虹裏img歴史資料館

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21/04/17(土)00:24:48 「泊め... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1618586688197.jpg 21/04/17(土)00:24:48 No.793495990

「泊めてください。WING終わるまで」 それだけ言って、七草にちかは強引にプロデューサーの部屋に上がりこんだ。両手に抱えた学生鞄には、あらん限りの生活用品が所狭しと詰め込まれている。 「はづきさんには」 「許可、取ってると思います?」 プロデューサーは首を横に振った。これが家出同然であろう事は、たった今状況に放り込まれた彼にも容易に想像できた。 こっちの方が事務所も学校も近い、夜うるさくしても誰にも怒られない。並べ立てられる建前のあまりの薄っぺらさに、プロデューサーは眉をひそめる。 それでも彼がにちかを追い返せなかったのは、笑顔を崩さない彼女の頬に一筋の涙の跡を見つけてしまったからだった。 そしてなし崩し的に始まった共同生活、一歩間違えば即座にお互いが破滅する犯罪行為は、始まる前の悲観よりも幾分穏やかに進んだ。 時間と空間の両方で、にちかとプロデューサーはお互いの生活領域を明確に区分した。食事も入浴も滞りなく、僅かな団欒さえ生んで過ぎていく。 何の許可もとらず一方的に乗り込んだ経緯さえなければ、二人の関係は共同生活として理想的ですらあった。

1 21/04/17(土)00:25:10 No.793496135

マンションで出来る自主練の方法は限られていた。 音程の確認、簡単なステップ。どれも地味で基礎的だったが、にちかにとっては誰の目も気にせずトレーニングに励めるというだけでもありがたい環境だった。 無言のシャワーで汗を流した後、プロデューサーが自発的に譲った彼のベッドの上で、にちかは毎晩瞳を閉じる。 シーツぐらいは自分専用のものに買い替えたいのが本音だったが、家出娘の懐事情がその選択を許さない。 部屋の隅でカタカタとキーを打つ音が聞こえても、にちかは目を開かない。日中自分に掛かりきりのプロデューサーが、どうやって他ユニットのプロデュース業務を行っているのか。答えはひどく単純で不快なものだった。 考えても怖くなるだけの事は考えないようにする。最近学んだ処世術でもって、にちかは湧き上がる罪悪感を黙殺した。 長い呼吸に紛れて、懐かしい匂いがにちかの鼻孔をくすぐる。念の為持ち込まれた瓶詰めの睡眠薬は箱に入ったまま、彼女の眠りを助ける事はない。 「おとうさん」 極大の疲労と質の高いベッドがもたらす柔らかなまどろみの中で、誰かがそう言った。 キーを打つ音が止んだのは、それからしばらく後のことだった。

2 21/04/17(土)01:01:38 No.793506631

はづきさん?

3 21/04/17(土)01:40:39 No.793515244

危ういようで危うくなくてでもちょっと危うい

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