虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    21/04/07(水)00:00:52 No.790463089

    「それじゃあねトレーナーちゃん! おやすみー!」 「おやすみマヤノ。ゆっくり寝るのよ」  寮へと戻っていくマヤノを見送る。今日のレース結果は2位。だけど1位のナリタブライアンに半馬バ身差まで迫った結果での負けだ。トレーナーの私からすれば充分に手応えのある結果。でもマヤノは納得していないだろう。後でメールでもフォローしてあげないと。  そんなことを考えながらトレーナー寮に戻るとロビーに見知った顔が居たので挨拶することにした。 「今日はお疲れ様でした。やっぱりナリタブライアン強いですね」  老眼鏡をかけて読んでいた競バ新聞から顔を上げた初老の女性はナリタブライアンのトレーナーだ。 「お疲れ様、マヤノちゃんはどんどん強くなっていくわね。次は危ないかもしれないわ」 「そう言ってもらえるとトレーナー冥利につきます。でも私的にはもうちょっとかかるかなって思いますけど」

    1 21/04/07(水)00:01:14 No.790463203

    「ふふ、ブライアンを倒すなら急いでね。あの子にはあんまり時間がないから」  ブライアンの引退宣言のことだろう。相談されたろうによく許可を出したものだ。 「ちょうど潮時かと思ったのよ。私もね」  内心を見透かされたように言われた。それはつまり――。 「歳を取ると若い子の担当がどんどん辛くなるのよ。トレーニング理論もどんどん新しくなる。もうウイニングライブの曲も良さがわからないわ」 「……」 「六平さんも引退したし、今回のはちょうどいい機会だったのよ」 「寂しくなりますね……」 「いいのよ、老兵は去りゆくのみ。でも、去るまでは本気よ」  こちらをまっすぐ見据える目。最後の相手として選んでくれたのは光栄というべきなのだろう。 「有終の美は飾れませんよ」  だからこちらも本気で。

    2 21/04/07(水)00:01:27 No.790463267

    「いいわね、その目。若いうちはそうでないと。――で、次のマヤノちゃんのレースは毎日王冠、いえ秋天かしら?」  ビンゴだ。ブライアンの予定次第なところもあるけど、そのつもりだった。 「じゃブライアンをそれとなく出るように誘導しておくわ。有馬を引退レースにはさせないでほしいわね」  聞こうとしていたところを先んじて。やはりトレーナーとしても人間としても一枚も二枚も上手だ。  でも今はそれに甘えよう。目に物見せるのは私じゃなくてマヤノだから。 「ありがとうございます――気合が入ります」  ちょうどそこでスマホに着信が入った。マヤノが痺れを切らしたかしら。  話すべきは話した。向こうもいってらっしゃいというジェスチャーだ。  一礼して立ち上がる。手痛い出費になるけど今日はマヤノを誘って外食にしよう。ご機嫌を取って、それからこれからの予定。トレーニングも厳しくしないと。  私にも負けられない理由が出来たのだから。 「あ、マヤノ? 外出許可取れる? 今日は外で食事にしましょ。今日のご褒美にディナーデートに洒落込みましょう」

    3 21/04/07(水)00:02:22 [s] No.790463514

    以上です トレーナー同士の絡みもちょっとみたいなと思って ブライアンはお婆ちゃんっ子みたいなイメージありますね