21/03/26(金)00:12:30 「父さ... のスレッド詳細
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21/03/26(金)00:12:30 No.786833458
「父さん、お願いがあるんだ」 「なんだ」 「僕の彼女を紹介したいんだけど」 「認めん」 「父さん!」 「わからないのか。でなければ帰れ」 ここは僕の家だよ、という言葉がのどの奥に突っかかっていた。ここ最近はずっとアプローチを仕掛けていたもののまるで取り付く島もない。 グラスの奥の父さんの目はどんな様子かよくわからなかった。 「でも料理対決だってぼろ負けだったじゃん父さん。負けたら何でも言うこと聞くって言わなかった?」 「‥‥‥‥」 「同じような条件でやったババ抜きだって父さん最後まで残ってたじゃん」 「‥‥‥‥‥」 「前酔っぱらって帰ってきたとき、母さんと一緒になって介抱してくれたの、僕の彼女のマリさんだよ」 「‥‥‥‥‥‥‥‥」 段々と父の頭がうつむいていくように見えた。
1 21/03/26(金)00:12:44 No.786833538
「僕ももう子供じゃない。父さんの駄々に付き合うのも今日までだよ。今日は父さん休みだし、家に呼んでるんだ」 「なんだと?」 「もうすぐ来ると思う。ちゃんと出迎えてよ」 「私は認めない」 立ち上がった父さんは玄関へ向かいカギを閉めようとしている。 「なんでそんなに意地張るんだよ。マリさんの何がそんなに嫌なの」 「いやに決まっているだろう。想像してみろ、若いの体のまま高齢者になろうという同期が義理の娘になろうとしているんだ。お前だって嫌だろう」 「そんなの想像できないし僕には関係ない話だよ・・・・・義理の娘とか気が早いし」 「ならお前の女の好みも私には関係ない」 ガチャリ、とカギをひねりしまいにはチェーンまでかけていた。 「大人げない・・・・」 「これが大人のやり方だ」 ドアの前でせせこましく細工をする小さな背中。流石に呆れてため息‥‥のはずが笑いがこぼれた。
2 21/03/26(金)00:13:19 No.786833724
「何がおかしい」 「父さんがこんなに必死になるのがおかしくて」 「‥‥‥」 言葉数は少ないし、厳しくて息子に関心なんてないと思ってた時もあった。 「優しくて、かっこよくて、いい女って自分で言っちゃうけど、割とその通りの人なんだ」 口下手で、繊細で単に人付き合いが苦手だということが分かってから、少しだけど自分の意志を示せるようになった。どう思って何を考えてるのかわからない、そんな相手にどうすればいいか思いつかないのが僕は怖かったから。どんな姿でも気持ちを表してくれるのがうれしい。 「父さんはもう知ってる人かもしれないけど、僕の好きな人を改めて僕から紹介したいんだ」 たぶんそれは父さんも同じなんだ。だからこっちもちゃんと言いたいことを、気持ちを示したい。 「シンジ、大人になったな」 「分かんないよそんなの」 「改めて言っておくが私は何も認めるつもりはない」 「そこは譲るところだろ!」 「冬月を一緒に呼んだりするのもなしだぞ。アイツはことをうまく運び過ぎる」 「父さんは大人になろうよ・・・・」 客人の襲来を告げる呼び鈴がなる。父さんがチェーンを外し、ゆっくりとカギを回した。
3 21/03/26(金)00:14:15 No.786834041
目が開いた。ソファに腰かけた体に窓から差し込む陽光。 「──だよね」 どうやら眠ってしまっていたらしい。 父さんと話した時間はごくわずかだ。あのマイナス宇宙とかいう場所で話したことがすべてだったとも思わない。まだ分からないことだらけだろう。 あれほど会いに来てほしかったり、時に会いたくなかった父さんに、今度は自分から会いたいと思っている。彼女を、幸せな今を見せつけたいと思っている。あの人がどんな顔をするのか知りたいと思っている。 でも、さすがに夢の中とはいえ父さんをかっこ悪くし過ぎた。僕もまだまだ大人げないのかもしれない。 「お、起きたかねワンコ君」 「そろそろワンコ呼びもやめてくれていいんだけど‥‥」 「だって君、甘えたそうな顔してるよ。今にも飛びつきそうな酷い顔」 「‥‥‥」
4 21/03/26(金)00:15:44 No.786834436
彼女が隣に座った。 「ほら、遠慮せずに飛び込んできなさい」 気づいたら即座にその大きな胸に飛び込んでいた。柔らかく、暖かい。ただただ安心してしまう。みっともない姿をさらしていると分かっている、でもやめるつもりも毛頭ない。 「君の甘えん坊盛りの年頃はここからなんだね~。でも好きだよ、君のそういうところも」 細くて柔らかい指が、僕の頭をなでる。 「だから、私にもいっぱい甘えさせてね」 なんせ私たちは二人ぼっちなんだから、と軽く笑う声がした。 こんな姿をみたら父さんはやっぱりビックリするんだろうか。でもそれは父さん自身のせいだ。 こんな甘えん坊の息子を、いい女を置いていったのだから。この胸に甘えながらでも、僕は幸せになるよ。父さんがゲロ吐くくらい幸せに。
5 21/03/26(金)00:18:06 No.786835145
書き込みをした人によって削除されました
6 21/03/26(金)00:19:15 No.786835473
素晴らしいものをありがとう
7 <a href="mailto:sage">21/03/26(金)00:19:41</a> [sage] No.786835598
夜中にお目汚し失礼しました 今までのまとめ上げようとしたんだけど文字化けしてうまくいかない・・・・・ ファイル形式何がいいんだろこれ
8 21/03/26(金)00:20:22 No.786835802
>若い体のまま高齢者になろうという同期が義理の娘になろうとしているんだ ダメだった
9 21/03/26(金)00:24:10 No.786836959
3月8日からずっとこの2人のこと考えてる
10 <a href="mailto:sage">21/03/26(金)00:30:46</a> [sage] No.786838685
まとめ fu35727.txt おまけ fu35728.txt これでいけるかな
11 21/03/26(金)00:49:09 No.786843488
供給助かる…
12 21/03/26(金)00:57:25 No.786845601
>おまけ >fu35728.txt >これでいけるかな 冬月先生のスピーチぬかりねえな…
13 21/03/26(金)00:59:49 No.786846170
いいじゃない
14 <a href="mailto:sage">21/03/26(金)01:17:10</a> [sage] No.786850127
>冬月先生のスピーチぬかりねえな… その場その場で考えてたせいで数テンポ話題に乗り遅れた
15 21/03/26(金)01:26:36 No.786852059
ゲンドウの気持ちが分かるのと ゲンドウの気持ちが分かるシンジの気持ちが分かるというわけだね