21/05/23(日)01:19:59 オーク... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1621700399707.png 21/05/23(日)01:19:59 No.805523189
オークス当日。 幸いにも天候は晴れ。前日の雨を吹き飛ばし、馬場は良の気配。 誰もが力を出しやすく、そして誤魔化しの効かない勝負の舞台。それが整うような暖かくも残酷な日差しが早くも差し込める朝6時。 「ジョーダンッ!!!ジョーダンッツ!!!!!」 そう同室のウマ娘を起こす声がする。 朝から大きな声を張り上げるのは、ウイニングチケット。 布団に入った同室のウマ娘をぐいぐいと押し、心地よい夢から現実に引っ張り出そうとしていた。 「・・・ぁと5分」 その声に、その力に、抗い夢の中に戻ろうとするウマ娘。 彼女の名はトーセンジョーダン。 普段から夜更かし朝寝坊の彼女である。休日の朝早くから起きねばならない道理は彼女の中になかった。
1 21/05/23(日)01:20:18 No.805523261
「早く起きてッ!!!!!間に合わないよッ!!!!!!」 「ふぁぃ・・・」 ただ本日はそうでもない。 オークスがあるからだ。 別にオークスに彼女たちが出るわけではない。 チケゾーが彼女のトレーナーとオークスの見学に行くことになっている。 一見、ジョーダンには関係がなさそうな話だったが 「身支度手伝ってよぉぉぉおぉおッ!!!!!」 多少、最近は身なりに気を遣うようになったチケゾーではあるが、まだまだ化粧に自信が無いらしい。 そこで同室のジョーダンが化粧を手伝う事にしていたのだった。 「ふぁ~~~~・・・」 寝ぼけ眼で化粧を手伝うトーセンジョーダン。 顔は明るく見えるナチュラルメイク。指には桜色の控えめのマニキュア。 健康的な魅力が引き立つそんな整え方である。
2 21/05/23(日)01:20:37 No.805523375
「ありがとッ!!!じゃ、行ってくるねッ!!!」 着替えたチケゾーが部屋を出ようとしたその時 「ちょ待って・・・」 と、ジョーダンが彼女を呼び止める。 ぼんやりとチケゾーの顔の全体を眺め、ジョーダンはチケゾーの前髪を少しだけ整えた。 「ん」 と納得するような一声を放つと 「いてら」 と言い、布団に戻るジョーダンだった。 「うんッ!!!ありがとッ!!!!!」 元気よくそう例を言ったチケゾーは、勢いよく扉を閉め、少し駆け足気味で廊下を走っていった。 「静かに閉めろよ・・・」 まどろみの中で文句を垂れるジョーダンだった。
3 21/05/23(日)01:21:17 No.805523578
栗東寮正門前。 チケゾーはそこでそわそわとある車を待っていた。 待ち合わせ時間は8時30分頃。 彼女が正門前に来たのは8時前。 明らかに早すぎる到着だったが、彼女の中のはやる心がそれを抑えきれなかった結果だった。 8時20分頃。白色のミニバンが栗東寮正門前に停車する。それは彼女が待ち焦がれた車だった。 「おはよ、チケゾー」 パワーウィンドウを開けてそう挨拶してきたのは、彼女のトレーナー。 「おはようございますッ!!!トレーナーさん!!!!!」 元気いっぱいの声と笑顔で挨拶するウイニングチケット。 「本日はよろしくお願いしまぁぁぁああああすッ!!!!!!」 そして気合い十分な声とともにトレーナーにお辞儀をするのだった。 朝早くから元気いっぱいのチケゾーに苦笑して 「分かった分かった。じゃあ乗って」 と助手席に彼女を促した。
4 21/05/23(日)01:22:38 No.805523988
「はいッ!!!」 助手席に乗り込むチケゾー。シートベルトをきっちり付けた事を確認すると、右にウィンカーを出し、発車の合図をするトレーナー。 そして目的地に向かうためミニバンは走り出したのだった。 車が走り出して30分ほど経った。 ウイニングチケットは怪訝な顔をして車に乗っていた。 トレセン学園は東京都府中市にある。オークスの舞台である東京競バ場も同市にありまでの距離は大してない。下手したら歩いてでもいける距離なのだ。 にも関わらず、30分経っても一向にたどり着かないのだ。 何かがおかしい、とチケゾーは思っていたが中々声に出せずにいた。 しかしそれも我慢の限界のようで 「あ、あのトレーナーさんッ?」 「どうした?」 「道合ってる?ダイジョウブ?」 ついに言葉に出してしまう。
5 21/05/23(日)01:22:58 No.805524104
しかし 「大丈夫大丈夫」 と笑うトレーナーである。 (絶対、道間違ってるよぉッ!!!) とは思ったものの、トレーナーに遠慮して口を出せないチケゾーだった。 そんな折り 「ほら、着いたぞ」 とトレーナーが言い、駐車場に車を入れ始めた。 そこは東京競バ場ではなかった。 サンリオピューロランドと書かれていた。
6 21/05/23(日)01:23:16 No.805524217
それはオークス2日前のこと。 「すまないがお願いがある」 そう、ウイニングチケットのトレーナーは、あるウマ娘に話しかけられた。 「何だ、ビワハヤヒデ。それにナリタタイシン」 話しかけたのは彼の担当するウマ娘、ウイニングチケットの友人でありライバルでもあるビワハヤヒデ。 そしてその横に同じく友人兼ライバルのナリタタイシンの姿もあった。 「チケットに息抜きをさせてやってくれないか?」 と、ビワハヤヒデが話す。 「アイツ、とにかく練習にはマジメじゃん。ゴールデンウィークも全然休んでないんだよ」 付け加えるように話す、ナリタタイシン。 「そう言われればそうだな・・・」 確かにトレーナーにも思い当たる節があった。練習禁止と言わなければ自主練を止めなかった彼女である。 「今回のオークスの見学もそうだ。真っ直ぐに東京競バ場に向かえば、一日中レースにかじりついて見てしまう」 「そんな根詰めてたらいつか参ると思う」
7 21/05/23(日)01:23:34 No.805524318
ライバル二人から出てくるのは、チケゾーを案じる言葉ばかり。 その言葉を真っ直ぐに受け止めたトレーナーは 「よし、分かった。すまないな、俺がマネジメントする立場なのに、君たちにここまで気を遣ってもらって」 素直に彼女たちに礼と謝罪の言葉を口にした。 「構わない」 「別に」 それに対して、無表情なハヤヒデと、ぶっきらぼうなタイシン。 チケゾーとは真逆の性格の二人だが、その根っこは割と似たところがあるのかもしれない、と、彼は思った。 「それと提案なんだが、オークスは15時45分発走だ。午前中はここで息抜きをしたらどうだろう」 そう言ってハヤヒデはチラシを差し出した。 どこだろう、とそのチラシを見た彼の顔が一瞬で硬直した。 「・・・・・・さんりおぴゅーろらんど」 ファンシーなキャラクターが踊るテーマパーク。 とてもじゃないが男の行くところではない、という思いが、顔が引きつった笑いを作り出す。
8 21/05/23(日)01:23:50 No.805524427
「チケット、行きたがってた」 そう話すタイシン。勿論嘘である。 「・・・努力する」 「行って」 背の低いタイシンがトレーナーに詰め寄り追い込みを掛ける。つり上がった大きな瞳の奥に、強い意志の炎が見え隠れしていた。 「タイシンの言うとおりだ。チケットが以前言っていたな。このテーマパークに行くのが楽しみだと」 とどめのように。逃げけん制を掛けたハヤヒデ。その顔は気持ち笑っていたが、明らかに強い圧力が顔から発せられていた。 「・・・・・・分かりました・・・」 少しだけうなだれてトレーナーは了承の言葉を唸るようにひり出した。 その言葉を聞いたビワハヤヒデとナリタタイシンは、お互い目を合わせ頷いたのだった。 お互いに目尻の奥に目標達成の光を持って。
9 21/05/23(日)01:24:07 No.805524521
場面はオークス当日、朝9時過ぎに戻る。 「えっと・・・」 オークスを見に行くはずのウイニングチケットが連れてこられたのは、サンリオピューロランドだった。 (東京競バ場じゃないじゃんッ!!!!!!!) それは誰もが見て分かることである。 「じゃ、行くぞ、チケゾー」 とトレーナーに促されるが 「ふぇッ!?」 あまりのことに驚いて、その場で固まるチケゾーである。
10 21/05/23(日)01:24:51 No.805524745
「・・・行かないのか?」 「いやその・・・だって・・・」 急展開に言葉が出ず、顔を少し赤く染め、下を見るチケゾー。 「『楽しみにしていた』んじゃないのか?」 怪訝な様子でトレーナーが話しかけ 「えッ!!!???」 その言葉に背をピンと張り、トレーナーの顔を見てしまうチケゾー。 (確かに・・・確かに、トレーナーさんとオークスとかを一緒に見るのを楽しみにしてたけどさぁッ・・・・・・!!!) ぐるぐると思いが駆け巡る中で 「はい・・・」 と二文字の言葉だけが、彼女の口から放たれた。 どこか恥ずかしがっているチケゾーを見て 「ほら、行くぞー」 とトレーナーが声を掛け、チケゾーの手を握った。
11 21/05/23(日)01:25:10 No.805524833
「!!!!!!!」 あまりの事に驚き言葉が出なくなるチケゾー。 顔が急に熱くなってくることを彼女は感じていた。 体中から汗が噴き出てくるのを彼女は感じていた。 そしてトレーナーのごつごつした男の手が、自分の手を包んで、そこから彼の体温のぬくもりが伝わってくるのを彼女は感じていた。 一方でトレーナーは (やっぱりビワハヤヒデの言ったとおりだな) と思っていた。 『チケットの事だが、きっとこのテーマパークの正門前で恥ずかしがって立ち止まると思う。本心では行きたいのを我慢しているからな。その時は手を引いてやってほしい。私もよくやるがそうすればチケットは黙って着いてくる』 そう金曜日にビワハヤヒデからアドバイスを受けた彼だったが、彼の視点からすると、ビワハヤヒデの予言通りのことが起こったからだった。 真実はそうでないと、彼は気づくこともなく。 自分の本心がどういうものか、ウイニングチケットもまだ気づけることもなく。 二人の日曜日は始まったばかり。 オークスの前哨戦が、サンリオピューロランドで幕を開ける。
12 21/05/23(日)01:25:30 No.805524931
こういう話を私は読みたい 距離適性があっていないので、続きは明日書く これにて失礼する
13 21/05/23(日)01:26:07 No.805525071
おい待てェ失礼すんじゃねぇ
14 21/05/23(日)01:28:22 No.805525650
どんどん適正伸びてんな!
15 21/05/23(日)01:28:36 No.805525710
マイルから長距離まで適正Aあるわ!
16 21/05/23(日)01:29:05 No.805525825
このまま行けば単独でモンゴル横断できるようになりそうだな
17 21/05/23(日)01:30:41 No.805526183
ぜひそのままカドラン賞目指してくれ
18 21/05/23(日)01:57:52 No.805533224
書き込みをした人によって削除されました
19 21/05/23(日)01:58:05 No.805533282
書き込みをした人によって削除されました
20 21/05/23(日)02:06:25 No.805535203
恥ずかしがるチケゾーがスーッと効いて…これは…ありがたい…