21/05/05(水)01:20:30 最初は... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1620145230808.jpg 21/05/05(水)01:20:30 No.799458628
最初は、妹みたいな感覚だった。 年下の同級生っていうだけで面白い存在だったし、ちょっとからかいがいのある子くらいに思ってた。 それなのに、私はいつの間にか彼女、ニシノフラワーのことを好きになっていた。恋愛対象として。 フラワーと目が合うと嬉しい。話しかけられると嬉しい。ふとした瞬間に身体が触れるとドキドキする。 誰かを好きになるなんて初めてだった。 もちろん戸惑った。好きになった相手が同性で、まだ幼いと言っていい子供だったんだから。 フラワーはどうやら私のことを慕ってくれていて、友達としてもそこそこ仲良くやっている。と思う。 ……私のこの感情は、友達として好いてくれている彼女の気持ちを裏切ることになる。 それに気持ちを打ち明けたとき、きっと受け入れてはもらえない。気持ち悪いと思われるかも知れない。 だから、この気持ちは隠すしかないと思った。 この気持ち自体、思春期の一時の気の迷いでそのうち風化してしまうことを期待してもいた。 その期待に反して、フラワーのことを知れば知るほど、もっと好きになってしまう。
1 21/05/05(水)01:21:24 No.799458873
この短い間にフラワーの色々なことを知った。 感情豊かでころころと表情を変える。 真面目で頑張り屋で少し無理をして背伸びしがち。 危なっかしいくらい純真で騙されやすい。 しっかり者、字が綺麗、料理が上手。 頭がよくて、面倒見がよくて、負けず嫌い。 お日様のような暖かくて優しい笑顔が世界一可愛い。 私に懐いてくれていて、からかうと面白くて……、隙が多い……。 抗いようもなく、私は彼女に惹かれていった。 取り返しがつく内に距離を取るべきだったんだと気付いた時にはもう手遅れだった。 毎日、少し、また少し、フラワーは大切な女の子になる。 そして、フラワーのことを好きになるたびに、ほんの少しずつ息がしづらくなる。
2 21/05/05(水)01:22:49 No.799459270
私が自分の気持ちを自覚したのは、いつもの花壇が綺麗な公園の土手でサボっている時だった。 いつものようにフラワーが私を呼びに来た。 フラワーは誰が見てもわかるくらいに疲労していた。目の下にクマができていてるし、普段ならここまで軽く走ってこれるのに息が切れている。夜ちゃんと眠れていないんだろう。 トレーニングなんてしている場合じゃない。ここで一緒に休むべきだ。 ……フラワーが寝不足でも、私がサボる理由にはなっていないんだけど、フラワーは少しの逡巡の後コクンと頷いた。 こういうところ心配なんだよなあ。この前タキオンさんにも言いくるめられて怪しい薬飲みそうになってたし。 フラワーのいる方の腕を広げて隣に誘う。フラワーはなんだか緊張したようにそわそわしながら腰を下ろして私の隣に寝転んだ。 フラワーは律儀に私の身体にぴったりとくっついた。その瞬間、ジンとした痺れが身体全体を襲う。遅れて心臓が暴れ出す。全身の毛穴が開く感覚がする。
3 21/05/05(水)01:23:28 No.799459461
叫んで飛び上がりたいような衝動を私はかろうじて抑え込んで、なんとか表面上平静であるように装った。 丁度私の腋のところにフラワーの頭がある。私のすぐ横で、無防備なフラワーが横たわり目を閉じている。彼女の体温が触れた身体の側面から伝わってくる。 知らず、つばを飲み込んだ。 フラワーはよほど無理をしていたのか、すぐに寝息を立て始めた。 胸の内に湧き上がる愛しいという感情。大切にしたいという思い。 それと同時に、私は確かに、フラワーに欲情していた。 フラワーに触れたい……。 そっと手を伸ばして、彼女の頭を優しく撫でる。それ以上のことをしたいという欲を抑えながら。 疲労の色が浮かんでいた表情が僅かに和らぎ、心地よさそうに額を手に擦りつけてくる。 眠っているフラワーは天使のように愛らしかった。私も自分の顔がほころぶのを感じる。 ……胸がギュッと痛くなる。 どうしてこの子に恋してしまったのだろう。 手に入らないと分かっているものを見ても、苦しいだけなのに。
4 21/05/05(水)01:23:46 No.799459549
フラワーの夢を見たあと、目が醒めると枕が濡れていた。重傷だなと内心自嘲する。 鏡を見ると少し目の端が赤い。まあ、これなら化粧でわからないようにできる。 さっさと手櫛で髪を整えて、いつもの昼行灯の顔を作る。ほら、笑え、私はそんなシリアスなキャラじゃないでしょ。 悩みなんかありません、いつでも自由なスカイさんですって顔をしなくちゃ。
5 21/05/05(水)01:26:41 No.799460342
朝からフラワーの調子がよくないことはなんとなくわかっていた。 お昼に食堂に誘うために声をかけようとしたら、目の前でフラワーが倒れた。苦しそうに浅い息を繰り返すフラワーを抱えて保健室まで走った。 動かしたら危ない病気かも知れないのに、その時の私はそんなこと考えもつかないくらい全く冷静でいられなかった。 保健の先生はフラワーの様子を見てすぐに何かを察したみたいで「心配いらない」と私を宥めた。