21/04/04(日)20:22:49 … … … ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1617535369385.png 21/04/04(日)20:22:49 No.789815474
… … … ライアンさんは私のトレーナーさんに空のグラスを返します。 何か意思表示でしょうか。 悪かったとトレーナーさんは空のグラスを手に洗い場に向かいます。 大人なライアンさんですが、まるで頬を膨らませる少女のようです。 好きなお菓子をママに食べられたような。 私がライアンさんに昔話をねだりました。 それならばライアンさんが話をすべきなのでしょう。 少なくともライアンさんはそう考えたようです。 ライアンさんは私に微笑みかけて、昔話を続けます。 … … …
1 21/04/04(日)20:24:26 No.789816337
誰視点なんだ…?
2 21/04/04(日)20:24:42 No.789816466
昔話を続けましょう。 私がデビュー戦を見事に制しました。 この結果はどうしてでしょう。 運が良かったからでしょうか。 トレーナーさんが付いてくれたからでしょうか。 それとも彼と出会ったからでしょうか。 きっと全てでしょう。 運が良かったから私は女性トレーナーさんにスカウトしてもらえました。 トレーナーさんは静かな人です。 めったに話なんかしません。 練習メニューを伝えてから沈黙の限りを尽くします。
3 21/04/04(日)20:24:52 No.789816565
その分私を見ることに集中しているようでした。 私の走りにどんなブレがあったとしても 彼女の目は逃しません。 それを淡々と伝えてきます。 しかしこの説明が非常に分かり易いものなのです。 また、私に合うトレーニングを日々考えて、すぐに練習メニューに調整を加えます。 けして冷たい人ではありません。 とても信頼できる方です。 おかげで走るフォームは洗練され続けました。
4 21/04/04(日)20:26:18 No.789817266
そしてまた運が良かったから私は彼に出会えました。 先程述べた事ですが、彼とのトレーニングは私に非常に良い影響を与えてくれました。 程よくリラックスした体はトレーニングの効率を 何倍にも引き上げます。 体は伸びやかですからトレーナーさんの指示を すんなりと聞き、理想的なフォームへと誘うのです。 それと、その頃ははっきりとは思っていなかった。いえ、分からなかったことですが、
5 21/04/04(日)20:26:34 No.789817402
彼という存在がいてくれた。 彼の深い目を群衆から飛び交う無数のまなざしから見つけた時は、心から安心したのです。 目的は人を成長させます。 自分の理想を追い求めるために日々邁進することで、 人は新しい境地を見ることができるのでしょう。 しかし、「大切な人のために」という思いにはどうも敵わないようです。 もし利益のためだけに人が動くのならば、 そんなことありえないと言うのに。 その目的が達成された時、人々にはこの上ない幸福感がもたらされるのです。 あの日の私にとって、彼がその大切な人なのだったのか。はっきりとは分かりません。 ただ少なくとも赤の他人ではなかった。 その証にはなるでしょう。
6 21/04/04(日)20:27:04 No.789817648
私はすぐ別の方を向いてごまかしました。 この後はライブもあります。 きっと彼は私の踊りを見るでしょう。 ここで気を抜いてはいけません。 デビュー戦の一着達が踊ります。残念ながら私は大会中で一番速くはなかったようで、友人であり逃げの名手アイネスフウジンにセンターを譲りました。 その他には特に気になることもなく大会は閉幕とされたのです。 良い気分でした。鼻歌が漏れていました。 実を言いますと私はあるものを嗜んでいました。 少女漫画の鑑賞です。 その時一押しだったのが『steps』でしたね。 憧れの彼に近づきたかった女の子の物語。
7 21/04/04(日)20:27:35 No.789817877
私の脚ならできただろうか。 なんて考えて気恥ずかしくなったものです。 私が中等部の頃にアニメ化されていまして、 昔を懐かしむようなオープニング曲が妙に癖になりました。 夕日がぎらぎら照り付ける会場の出口近くの物陰で、 トレーナーさんと待ち合わせます。 トレーナーさんの車で学園まで帰るのです。 風がビュービュー吹いています。 時刻も問題ありません。トレーナーさんは腕を組み静かに待っていました。
8 21/04/04(日)20:28:07 No.789818149
… 「彼とうまくいってるの?」 … 周りは突然静寂を迎えます。 耳と尻尾は連動しているかの如く逆立ち、血圧が上昇。 心拍数は異常値を叩き出す。 トレーナーさんと目線が合いません。
9 21/04/04(日)20:28:47 No.789818498
… 「なるほど。」 … 理解されたようです。 見事にカマかけられました。 ポーカーフェイス?そんなもの乙女には無理難題です。 慌てて否定の言葉を紡ごうとします。 彼とはなんでもないのです。
10 21/04/04(日)20:29:17 No.789818757
いえ、いや多少はある。うん? よくよく考えると毎朝早朝の彼とのトレーニングを楽しみにしているわけです。 それも二か月は優に超えているではありませんか。 否定してはいけない。そんなの彼に失礼だ。 「終わった・・・」一言漏らします。
11 21/04/04(日)20:29:41 No.789818929
夕日が物陰にも入ってきました。 夕日でトレーナーさんの顔が見えません。 無言で近づいてきます。そのまま私の背後へ。 先が全く読めません。 私の頭に手が触れます。 思わず目をつぶる。 優しくなでてくれました。 これはいったい。 張りつめて硬くなっていた体はみるみるうちに 元に戻ります。 尻尾はだらりと垂れ下がりました。 トレーナーさんの顔は見えません。 「さっきのstepsよね。」 …
12 21/04/04(日)20:29:58 No.789819071
彼女の緑の車の中、stepsの曲が流れています。 思い入れでもあるのでしょうか。 隣から少し外れたハミングが聞こえてきます。 ゆっくり考えたら一つ答えが出ました。 いや分かっていることでした。 彼女は何も見逃さない。ただそれだけ。 そっと耳を触ります。 夕日がまぶしい帰り道。 いつもの川がありました。 いつもの桜の木が見えました。 学園に着きました。 「いいことあるといいわね。」 緑の車が走り去って行きました。
13 21/04/04(日)20:50:23 No.789828826
りゃいあんありがたい…