虹裏img歴史資料館

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21/04/02(金)22:35:06 昔話の... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1617370506043.png 21/04/02(金)22:35:06 No.789178524

昔話の続きをいたしましょう。 雨上がりの日の空の下、緑葉の付く大きな桜の木の元で、私は彼と初めて話をしました。 トレーニングの後、クールダウンのために二人は歩きます。 あの日から私達は並んで歩けるようになりました。 正しくは、私が彼の歩調に合わせていたのですが。 しかしいざ話をしようとしてもネタが浮かびません。 どうしたものでしょうか。 そこで彼に質問することにしました。 初めての問い掛けは今でも覚えています。

1 21/04/02(金)22:39:56 No.789180569

「あなたの名前はなんですか?」 一か月と半月はトレーニングを共にしたというのに、互いの名すら知らなかったのです。 彼は答えてくれました。 彼の名の中に「翔」という字がありました。 地道に走る彼ですから、予測もつきません。 私は矢継ぎ早に質問していきます。 やはり同い年だったようです。 私と彼、二人の距離がほんの少し縮まった気がしました。

2 21/04/02(金)22:44:31 No.789182560

来る日も来る日も質問しました。 彼はほとんど答えてくれました。 トレセン学園ではその特異性、つまり競技者であるウマ娘の育成 を目的としていますから、男性なんかほとんどトレーナーさんです。そうゆうことなので、トレーナーさんへの恋バナなんてものはよく飛び交いますが、同い年の人が相手なんて都市伝説と言われるほどです。 そんなわけで、なんというますか今振り返れば優越感も多少はあったのでしょう。私は幼かったですから。

3 21/04/02(金)22:49:59 No.789184833

特に印象的なのは「彼の高校」と「彼のしているスポーツ」ですかね。彼曰くその高校から川まで走ってきているとのこと。 少し調べましたらその高校川から優に五キロは離れていました。 つまり私と走る前に五キロ分、往復を考えれば十キロ。 彼のタフさは私の予測の範疇を超えていました。 また、その高校のバスケ部に所属しているみたいです。陸上とかではなかったんですね。曰くスタミナがいるとのこと。彼は何を目指しているのでしょうか。

4 21/04/02(金)22:53:49 No.789186649

・・・ ・・・ ・・・ あれこれ話す彼女の手元にニンジンジュースの入ったグラスを渡す。彼女はどうしたと言いたげな顔をしたものの手に取り口を詰める。僕は待ってましたとパートナーに話の続きを始める。 彼女はしてやられたと言いたげな顔をする。 ・・・ ・・・ ・・・

5 21/04/02(金)23:01:43 No.789189978

僕が彼女の名を聞いた時、驚愕、その一言であった。 彼女の名は「メジロライアン」。 トゥインクルシリーズなんて詳しくない自分が一人や二人思い浮かべる「メジロ」の名。 名家中の名家。 ニュースなんかで取り上げられる正に淑女の家。 そんなかけらも見せない彼女だから、身構えるなんてできもしなかった。 さすがにそんな事は言ってはいかんだろうとなるべく口にも、顔にも出さないよう力を込めた。 振り返ればそれがベストだったのだろう。

6 21/04/02(金)23:07:27 No.789192483

彼女は正に絵に描いたようなスポーツマン美少女である。 走る姿は流麗で、僕のクラスのウマ娘なんか比較にもできなかった。 彼女に少なからず尊敬の念を持っていた。 彼女は何度も質問してくれた。 彼女は年頃の女の子、僕は恥ずかしくて彼女のことは聞けなかった。 (特にピコピコしてる耳がかわいいとか、豊満な胸に目が行きそうだったなんかは言わないでおこう)

7 21/04/02(金)23:12:18 No.789194437

彼女のそんな優しさに触れると居心地がよかった。 あれは七月の中頃だっただろうか。 彼女がデビュー戦があると口にした。 僕は一度も彼女の全速力を見たことが無かった。 見てみたいという欲求は簡単に爆発した。 思わず日時と場所を聞いてしまった。 彼女は少し驚いたようだけれど笑顔で答えてくれた。 彼女の頬に赤みが宿る。

8 21/04/02(金)23:15:49 No.789195856

当日、慣れない足取りで会場に向かう。 観客はテレビで見たように人で埋めつかされていた。 すぐ彼女の出番である。 ステージに立つ彼女。 ゲートに入る彼女。 ゲートが開き、飛び出す彼女。 レースはあっという間に最終コーナー。 彼女は後ろのほう。これでいいのかと不安がよぎる。 そんな不安すぐ吹き飛んだ。

9 21/04/02(金)23:22:41 No.789198957

彼女が直線に入ると、体をこれでもかと前に倒す。 地を踏む足の反動が推進力になるのに最も適したのであろう角度。 また体幹も素晴らしいものでブレを生み出すこともない。 前へ前へと彼女の体を押していく。 腕は足の回転に合わせて動かし、肘は直角を維持、手先までぴんと張り、細やかな回転運動を生み出す。 あれよあれよと群馬を抜け、先頭を抑えた。

10 21/04/02(金)23:24:36 No.789199748

続きを!早く続きを!

11 21/04/02(金)23:25:39 No.789200169

その姿は流れ星の如し。 一目で彼女の走りの虜となる。 自身の目をズームし観客に手を振る彼女を捕らえんとする。 他なんか一切見えない。 一瞬彼女の手の振りが鈍った。 僕のレンズをのぞき込まれた気がした。

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