ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/05/09(日)23:18:34 No.801191770
造花というモノが……いや、たまには本物の花について考えてみよう。 世話するのにも気を使うことが多くて、植物の世話なんて私にはとても出来そうにない。副会長とか自分の花壇とか持っててすごいと思う。 あんなに小さな種に栄養を取り込んで、あんなに綺麗な花が咲く。あんなに鮮やかな果実が実る。どうなってるんだろアレ。 そういった花の一生になぞらえて、『生きるというのは変化していくことだ』とか、そんな言葉を聞いたことがある気がする。 運命は変えられるらしいし、変化を恐れてもいけないらしい。言うだけなら簡単なんだけど、そのどれもを恐れた結果、このザマなわけで。 私が“造花”でないとするのなら、咲くか腐るか。私は今、その岐路にいる。
1 21/05/09(日)23:18:57 No.801191942
トレセン学園からほど近い河川敷。ここは多くのウマ娘が使うランニングコースだけど、もう少し上流に上がると人目に付きにくい釣りスポットがある。私のお気に入りの場所だ。 キングやトレーナーと幾度となく駄弁った場所でもある。喧騒も遠く、落ち着いて話をするのにはもってこいだろう。 日も暮れがかった頃。釣りをしながら待っていると、わかりやすい足音が近づいてくる。 「わざわざ私を呼び出すとは、珍しい事もあるものね?セイウンスカイさん」 「や、こんなとこまで御足労いただいて悪いね、キング」 「ホント、その通りよ。私の貴重な時間を割く価値はあるんでしょうね?」 「…まぁ、あるかないかで言えば大アリだね。これだけは絶対に話しておきたい」 「そ、そう……そこまで言うな…ら……って、あら?あなた何か、妙に匂うわね」 「おや、流石にハナが効くなぁ。話が早い」 「これ……、あなた…まさか」 「ん、そういう事だよ。……落ち着いてとは言わないけど、まぁとりあえず座って。ゆっくり話そう」 キングに全部話した。 トレーナーと関わる内に惚れていた事。キングに嫉妬していた事。トレーナーと寝た事。他にも色々、とにかく全部。
2 21/05/09(日)23:19:19 No.801192094
「……スカイさん、冗談のつもりならそう言って頂戴。でないと私は…、自分を抑えられないわ」 「全部ホントだよ。嘘なんて言ってない」 「そう。……ならこっちを向いて、歯ァ食いしばりなさい…ッ!」 当然キングは激怒したし、本気のビンタを食らった。 思いっきり泣かれて思いっきり怒鳴られて思いっきり殴られたわけだけど、逆に言うとそれだけだった。
3 21/05/09(日)23:21:00 No.801192808
「…その顔。何か言いたげね?スカイさん」 「……いやだって、こんなの…、おかしいよ。どうしてそんな、私は」 「まるで罰でも欲しがってるようね?スカイさん。…そうだとしたら、お生憎様。私からあなたにあげられる罰は、あれで全部よ」 「……え?でも、そんなの……キングは、それでいいの……?」 「それでいいか?いいわけ無いでしょう…っ!すごく腹が立つし、本当ならもう二、三発引っぱたいてやりたい所よ!……でも、あなたが小細工を弄して私のトレーナーを犯した。逆に言えばそれだけでしょう?」 「私が言うのもなんだけど、今のキング結構すごい事言ってるよ」 「その結構すごい事したのはあなたでしょうが!…コホン、それであなたは、その、一夜限りだからと迫ったわけでしょう?それでもはらわたが煮えくり返る思いだけど、あなた約束だけは守るから、そこは信じてあげるわ」
4 21/05/09(日)23:21:18 No.801192933
「う、うんまぁ……えぇ、こう、私としては一番マシなパターンで絶交かなぁとか思ってたんだけど」 「…あら、絶交がお望みなのかしら」「まさか、出来ればキングとは……これからも友達でいたいよ」 「…じゃあいいじゃない」「いや、我ながらやった事の重大さは理解してるって事なんだけど」 まだ涙目で呼吸も整いきらないのに、キングはしかめっ面で気丈に振舞ってくれる。 ……んだけど、想像よりあっさりしていて逆に怖い、という意思表示は受け取って貰えなかったみたい。
5 21/05/09(日)23:21:38 No.801193072
「まぁでも……そうね、スカイさんがそう仕向けたからスカイさんが全部悪い…というのには、ちょっと納得いっていないのよ、私は」 「え?いやトレーナーは別に悪くn」「悪いわよ!」「うおっ」 「そもそもあなたを惚れさせるような距離感で接するのが間違いなの!優しすぎるのよあの人は!いくら私と自分のお友達だからって、担当とそれ以外の娘とではしっかりメリハリをつけるのが一流のトレーナーというものでしょう?!」 「おー、そうきたかぁ」 「正直な話、あなたが私のトレーナーに惚れるのは仕方が無いの、何せ一流ウマ娘である私の一流のトレーナーなのだから!それは一億歩譲って許すとしましょう。でもそんな拗らせる程まで惚れさせるのはもう不可抗力の域を越えているでしょう!?友達だと思ってたのになんてモンじゃないわよ!」 「そうかなー、私が勝手に拗れただk「あなたもあなたよ!」」「おっときたぞ」
6 21/05/09(日)23:22:00 No.801193248
「私のトレーナーに惚れたなら、あなたもウジウジしてないで堂々と向かってきなさいよ!」 「あ、そういう」「そうよ!」 「私が悲しいのは、トレーナーに手を出された事だってそう、トレーナーが優しすぎて情けない事だってそう、でもそれ以上に、あなたが何も教えてくれなかった事なの!私達お友達でしょう?私の知らない所で私の大切な人たちが二人して傷ついてたなんて、悲しくないわけがないでしょう!?どうして私に話してくれなかったの!」 「えー、でも友達に『あなたの恋人に惚れました』って言えるワケn」 「その友達の恋人をフェロモン使って押し倒すよりは億倍健全でしょうが!」 「おっしゃる通りです……」
7 21/05/09(日)23:22:25 No.801193445
「はぁっ、はぁ…もう……女の子なら、好きな人を独り占めにしたいなんて当然の感情よ。そんなの隠してどうするのよ」 「そう言われると不思議とそういう気がしてくるね」「そうよ」 「……で、どうなのよスカイさん。まだ好きなの?彼のこと」 「…ん、好きだよ。大好き。未練がましいかな」 「そんなすぐに整理のつく事でもないでしょう。昨日の今日……というか今朝の今日?かしら。まぁ、気の済むまで好きでいるといいんじゃないかしら」 「なんか…器が広すぎて……逆に怖いよキング」 「王は寛容なものよ?それに、彼があなたに靡くのなら、あなたが私より彼にとって魅力的な女の子だった。ただそれだけの話よ」
8 21/05/09(日)23:22:47 No.801193606
「本音を言えばまぁ、本当は嫌よ?だからあなたにも怒ったし、後であの人にも怒るわ。でも、あなた達の一晩に私とあの人、私とあなたのこれまでが埋もれてしまう訳でも無いと思うの。…そんなの、寂しいじゃない」 「キング……」 「私はね、あの人が私の担当トレーナーになってくれて本当に良かったと思ってるわ。他の人なんて考えられないの。…それと同じくらい、あなたとお友達でないこれまでも考えられない。それはこれからだってそう、あなた達が何をしていようとそれは変わらないの」 キングは私の目をしっかりと見つめてそう言う。 ……そんなの、私だってそうだ。そうだったはずなのに、私は。 後悔なんて今更だろう。今更なんだ。そんな、虫のいい……ダメだ、泣くなんてダメ、後悔なんて、しちゃ…ダメなのに……!
9 21/05/09(日)23:23:18 No.801193813
「あの人もあなたもきっと、ただ気持ちのいい思いをした訳じゃない。あなたがそうして泣いてくれる内は、私はあなたを許せるわ。あなたが罪悪感に傷つくなら、私はあなたを許すことで傷つく。それが出来る内は、私とあなたは何があってもお友達と言えると思うわ。私にとっては、あの人もあなたもそれに値する人なのよ」 「……ありがとう、キング」 「もういいわよ、……あーもう!それはそれとしてあの三流トレーナーは教育のし直しかしら!せっかくエスコートも身についてきたのに」 「…あー、あれは傍から見てても惚れ惚れしたなぁ、思わず嫉妬して泣いちゃったもん」 「そうでしょうそうでsy…え?あなたそれをいつ見たのよ」 「え、あー…先週だっけ、駅前の噴水で待ち合わせしてたのを偶然」 「……どこまで見たの」「キングが遅れてきて頭をなでなd───」 今日一番の悲鳴とビンタが飛んできた。
10 21/05/09(日)23:23:41 No.801193978
「あ、あぁっあ、あなたねぇ!人にはやっていい事と悪い事が!」 「私にはキングが分からないよ……」 「まさかあんな醜態を見られていただなんて……!一流にあるまじき不覚じゃないの!」 「醜態だなんてとんでもない、勝負服モチーフのカジュアルドレス、すっごくカッコよかったよ」 「な、何よ急に、よく見てるのね……、ま、まぁアレはお母様が」 「撫でられてる時のむくれ顔としっぽのギャップがごめんごめん調子に乗った」「分かればいいの。」 何が地雷かわかったもんじゃないよこんなの!トレーナー、もしやと思ってたけどすごい人なのかもしれない。 「ふむ……いやでも、デート。デート…アリかもしれないわね」 「……どうしたの急に」「いやね、貴女に何かしてあげられることは無いかって」 「え、もう大丈夫だよ?言っちゃなんだけど結構スッキリしたし」 「私はそれをどう捉えればいいのよ!……まぁそれはよくて、私はこのままじゃダメだと思うの」 「ダメ……なのかなぁ」 「一度寝ればスッキリ、ハイおしまい。それはなんだか…違うでしょう。私の勝手な思い込みかもしれないけれど」
11 21/05/09(日)23:24:15 No.801194239
「私はね、あなたがこのまま自分を悪者にして話を終わらせようとしているのが我慢ならないの。このまま私からも、あの人からも逃げるなんて許さないわ」 「逃げる……?逃げる…かぁ……。私、逃げたかったのかな」 「少なくとも、私にはそう見えるわ。あなたがどんなつもりかは分からないけれど」 「あなた、私に話す時『けじめ』って言ったわよね?なら、けじめを付けるべき相手はもう一人いるし、もっと相応しいやり方があるって思うの」
12 21/05/09(日)23:24:28 No.801194317
キングの言っていることはわかる。 多分、キングには私の態度は燻ったまま蓋をして有耶無耶にしようとしているように見えているのだろう。 というか事実……、それでもいいと思ってしまっている私がいる。 私だけが二人に嫌われれば、それで済むと思っていた、甘い自分。 そんな中途半端さこそが、キングは許せないのだろう。
13 21/05/09(日)23:24:47 No.801194458
「…あなた、トレーナーのことはまだ好きなのよね?」 「え?……う、うん。好きだけど…?」 「例えばの話、私からトレーナーを奪えて、付き合えるとしたら?」 「それは…まぁ、うん。付き合いたいけど……」 「よろしい。じゃああなた、トレーナーとデートしなさい」 ………………? 「え?」 「わかった?」 ………………………………え?
14 21/05/09(日)23:26:36 No.801195231
ウンスのどんよりした拗れを真正面からぶち砕くキングが見たいなと思い書かれた文章です。 7本目までのまとめ→su4839294.zip
15 21/05/09(日)23:26:53 No.801195355
王の威厳…
16 21/05/09(日)23:27:18 No.801195517
つよい…
17 21/05/09(日)23:29:33 No.801196465
これは間違いなく世代のキング
18 21/05/09(日)23:31:10 No.801197157
>盗まれるキング
19 21/05/09(日)23:31:31 No.801197300
この一流ウマ娘が…
20 21/05/09(日)23:35:32 No.801198884
会話のテンポ好き
21 21/05/09(日)23:37:12 No.801199503
>この最高にいい女が…
22 21/05/09(日)23:40:24 No.801200621
盗られても、盗られても、盗られても
23 21/05/09(日)23:41:14 No.801200913
キングが一流っていうか優しい娘過ぎるわ…
24 21/05/09(日)23:42:06 No.801201191
>盗られても、盗られても、盗られても そのウマ娘は10度の寝取られを超えて血統を証明した
25 21/05/09(日)23:43:17 No.801201653
不屈の塊すぎる…
26 21/05/09(日)23:48:34 No.801203532
た…太陽…
27 21/05/09(日)23:49:59 No.801203998
そうきたかー強すぎる…
28 21/05/09(日)23:51:37 No.801204541
たった1話で重馬場を良馬場に…これが一流…!
29 21/05/09(日)23:54:44 No.801205594
内心はともかく自分とトレーナーとの関係こそ確かなものであるという宣言でこれは…強者の在り方
30 21/05/10(月)00:00:38 No.801207734
> エメラルドの宝石言葉は、「幸運・幸福・夫婦愛・安定・希望」とされ、宝石言葉の他にも、“愛の成就”という意味を持ちます。 また、浮気を防止する意味も持っているとされ、お互いの浮気封じのお守りとしても、効果的といわれています。
31 21/05/10(月)00:02:31 No.801208412
他のウンス横恋慕でもキングは王。だったしこの共通認識はすごいな
32 21/05/10(月)00:12:40 No.801212141
王の器すぎる…
33 21/05/10(月)00:17:51 No.801214081
電撃の煌き…