虹裏img歴史資料館

1 21/05/21(金)20:32:16 No.805036970

日本ウマ娘トレーニングセンター学園生徒会、それは日々生徒であるウマ娘とそのトレーナーの為に粉骨砕身する組織だ。 そしてその生徒会に所属する副会長─エアグルーヴは、朝から重い気分だった。 「全く、廊下を全力疾走しウマ娘に激突…挙句自分も気絶しその後の予定を全ておじゃんにしてしまうとは…」 昨日生徒会長であるシンボリルドルフの起こした人身─もといバ身事故の収拾。そしてわざわざ時間をずらしてもらったメディアに対して、気絶していたシンボリルドルフに代わっての謝罪行脚に奔走していた。 本来であれば生徒会長といえども謹慎処分も免れない事態だったが、時期が時期ゆえに反省文と厳重注意で処分とされた。 今は3月、もう2週間もすれば新入生の入学と感謝祭が待っている。本来なら休日である今日も、これらの対応のために通学しなければならない程だ。 年間を通して生徒会は最も忙しい時期が今なのだ。それ故に一人でもメンバーが抜けることはあまりにも厳しいとの判断だった。 「厳戒ッ！今後二度と同じような事故を起こさぬよう注意せよ！！」とは理事長からの言葉である。

2 21/05/21(金)20:32:54 No.805037232

ふぅっと大きなため息をついて生徒会室の扉前で止まる。今日という今日は一言申し上げなければ気が済まない！ 「会長、おはようございます。昨日の件について私からお話があります！」 バンっと扉を勢いよく開ける。部屋の中にはナリタブライアンと…ナリタブライアンだけだった。会長がいない。 「ブライアン、会長は？」語気に苛立ちが混じる。 「いや、知らないな…私はてっきり朝一番にここにきてるもんだと思ってたんだがね。」 会長は朝に弱い。しかしそうはいってももう11時だ。というかこれは普通に遅刻なんじゃないか？エアグルーヴがそう思ってた時、彼女のスマートフォンが鳴った。

3 21/05/21(金)20:33:14 No.805037364

「はい、エアグルーヴですが…はい…なっ！そ、それは本当ですか！？」一気に顔が青ざめるエアグルーヴと、それを見て動きが止まるナリタブライアン。 「はい…はい…わかりました、すぐ向かいます。」通話を切ったあと、また深いため息をついた。 「いったい何があったんだ？まさか会長がまた事件を起こしたんじゃないだろうな？」 「いや…そうじゃない…そうじゃないが…くそっ、少し席を外す！ブライアンは感謝祭で必要な備品の注文書を取りまとめておけ！」言うが早いかエアグルーヴが駆け出していった。 「…やれやれ。こんな様子じゃ今月いっぱいはサボれそうにないな。」

4 21/05/21(金)20:34:10 No.805037763

学園を出て少し進むと河川敷がある。春頃、ちょうど今の季節になると麗らかな日差しと豊かな自然に囲まれた絶好の散歩コースである。 そこで遊ぶ子供たちの声に混ざり、ひときわ大きな声で叫ぶウマ娘がいた。 「じゃあねじゃあね、こんどはウララがオニをやるね！いまから、10びょうかぞえるからみんなにげてにげて～！！！！」 子供たちがキャッキャと散り散りになる。声の主は続けてカウントダウンを始めた。 「じゅ～う、きゅ～う、は～ち、な～な…」と、そこまで数えた瞬間、怒号が響き渡った。 「会長！！！いったいここで何をやっておられるのですか！！！」 ドカドカとエアグルーヴがカウントダウンをしていたウマ娘─シンボリルドルフに近づいていく。

5 21/05/21(金)20:34:29 No.805037889

「あれぇ？あなただれ？」 「なっ…！？エアグルーヴです！近所の方からここで子供たちと戯れていると学園に電話がありました！！会長、あまりおふざけにならないでください！！」 「えあ、ぐるーぶ…？う～ん、ウララちょっとしらないかもしれないよぉ…。それにウララね、いましんっけんにオニごっこやってるよっ！！」 「何をおどけて…！！さぁ今すぐ学園まで帰ってきてください！やっていただかねばならぬ作業も、聞いていただかねばならぬ話も山積みです！！」 エアグルーヴがシンボリルドルフの腕を掴み、引きずろうとする。 「まってまって！きょうはおやすみだよ！？」 「この時期に生徒会に休日などないことは会長が一番ご存じでしょう！？」腕を引く力が強くなる。 「いたいよぉ！やめてよぉ！それにいまウララがオニしてるの！！まだかぞえおわってないの！！」

6 21/05/21(金)20:34:47 No.805038011

「会長！貴方が今どのような立ち位置で活動されているか理解されておられないわけではないでしょう！？ それに昨日の事故もあり本来なら謹慎処分を言い渡されていてもおかしくはなかったのですよ！！」 「わかんない～！わかんないよぉ！」 「分からない…！？それならば…私にあの日語ってくださった…貴方の理想とはっ…一体なんだったというのですか…！？」 エアグルーヴの唇が微かに震える。それと同時に目元に涙が溜まり、潤みが増してきた。

7 21/05/21(金)20:35:02 No.805038140

「えっえっえあぐるーぶちゃんどうしたの！？どこかいたいの！？」 「私は…今…心が痛いです…会長…！」 「ええ～っ！？どっどうしよう！？えっと、ごめんね！ウララがへんなこといっちゃったかも！ごめんねえあぐるーぶちゃん！」 慌てるシンボリルドルフの元に、何事かと子供たちが集まってくる。 「ウマ娘のおねーちゃん、なにしてるのー？」「はやく数えてよ～！」 「ご、ごめんね！ウララ、がっこうにもどるから！オニごっこはまたこんどね！！」 なんだよー、ぶーぶーと不満を吹き出す子供たちを後に、半泣きのエアグルーヴにシンボリルドルフは引きずられていくのであった。

8 21/05/21(金)20:35:14 No.805038236

「…先程は取り乱してしまいすいませんでした。」ようやく落ち着いたエアグルーヴがぺこりと頭を下げた。 なんとか生徒会室までシンボリルドルフを引っ張り、やっとのことで生徒会長の席に座らせたのであった。 「しかしながら、会長。此度の行動は流石に目に余ります。昨日は事故、今日は遅刻！一体どうしたというのですか！？」 「う～ん、えっとね、なんのことだかわからないよぉ…。あさおきたら、なんだかいつもよりあたまがずしーんっておもいし、あさごはんのにんじんごはんも、なんだかおいしくなくて…。」 ずい、とナリタブライアンが割って入る。 「おい、とにかく今はこっちの作業が先だ。アンタがいなかった分、私たちは割を食っているんでね。」どさりと書類の束を机に置く。 「エアグルーヴ、アンタもやることはあるだろう。説教は後にしてくれ。」ナリタブライアンがちら、と横目で見ながら言った。 「………わかった。会長、お話はまた後程させていただきます。とにかく今はこの書類に会長の承認印をお願いします。」 エアグルーヴが自分の席に戻ると、溜まっていた書類を片付け始めた。

9 21/05/21(金)20:35:35 No.805038378

年度末の予算決算、入学式のタイムテーブルの作成、感謝祭で催される露店の配置割り振りの資料作成。 今日中に片付けるべき作業の半分が終わったところで、エアグルーヴは首を一回しした。 と、ふとシンボリルドルフのほうへ目を向けると、何か楽し気にペンを動かしていた。 「会長、先程の書類には目を通していただけました…か…！？」 近寄ったエアグルーヴは、思いもよらぬ光景に息を飲む。 「あ！みてみて～！このにんじんのえ、すっごくじょうずでしょ～！」 それは理事長へ提出する書類にぐにゃぐにゃの線で描かれた人参の落書きと、その下にはこれまた乱れた線で書かれた 「 にんじん にんじん 　おいしいにんじん 」 の文字だった。 硬直したエアグルーヴは、そのまま後ろに倒れこんだ。

10 21/05/21(金)20:39:00 No.805039746

し…死んでる…

11 21/05/21(金)20:39:25 No.805039911

エアグルーブからしたら悪夢そのものだよ！

12 21/05/21(金)20:41:13 No.805040649

おつらい…

13 21/05/21(金)20:43:53 No.805041806

ちくしょうせめてワルウララだったなら

14 21/05/21(金)20:47:28 No.805043340

ウララin会長サイド悲惨なことにならない？

15 21/05/21(金)20:56:42 No.805047245

先の展開が怖くなってきた

16 21/05/21(金)21:02:17 No.805049486

>ウララin会長サイド悲惨なことにならない？ 落ち込んでるウマに会長のギャグが飛んでくるのか…

17 21/05/21(金)21:03:22 No.805050003

まず明らかに様子おかしいんだから病院に連れて行こう

18 21/05/21(金)21:04:11 No.805050421

ウララとルナちゃんモードどっちがマシなのかな…

19 21/05/21(金)21:19:49 No.805057764

フクキタルなら姉と入れ替わってるから解決できるのでは？