ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/04/14(水)19:02:08 No.792770408
トレセン学園の裏に広がる森の中。丑三つ時。 祝詞……というか呪詛と、木の爆ぜる音が小さく響く。 「ふんにゃかハッピィ~~~、はんにゃかラッキィ~~~あぁ~~~シラオキシラオキ、エコエコアザラシ」 開運グッズの山で雑に作られた祭壇のようなものに荒縄で仰向け縛られたまま、俺は呻いた。 隣りにある焚火から時折、火の粉が飛んできて怖い。 「ふんにゃかハッピィ~~~、はんにゃかラッキィ~~~あぁ~~~シラオキ様シラオキ様。彼の者、御使いの汚れを禊たまえぇ~~~祓いたまえぇ~~~」 そして担当ウマ娘の狂気がヤバい。 どうしてこうなった。
1 21/04/14(水)19:02:23 No.792770477
きっかけは些細なことだった。 担当ウマ娘であるマチカネフクキタルのトレーニング後。一緒にトレーナー室に戻る際に、階段でうっかり足を踏み外してしまったのだ。 直前に手をついて大事は免れたものの、利き手の手首を強く捻挫してしまった。 「ふんぎゃろおおーー!何ということでしょう!シラオキ様の御使いであるトレーナーさんが不運に見舞われるとは……これは、これはまさしく大!殺!界!」 保健室で手当を受けている最中の返事が不味かったのかもしれない。 「ちょっと階段で躓いただけだって。まあ、運が悪かったのかもな」 幸運、不運、占い……それに敏感なフクキタルの前ではなるべく口にしないようにしてたい言葉だった。 「運……?やはり、運なのですね!そうなんですねトレーナーさん!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!今日は幸運大ハッピーな私が隣りにいながら、何という、何という!!」 やかましい。保健室で騒ぐな。軽くたしなめてその時は終わった。 フクキタルの目にわずかに怪しい光が灯ったことには、気づかなかった。
2 21/04/14(水)19:02:42 No.792770578
それ以降、フクキタルは座学が終わるやいなやダッシュでトレーナー室にやってきて、甲斐甲斐しく世話をしてくれる。 「はい、トレーナーさん。あーん!あーんですよあーん!」 「何を食べさせようとしているんだ……」 昼食の最中、今日のトレーナーさんのラッキーアイテムです!と言いながらよくわからない黒焦げのものを口に入れようとするフクキタルを押し返す。 「それよりも、週末の話だ。蹄鉄を見に行こう。今使ってる蹄鉄はどうもフクキタルの走り方に合ってない。運気のことだけ考えて選んだだろう、あれ」 「もちろんです!」 それだけじゃ困るんだよなあ。 学園近くで一番充実しているウマ娘専門スポーツショップで、二人でじっくりと蹄鉄を選ぶ。 オカルト意識の高いフクキタルも納得の行くような一品を見つけ出すのには時間がかかった。 占いを信じることは悪くない。それが追い風になる時もあることを、彼女を担当することで俺はよく知った。物事は考えようだ。
3 21/04/14(水)19:03:07 No.792770709
帰る道中にフクキタルの視線がチラリと向いたクレープ屋で、二人分のクレープを買った。 「トレーナーさん、あーんですよあーん!」 「自分で食べられるって」 口にクレープを突っ込もうとするフクキタルからそれを受け取る時。手を滑らせた。 現役レースウマ娘の反射神経は凄まじい。フクキタルはそれを地面に落ちる前にさっと拾い上げる。 ただ、その拍子に俺の体勢が崩れることまではお互い想定できなかった。 咄嗟に痛めたままの手で自分を支える。激痛が走った。 「ぐっ……!」 「ト、トレーナーさん!!」 大丈夫と言いつつも、少なくとも正常ではないことはわかった。 両手にクレープを持ったフクキタルの両目が、悲壮な眼差しに変わっていたのが見えた。 幸い骨折などには至らず、テーピングの量が増えた。 フクキタルは……異様に静かだった。
4 21/04/14(水)19:03:29 No.792770812
そして今に至る。 学園内は夜間に警備が巡回しており、深夜にお互いの寮に忍び込む、といったことは難しい……はずだ。 それをあっさりとやってのけたフクキタル。部屋にまで侵入され、猿ぐつわをされて荒縄で縛られて。そして今に至る。 彼女の信心の生み出す力、それを実行に移せるポテンシャルに驚かされる。素直に感心すらしただろう……こんな状況でなければ。 「フフヒハル!ハヘフンハ!」 猿ぐつわのせいでまともに声が出せない。 祈り終わったのか、フクキタルは小瓶を取り出して中の液体を平盃に数滴落とした。 「これはアグネスタキオンさんから頂いた、体から邪気をポンと取り出すお薬だそうです。これをお神酒に混ぜて……はい!ラッキードリンクの完成です!」 絶対ラッキーじゃない。アグネスタキオンについてはトレーナー間で「薬物の実験には絶対に付き合わないように」というお達しが出されていた。 フクキタルは平盃の中身を猿ぐつわの布に垂らした。口内に入っているのが避けられない。アルコールと、それとは異なる辛さを舌で感じた。
5 21/04/14(水)19:03:52 No.792770938
「ふんにゃかハッピィ~~~、はんにゃかラッキィ~~~これできっと大丈夫です!!トレーナーさんの不運は、私が祓いきってみせます!……って、ふん、ぎゃろ?」 体の一部が異様に熱い。 「ぎゃあああああ!!……こ、これは……邪気って、なるほど、なるほど……そういうことですか……このフクキタル、よーく分かりました」 フクキタルが俺の体を見つめて悲鳴を上げ、仰け反った後……じわじわと近寄ってきた。分からなくていいから。こっちに来るな。 アグネスタキオンもなんて薬を作ってるんだ。あいつは絶対告発する。 「これが悪さをしていた、そういうわけですね!私、経験はなくとも知識は……その、ほんの少しあります!トレーナーさんの邪気、私が見事に祓ってみせましょう!」 「ん゛~~~!!」 フクキタルが俺の体に手を伸ばした。
6 21/04/14(水)19:04:15 No.792771040
その後すぐ、焚火の煙を不審に思った警備の人間に見つかり、儀式は終わった。 俺とフクキタル、(加えてアグネスタキオン)は謹慎1週間の処分となった。レースの予定がなくて本当に良かった。 それ以来、フクキタルが無言で妙に熱い視線を向けてくるようになった。 占い中毒だけでなく、他のことまで気を回す必要がある。 彼女の指導はさらに手間がかかりそうだ……。
7 21/04/14(水)19:05:13 No.792771327
一体ナニが熱くなったんですか…?
8 21/04/14(水)19:06:15 No.792771638
ナニだよ
9 21/04/14(水)19:08:41 No.792772408
その薬は疲れた女帝の手に渡ったりしない?
10 21/04/14(水)19:10:18 No.792772920
>焚火の煙を不審に思った警備の人間に見つかり クソボケがー!!
11 21/04/14(水)19:19:24 No.792775553
フクキタルはここで繋がったらもうここで止まるから…
12 21/04/14(水)19:22:18 No.792776430
味をしめて占いだといいながら身体を狙ってくるなこれは
13 21/04/14(水)19:23:52 No.792776869
お姉ちゃんどう思う?
14 21/04/14(水)19:26:38 No.792777669
早く抱くべき
15 21/04/14(水)19:34:24 [s] No.792780190
フクキタルのキャラの色付けと積極性は いろいろバリエーションが取れて面白いね あとアグネスタキオンが便利すぎる 初めて使ったけど怪文書の万能カードだこれ
16 21/04/14(水)19:35:47 No.792780630
オカルト要素 姉の存在 自己評価の低さ トレーナーの塩対応 色々ありますフクの良さ
17 21/04/14(水)19:39:31 No.792781927
フクトレはトレーナーの中では珍しいエミュしやすい男
18 21/04/14(水)19:42:07 No.792782828
往年の八意XX様並みに万能だからなタキオン
19 21/04/14(水)19:49:32 No.792785509
霊とか物の怪がいる世界観なんだよな…
20 21/04/14(水)19:49:53 No.792785631
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
21 21/04/14(水)19:52:00 No.792786369
>1618397393103.png かわいい!
22 21/04/14(水)19:52:22 No.792786496
ちょっとトレーナーくーん!最近なんだか私が年中えっち薬作ってるウマみたいになってるよー!
23 21/04/14(水)19:55:12 No.792787541
>霊とか物の怪がいる世界観なんだよな… そもそもウマ娘自体並行世界の魂が宿った的なやつだから…
24 21/04/14(水)19:58:56 No.792788852
>>焚火の煙を不審に思った警備の人間に見つかり >クソボケがー!! だが待って欲しい シたともシてないとも書いてないので 警備員が来るまでになにかあったと解釈することも可能だ
25 21/04/14(水)20:00:33 No.792789471
>ちょっとトレーナーくーん!最近なんだか私が年中えっち薬作ってるウマみたいになってるよー! えーりんとかしきにゃんみたいな扱いになってる…