虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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  • #8 本... のスレッド詳細

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    21/04/24(土)03:44:27 No.795750526

    #8 本人チェック用に体組織採取だけ終えた二人を、応接間…と言うには殺風景な、スツールとローテーブルを置いただけの部屋に通すと、すぐに副長との会話が始まった。 会話自体は淀みないんだけど、話してる内容がワケ分からない。ていうか話以前に疑問がいくらでも浮かんでくる。なんで子供が突然大人の体になるワケよ。式波少佐もそうだったけど、やっぱりエヴァのパイロットって非常識の塊だ。 二人の話だと、身体は彼らの主観時間に応じて成長・変化したらしい。いわゆる時間の遅れ、私達の基準系とは違う時空にいたってことになる。いや、意味不明でしょ。でも副長は特に驚いた風もなく話を聞いて、時たま質問をしてはまた聞きに回る。普段と変わらない平然とした様子。この人も大概だ。 と、部屋の扉がノックされたので私が出る。サクラだ。 「失礼します」 軽く頭を下げ、数歩進んでチェックの結果を報告する。各種の生体情報は記録に残っていた二人のものと完全に同一とのこと。副長はそれを聞いて、そう、ありがとう、と短い返事。それじゃ、やっぱり。姿形も声も変わってるし、まだちょっと信じられないけど。 この男があの疫病神なんじゃん。

    1 21/04/24(土)03:44:45 No.795750554

    サクラは部屋にいる面々の顔を不安げに見回した後、そそくさと出ていった。あれは多分相当混乱している顔だ。そりゃそうもなるって。 そうこうしている内に副長は聞きたいことは大体聞き終えたらしく、これからどうするのか二人に聞いた。真希波大尉は今ヴィレがやっていることを見てみたいと言い、疫病神は村にいる友人の所へ行ってみると言う。住み家はひとまずヴィレの宿舎をあてがうことにし、IDの発行やら何やらを総務部門へバタバタと引き継いでようやく解放された。 午後やるはずだった仕事は全くの手付かず。半分キレながら夜までかかって終わらせた。

    2 21/04/24(土)03:45:11 No.795750593

    --- 久々に慰霊の塚に来た。今日はまだ誰もいない。前回来た時よりも周囲がずいぶん明るいのは、それだけ夜明けが早くなったからだ。 あの二人が帰ってきてから二週間が経った。 最近は梅雨って感じがしなくなって、晴れると昼間はめちゃ暑い。もう夏だ。セミとか鳴いてるし。日陰に入るとだいぶマシだから、本部で仕事中はファンで風を送るだけでもなんとかなる。技術部が空調を作ってるけど、圧縮機より冷媒の方が問題らしい。なんでもいいけど、これ以上暑くなる前に完成させて欲しい。 真希波大尉は、赤木副長付の肩書になった。山の中から持ち帰ってきたMAGIの外部記憶の中身をさらい、今の私達の困り事を把握するまでを一週間くらいでやってのけて、今は本部に自分の居室をもらって何やら始めている。あの人、ただのパイロットじゃなかったんだ。謎すぎ。

    3 21/04/24(土)03:45:35 No.795750619

    疫病神は… なんか村で他人の人助けというか、なんでも屋みたいなことをしているらしい。サクラのお兄さんを手伝ったり、エージェントの相田さんと一緒に行動したり、村のお年寄りの面倒を見たり、農作業に参加したりしてるらしい。らしい、っていうのは全部サクラから聞いた話で、私が直接見たわけじゃないから。私はせいぜい宿舎や本部の周りでたまに見かけるくらいだ。 「おはようございます」 「あ、スミレさん。おはようございます」 今日は来ない日かなと思っていたら、私の方が早かっただけだった。花を置き、手を合わせたスミレさんと一緒に私も手を合わせる。 「最近、調子はどうですか」 墓地から本部までの間は雑談タイムで、大抵は私が喋り倒して終わる。今日は私が押し黙っていたせいか、スミレさんから話しかけてきてくれた。元気っすよ、とか、毎日クソ忙しくて、とか当たり障りのない事を言ってもよかったけど、私は悩みを打ち明けた。

    4 21/04/24(土)03:45:57 No.795750647

    「えっと、ちょっと前にあの二人が戻ってきたじゃないですか。スミレさんも知ってますよね、前に私が撃とうとした、疫病神」 「碇シンジさん」 「うん、そいつ。ずっと許せないって思ってきたし、チャンスがあったら、私の家族を殺した報いを受けさせるくらいはしてやろうって思ってたんですけど」 スミレさんの顔を見上げると、向こうもこちらを見た。いつも通りの表情。 「折角あいつが戻ってきたのに、なんかやる気が起きないっていうか、前ほど何かしてやろうって気にならなくて。許せないのは変わってないんですけど、なんかモヤモヤするんですよね」 そこで言葉を切る。返事はない。会話がなければ二人して歩くしかない。朝空の下、砂利混じりの道を踏みしめる音だけが響く。

    5 21/04/24(土)03:46:13 No.795750662

    「それでも、解決出来る可能性はあります。相手が生きてますから」 何分間かの沈黙の後、そう言って私の方を見ると、スミレさんは少し柔らかい表情を見せた。楽しいとも寂しいともつかない微妙な表情。心に浮かんだ言葉を返そうとしたら、私達は本部の目の前にいた。もう別れてそれぞれの仕事場へ向かわなければならない。 「それでは、また」 いつもの凛々しい表情に戻ったスミレさんの背中を見ながら、言おうと思った言葉を何度か噛み締めて。 「…よし」 私はやることをひとつ、心に決めていた。

    6 21/04/24(土)03:50:59 No.795751002

    北上さん中心にシンエヴァその後を想像してみる話その8です 前回までのはこちら fu36353.txt 次で終わります

    7 21/04/24(土)04:51:29 No.795754770

    待ってた! いよいよ終わりか…

    8 21/04/24(土)05:43:12 No.795757358

    どうしてこんな人がいない時間に…

    9 21/04/24(土)06:20:22 No.795759445

    そういやサードインパクト後の日本って四季はどうなってるんだろ

    10 21/04/24(土)06:22:52 No.795759578

    シンジとマリの主観だと普通に過ごして成人したのか

    11 21/04/24(土)06:51:02 No.795761440

    >そういやサードインパクト後の日本って四季はどうなってるんだろ 貞エヴァだと雪降ってたけど 新劇はセカンドがあったことをリセットしてなさそう

    12 21/04/24(土)06:58:33 No.795762045

    度重なるインパクトで地軸に揺り戻しが起こってたりして

    13 21/04/24(土)07:09:57 No.795763072

    アスカ帰ってきてたのか でもこのシンジとマリへのリアクションから見るに体大きくなってなかったのかな

    14 21/04/24(土)07:19:22 No.795764046

    アスカは本編で戻ってきてるし