虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/05/22(土)00:40:47 No.805148504

そして彼女もオークス1日前にして、湧き上がる心を抑えられずにいた。 彼女の名は『ダービーウマ娘』ウイニングチケット。 最も彼女がオークス前日で興奮するのはレースの熱さだけではなかった。 「ナニ？明日の準備？」 自室で私服を物色していたチケゾーに、ルームメートのトーセンジョーダンがそう話しかける。 「うんッ！！！」 元気よく、太陽のような満面の笑みで、チケゾーはそう返した。 オークスのレース当日、チケゾーは彼女のトレーナーと、オークスの見学に行くこととなっていた。 それを楽しみにしているチケゾーだが、 （気が早いなぁ） とトーセンジョーダンが思うように、まだ前日の昼間である。 準備をするにはいささか早いように思えた。 「そう言えばさァ、チケゾーの服っていっつもワンパターンだよね」 と、トーセンジョーダン。 確かに彼女の私服はニット帽＋Tシャツ＋短パンの組み合わせばかりだった。

2 21/05/22(土)00:41:06 No.805148610

「そんなことないよッ！！！」 と声を張り上げるチケゾーだったが 「いや、種類多いのインナーばっかじゃん」 とあっさり論破された。 そしてその言葉がウイニングチケットの心に火を付けた。 「じゃあさッ！！！今日、アタシの買い物に付き合ってよ、ジョーダンッ！！！！！」 「は？」 あっけにとられたのもつかの間、すぐに急かされ着替えることになったトーセンジョーダン。 そう、まだ昼間なのだ。 服を買いそろえるには十分な時間があるのである。

3 21/05/22(土)00:41:37 No.805148801

太陽の光があかるく注ぐアーケード街。 若さ溢れる男女がウィンドウショッピングにいそしみ活気に溢れている。 古着屋にウマ娘が二人。ウィニングチケットとトーセンジョーダンである。 （何でアタシが･･･） トーセンジョーダンはそう思いながらも、なんだかんだでウィニングチケットの服選びに付き合っていた。 試着室の前にトーセンジョーダンが立ち、退屈そうに自分の爪を眺めている。 試着室のカーテンが開き 「へっへー！！！」 と服を着替えたウイニングチケットが現れた。 「どうこの服？」 彼女が選んだのは黒いTシャツとカーキ色の短パンだった。 「あー、いいんじゃね？」 そうトーセンジョーダンが返す。 気のない反応に若干苛立ったチケゾーは無言でシャッターを閉め、着替えをさっさと済ませてしまった。

4 21/05/22(土)00:41:56 No.805148907

そして再び服を物色し着替えるチケゾー。 「それじゃ、これはッ！？」 「あー、いい感じいい感じ」 次に彼女が選んだのは黄色のTシャツに、迷彩のショートパンツ。 「これはどうッ！？」 「うんうん、すっごくいいわー」 その次に選んだのは、ボーダー柄のTシャツに、グレーのデニムパンツ。 「もうッ！！！真剣に見てよねッ！！！」 とチケゾーはむくれるが （全部同じ感じの服ばっかじゃん） とジョーダンは思い、根本的に服の選び方が変わってないルームメートに半分以上あきれていた。

5 21/05/22(土)00:42:22 No.805149048

結局、古着屋で何も買わず店を出た二人である。 ワンパターンな着せ替え人形とやる気の無いファッションレビュアー、双方が妙に疲れ、どちらが誘うわけでなく、オープンテラスのカフェに落ち着いた。 ぼんやりと青空を眺めるチケゾーと、無言で携帯をいじるジョーダン。 気だるい休日の昼間の暖かさが、何ごともない空気とともに時間を奪っていく。 ふとチケゾーの目が、トーセンジョーダンの手に向いた。 透き通るような白い肌。長い指。夜空のような深い藍色に、星のようにちりばめられた光が宿る彼女の爪。 「･･･ナニ？」 ジョーダンもそれに気づき、携帯から目を離さずチケゾーに話しかける。 「ジョーダンのさ、指ってなんかキレイだね」 「そりゃまー、気を遣ってますからね」 素直なチケゾーの言葉に、ちょっと自信ありげなジョーダンである。

6 21/05/22(土)00:45:26 No.805150036

「へー･･･」 チケゾーはふと自分の手を見た。 練習で浅黒く日焼けした手。生まれた勢いのままに、ただ育ってきただけの爪。 同じウマ娘なのに、ジョーダンの手とは全く違うな、と思った。 （どうしてなんだろ･･･アタシは） 自分の考えに入り込み始めたチケゾーに 「･･･チケゾー？おーい？」 と、ジョーダンが声を掛ける。 すぐに我に返ったチケゾーが 「う、ううん、ごめんねッ」 と、困ったように笑う。

7 21/05/22(土)00:46:01 No.805150221

それを見たトーセンジョーダンがため息をついて 「ちょっと、アタシの買い物に付き合ってくれない？」 と声を掛け、席から立ち上がった。 「ナニを？」 ときょとんとしたチケゾーに 「マニキュア」 とジョーダンは一言声を掛けた。 トーセンジョーダンに連れられて行った量販店は、チケゾーも行ったことが有る場所だったが、コスメコーナーの一角は一度も足を踏み入れたことがないところだった。 初めての雰囲気に圧倒されながらも、ジョーダンに手を引っ張られ、マニキュアコーナーに導かれる。 そこでチケゾーが見たものは色とりどりの光を放つ瓶。 どこかわざとらしいきらめきを持つものが多かったが、チケゾーにとってはどれもこれもが宝石のような煌めきに見て取れた。 初めてビー玉を見る子どものようなチケゾーを見て 「何か気になるのある？」 とジョーダンは声を掛ける。

8 21/05/22(土)00:46:31 No.805150364

「え、ええと･･･」 そう目を泳がすチケゾーだが 「これ、かなッ」 と瓶を指さした。 少しだけラメが入った、薄い桜色のマニキュア瓶だった。 「ほーら、指出して」 寮に帰ったチケゾーとジョーダン。 早速、買ったマニキュアを封切ると、ジョーダンはチケゾーの手をとった。 お湯に手を付けさせ、爪を整え、ベースコートを塗り、チケゾーが選んだマニキュアを塗っていく。 二度塗りして色調と整えたら続いてトップコート、仕上げにオイル。 時間をかけて丁寧に仕上げていくジョーダンの指さばきを、ただ静かにチケゾーは眺めていた。

9 21/05/22(土)00:47:13 No.805150593

「ま、こんなもんじゃね？」 出来上がったのは桜の花びらが舞い散った小川のような光を放つ、チケゾーの爪。 ちょっと自信ありげなトーセンジョーダンに対して 「はぇ～～～～～･･････」 と、目を輝かせて自分の爪をかざして見るチケゾーである。 「何だよそんなにうれしー？」 と、ジョーダンが口角を上げて話しかけると 「えへへ･･･」 ただ照れくさそうに、嬉しそうに、笑うウイニングチケットだった。 （明日･･･。明日、トレーナーさん、気づいてくれるかな･･･） 視線の先は指先の煌めきに。心の中のオークスへの思いはそのままに。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する

10 21/05/22(土)00:48:55 No.805151045

もう適正Sくらいあるよ！

11 21/05/22(土)00:50:15 No.805151441

スレ「」の脚質には合っていますよ

12 21/05/22(土)00:51:03 No.805151688

完璧過ぎる 独走状態だ

13 21/05/22(土)00:51:47 No.805151909

もう距離適正Sじゃないかな？

14 21/05/22(土)00:53:07 No.805152270

そろそろグランドナショナルとか行けそうな感じの距離適性になってる

15 21/05/22(土)00:53:22 No.805152333

周りをよく見るんだ スレ「」は気付いていないかもしれんが後続との距離が10バ身くらいはあるぞ

16 21/05/22(土)00:54:58 No.805152818

おい待てェ失礼すんじゃねぇ トレーナーさんに褒めてもらっていつもの快活さとは種類の違う照れ笑いを浮かべる乙女チケゾーを書かなきゃだろうが

17 21/05/22(土)00:56:26 No.805153225

適性Dぐらいの頃から見かけるけど因子継承しすぎじゃない？

18 21/05/22(土)01:00:41 No.805154360

チケットとジョーダンというあまり語られない共通点も少ないコンビでここまでの掘り下げをしているのもささやかだが美しい友情 す、す、す、すばらしいです！ 体のつながりや一心同体の親友ではないむしろ最初の買い物は疲れててしまうような距離感　いやだからこそそこで小さく美しい花のように咲く友情が綺麗で尊い尊い 私のアグネスデジタルがブオンブオンと全力で温まる素晴らしいお話です！！！

19 21/05/22(土)01:11:03 No.805157156

最初に連れ出すのがチケゾー ジョーダンは指褒められたら喜ぶのわかる チケットはマニキュア店で選べないとかキャラの解像度とか納得感のある展開が好き