21/04/04(日)09:12:42 これは... のスレッド詳細
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21/04/04(日)09:12:42 No.789616111
これはゆかりさん(19歳↑)がきりたん(11歳)となにかする怪文書となっています
1 21/04/04(日)09:13:53 No.789616342
台所から響く調理の音に耳を澄ませながら、私は懊悩とした気持ちを抱いていました。 何かを言わなければいけない、だけれどその言葉が見つからずいっそ彼女が調理を終えなければいいのではないか、とすら思ってしまっています。 気にしていないように振る舞うことも難しく、私はついついため息を漏らしてしまいました。 苛立ちというよりも、自身の抱いていた感情が友愛の先にあるものかと思っていたものですから、どうにも違った事に暫し戸惑い、そしてなにより自己嫌悪を感じているのです。 自分自身にこんな感覚があったことも驚きですが、まさか友人にそんな感情を抱くなど。 ……それでも私はついつい、指先で彼女が腰掛けていた場所を撫でてしまっていました。 これはただ、彼女を求めてのことか、それとも別の……かさぶたをついつい撫でてしまうような、そんな気持ちでしょうか。 私はそれすら分からず、ただただ暫し日差しが差し込むソファに腰掛け、外を眺めていました。 窓の外では濃く色づき初めた緑色の新緑が、忌々しい程に色づき始めています。 こんな感傷を抱いたのも、考えてみれば初めてかも知れません。
2 21/04/04(日)09:14:09 No.789616398
ですが、だからどうだというのでしょう、こんな惨めな気持ちは抱かなくて良いのであればきっそその方が良いのです。 私がそんな事を考えている間にも、台所からは調理を淡々と進める音が響き渡ります。 いっそ……ふらりと何処かへ行ってしまおうか、そんな事を考えていると、台所から少女の声がこちらに響きました。 「昼食、出来ましたよ」 簡素なまでに身近な言葉に、少しの間を置いてから私はふらふらと立ち上がります。 何かを決断しかねるのは従来の癖でしょうか、それともただの優柔不断なだけなのか。 私は何とも言いかねるような気持ちを抱きながら、ただぼんやりとその言葉に従ってきりたんさんの待ち受ける食卓へと近づいていきました。 食卓を見ると、少女は何時ものように少しだけ勝ち気な表情を私に見せていて、それがあまりに何時も通りだったのでつい、目を逸してしまいます。 つい、とは言いますが、考えてみれば当然のことで。 言ってしまえば、どんな顔を見せるべきか私は決めかねていたのですから。
3 21/04/04(日)09:14:20 No.789616427
「……どうしたんですか、そんな浮かない顔をして」 そう言って私の様子を伺う様子の彼女に、私は目を逸したまま曖昧な笑みを浮かべます。 「いえ、特には」 私がそう言うと、彼女は少し間を開けた後、鼻息を鳴らして食卓を指差しました。 「まあ、兎に角食べてしまいましょう」 彼女の指差した先には、コーンスープとロールパンが置いてあります。 暖かな湯気を立ち上らせるスープと、ほのかに香る焼けたパンの匂いは素晴らしいものです。 残念なことは、今はあまり食べる気分ではないということでしょうか。 ですが、食事を作って貰ったのに頂かないのも些か失礼な気がして、私はどうすることも出来ないままふらふらと食卓に着きました。 どういう気持を持って彼女に対面するべきか、そういう考えも纏まらないまま、私は少し俯いて匙を手に取ります。
4 21/04/04(日)09:14:43 No.789616517
ですが、少女はそんな様子の私を見かねて、こちらに近づいてきました。 「ほらゆかり、食べる前に挨拶をしなさいな」 そう言いながらきりたんさんが私の手から匙を取り上げて、私の手を掴み両手を合わせさせます。 「……い、頂きます」 私は少女に合わせられた手で、何とかそう言うと、少女が少しこちらを訝しむような声を出しました。 「……余り気分が良くないのですか」 そう言いながら彼女は対面の席から、私の隣に料理を運んで移動します。 「いえ、そういうわけでは……」 私は少し言い淀みながら答えると、少女は少しだけ優しい声色を響かせました。 「……今日は少し早めに寝ましょうか」
5 21/04/04(日)09:14:54 No.789616559
私は少し考えた後に小さく頷きを返し、匙を手にとってスープを口に運びます。 スープを啜る音にパンを食む音、そして時折食器が擦れる音だけが食卓に響きました。 私は何かを言うべきか少し迷いながらも、何も言うことが出来ずただもそもそとパンをちぎって口に運びます。 「どうにも、少し暗鬱ですね」 先に言葉を発したのは隣に座っている少女で、その言葉はどうにも少し迷った末のようにも感じます。 「……そうですかね」 私がそう言って小さく苦笑いを零すと、隣の少女は小さく鼻を鳴らしました。 「……まあ、そういう日もあるでしょう」 そんな事を言うと、彼女はまたパンに齧りつきました。 ……私はそんな彼女を少し見つめた後、パンを指で千切ってまた口に運びます。
6 21/04/04(日)09:15:30 No.789616709
気分を悪くさせてしまったかな、なんて思いながらパンを咀嚼します。 それからは二の次の言葉もなく、ただただ時間が流れていくのを感じながらただ食事を口に運び、昼食を食べ終えました。 その後も会話をしかねて、私達はただ無言で食器を流しに運んで洗います。 ただ時折、きりたんさんが何かを言いかけるような様子を見せては、何も言わずに口を閉じるのが何とも言い難い気持ちになります。 もどかしいような、少し堪えが効かなくなるような、そんな気持ち。 私は自分から会話を切り出す勇気も出ないのに、彼女に対してはそんな矛盾した気持ちを抱いてしまっているのだから、益々気落ちしたような気持ちになってしまいます。 食事の終わった後私がソファに腰掛けて、何をするでもなくただ窓の外を眺めていると、隣の少女が所在なさ気に私の隣に腰掛けました。 「どうでしたか、お昼は」 暫く、いえ漸く振り出された言葉は、特に意味がある訳でもなく、ただ昼食の具合を尋ねられただけでした。 「あ、いえ……美味しかったですよ」
7 21/04/04(日)09:16:15 No.789616902
私はまだ彼女に対して、目を合わせることも出来ず少し目を逸しながら口を開きました。 「……そうですか」 歯切れの悪い会話。 私はそんな歯ざわりの悪い会話にまた憂鬱な気持ちになっていると、彼女が不意に口を開きました。 「……何か、気にされているんですか」 そう言って彼女は少し、こちらの様子を見ます。 「いえ……そういうわけでは……」 私はそう言いながら、目を伏せます。 ですが、隣の少女はいよいよ痺れを切らしたのか、こちらに言葉をぽつぽつと投げ出し始めます。 「そんなわけ無いじゃないですか」
8 21/04/04(日)09:16:32 No.789616966
その言葉に私は微かに眉を顰めながら、自分でもわかるほど少し意固地になって口を開きます。 「……気の所為ですよ」 私がそう言うと、彼女は私の顔に掌を添えて顔を向けさせました。 「……またそう言って、自分の殻に籠もる積もりですか」 そういう少女の顔は、少しだけ怒っているようにも感じます。 「そういうわけでは、無いです」 私は彼女の手を掴んで、離させようとしますが彼女は私の顔に添えた手を離しながらも、また言葉を振り出しました。 「ずっと、あの庭で憂鬱だったんでしょう」 そう言ってこちらを見る少女に、思わず振り返ってしまいます。 私は少しだけ驚いたような心持ちが顔に出てしまったのか、彼女はまた何時もの勝ち気な笑顔を浮かべました。
9 21/04/04(日)09:16:43 No.789616989
「ずっと、見てましたよ」 そう言ってこちらを見る彼女に、私は眉を顰めました。 「何をですか」 私がそういうのもご存知だったと言わんばかりに、彼女は小さく頷きながら言葉を続けます。 「あの庭で胡乱げに外を見て、ただ毎日を無為に過ごしているのも」 私は少しだけ間を開けてから、彼女に対して口を開きます。 「……だから、何だって言うんですか」 私がそう言うと、彼女は私の方を見ながらまた何時ものようにカラカラと笑います。 「そろそろ、自身の話をしてくれたっては良いんじゃないですか」 そういう少女の目は、確かにしっかりと私を見据えていました。
10 21/04/04(日)09:16:53 No.789617020
「友達、でしょう?」 そう言いながら、彼女はまた私の手を取り、暖かく小さな手で私の指を握りしめてきました。
11 21/04/04(日)09:19:10 No.789617557
これでこの話はお終い 今日の続き:su4742510.txt いままで :su4742511.txt もう少し書いたほうが良いかなと思ったが、あんまりダラダラ長く続けてもなと思ったのでこんな所でしょう それじゃあおやすみ
12 21/04/04(日)09:24:24 No.789619075
最後までありがとう 最初のキスまでここまでぎっちり書いてくれて
13 21/04/04(日)09:59:18 No.789628786
>最後までありがとう >最初のキスまでここまでぎっちり書いてくれて 良いんだ……次は、もう少し体力のある時期にやりたいものです