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21/04/26(月)19:06:13 21日目 ... のスレッド詳細

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21/04/26(月)19:06:13 No.796638985

21日目 本格的な復職の為、トレーナー君の私服やジャージを見繕いに行った 互いの服の趣味などあまり気にしてこなかったが、思うに彼女は存外質素な趣味をしている 今後はもうちょっと意見交換をする姿勢を持つ事にしたい ひとまず、毛並が非常に整っていて尻尾が細くまとまり、何を着ても邪魔にならないのは、方々から羨まれる特徴か 「────いやあ、これではまるで学生デートじゃないか」 「しょうがないでしょ、出歩くのに一番不都合ないのがタキオンの用意した制服なんだから」 「はっはっは、私は満足しているんだけどね。学生生活を随分投げ捨てていたものだから」 「そういう事、言うかなあ」 「言うとも」

1 21/04/26(月)19:06:27 No.796639067

22日目 トレーナー君をトレーナーとして復職させるのは良いが、未だ尽きぬ疑問と興味の為にも、今後もいくらか走ってもらう事を了承してもらった むしろ乗り気であったし、レースに出るウマ娘並の気迫を持ち始めている事は、やはり興味深い ひとまず、先天的・後天的な適性、遺伝的素質などを知る為に、改めて彼女の経歴の聞き取りを行った 運動の経験は中高の年代で弓道部と剣道部の兼部をしたのみに留まり、体育の成績は5段階中平均3.5 両親は運動が得意でない事まで聞いた 「────陸上競技もやらなかったのかい」 「陸上部の友達から誘われたけど、やらなかった。競うとムキになりすぎる気がして」 「……いやあ、随分見せつけられてるよ。いい歳してムキになる姿」 「走っていい?」 「待ってくれないか」

2 21/04/26(月)19:06:46 No.796639175

24日目 デジタル君の協力を得て、3人で競走 条件は芝2400、かなりギリギリの条件に設定 適性を見る事と、この数週間でどれほど身体の動かし方が変化したかなどを計測する為に、いくつかの計器を着けて走ってもらう データはシャカール君にも解析を依頼した レース結果はトレーナー君のドベであるが、以前と違い走り切って先頭の私から4バ身 私自身があまり先陣を切るのが得意でないとはいえ、こうも詰められるのは興味が尽きない 「────うひひ、謎多きウマ娘ちゃんと併走ゥ……こんなの、今後もタダでやらせて頂けるんでひゅか……」 「……ああ、次はダートで頼むよ」 「アアッ、やらせて頂きます、このデジたんの身が役に立つならいくらでもぉッ」 「……困ったな、学生生活を疎かにしたツケを感じるよ」

3 21/04/26(月)19:07:04 No.796639259

25日目 シャカール君からデータの返送が来る 芝・ダートの向き不向きは掴めないが、繊細で気の荒いタイプのウマ娘の特徴を示す部分があるとの回答 また、最後の直線に至るまで脈が無茶な状態になっていない事を指摘された 走法は模範的で特徴がないとの事だが、コーナリングが綺麗であると褒め称える声。流石は私のトレーナー君だ 元々体質的、性格的に繊細であった事と耳覆いの件から、シャカール君とアヤベ君、ナリタタイシン君のデータを参考にするものとする 「────君、いつになったら本気で走れるんだい?」 「これ以上って言われても、生徒じゃないし、ピークは過ぎてるんじゃないかな」 「私は君の中に潜む獣を見たいのさ」 「そんなの、散々ベッドの上で見せたじゃん」 「それは、また、うん、違うんだ」

4 21/04/26(月)19:07:17 No.796639342

27日目 1か月ほどが経過し、本格的な復職から数日 市販のジャージで私と並ぶトレーナー君を、スカーレット君が本気で先輩だと勘違いするなど、細々としたハプニング以外、だいぶ元の生活に戻っている 「走りたい」と口走る事が増えたきり減らない、日常的には私よりバイタリティに溢れる、といった変化に、私が慣れねばならぬ段である 「────タキオン、今日のトレーニング、私も走る」 「またかい?君、本分忘れてないかい?」 「教える事がほとんどなくなってて助かるよ」 「そこは天然か!」

5 21/04/26(月)19:07:36 No.796639461

30日目 元より繊細な耳に加えて尾まで手に入れたトレーナー君は弱点の塊だった 私も他者の事は言えないが、そんなものが比でない程、彼女のそれは弱い しかし互いのハンデを失った事で彼女の底無しな面が顕在化する 元より巣食っていた獣が育ち切ったかのようだ 井戸に引きずり込まれた気分になる 「────お揃いになってよかったと思ってる」 「……今は結構後悔してるよ……」 「なんでさ」 「こんなに激しいとは思わないだろー!」

6 21/04/26(月)19:07:50 No.796639541

────私がウマ娘になってから、1ヶ月余り。 ウマ娘としての生活に慣れが生じ、ようやく落ち着きを得始める。 愛バ、タキオンがウマ娘の中でも比較的少食であった事が災いしてか、自身の食欲とは未だ折り合いが付いていないが、いずれなんとか、と楽観視している。 私の動向は生徒会や職員会議を通じたのち理事会の耳にも入り、理事長直々に、ウマ娘の生活規範カリキュラムなどを、生徒の後ろで受講する機会を与えて貰った。 怪しくないかと心配はしたが、傍目にはインターンの子だから、と言うたづなさんの声に後押しされて、教室の後ろで話を聞いている。 相変わらずタキオンにはしばしば実験台にされるが、珍妙な薬物を投与する事は減って、一時のように、走る事に腐心するような、指向性のある実験が増えたように感じる。 例えば、私の脚がレッグプレスでどの程度耐えられるかを地道に計測していくような。 別の例えであるなら、タキオンと一緒にトレーニングした後の体温を、マメに測られているとか。

7 21/04/26(月)19:08:00 No.796639600

そんな、ウマ生をエンジョイし始めた折、トレーナー室で残務整理をしているところに、タキオンがふらりと現れる。 「トレーナー君」 少し、元気がない。 以前よりも、彼女の感情の機微に聡くなった。 声色はよりはっきり分かるし、全身で彼女の感情の色合いが分かる気がする。 ウマ耳万歳。ウマ娘の身体万歳。そう思っていると、彼女が続けて口を開く。 「やっぱり君を、治そうと思う」 「は?」 思わず、抜けた声が出る。

8 21/04/26(月)19:08:13 No.796639672

神妙な声。まっすぐ見据えた目。耳はつんと、上を向いている。 これ以上ない本気の一言。絞り出した声。 「まさか、ここまで君の人生を狂わせるとはね。我ながら傑作だったと言える。  ただね、トレーナー君。私はこれ以上、君という一個人の人格が、人生が、生涯が壊れていくのを、許せなくなってきた。  私が悪かった。私が、迂闊なことを言うから。  私を許さなくても構わない。治るまでの面倒は見よう。  だから────」 そこまで言って、彼女は項垂れる。 泣いている声が、耳覆い越しでも聴こえてくる。

9 21/04/26(月)19:08:26 No.796639738

何を言っているんだ。勝手なことを言うな。 私が望んだ事を、否定するのか。 我が征く道を塞ぐのか。 それは、それは 「それは、お前が、決める事じゃない」 気付けば、彼女の襟に、掴みかかっていた。 信じられない膂力。暴力的な反射。全てを、彼女に向かって行使していた。 簡単に宙吊りになり、もがくウマ娘の姿。 まずいと思っても、噴き出す怒りが、握る手を強める。

10 21/04/26(月)19:08:38 No.796639803

「とれーなーくん、やめて、くび」 「ああ、分かるよ」 ぎり、と襟を掴む手を締める。学生服というのは頑丈な分、こういう事では、破けて解放してはくれない。 未だ収まらぬ怒りは彼女を持ち上げ続け、全身に振戦を起こす。 毛の逆立つ感覚。尾がしきりに揺れ、耳が後ろに倒れる。 そうだ。分かるよ。苦しいだろう。お前は私に優位を取られる事など、今まで一度も考えて来なかったのだ。 身勝手、傲慢、暴虐。その全てが、今ここに跳ね返る。 私というウマ娘は、”私”の選択によってここに居る。 邪魔などさせない。治させるものか。 “私”はもう、この姿をもって私なのだ。 ならば、せめてこのまま私の糧として、この手の中で─────この、手の中で?

11 21/04/26(月)19:08:52 No.796639883

違う。私は、私は。 急激に冷めた感情に身体が追いつかず、目がチカチカとする。 眩しい。苦しい。手が震える。 乱暴に離した手の先からは、どさりと崩折れる音と、ひゅうひゅうと息を吸っては咳込み苦しむ、愛バの声。 「ああ、ごめん、私」 「ほんとだよ、なんで、きみ」 不遜な態度を崩さぬまま、しかし伏したままの彼女に、思わず抱き縋る。 違うんだ。そうじゃない。私の怒りは、もっと単純な、表層的な、本能的なもので。

12 21/04/26(月)19:09:06 No.796639955

「タキオン、私、一緒になれて嬉しかった。  一緒に走れて、一緒に悩んで、私、後悔なんかしてない。  取り上げられたくない。私はいつまでもこのままで居たい。  まるでどこかに去るような言い方はしないで欲しい、私、私────」 離れたく、ないよ。 タキオンなしで、生きられなくて、良い。 ぐしゃぐしゃの涙声ばかりでろくすっぽ喋れなくなりながら、絞り出した言葉に、彼女が呆然とするのが見える。 「ああ、トレーナー君、そんなに」 「私、気に入ってるから……だから、治さないで」 ごめん。ごめん。互いに謝り合いながら抱き合う、ぼんやりとした時間。 お互いの乱れた息だけが、時間を測る。

13 21/04/26(月)19:09:27 No.796640087

「────私だって、研究対象と君の人生を天秤にかけて言ったんだぞ!あそこまで怒るかい!?」 「まいっかい毎回言葉足らずで何年やるつもりさ!」 「そこまで不便してないとも思ってなくてね!」 「便利だよ!ありがとう!ばーか!」 「ちょっとは人間の暮らしについて懐かしんだらどうだい!?」 「走れる方が!万倍!楽しい!!」 喧嘩の第二回戦は、程なくして開催される事となった。 結局、たまたま用があって私を訪ねたデジタルが垂らした鼻血の匂いで互いがフリーズするまで続いたのだが、それはまた別の話────

14 <a href="mailto:s">21/04/26(月)19:10:10</a> [s] No.796640321

su4802148.txt 不思議な事が起きればいいと思います

15 21/04/26(月)19:15:33 No.796642167

続ききたか…!

16 21/04/26(月)19:17:18 No.796642718

ウワーッ!恐ろしいウマ娘の本性!

17 21/04/26(月)19:17:19 No.796642720

ウワーッ!完全にうまぴょいしてる!

18 21/04/26(月)19:18:53 No.796643240

ま デ 死

19 21/04/26(月)19:19:56 No.796643584

アイツらうまぴょいしたんだ!

20 21/04/26(月)19:20:02 No.796643619

やっぱりソウルに乗っ取られてますよね?

21 21/04/26(月)19:20:03 No.796643626

デジたん!……デジたん?

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