21/03/27(土)21:00:10 「本当…... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1616846410144.jpg 21/03/27(土)21:00:10 No.787355482
「本当……だんだん……眠く……」 「実は腕を爪先で少々、突いただけだったりして、ね」 アグネスタキオンに注射をされたと思い込んだダイワスカーレットは保健室のベッドの上で深い眠りについた。 「おやすみ、スカーレット君。しっかり休むといい」 スカーレットを見るタキオンの目は何時ものように実験対象を見る知的だが、何処か狂気的な物ではなかった。我が子を見守る母のような慈愛に満ちていた。 「プラセボ効果で入眠してしまうほどなら尚更だ」 慈母のようなスカーレットを見る目はそのままにやや批判的などこか面白そうな口調でタキオンは保健室の入り口を見た。 「君も試して見るかね?」 そこにいたのは一人の男性、スカーレットのトレーナーだ。 トレーナーは昔の汚点を見るかのように苦みばしった表情でタキオンを見るとため息をついた。 「……君の薬はもう懲り懲りだ」 「そう言うなよ、君と私の仲じゃないか『モルモット』くん」 トレーナーの言葉にタキオンは口元を僅かに歪め皮肉な笑みを浮かべた。 記憶の中にあるかつての希望に満ちた朗らかな笑みではなく、出会った頃のような全てを諦めているシニカルな顔。
1 21/03/27(土)21:00:51 No.787355738
二人の間に走った緊張など知りもしないスカーレットは安らかな寝息を立てていた。 「久しぶり、だな」 緊張から唾を飲み込む。 喉が僅かに鳴った。 トレーナーはゆっくりと言葉を紡ぎながら過去を思い返す。 端的に言えば、タキオンのプランAは……失敗だった。 成功したと思われたそれは破滅までの先伸ばしでしかなかったとは。 それが分かったのはトゥインクルシリーズが終わりドリームトロフィーリーグで新たな1歩を踏み出そうとした矢先。 夢に向かって踏み出す筈だったタキオンの脚は硝子細工のように砕け散った。 緊急治療と大手術の末に医者から告げられたのは二度と全力では走れないと言う事実上の引退告知。 競技者としての終わり、トレーナーとウマ娘という関係の終わりでもあった。 それでも構わなかった、タキオンが新しい道を選び彼女と共にいられるなら。 だが、ある日アグネスタキオンは姿を消した。
2 21/03/27(土)21:01:23 No.787355967
それから十年以上世界を飛び回って彼女を探し続けた。 香港、ドバイ、イタリア、デンマーク、ノルウェー、イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、南アメリカ、カナダ、アメリカ、アルゼンチン、ニュージーランド、オーストラリア。 何時しか世界を一周した頃にはそれなりに名前が売れたトレーナーになっていた。 ちょうど日本に戻ってきた頃、代替わりした学園長からの招聘を受け、トレセン学園に戻る事にした。 いい加減彼女の走りを面影を追うのを止めようと決めたからだ。 その矢先だった。 漸くあの走りから決別した筈が、全く似ていないのに彼女の走りを感じさせるあの走りを目にしたのは。 そのウマ娘はダイワスカーレットと言った。 気づけば一切の躊躇いなくスカーレットをスカウトしていた。 オーバーワークをしたがる兆候があるが、それを補って余りある程にスカーレットの走りには光るものがある。 彼女とならもう一度ドリームトロフィーリーグを目指せると決心した。
3 21/03/27(土)21:02:12 No.787356271
「ああ、十数年ぶりだね」 懐かしそうに言ったタキオンの言葉でトレーナーの意識は現実に引き戻される。 タキオンはかつての勝負服を思わせる白衣に身を包んでいた。 「今まで、いや、今は何を?」 トレーナーの言葉にタキオンは口元を歪め、白衣の胸元の身分証を指差す。 アクリルケースに入った身分証にはトレセン学園保険医、アグネスタキオン。と書かれている。 「この通り、今はトレセン学園の保険医さ。 おっと静かに頼むよ、スカーレットくんが起きてしまう」 口元に人差し指指を当て、トレーナーに笑いかけながらスカーレットの眠っているベッドに遮音カーテンで覆う。 良く見ると、片足を引き摺っていた。 「彼女が、その……スカーレットが君のプランBなのか?」 絞り出すようにトレーナーはタキオンへと問い掛ける。 「いや、敢えて言うならプランCと言ったところかな」 「それは…いや止めておこう」 トレーナーはタキオンの言葉に問い掛けようとして、首を振って止めた。 タキオンが話すとは思えなかったからだ。
4 21/03/27(土)21:03:54 No.787356891
「1つだけ教えてくれ、タキオン」 代わりにタキオンの目を真っ直ぐに見詰めた。 「私と君の仲だ。1つだけなら答えよう」 スカーレットは笑みを止め、真剣にトレーナーを見つめ返した。 「君のやろうとしている事はスカーレットの意思に反するような事じゃないんだな」 「勿論さ!私がモルモットくん以外に投薬実験をしたり他のウマ娘を巻き込んで騒動を起こした事があったかい!?」 タキオンの自信満々な態度をトレーナーは冷たい目で返す。 騒動なら幾らでも。と返す程子供ではないので黙っていたが。 「ま、まぁ兎に角だ!君と私と、スカーレット君でウマ娘の高み、スカーレットくんの言う1番を目指すのは悪くないと思っているよ」 トレーナーの冷ややかな視線は多少タキオンを慌てさせたのか僅かに声が上擦っている。 「……それはスカーレット次第だな」 少なくとも嘘をついている訳ではない。 力になってくれるなら断る理由もない。 「勿論さ、スカーレットくんが嫌がるなら残念ながら仕方ない。プランCはそれでも検証出来るからね」
5 21/03/27(土)21:04:36 No.787357157
タキオンの言葉が引っ掛かる。 プランAはタキオン自身の脚の強化。 プランBはタキオン自身への投薬実験を経て完成したものを対象(以前はマンハッタンカフェだった。)に渡し強化する。 と言うことはプランCはプランBとはちがう…? 「もう用は済んだかい?スカーレットくんが起きると行けないからトレーナー室へ帰りたまえ」 右手、と言っても長い袖に隠れているが、長い袖をブンブンと振り出ていくように促す。 「一つ言い忘れていた。 ……頼むタキオン、二度と俺の前から勝手に消えないでくれ」 タキオンの華奢な体を力強く抱き締める。二度と離さないと言わんばかりに。 「強引になった物だね、モルモットくん」 「あれからどれだけ経ったと思ってる」 タキオンの顔は僅かに赤面していた。 「悪いが、スカーレットを頼めるか?」 「勿論さ。私も彼女の事は気に入ってるんだ」 タキオンの気に入ってるはろくな物じゃないのはマンハッタンカフェを見れば明らかだが。 トレーナーは保健室から足早に立ち去った。
6 21/03/27(土)21:06:03 No.787357722
トレーナーが保健室から離れたのを確認すると、タキオンは遮音カーテンを開け、スカーレットの顔を覗く。 その顔は実験対象を観察するというより、子供の寝顔を見守る母のようだった。 「良くここまで育ってくれた。 両親からも愛情を貰って育ったんだね」 「ママ……」 スカーレットの寝言にタキオンは優しく頬を撫でる。 「許してくれとは言わないよ、スカーレット……。君を父親から引き離して母親をやれなかった私を」 夕日に照らされたタキオンの瞳から一粒の涙が溢れ落ちた。
7 <a href="mailto:s">21/03/27(土)21:11:05</a> [s] No.787359482
おわり 塩に投げれば良かった…
8 21/03/27(土)21:12:36 No.787360048
IAM YOUR MOTHER
9 21/03/27(土)21:13:08 No.787360213
YES YES YES
10 21/03/27(土)21:24:23 No.787364314
いいですよねトレーナーがタキオンに対して激重感情を持ってるの 最近はよくタキオンがモルモットくんに執着する怪文書をよく見るけどそもそもこの二人の関係性の始まりはモルモットくんだったわけだから双方向に重くあって欲しい
11 21/03/27(土)21:26:16 No.787364975
原作で親子関係にある娘達はこういう妄想が捗っていいよね…
12 21/03/27(土)21:30:44 No.787366581
ウワーッ!重い!
13 21/03/27(土)21:31:27 No.787366823
私の嗜好には合っていますね
14 21/03/27(土)21:37:40 No.787369061
最低限の言葉で伝わり合うのいい…
15 21/03/27(土)21:48:49 No.787372938
私一押しの親子ウマ娘ですよ
16 21/03/27(土)21:54:19 No.787374833
これはなかなか光るな…
17 21/03/27(土)21:55:09 No.787375151
プランCって自分の娘と親子で…
18 21/03/27(土)21:57:50 No.787376108
両方が激重感情持ってる!