から慌てた村人たちの怒鳴り声が聞こえる。聞いた事もない爆発音とともに何かが車体に当たる音が激しく響くのを聞き、校門の出口を軽トラックが塞ごうとしたのを見た。けれど、検診車は軽トラックを物ともせずに跳ね飛ばし、学校を後にし…村境の検問をも突破して、山を抜け出した。陰鬱な緑の山を抜け出し、私は初めて、外の世界を、この目で見ることができた。

    10 21/05/23(日)21:41:41 No.805835450

    「さて、こうなった経緯だが…10年ほど前かな?その時と同じく、君のお父上から頼まれてね」 「嘘だ…あの父が、母に絶対服従の父が、そんな大それた事をするだなんて…」 思わず口を衝いて出た言葉に、医師は暖かい甘い香りの飲み物を差し出しながら頭を振った。 「君の母上は察しが良いようだからね。少なくとも君への教育に対しては、お父上の介入を一切許さなかった。だから君が幼い頃、熱病に罹った時も入院を拒み、後遺症が遺りかねない程悪化する寸前で私が密かに呼ばれ、君に必要な処置を施したんだ」

    11 21/05/23(日)21:41:55 No.805835559

    この、ひとは。 「中学の卒業式と同時に、君のお母様が選んだ婿養子が君の夫となり、同時に君に最後の伝法灌頂が伝えられて寺を継ぐことになる。それまでに何とか君を脱出させて欲しい、そう君の父上から依頼を受けている。そして、叶うならば娘に、先生に夢として語っていた、ウマ娘のトレーナーとして未来を開いてやってくれとね」 ちち、は。 「……ありがとう、ござい、ます……」 そこから、私はぐじゃぐじゃに泣き崩れた。人間を、人の世を信じてもいいのだと。私を見ていてくれた人がいるのだと。どこまでが父の差配で、どこまでが天の差配かは分からない。けれど、この日私は、初めて仏様というものに感謝した。ありがとうございます、私を見守ってくれてありがとうございます、必ずこの果報に報いてみせますと。

    12 21/05/23(日)21:42:14 No.805835700

    URAの用意した宿舎で、特例による大学卒業認定試験と英会話学習を半年で詰め込んだ私は、渡米してロックフェラー大学の門を叩いた。医学、特にウマ娘のスポーツ生理学に於いて世界最先端を行くこの大学で、ウマ娘トレーナーとなるに十分な知識と研究を得るために。 文字通り眠る時間を惜しんであらゆる知識を学び、運動生理学とスポーツ心理学で特に深い知識を得られたのは幸いだった。虚空蔵求聞持法って本当に効くんだ…と少しだけ、ほんの少しだけ母の仕打ちに感謝しないでもない。特にウマ娘の身体のみならず、心にまで踏み込んでその能力を高める方法につき、多くの興味深い示唆を得られた事は幾ら感謝した処で感謝しきれるものではない。……お陰で寝不足が日常となり、目付きも米国のアジア人からさえ驚かれる程悪くなってしまったのは代価だと諦めている。

    13 21/05/23(日)21:42:28 No.805835821

    飛び級でロックフェラー大学を卒業した私は、研究業績と知見を認められ、まだ10代の身で3人ものウマ娘を預かることとなった。 飛び級で進級しながらも優れたスプリンターとしての素質を見せる優しい少女、ニシノフラワー。 寮長としての面倒見の良さ優しさと、タイマンを張りたがる強い闘争心を併せ持つ、ヒシアマゾン。 不幸体質を気にする気弱な一面もあるものの、ステイヤーとして学園屈指の素質を有する、ライスシャワー。 多感な彼女たちのメンタルセラピーを行う為、私はウマ娘の鋭い聴覚を生かしてリラクゼーション音声プログラムを作成する事にした。……まさか、ここまで効いてしまうだなんて、考えることもなく。

    14 21/05/23(日)21:43:06 No.805836148

    お前かー!

    15 21/05/23(日)21:43:18 No.805836251

    某ダイススレのASMRトレーナーの設定を深掘りしてみたら土日が過ぎちまったぜ

    16 21/05/23(日)21:44:42 No.805836888

    初見だからいきなり何が始まったかと思ったらウマ娘でびっくりした

    17 21/05/23(日)21:44:46 No.805836916

    どこぞの魔性菩薩みたいとは言われていたが…あっちほど道を外れる前に外に出れて良かった…んだろうが…

    18 21/05/23(日)21:45:13 No.805837119

    画で即わかったよ…

    19 21/05/23(日)21:50:57 No.805839730

    あのASMRトレーナーに激重設定が…

    20 21/05/23(日)21:53:45 No.805841062

    カタ桐生院のデカイケツ 開いて魔性菩薩の卵

    21 21/05/23(日)21:55:18 [s] No.805841731

    ダイススレの登場人物だから設定はみんなの自由 でも「教祖みたいになる」とか「胸と尻がデカい」と書かれると筆が…勝手に…激重設定を…

    22 21/05/23(日)21:59:16 No.805843387

    scpのカノン的な奴かと思ったらウマかよ!

    23 21/05/23(日)21:59:44 No.805843603

    こういう古い慣習ぶっ壊す話すき…バーカ滅びろクソ田舎!

    24 21/05/23(日)22:01:20 No.805844296

    >どこぞの魔性菩薩みたいとは言われていたが…あっちほど道を外れる前に外に出れて良かった…んだろうが… 音声慣れしてないニシノ神を慣らすためにマルチ系叩き込む人だから天性でなんかもってるよ

    25 21/05/23(日)22:09:33 No.805848106

    ヒシアマ姐さんを労るのが一番ヤバかったと思う

    26 21/05/23(日)22:31:49 No.805857997

    本人はリラックスさせて甘やかしたいだけだからな…