ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/05/22(土)19:19:05 No.805374578
前回までです su4870290.txt
1 21/05/22(土)19:19:35 No.805374763
いつもは学園で勉学とトレーニングに勤しむウマ娘たちも、休日だけは皆それぞれが自分の時間を満喫している。 あるウマ娘はトレーナーを連れてカラオケで歌を歌い、あるウマ娘は数量限定の桜餅を買うためにバクシンし、またあるウマ娘は荒波に揉まれながら「日本一のマグロを一本釣りしてやんよ!!」と叫んでいた。ちなみにマグロの釣れる時期は秋から冬にかけてなので、3月下旬の今ではさっぱり釣れなかった。 そしてあるウマ娘─ハルウララ、もといシンボリルドルフは、休日にも関わらずトレセン学園へ向かっていた。 「この時期生徒会は多忙に次ぐ多忙、そのため休日だろうと学園で作業をしているはずだ。」 「もし私の元の身体が無事なら…私は生徒会室にいるはずだ!」 休日だろうとトレーニングを欠かさないウマ娘も少なくはない。そのため、休日でもトレセン学園は校門を開放し自由に出入りが可能だった。ハルウララは校舎に入り、生徒会室を目指す。 一応、確実に生徒会のメンバーが登校しているであろう時間になるまで時間を潰してきた。現在は正午、この時間帯なら確実に生徒会室には誰か一人はいるはずだ。
2 21/05/22(土)19:19:54 No.805374869
生徒会室の前までやってきたハルウララは、不安による動悸を抑えながらドアノブに手を伸ばす。 と、その時手が止まった。 「いや待て、これは客観的に見れば生徒会に無関係の一生徒が、急に生徒会室に押しかける形になっているのではないか?」 「そうなればエアグルーヴやナリタブライアンに摘み出されてしまうのがオチだ。確かに、一目私の身体がどうなっているかを確認するためだけならそれでも構わないかもしれない。」 しかし、最終的には元の身体に戻らねばならない。いつまでもこのハルウララの身体を借り続けるのも、生徒会長の席が空き続けるのも望ましい話ではない。 ならばどうにかして、今の私─恐らくは、陳腐なSFに倣えばハルウララの精神が入っているであろうシンボリルドルフと接触しなければならない。 そのためにはどうするべきか、何か策がなければこの扉を開くべきではない。
3 21/05/22(土)19:20:22 No.805375021
そう考えていると、生徒会室から大きな音が聞こえた。誰かが倒れこんだような音だ。 「エアグルーヴ!!」すかさずナリタブライアンの声が聞こえ、とっさに扉から離れた。そのまま近くの曲がり角に身を潜める。 「おい、聞こえるか!エアグルーヴ!…だめだ、気絶している。一体どうしたんだ、何を見て…なんだこれは…!?」 「えあぐるーぶちゃん!?どうしたの!?だいじょうぶ!?」続いて私の声が聞こえる。どうやら私は無事らしかった。 しかし、それよりもエアグルーヴの身に何が起こったのか探るためより集中して耳を澄ます。
4 21/05/22(土)19:20:34 No.805375098
「アンタ…エアグルーヴが必死にまとめた資料になに落書きしているんだ?正気の沙汰じゃないな。」ナリタブライアンの静かな怒りの声が聞こえる。 「私だって普段はサボってはいるが、それでもコイツがどれだけアンタを支えるために身を粉にしているかは理解しているつもりだ。」 布の擦れ合う音が聞こえる。どうやらナリタブライアンがエアグルーヴを担いでいるようだった。 「私はコイツを保健室まで運んでくる。アンタはもういい、何もするな。」 生徒会室の扉が開く音が聞こえる。 「今日のアンタ…どうかしてるよ。」 それだけ言うとナリタブライアンの足音が遠ざかっていった。
5 21/05/22(土)19:20:44 No.805375152
ハルウララは、その場から動けなかった。 生徒会室には恐らく私だけしかいないはず。接触するには絶好のチャンスだった。そのはずなのに身体が動かないのは、自分のしでかした行為が想像以上に生徒会に影響を与えているからだった。 1,2分して、ようやく歩を踏み出したハルウララは、開け放しの扉から生徒会室の中を覗く。 果たしてそこには、自分の身体─シンボリルドルフが、呆然と立ち尽くしていた。 「…入っていいかな。」 許可を求める声とも入室の宣言ともつかない一言ののち、ハルウララは生徒会室の中に歩を進めた。
6 21/05/22(土)19:21:04 No.805375268
「あれ…わたし?わたしがいる…あれ?じゃあわたしは?あれ?あれ?」 先程の出来事、そして急に目の前に現れたもう一人の自分。シンボリルドルフは既に自分の脳のリソースを使いきり、理解が追い付いていない様子だった。 「そうだ、私はハルウララ…ただし、その中身はシンボリルドルフだがね。」そう言って手鏡を渡す。 「…わたし、じゃない?なにこれ?どういうこと…?」 恐らくは今朝から調子が悪かったためか、鏡を見ていなかったのであろうシンボリルドルフは今やっと自分の身に起こっている現象を観測した。
7 21/05/22(土)19:21:26 No.805375422
「どうやら、私たちは身体はそのままに…心だけが入れ替わってしまった、のだと、思う。」 我ながら荒唐無稽なことを喋っている自覚があるらしく、かなり歯切れの悪い言い方になってしまった。 「まずは、謝らせてほしい。本当にすまなかった。私が、たった一度だけならと校則を破り、あまつさえ君に衝突してしまい…こうなってしまった。」 ハルウララに対しハルウララの身体で土下座をすることにわずかな抵抗はあったものの、こうしなければ気が済まなかった。 「先ほど君がブライアンに責められていたが、気に病むことはない。君を巻き込んだうえ、私でなければ処理できない書類を急に任されてもできるはずもない。」 こちらが謝っているというのに、端々に上から目線の表現が混じる。私の悪い癖だ。しかし、私の今の素直な思いを伝えるにはむしろこう喋るべきだとも思った。
8 21/05/22(土)19:21:38 No.805375484
沈黙が部屋を支配する。どれほど時間が経ったろうか。ふ、と頭に暖かな手のひらが触れた。 「あのね、ウララ、よくわかんないけど…るどるふちゃんも、たいへんだったんだよね?すごくつらそうなかおで、ウララ、こころがぎゅーってなるよ…。」 見上げると、シンボリルドルフの─ハルウララのまっすぐな目線がこちらに向けられていた。 「ウララね、えあぐるーぶちゃんをなかしちゃったんだ。ぶらいあんちゃんもおこってた。ウララのせいなのかなっておもった。」 「違う!!それはすべて私が…!!」 「ちがくないよ!だって、ぶつかってこころがいれかわるって、そんなのるどるふちゃんのせいじゃないもん!」 「でも…!」
9 21/05/22(土)19:21:52 No.805375557
「ウララね、るどるふちゃんはわるくない、それだけはわかるよ。えあぐるーぶちゃんも、ぶらいあんちゃんもわるくない。でも、ウララどうすればいいのかわかんないの。どうすればいい?」 跪き、こちらと目線の高さを合わせる。 「ウララね、えあぐるーぶちゃんにあやまらなきゃ。ぶらいあんちゃんにも。だから、どうすればいいか、いっしょにかんがえてほしいな。」 「…あぁ、もちろんだ。協力する。だから…」 「だから、るどるふちゃんはわたしにあやまらないで。」 手のひらで顔を包まれる。優しいまなざしだった。 「…分かった。とにかく、今は少しでも書類を片付けるのが先だ。」 今のままではエアグルーヴが回復してもまた忙殺されるのは確実だった。 立ち上がり、生徒会長の席に向かう。大量の書類が山積みであるものの、その大半は図示された資料であり、実際に目を通さねばならない部分はごくわずかだった。
10 21/05/22(土)19:22:06 No.805375647
「さすがエアグルーヴ、判断するための情報は簡潔にまとめてあり、すぐに理解できるように仕上げてある…これならば承認の判を押すだけで事足りる。」 そう思って、承認印を引き出しから出そうとして気付く。 「そういえば、私の鞄はどこかな。」 「かばん?えっと、きょうはおやすみだとおもってたから、もってきてないや…」 「…そうか、いや確かにその通りだ。しかし…困ったな。」
11 21/05/22(土)19:22:24 No.805375750
トレセン学園では日々ありとあらゆる陳述や要望や備品の注文書、あるいは学園内での決議書はすべて生徒会で取りまとめを行っている。その最終承認こそ、生徒会長であるシンボリルドルフの承認印だった。 言ってしまえば、どれだけとんでもない要望でも承認印さえ押されていれば生徒会の決議を通ったと見なされる。それほどの効力を持つ印鑑だった。 当然紛失や盗難を防ぐため、生徒会室からの持ち出しは厳禁。使用する場合も、職員室で管理する鍵とシンボリルドルフだけが持つ鍵の2つを使って引き出しを開錠しなければならなかった。そしてその鍵は、いつもシンボリルドルフの鞄の中にあった。
12 21/05/22(土)19:22:37 No.805375818
「まずいな…この書類は今日中に提出しなければならないんだが…」 言ってしまえばシンボリルドルフ(ハルウララ)に寮まで取りに行ってもらえば解決するのだが、それはできない。誰もいない状態で生徒会室を放置することになるし、ナリタブライアンが戻ってきたら面倒なことが起こるのは目に見えていた。 「仕方ない。今から私が鞄を取りに行ってくる。10分ほどで戻ってこれるだろう。それまで留守番を頼んでいいだろうか?」 「うん!まかせて!ウララ、がんばる!」笑顔で答える。素直でいい子だ。 とにかくブライアンが戻ってくるまでに帰ってこなければ。ハルウララは駆け出し─ 「…っと、さっそく戒めを破るところだったな。」 そう思いなおすと、競歩のように急ぎ足で部屋を出ていった。
13 21/05/22(土)19:28:11 No.805377732
普通に話として面白い 続きが気になる
14 21/05/22(土)19:29:45 No.805378249
とりあえず合流出来て一安心した
15 21/05/22(土)19:33:22 No.805379617
前回までのまとめは最後に置いた方が良いと思う それが来たら終わりだってわかるから終わったのかな?感想書きこんでいいのかな?ってならないから
16 21/05/22(土)19:35:40 No.805380494
いくらウララでも書類に落書きとかするかな…
17 21/05/22(土)19:36:47 No.805380882
>前回までのまとめは最後に置いた方が良いと思う >それが来たら終わりだってわかるから終わったのかな?感想書きこんでいいのかな?ってならないから 書いてる人です。確かにこのままだと終わりが分かりづらいですね… 一応前回までの流れを見てから本文に移れるよう最初においてましたが、次から最後のほうに置こうと思います。ありがとうございます。
18 21/05/22(土)19:38:52 No.805381596
もしくは前回のまとめは最初に置いて終わったら終わりだって分かるような一言を入れるでもいいかもね
19 21/05/22(土)19:38:57 No.805381627
ウララのあの見た目と声で会長の挙動してるの絶対面白いだろうな…
20 21/05/22(土)19:41:55 No.805382789
ウララの声で会長セリフなのも凄いことになる
21 21/05/22(土)19:47:55 No.805384910
会長ボディウララはバグスクショで散々見たけど逆は見たことないから新鮮だな
22 21/05/22(土)19:57:48 No.805388572
大人びたウララはともかく幼児化した会長は「病院へ!!」ってされそうで怖いぜ
23 21/05/22(土)20:15:58 No.805395365
>もしくは前回のまとめは最初に置いて終わったら終わりだって分かるような一言を入れるでもいいかもね メール欄に何か文章なり文字を入れて怪文書本文と区別を付けるみたいな手法もある 最後に一文字sとだけ入れるとか題名入れとくとか1/8…2/8と何分のいくらかを逐一入力してるケースもあった