虹裏img歴史資料館

1 21/04/21(水)02:39:47 No.794817023

別の日、また時間を確保して記録を見る。2度目以降の作戦も、ワケわかんない事してくる敵に、これまた正気を疑う作戦で立ち向かうの連続。そして必ず勝ってしまうのがすごい。葛城艦長、無茶苦茶な人だと思ってたけど、昔からだったんだ。にしてもシゲルとマコト、昔から変わってね～。めっちゃウケる。伊吹整備長、なんか声が若い。 記録を見始めて何日か目。もっと重苦しいものと思っていた使徒との戦いが、なんか楽しいなと思い始めた矢先、第9使徒戦で思いっきり嫌な気分になった。3号機乗っ取られからの、ダミープラグによる制圧、その後ネルフ本部を襲撃した初号機パイロット、それを碇ゲンドウが制圧して終了。

2 21/04/21(水)02:40:30 No.794817102

こいつらマジバカ。マジのマジでバカ。目の前に使徒がいるのに、式波少佐がひどい目に遭ってんのに、このクソ親子はどっちもお互いのエゴ丸出しの言葉が気に食わなくて押し問答してるだけ。そーいうのは家庭内で済ませときなさいよ。人の生死がかかってる場所に持ち出してくんな。沢山の人の生死を背負ってるのが、こんや奴らだったなんて本当に最悪。腹が立ってこの日はそれ以上見るのをやめた。それにしても式波少佐かわいそ～… ここに葛城艦長がいてくれたらきっと別の結果になってたのに、と本気で思った。 そして見始めて10日ほどが経ち。記録はついにあの日、第10の使徒戦に辿り着く。 言葉を失った。 この使徒強すぎる。

3 21/04/21(水)02:40:46 No.794817130

全ての防衛戦は易々と突破される。式波少佐はいないのに弐号機が出撃する。記録からは分からないけど、多分真希波大尉だ。それが捨て身でかかるけど一蹴される。零号機が使徒に捕食された時は、思わず声が出しまった。そして突然出てくる初号機。たぶんあいつが乗ってるんだろう。今まで何やってたんだよ。その後発令所が破壊されて音声が消え、記録も断片的になる。初号機は肝心な所でエネルギーが切れて活動停止。その直後、再起動。ありえなすぎ。 そして第10使徒の形象崩壊が観測された後、映像もセンサデータも途絶え、何も分からなくなった。でも、記録がなくても分かる。知ってる。 ニアサードインパクト。 「ふうっ…」 記録はこれで全てだ。コンソールを閉じる。いつの間にか肩や腰がバキバキに固まっていて、立つのも一苦労だった。時計を見ると午前3時過ぎ。明日が休みでよかったと思いながら、ふらふらと宿舎へ戻り、昼まで爆睡した。

4 21/04/21(水)02:41:05 No.794817179

--- 「で、結局記録は全部見たのか？」 翌週、私達の拠点になっているビルの屋上。久々に天気が良かったのでお昼を食べようと来てみたら、シゲルとマコトが先にいた。見たい顔でもなかったけど、この2人のせいで梅雨の晴れ間を満喫せずに帰るのも癪だったので、無視して食べていると、マコトが話しかけてきた。正直、放っといて欲しい。 「見ましたよ」 ぶっきらぼうに返す。 「どうだった」 「どうって、別に。結局、疫病神は疫病神だったってだけですよ。ニアサーが起きるまで、なんであいつを初号機に乗せてたのか、意味分かんなかったです」 話したい気分じゃなかったのに、つい乗ってしまった。休みはずっとそのことばっか考えてたからかもしれない。

5 21/04/21(水)02:41:20 No.794817252

「そうだな。でも彼には、乗りたくないって意志を尊重される余地はなかった」 いつの間にかシゲルが近寄ってきて話に混ざってきた。 「あの年頃の子供が平穏に暮らしたいと思うのは普通だし、当たり前の権利だ。責任を負わされて、心身を擦り減らしてあんなものに乗りたくないだろう。だがそれは、俺達大人が許さなかった」 なんか語り始めたけど、私の疑問に答えているつもりなんだろう。大人しく聞いていると、今度はマコトがシゲルに向かって話す。 「正直イラついたこともあったよな。命令聞かなかったり、脱走したり。何を身勝手な事やってんだって。彼がエヴァに乗って使徒と戦うために、莫大なカネと苦労と犠牲が払われてた。多少の不自由のくらい当然だろうって思ってたよ」 少し黙って、屋上の手すりに寄りかかり、空を見上げながら呟いた。 「でも、後になってみると違うんだよな。彼をエヴァに乗せて戦わせる残酷さに気付きたくなくて、自分を納得させる理由が必要だったんだ」 独り言みたいで、反応に困っていると、シゲルが言った。

6 21/04/21(水)02:41:41 No.794817323

「めでたく俺達は勝利した。でも彼はここにいない。立派な墓でも作るか？いっそ銅像でも立てりゃいいのかな」 なんだか苛立ってきて、思わず言い返す。 「でも、アタシは納得しませんよ。私の家族は結局戻ってこない。アイツが殺したことに変わりはないです」 シゲルが私を見る。その顔を睨み返すと、 「そうだな。結局はお前が決めることだ」 と言って、視線を外した。すると横からマコトが尋ねてくる。 「でもひとつ聞かせてくれ。北上お前、作戦記録を見たんだろ。第10使徒戦の後、ニアサーが起きた。だが本当に彼が、ニアサーを起こしていたか？」 「故意であったかどうかは関係ないっしょ。初号機のコクピットにアイツがいたからニアサーが起きた。そこにアイツがいなきゃ、」

7 21/04/21(水)02:41:56 No.794817371

そこまで言った所で、自分の破綻に気付いた。 「そうだな。そこに彼がいなかったら人類は終わってた。艦長もそう言ってたろ」 マコトが続けて言う。 「通常動力を失った初号機が、ありえない再起動をしなければ第10使徒は倒せなかった。初号機に乗っていたのが彼だったから出来た話だ。シンジくんは使徒を倒し、取り込まれた零号機パイロットを救出しようとした。明確に彼の意志と認められるのはそこまでだろう」 苛立ちが怒りに変わっていく。なんなの。この人たち、何が言いたいの。言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばいいじゃん。 「日向さんは、ニアサーをあいつのせいにはできないから、考えを改めろって言いたいんですか。使徒を倒せなかったよりかは、ニアサーの被害の方がマシだから納得しろって言いたいんですか。青い地球が戻って沢山の命が救われたから、あいつを許せって言いたいんですか」 まくしたてる。そんな私をじっと見て、怒るでもなく、なだめるでもなく。 「そうじゃない。言ったろ。お前が決めることだ」

8 21/04/21(水)02:44:19 No.794817696

シゲルと同じことを言って、そのまま2人共屋上から出ていった。私は一人屋上に残される。 「…ふざけんな」 ムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく！！！ その日の午後は最悪の気分で過ごした。会議で顔を合わせた副長は私を見て、人相が悪いわね、と言っていた。(続)

9 <a href="mailto:s">21/04/21(水)02:49:58</a> [s] No.794818300

北上さん中心にシンエヴァその後を想像してみる話その5です 前回までのはこちら fu36301.txt

10 21/04/21(水)03:48:25 No.794822947

待ってた しかし世界が文字通り滅ぶのを大量の人死を出す事で止めたって言われても当事者からしたらそりゃ複雑だろうな

11 21/04/21(水)04:01:48 No.794823645

サクラでるかな

12 21/04/21(水)04:37:25 No.794825277

続き気になる…毎日の楽しみだよ

13 21/04/21(水)05:35:55 No.794827827

いきなり正論で突き刺してくるピンクが嫌いだった…

14 21/04/21(水)06:58:35 No.794832352

いい…

15 21/04/21(水)07:09:38 No.794833129

>初号機が歩いて「歩いた！」って、なんすか。 わかる