虹裏img歴史資料館

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21/04/03(土)14:10:11 「じゃ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1617426611809.png 21/04/03(土)14:10:11 No.789342194

「じゃあ行ってくるね、お母ちゃん」 「うん」 今日は子の親離れ。そして親が子離れする日だ。 娘は門別トレセン学園へ入学する。 いずれはローカルシリーズを背負って立つ存在になり、大いに活躍してくれることだろう。 本当は、トレセン学園を受けさせるべきだった。 娘の才能なら間違いなくあちらでも通用する。 それに本当はあの子、ダートよりも芝と相性がいい。 でも私はダートだけのローカルに行くよう勧めた。いや、勧めてしまった。 中央は厳しい所、それに比べれば地方はまだ容易いからという名目で。 それとなく中央の厳しさを仄めかし、娘が苦手意識を持つよう仕向けることすらしてみせた。 …娘なら中央でも頭角を現すだろうと思っていながら。 私は私のエゴで、娘をローカルシリーズに押し込め才能の開花を妨げようとしている。

1 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:10:22</a> [sage] No.789342250

ああ。私はなんてひどい母親だろう。 娘のためだと嘯いて、結局自分のために娘をそそのかす。 お母ちゃんにバレて咎められませんようにと祈りながら、お母ちゃんのいない所で娘に呪いの言葉をかけた。 果たしてそれは上手く行った。 娘は地方のスターウマ娘になるだろう。間違いなく、その才能を活かすことが出来るだろう。 逃げ先行が定石なダートレースであっても、鋭い差し脚で前を走るウマ娘を差し切るに違いない。 「…速すぎる!」 「いいのか…こんな子がウチに来て…」 芝に比べれば不向きであろうダートですらあの走りだったのだ。 まして相手が能力以前にレースへの意気込みを欠いている子たち相手ならば、楽勝に決まっているでしょう? 感謝して欲しい。 私は、そんな才能の塊をローカルシリーズの肥やしにしようとしているのだ。

2 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:10:37</a> [sage] No.789342315

──そのはずだったのに、なんで。 「いやぁ!君が──か!実技試験でスゴい成績を出したと聞いて確かめに来たんだよ!」 「な、なんであなたがここに…ひゃっ!?」 「おお…これはいいトモのつくりだ。よく食べ、よく鍛えてなければこうは…がっ!」 「なっ…何するんですか!」 ねえ、なんで。 「あ、あの…大丈夫ですか?生きてますか…?あのぉー…」 「ああー…いいよ、平気平気。慣れてるから」 「慣れてる!?」 なんであなたがいるんですか?娘を学園の前まで見送って、それで…それで終わるはずだったのに。なんで? 「…あれ、お前」 「どうして!」と私は叫んだ。もう終わりだと思っていたのに。二度と会うこともなく、顧みられることもないだろうって諦めていたのに。 どうしてなんですか、トレーナーさん。どうして、来てしまったんですか?どうしてまた私の前に現れて…私に向けなくなった期待の眼差しを、その子に向けているんですか?過去になった私はもう、そんな目で見てもらえないのに。

3 21/04/03(土)14:18:29 No.789344431

ついにきたなこの日が…

4 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:19:08</a> [sage] No.789344580

「…スペ」 「お久しぶりですトレーナーさん。正直、もう会いたくないって思ってました」 こんな憎まれ口しか叩けなくなった教え子なんて、イヤですよね。 「娘はここに入学させるんです」 「お母ちゃん…」 「何言ってるんだスペ!その子ならきっと、中央でも十分に通用する!」 ええ、それは思い知らされてますよ。でも帰ってください。 どうか娘のことは諦めて、早く速く中央に帰ってください。 あなたの帰りを待ってる人がいるんでしょう? 「スペェ!」 「娘が夢破れることなくトゥインクル・シリーズで活躍してくれるって確信が、あなたにはあるんですか!?」 「ある!実技試験のレースもちゃんと見た!何度も見たさ!そして確信した!お前の娘は芝の方が合っていて、そこならもっと速く走れるって!」 ああ、嫌です嫌です。聞きたくありません。

5 21/04/03(土)14:19:16 No.789344611

巡り合っちゃったか

6 21/04/03(土)14:19:34 No.789344687

八話の切り株のときみたいな涙流してそうだ…

7 21/04/03(土)14:26:17 No.789346305

エゴで走ってもらいたくない母親とエゴで走ってほしいトレセン学園のトレーナーか

8 21/04/03(土)14:28:14 No.789346777

次が気になる…

9 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:29:54</a> [sage] No.789347232

「その子ならきっと、お前譲りの活躍を…」 「やめてください!」 思い切り引っ叩いた。 よりによってそんな文句で娘のことを褒めようとした彼は、ひどく無神経だと思った。 どんなに優しくされても、かつてのような期待をされなくなっていたのは分かりきっていたあの日々。 あの悲しいひとときが今日という日に繋がっていたんだと考えたら、どうしようなく腹が立ってきて…目の前の彼を、メチャクチャにしてやりたくなる。 でも。 「その子をお前みたいに…いや、お前以上に活躍させたい」 「…とんだエゴですね」 「ああそうさ。お前の言う通りだよ、スペ。もし俺がもっとちゃんとしたトレーナーなら、お前を三冠ウマ娘に出来てたのかもなって気持ちはずっとあって…言ってしまえば、俺の感傷でもあるんだよ」 明け透けな言葉を口にする彼はいっそ清々しいくらいで…チョロい私は、絆されてしまいそうになる。

10 21/04/03(土)14:33:09 No.789348022

日本一と言う突拍子もない夢を笑われないと堕ちちゃうスペちゃん

11 21/04/03(土)14:36:47 No.789348986

思いっきり引っ叩いて死んでないのか…

12 21/04/03(土)14:37:23 No.789349117

>思いっきり引っ叩いて死んでないのか… このスペちゃんは思いっきりと言いつつ情で無意識に手加減してそう

13 21/04/03(土)14:39:45 No.789349701

本気でやったとしてもトレーナーさんが重いダメージを負うわけない

14 21/04/03(土)14:40:26 No.789349888

>思いっきり引っ叩いて死んでないのか… 全盛期過ぎて最早思いっきりひっぱたいても現役世代のじゃれ合いレベルにも及ばないのかもしれない

15 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:42:11</a> [sage] No.789350333

「…三冠、それに付け加えるとトリプルティアラも。どちらも軽々しく口に出来ることではありませんよね?」 「そうだ。でも出来たはずなんだよ。その可能性をフイにしてしまった一因は、間違いなくトレーナーの俺にあったんだ」 「その悔いをバネにして、三人の三冠ウマ娘を育ててみせたと?」 「…ああ、そうだとも」 三冠云々というのは、副題ではあっても主題ではないだろう。 彼は走らせたいんだ。 そんな夢すら見れるかもしれない可能性豊かなウマ娘を育てたいって気持ちが、彼を突き動かしている。 そんな情熱にスズカさんは惹かれて…それは恐らく、私も。 「…頼むスペ。俺にこの子を」 「嫌です」 それでも応じるわけにはいかない。 霞んでいくんだ。 私が彼をダービートレーナーにしてあげたことなんて、彼のトレーナー史においては今やほんの一ページでしかない。それが一節、あるいは一文で片付けられてしまうのを私がどれほど恐れているのか。 「スペ…!」 ええ、あなたには分からないでしょうね。

16 21/04/03(土)14:47:42 No.789351764

こんな卑屈なスペちゃん…!

17 21/04/03(土)14:48:56 No.789352113

>こんな卑屈なスペちゃん…! いいね…

18 21/04/03(土)14:54:47 No.789353683

娘に嫉妬する母親からいいよね...

19 21/04/03(土)14:55:51 No.789353967

トレスズ世界線だったのか…

20 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:56:22</a> [sage] No.789354114

「…お母ちゃん」 やめなさい、──。今は私とこの人が話しているの、どうか割って入らないで。 「私、中央に行きたい」 「──!」 怒号を上げた。 私がどんなに欲しくても手に入らないもの。それを手に入れようとした娘に対して、私は嫉妬を顕にした。 「…どんなにお母ちゃんが凄んでみせたって、私は引いてあげない」 強い子だ。私には少しも似ていない。 いや、昔の私は強かったかもしれない。挫けたって立ち上がる力があった。それなのに、いつの間にかそれを失っていて…ドジな話だ。 「ねえ、お母ちゃん」 娘が意を決したように口を開く。私はどんな姿をして、その言葉に耳を傾けているだろう。 出来れば…さっきの醜態を吹き飛ばすような、カッコいいものであって欲しい。 「…私が中央に行くかどうかは、レースで決めようよ」 そしてどうか、この高揚感が顔に現れていないことを祈る。

21 <a href="mailto:sage">21/04/03(土)14:59:16</a> [sage] No.789354882

>それが一節、あるいは一文で片付けられてしまうのを私がどれほど恐れているのか。 一節のところは一章に訂正させてください!

22 21/04/03(土)15:00:33 No.789355224

スペちゃんの変遷で涙出てきた

23 21/04/03(土)15:00:53 No.789355317

ねぇパパは誰...?

24 21/04/03(土)15:16:06 No.789359135

そうして生まれたのが君さ、ダイワスカーレット

25 21/04/03(土)15:21:29 No.789360449

娘さんがスペちゃんの闇を晴らしてくれると信じて

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