虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/04/15(木)16:52:48 No.793035363

　キーパッドを叩いていたカリアフ・ベラがたまらず怒鳴ると、グレムリンが口元をとがらせる。 「パジャマパーティの時に仕事してる方が悪いんじゃないですかー」 「ベラお姉ちゃん、なんでまだお仕事してんの？　終わらないの？」 「あ・ん・た・た・ち・が！　弾倉にチョコバー入れて持ってったり、装備ケースに拾ったスクラップ入れて持ち帰ってきたりするから、備品管理がぐちゃぐちゃになってチェックが終わんないのよ！」 　アルヴィスのやわらかいほっぺたをぶにぶにと上下に引っぱり倒すベラ。 「ぷえー」 「ごめんなさーい。でもスクラップじゃないもん可愛いんだもん」 「うっさい！　悪いと思うならいますぐ倉庫行って装備とケースのシリアル番号合わせてきてよ！　うわーん」 「ベラ、手伝いますから……ほら、こっちは私が明日やっておきます。リスト作りと校正はグレムリンとニンフに任せて、映像記録だけならすぐ提出できるでしょう。いいですね、二人とも？」

2 21/04/15(木)16:53:05 No.793035419

「はあい」 「私とばっちりですけど……はーい。ベラ、ファイルの場所だけ教えといて」 「副隊長お～」 　床いちめんに敷き詰められたクッションの上をもこもこ渡って、ベラはヴァルキリーの膝にすがりついた。よしよし、と栗色の髪をなでてやるヴァルキリー。 　指揮官級バイオロイドの特権の一つである専用の個室を、どのように使うかは人によってさまざまである。マリーの部屋はどこまでも無骨で機能的な事務室だし、カーンの部屋は思い出の品とすこしの酒が飾られた、簡素ながら趣味の良いねぐらだ。そしてレオナの部屋は、大きなソファとティーテーブル、大量のクッションを備えた、姉妹達が集まるサロンだった。 「パジャマパーティしましょう！」 　グレムリンが唐突にそんなことを言い出した時、皆が賛成した。それが何なのか具体的に知っている者は誰もいなかったが、なんとなく楽しそうに思えたのだ。

3 21/04/15(木)16:53:16 No.793035463

「たぶんね。でもみんな、パジャマどうやって用意した？」 「ヨアンナ島から作業着のお古をもらったので、それを使ってます」 「ハチコのおさがりもらったー」 「パジャマを着る習慣がないので、ただの部屋着で失礼します」 「私も部屋着です、寝る時には何も着けないので……」 「副隊長、おっとなー」 「……私も別に、普段これで寝ているわけではないのだけど」 「おっとなー……というか、スゴいですね隊長の……」 「セントオルカの温泉行った時着てたやつですよね……透け方えっぐ……」 「今度貸してもらっていいですか」 「何に使う気！？」

4 21/04/15(木)16:53:26 No.793035487

「それでですね、その時カーン隊長がなんと言ったかというと」 「もー、それ何度も聞いたから」 「そんなにカーン隊長が好きなら、アンガー・オブ・ホードの子になっちゃいなさい」 「えー！　いやいや、そんなつもりはなくて！　私はレオナ隊長が一番です！　ですけれども！」 「サンドは明るくなりましたよねえ」 「ホードとの交換訓練が有効だったようですね。またやりましょうか」 「え、いや……」 「うん……カーン隊長めちゃくちゃ強いですけど、正直ついてくの大変なんで……」 「えー！　やりましょうよ是非」 「カーンはあなた達のこと、随分褒めていたけど。正確な支援が来るのはやりやすいって」 「そりゃホードに比べれば正確ですよ……」 「隊長はどうでした？　ホードの連中を指揮して」 「……ヴァルハラの姉妹達はやはり最高だと思ったわ」

5 21/04/15(木)16:53:43 No.793035550

「もぐもぐもぐもぐさくさくもぐもぐ」 「アルヴィス、あんた少し会話に参加しなさいよ」 「さくさくもぐもぐむちゃむちゃもぐもぐもぐもぐもぐ」 「駄目よこの子、お菓子モードに入ると周りの言うこと聞かないもの。取り上げると噛みつかれるよ」 「しょうがないよねえ、チョコ美味しいもんねえ」 「ラスクも美味しいよ。砲助も食べるー？」 「やめなさい、前お菓子の粉が挟まって大変だったでしょうが。グレムリンもう酔ってるわね！？」 「もふもふはふもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。もぐ」 「マシュマロなくなったねえ。次こっちのアーモンドキューブ食べてみようか」 「ニンフさん、さっきからアルヴィスと同じペースで食べてるけどいいんですか」 「ぎくっ」

6 21/04/15(木)16:54:12 No.793035623

「たいちょー達はそれ、何飲んでるんですかあ？」 「んー？　チェリーブランデー」 「お酒も種類増えましたよねえ」 「キルケーさんのバー、行った？」 「行ったけど、あそこ大体誰か騒いでるか、ユミさんがくだ巻いてるかなんだもん。テイクアウトして帰ってきちゃう」 「それなー。落ち着いたバーも欲しいよね」 「ここで部屋呑みしてる方が楽しいじゃない」 「それもそうだけど」 「………………」 「あ、アルヴィス寝てる」 「顔真っ赤。匂いだけで酔っちゃったかな？　机の下にいれといてあげよう」

7 21/04/15(木)16:54:28 No.793035676

「じゃあ子供が寝たところで、隊長と副隊長に聞きたいことが。司令官様との一夜はどうだったんですか」 「ちょっ……！　こんな時に聞くこと！？」 「こんな時じゃないと聞けないじゃないですか」 「ん…………まあ、悪くはなかった。決して。素敵な夜だったな」 「きゃー！」 「そうですね。次の夜が待ち遠しい気持ちです」 「司令官様って、優しいんですか？　激しいんですか？」 「優しい……な。蕩かされるようだった。もう少し、情熱的でもいいのだけれど」 「きゃー、きゃー！」 「乱暴にしてほしいと言えば、して下さいます。わりと、こちらの希望に合わせてくれる感じですね」 「へえー！　へええー！」 「ヴァル、あなた」

8 21/04/15(木)16:54:39 No.793035707

「いえ、あの、あくまでも一般論として、時々はそういうのも」 「ヴァル」 「わー！　わー！　この話やめー！」 「それにしてもパジャマパーティって、これであってるんでしょうか」 「楽しいからいいんじゃない？　司令官様を呼んで聞いてみようか」 「やめて！」

9 21/04/15(木)16:54:55 No.793035753

　シスターズ・オブ・ヴァルハラの隊員なら誰でも、ある一つの情景が、生まれたときから頭の奥底に焼き付いている。 　降りしきる雪の中にたった一人、倒れたまま冷たくなっていく、自分自身の姿だ。 　おそらく、数え切れないほど多くの姉妹達が、そのようにして死んでいったのだろう。知識と戦闘経験データがアップデートで積み重なっていくうち、無数の自分たちが目にし、体験してきたそれらの光景が、記憶とも夢ともつかないおぼろげな原風景として、メモリの基幹領域に刻み込まれてしまったのだ。 「私たちの魂は、いつかヴァルハラにたどり着くのでしょうか」 　そんなことを言ったのはサンドガールだった。どのサンドガールが、どの自分に言ったのか、もう憶えてはいないけれど。

10 21/04/15(木)16:55:13 No.793035827

「タロン……その写真は…是非とも……」 　今、サンドガールはだらしない笑顔で、クッションを抱きしめて何やら寝言をつぶやいている。 　他の姉妹達も皆、思い思いの場所で、思い思いのものを枕や布団にして眠りに落ちている。照明を暗くした室内を見渡して、レオナは静かに満ち足りた気分で、グラスの底に最後に残ったわずかな酒を飲み干した。 　この先、鉄虫との戦いで姉妹達の誰かが命を落とすかもしれない。だがその時、私たちは決して一人ではないだろう。姉妹達や、司令官閣下や、ほかの大勢の戦友達が、自分の手を取り、血に触れて、見送ってくれるだろう。 　私たちの魂はもう、ヴァルハラを求めてさすらう必要はない。ここに、このオルカに還ってくればいい。 「ん……ん。あなた……いけません……♥」 「……」 　それはそれとして、ヴァルキリーが司令官とどんな風にしているのかは、明日にでも時間を設けてきっちり問い詰めておかないといけない。 　艦内時間の朝まで、まだ二時間ほどある。頭の中の予定表にそれだけ書き留めて、レオナもまどろみの中に沈んでいった。 End

11 21/04/15(木)16:56:26 No.793036054

すげえ力作がきた

12 21/04/15(木)16:59:31 No.793036631

急に来た？

13 21/04/15(木)16:59:38 No.793036652

おっぱいに釣られて開いたら力作だった

14 21/04/15(木)17:00:02 No.793036741

おピョンテ…

15 21/04/15(木)17:00:51 No.793036895

>それが何なのか具体的に知っている者は誰もいなかったが、なんとなく楽しそうに思えたのだ。 ここらへん本編っぽくて好き

16 21/04/15(木)17:05:52 No.793037846

ムチチムチのヴァルハラ漫画に影響されて書きました まとめ su4771806.txt

17 21/04/15(木)17:07:04 No.793038079

ああやっぱり雪はあのシーンか…

18 21/04/15(木)17:08:03 No.793038309

ありがたい…

19 21/04/15(木)17:16:55 No.793040262

あの漫画の何がいいって 身内相手でちょっとぐでっとしてる冒頭のレオナ隊長がいいんだ

20 21/04/15(木)17:16:58 No.793040275

>su4771806.txt オードリーとダッチガーズのお話もいいな… スレてるけど子供らしい憧れも持ってるダッチガールとそれを見守るお母さんかお姉さんみたいなオードリー好き

21 21/04/15(木)17:24:26 No.793041827

ヴぁるきりぃさんエロなん？

22 21/04/15(木)17:25:05 No.793041967

>ヴぁるきりぃさんエロなん？ はい

23 21/04/15(木)17:25:37 No.793042085

怪文書を書いて流行らせてください

24 21/04/15(木)17:25:59 No.793042168

むらじゅうで読んでいます！

25 21/04/15(木)17:26:02 No.793042174

きゅうな怪文書でしゃっくりが止まらなくなったぞ

26 21/04/15(木)17:27:31 No.793042476

ヴィンランド・サガなんてピンポイントなガールズメタルバンドが居るのを初めて知った

27 21/04/15(木)17:28:26 No.793042660

>オードリーとダッチガーズのお話もいいな… >スレてるけど子供らしい憧れも持ってるダッチガールとそれを見守るお母さんかお姉さんみたいなオードリー好き ありがとう… その話もここへ投下したんだけどあの時1レスで沈んだから多分見た人少ないとおもう…

28 21/04/15(木)17:32:03 No.793043395

>1レスで沈んだから多分見た人少ないとおもう… かなしい

29 21/04/15(木)17:34:43 No.793043916

まとめてくれてありがたい… 二次創作少ないからとてもありがたい

30 21/04/15(木)17:35:02 No.793043996

こんなん泣いちゃう

31 21/04/15(木)17:35:53 No.793044181

>ありがとう… >その話もここへ投下したんだけどあの時1レスで沈んだから多分見た人少ないとおもう… じゃあもっと感想書くけどダッチガールへの司令官の接し方がかっこいい 「変わった方がいいよ」っていうのは今までの自分を否定することにもつながるから難しい…それを踏まえてオードリーのアドバイスいいよね… いつもゲームで（同じ所属だけどゴールデンワーカーズって範囲がバラバラでどういうやりとりしてるんだろ…）とかいつも思ってたから唯一のSSバイオロイドとして責任者っていうのはなるほどなーってなるなった

32 21/04/15(木)17:46:50 No.793046597

ありがとう…感想ありがとう… またなんか書けたら投下します

33 21/04/15(木)17:54:52 No.793048503

そういや俺もそれ見てたな…見てたけど感想をうまく言語化できないのでダッチちゃんには幸せになってほしいよねとだけ言っとく

34 21/04/15(木)17:57:25 No.793049155

坑道の花いいよね…

35 21/04/15(木)18:04:37 No.793050927

坑道の花のおっさんに自分を重ねてしまうからその分ダッチちゃんを幸せにしたくなる…

36 21/04/15(木)18:08:21 No.793051926

アルヴィス…かわいい…