21/05/12(水)13:05:07 遠くか... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1620792307373.png 21/05/12(水)13:05:07 No.801935762
遠くから聞こえる少女たちの喧騒をウマ耳が捉え、ちらちらと差し込む眩しさで目が覚めた ぬくぬくした布団の温もりを味わうように、セットしていない毛量をほぐしながら何度か寝返りを打って瞼を開く 「ほわぁ~~……んぅ」 背筋を伸ばしたタンホイザの気抜けたあくびが静かな室内に木霊する。寝起きの停滞した思考はむにゃむにゃと口から漏れる 隣を覗けば同室の子は既にいなかった、カーテンも閉められていて寝ている自分に配慮してくれたのだ (こんなに朝早くから凄いなぁ……私も見習わなくちゃね) 枕元には寝る寸前まで書き込んでいた手帳が開きっぱなしで、自分も寝落ちするまでにらめっこをしていたらしい これでも才女集まるトレセン学園の"普通"であり、普通筆頭である自分も気を引き締める思いでベッドから這い出る カーテンを開けば暖かな日差しの元、たくさんのウマ娘達が元気に活動していた。トレーナーらしき大人達もいる 今日は休日でレースがある子は朝から忙しなく、無い子は一日トレーニングに費やすか文字通りのお休みだ
1 21/05/12(水)13:05:50 No.801935925
(でも……あれ?) あまりに人が多すぎる、早朝からこんなに人が多いものだろうか。何か嫌な予感がして時計を見ると、とっくに10時を回っていた 寮の朝食の時間も、トレーナーとの約束の時間も過ぎていた。さぁっと血の気が引き、同時に焦りが生まれる。 「ね、寝坊しちゃった~~っ!?どうしよう、どうしよう……って早く行かなくちゃ!」 ジャージに着替えて、いや先に待たせてるトレーナーさんに謝らないと、どうしてこんなポカしちゃったんだろ…うう 真面目にやってるつもりでもどこか抜けてる自分に落ち込み、何より普通な自分に期待してくれるトレーナーさんを失望させたくない いつもの帽子を急いで被って扉を開けて飛び出す──と、廊下にいた何人かが驚いてこちらを見、次にクスクスと笑みをこぼす ねぼすけなところを見られた恥ずかしさを抑えて急いで寮を出ようとすると、偶然にもネイチャがいた。なぜかこっちを向いて焦ってる
2 21/05/12(水)13:06:03 No.801935973
「ちょちょちょ、なにしてんの?!」 「えっと、えっと、今日寝坊しちゃって、もしかしてトレーナーさんおこ──」 「ストップ、ストップ! 格好見て、格好!」 「へ?」 視線を下にすると未だにパジャマのままだった、寝間着のまま部屋から全力疾走していた、高等部らしい子が近くを通る時に笑っていた 可愛らしい柄の格好で走る姿を晒したことに、頬が一気に熱くなり顔が真っ赤になる。両手でなんとか隠そうとして覆ってへなへなと座り込む 「はぐわぁっ……うぅ……ぁあっ」 息が上がっていたところに羞恥心まで加わり、鼻血がつぅと垂れてきた。まさに泣きっ面に蜂の通り泣きそうになってしまう 悲しい状態の自分にわーわーと騒いで世話を焼いてくれるネイチャを有り難く感じながら、なんとか危機を脱したタンホイザだった。
3 21/05/12(水)13:06:24 No.801936051
ようやく辿り着いたトレーナー室から音は聞こえず静かで、重く伸し掛かるように心をずんと沈ませる。 皆が待っている教室に一人で入室するような気まずさは大変苦手で、なるだけ避けていただけにうぅぅと声が漏れる いつも優しくて自分を特別扱いしてくれ、プレッシャーをかけないよう気遣いすら感じるトレーナーだ 誰かに怒られるのが嫌というより、そんな彼を怒らせてしまう不甲斐ない自分が嫌で嫌で仕方ない 「おはようございます……」 「うん、おはよう」 書類を整理していたようで、手を止めるとこちらを向いてにっこりと笑う。いつもはカッコいい笑顔が、今は怖い トレーナーが口を開きかけた時に勢いよく頭を下げた、帽子がぱさりと床に落ちたのが見える、申し訳無さがあふれてくる 「ごめんなさいっ! 私、寝坊しちゃって、昨日夜遅くまで起きてて、それで、えと、急いでたけど鼻血とか出ちゃって」 情けない言い訳しか出てこない、優等生だ真面目で偉い可愛いなんていつも褒めてくれるからこそ、こうするしかない
4 21/05/12(水)13:06:50 No.801936142
「──ちょ、ちょっと待って。どうしたの一体」 急いで駆け寄る音、肩に乗せられた男の大きな手にふるりと震え、覗き込む彼の表情は…心配のそれだった こんな時まで彼は優しくて、普通に怒られる以上に心が苦しくなって抑えていた涙が零れそうになる しゃがんで帽子を拾ったトレーナーを見上げると、何か思い出すかのように眉をひそめていた 「今日は休みだって前々から言っておいたはずだけど…大変な目に合わせちゃったみたいだな」 ──休み…そうだ、確かに一日お休みを貰った。何をしようか寝るまで枕元であれこれ手帳に書いて悩んでいた 明日は何も無い日だからぐっすり寝ようと考えていたのに、それをすっかり忘れて寝坊したと思っていた 「──ふえぇ……良かったぁ……っ」 自分の勘違いとうっかりが招いた勘違いだと分かり、安心から力が抜けてがっくりとへたり込む。 あはは、ほんっとドジだねぇ。と自分で自分を笑いたくなるぐらいのミスだ。それでもトレーナーを失望させていないだけ良かった
5 21/05/12(水)13:07:42 No.801936357
朝から慌てていたし、朝食も取りそこねた。ぐぅ~っと追い打ちをかけるようにお腹の虫が鳴る。緊張が解けると同時に空腹が襲いかかった 「はう……恥ずかしい……」 お腹をさする少女を見、次いで腕時計を確認するとトレーナーが口を開く。 「タンホイザは今日、このあと予定とかある?」 「うぇ…?ええっと、決まってない…かなぁ」 へたりこんだままの自分に目線を合わせ、ぽんと帽子を返される。こんなに近くなったことはない距離で笑いかけられる 「じゃあ飯でも食いに行こう。いい時間だし俺の奢りだ。なんなら行きたいところがあれば連れて行くよ」 「ふえ、えっ!? い、行きますっ、行きたいです…っ!」
6 21/05/12(水)13:08:03 No.801936446
「よし、じゃあ30分後に正門前な。ほらいつも綺麗な髪の毛、今日は寝癖ついたままだぞ」 うねった癖毛はほんのちょっと厄介で、でも丁寧に巻いてあげるとふんわり皆が可愛いと言ってくれる好きと嫌いの表裏一体で くしゃくしゃと撫でられハハ、と笑うトレーナーの褒め言葉に嬉しさとまた別の気持ちで顔を真っ赤にしていれば、先に出てるからと一言 「それと外出許可取ってくるから私服、着てきなよ。落ち込んだ時は可愛くお洒落した方が女の子はいいさ」 俺が見たいんだけなんだけどさぁなんて、楽しげに出ていったトレーナーを見送る手は震えていた 服はどうしよ、いつものが良いかな、ちょっと背伸びしたほうが好きかな、髪のセットはバッチリして、ネイチャに一応言っておこ そんな事柄が頭の中を瞬時に巡り、あと半日どんなに楽しい時間を過ごせるか、期待から体は微妙に武者震いしていた。
7 21/05/12(水)13:08:31 No.801936570
ア˝゜
8 21/05/12(水)13:08:38 No.801936595
「えへへぇ…トレーナーさんとデートだぁ…なんて、ねぇ…ふふっ」 るんるん気分でトレーナー室を出ていくタンホイザに、朝の暗く淀んだ気持ちはもう無い。 トレーナーさんのためにとびっきり可愛い格好をしていく!頑張るぞー!えいえい、むん!と満たされたものがあった。
9 21/05/12(水)13:10:36 No.801937098
朝から書いてました 気落ちしてたのでマチタンが怒られる流れにしようと思ってましたが 書いてる内に可愛いなぁとなってお出かけする流れになりました うっかりやなタンホイザ可愛いね
10 21/05/12(水)13:10:55 No.801937167
かわいい…いい…
11 21/05/12(水)13:12:47 No.801937625
マチタン怪文書助かる
12 21/05/12(水)13:15:31 No.801938319
私イチオシのウマ娘です 怪文書が増えてほしいですね
13 21/05/12(水)13:16:11 No.801938490
かわいい
14 21/05/12(水)13:16:51 No.801938658
>私イチオシのウマ娘です >怪文書が増えてほしいですね 推しキャラの怪文書は自分で書くとサクサクになるぞ